JOHN SMEDLEY(ジョンスメドレー)は英国王室御用達の証であるロイヤルワラントを授けられているほどの実績を持つ老舗ニットウェアブランド。
ジョンスメドレー(ジョンスメ派かスメドレー派で分かれると思いますが、今回はスメドレーで表記します)といえば、上質なシーアイランドコットンを使用したハイゲージニットやカーディガン、これからの時期であればポロシャツなんかが有名でカジュアルというよりはフォーマルな印象が強いブランド。かくいう僕もそういうイメージを持っていました。クラシックにコンサバな雰囲気で着るのも完成されていてかっこいい。普遍的なモノの良さというのは理解しているつもりですが、それだと逆につまらなくないか?とも思ってもしまいます。


今回のSSはクラシック、かつコンサバなスメドレーをあえてカジュアルダウンさせて着崩したら新たなスタイルとして提案できてかっこいいんじゃないかなぁという考えのもと『ISIS(アイシス)』と『PEAKS(ピークス)』スメドレーを代表するモデルである二つのポロシャツをMOONLOIDのフィルターを通してセレクトしてみました。
既に当店のYouTubeチャンネルをご覧になった方もいるかもしれませんが、改めてディティールやこだわりポイント、僕らスタッフならこう着る!といった感じでYouTubeとはまた少し違ったテイストで楽しめるかと思いますので、よかったらお付き合いください。

最大のポイントは日本で通常展開されていない『XXLサイズ』であること

スメドレーはジャストサイズでトラディショナルに着こなすのが一般的。たとえばこんな感じに。

最初に書いたようにこれはこれでかっこいい。それを今回MOONLOIDではどうしたかというと、

ISIS

PEAKS

最初の写真と見比べてみるとだいぶラフで少し肩の力が抜けたような雰囲気に見えませんか?
実はこのISISとPEAKSはどちらとも『XXLサイズ』なんです!!!
何度も言っているようにジャストでトラディショナルに着こなすのが一般的なスメドレーなので、XXLサイズなんてビッグサイズはそもそも日本国内で流通していない。じゃあ一体なんで今回XXLサイズにMOONLOIDはフォーカスしたのか、その理由はこちら。

『LUXURY STREET(ラグジュアリーストリート)』
10年ほど前から世界主要都市のストリート界隈で爆発的な人気を見せ、一気に広がったファッションスタイル。特徴としてはストリートカジュアルとハイブランドをごちゃ混ぜにしているという点。代表的なブランドはビッグシルエットブームの火付け役と言われる「VETEMENTS(ヴェトモン)」の他に「Rick Owens(リックオウエンス)」「Off-WHITE(オフホワイト)」などがあり、ジャスティン・ビーバーや世界的ラッパーであるカニエ・ウェストのような著名人の影響もかなり大きいと言われる。

そう、これが僕たちが提案したかった新たなスメドレーの着こなし方『ラグジュアリーストリート』。

「クラシカルでいて上品」という既成概念を打ち破りつつも、スメドレーが持つラグジュアリーな雰囲気をストリートに落とし込むことで良い意味で「らしくない」スタイルが生まれる。型にハマらない分、スタイルも人それぞれ、自由で気ままなファッションが楽しめる。

それとビッグサイズであることによって生まれる利点は「快適さ」にもあります。
通常サイズでも薄くしなやかでいて柔らかい生地は通気性が良くて涼しい。
けれど、ビッグサイズにすれば袖や裾からの通気性も上がるし、肌に触れる面も減るから必然的に通常のものよりも涼しくなるというわけ。
どうでしょうか、最近の酷暑と言われる日本の夏に着るのは結構理に適ってると思いませんか?

さて、ここまではビッグサイズということ、それによってどんな良いことがあるのかについてお話ししました。
でも、正直このISISとPEAKSの二つ、ぱっと見ただけだとどこか違うところでもあるの?と突っ込みたくなるくらい同じように見えませんか?
なぜなら自分も当初はどっちがどっちだか見分けが付きにくかったからです。

それでは次はこの二つのモデルの違いについて、詳しく見ていきたいと思います。

『ISIS』と『PEAKS』サイズは同じでも実は結構違う

ISISとPEAKS、今回セレクトした両アイテムともサイズは「XXL」と同じ。でも実際に触ってみたり、着てみると微妙に違う部分が結構あることに驚きます。
えっ?画面越しじゃわからないだろって??うーん確かに…。
なるべく皆さんにわかりやすく違いを感じてもらえるようにディティールや着用感を説明していきます。

一番の違いは使用する「生地」にあります。


ISISはコットンの中でも最上級のクラスに位置する”SEA ISLAND COTTON"を贅沢に使用した一着。シーアイランドコットンはかつての英国王室のヴィクトリア女王がシルクと見間違えてしまったほどに滑らかな肌触りと柔らかさが特徴の高級でラグジュアリーな綿。それでいて耐久性も通常のコットンよりもめっちゃ高い。なぜなら、コットンの繊維が長いから。
一般的にコットンは繊維の長さが長いほど、肌に触れる繊維の端が少ないので滑らかで耐久性のある生地とされます。通常、コットンと分類されるためにはコットンの繊維の長さが34mm以上である必要がありますが、一方でシーアイランドコットンはなんと「50mm」にも達します。その結果、シーアイランドコットンが生み出す生地は世界で最も柔らかく、最も贅沢なものと言われているのです。
その着心地といったらもう、ずっと着ていたくなるくらい”とろっとろでふわっふわ”。この表現が一番しっくりくる気がしています。

ISISの生地感

一方PEAKSは”ANGLO INDIAN GAUZE(アングロインディアンガーゼ)”というなんだか聞き慣れない素材を使用した一着。
アングロインディアンガーゼ(以下、AIG)とは、スメドレーの秋冬に使われる定番素材エクストラファインメリノウールとISISで説明した超高級コットンであるシーアイランドコットンをなんと混ぜ合わせたラグジュアリーなハイブリッド生地。メリノウールを混紡することで生まれる光沢感と発色の良さ、適度なシャリ感とハリ感によるドライな質感がISISとはまた違った魅力を引き出しています。
シーアイランドコットンの優れた通気性と清涼感に加え、汗や湿気を吸い発散し、夏も冬も重宝される天然のメリノウールのコンビネーションはもはやチート級。さらに抗菌・防臭機能も発揮されるうえ、洗濯も可能になる。
つまり、コットンとウールの両者イイトコ取り、かつイージーケアで快適な素材がAIGなんです。

PEAKSの生地感

続いては「襟の長さ」

ISIS

PEAKS

どちらも台襟(シャツの首元で襟の土台となる帯状のパーツ)のないディティールは変わりませんが、PEAKSの方がよりロングポイントの襟が特徴的でシュッとした雰囲気。
さらにボタンを外してみると違いがわかりやすいです。

ISIS

PEAKS

ISISはボタンを外した際にオープンカラーシャツのような表情になるので少しラフな雰囲気が出やすい。
対してPEAKSはボタンを外しても立体感があり、襟の立ち方が綺麗にうつるので上品な雰囲気が残っています。
これはおそらく使用生地によって出る差。
じゃあ実際の着用感はどうか、ということで着比べてみました。

ISIS

PEAKS

この着画だけではなかなか分かりにくいですが、ISISはシーアイランドコットン特有のとろふわ感とビッグサイズが相まって、衣類を纏っているとは思えない着心地。PEAKSはエクストラファインメリノとシーアイランドコットンの混紡生地なので、ISISのサラッとした肌触りはありつつも、パリッとしたハリ感とアメリカ物みたいな無骨さとは違った上品ながっしり感を感じる着心地。肩の落ち感もISISはラグランのように自然とスッと落ちてくれます。PEAKSはISISよりも落ち感は少ないけど、その分フィット感があります。この感じ方の違いはただの個人的なニュアンスではなく、ちゃんと根拠があるんです。少々専門的になってしまいますが、解説していきます。

それは、縫製パターンでいうところの”袖山の高さ(袖と身頃部分を接ぎ合わせる山全体部分)”が影響しているからです。

下の写真を見れば一目瞭然ですが、ISISは袖山が低く、PEAKSは高いことが分かります。これによってどういうことが起こるかというと、袖山が高いほど袖は下向きに付くので、腕を下ろした姿勢の時にキレイなシルエットになります。逆に袖山が低いと袖は横向きに付くので脇下の生地が余り、カジュアルでラフなシルエットになります。袖口の部分を見ても腕と袖の離れ方が違うことで印象が違って見えるかと思います。
今回はサイズによる違いはないので、どちらもラフで涼しく快適に着られるのは間違いないでしょう。
でもあえてシーンで分けるとするなら、よりラフでカジュアルな着こなしをしたいのであればISIS、ラフな中にもキレイめなスメドレーらしさを残しておきたいのであればPEAKSを選ぶのがいいと思います。もちろん使用生地も異なるので、そこはお好みで。

肩の落ち感比較(左、ISIS 右、PEAKS)
見比べると袖山の高さがISISは低く、PEAKSは高めになっている。

さて、長々と小難しい話をしてしまいましたが、ISISとPEAKSの違いについてお分かりいただけたでしょうか。

では、最後はMOONLOIDスタッフがISISとPEAKSをどうスタイリングに落とし込むのか。
今回は今月よりNANGA SHOP KITAHIROSHIMAから異動してきた僕、SHUZOと皆さんお馴染みの先輩スタッフKONのスタイルを紹介します。
それぞれのスタイリングのイメージやポイントも併せて見ていただければ嬉しいです。

【スタイリング】僕たちスタッフが着るならこんな感じ

スタッフ”SHUZO”

Styling No.1 【ISIS】

Tops:JOHN SMEDLEY ISIS ”BLACK”
Pants:スタッフ私物
Socks:PANTHERELLA COTTON RIB SOCKS ”ACID”
Shoes:スタッフ私物

個人的にやってみたかったコーディネート。
ISISのゆるっとしていて抜けた雰囲気を生かし、テック寄りのストリートって感じのイメージで組んでみました。
僕の夏場の相棒、Patagoniaのバギーズショーツとパンセレラの別注ソックスでネオンカラー攻めです。

Styling No.2【PEAKS】

Tops:JOHN SMEDLEY PEAKS ”NAVY”
Pants:スタッフ私物
Socks:PANTHERELLA COTTON RIB SOCKS "BRIGHT ORANGE"
Shoes:meanswhile Danner Pittock Gurukha

自分のワードローブには欠かせない存在の古着。なかでも軍パンは特に好きです。
今回はフランス軍の名作M-47トラウザーズを使ってラギッドな感じを出しつつもPEAKSが持つ、スメドレーらしいラグジュアリー感で中和させることを意識してみました。ミーンズワイルのダナーコラボのグルカサンダルも相性抜群。
差し色で使ったのはもちろんパンセレラの別注ソックスです。

スタッフ”KON”

Styling No.1【ISIS】

Tops:JOHN SMEDLEY ISIS "NAVY"
Pants:スタッフ私物
Shoes:Jutta Neumann ALICE
Bracelet:hum humete

グランジ好きなKONらしい、クラッシュデニムを合わせたシンプルコーディネート。腕につけているハムのブレスレットも効いてますね。
こういうシンプルなカジュアルスタイルにもハマってくれるのはXXLサイズならではだなと思います。
KONはユッタニューマンのサンダルを合わせていますが、スニーカーでよりカジュアルに持っていっても良いでしょう。

Styling No.2【PEAKS】

Tops:JOHN SMEDLEY PEAKS "BLACK"
Pants:NEEDLES Track Pant Poly Smooth "OLIVE"
Shoes:Le Yucca's Uチップ Y18711

これはもう”THE LUXURY STREET”って感じの組み合わせでしょう。
ニードルズのトラックパンツというストリート色が出るアイテムをPEAKSとレユッカスの上品さが出るアイテムで引き締める。
上品になりすぎないのもポイントですね。

ジョンスメドレーのようなトラディショナルなアイテムでも視点を変えて色々な着方を探ってみると、意外と新たな発見が見つかるもの。
それこそがファッションの面白さであり、醍醐味でもあると僕は思います。
ぜひ、この夏のコーデの主役に取り入れてみてください。新たなファッションの境地へとあなたを誘ってくれるはず。