GFX 50R インタビュー

富士フイルムより、35mmフルサイズの約1.7倍の大型センサーを搭載した中判ミラーレスデジタルカメラの2機種目『GFX 50R』が登場しました。プロ向けの中判システムを前提に開発された『GFX 50S』に対し、『GFX 50R』は往年の『GW690』のようなレンジファインダースタイルを採用し、より小型で軽量化な中判デジタル機に仕上げてきました。今回は開発担当者へ『GFX 50R』の魅力や開発の経緯などを伺って来ました。

レンジファインダースタイル誕生の理由 「GFX 50R」と「GFX 50S」の違い センサー開発について
中判センサーの優位性 レンズ・周辺機器の展開 将来の展望

富士フイルム株式会社 上野 隆 氏

レンジファインダースタイル誕生の理由

マップカメラ 待ちに待った、中判ミラーレスデジタルカメラ「GFX50R」がまもなく発売されます。
「GFX50S」と異なりレンジファインダースタイルが採用されましたが、この経緯を教えてください。
上野氏 GFXシリーズは先ず2017年1月にGFX50Sを発売しました。いわゆるミディアムフォーマットカメラということで、ユーザーの半数以上がプロになるだろうということもあり、プロの使用に最も適したスタイル、そして様々な機能を搭載しようという方向性にしました。
象徴的なのがEVF チルトアダプターで、構えた状態で45度、90度、縦位置の時でも45度チルトして色々なアングル、ポジションで撮影できるといったメリットがあります。また、写真館やコマーシャルスタジオだと三脚に付けっぱなしになる可能性が高いので、下からアクセスするのは電池交換一つとっても下からのぞき込んだり、場合によっては雲台に邪魔されたりという感じになりがちです。なので、そういった下からのアクセスは一切やめようということでバッテリーもカードもサイドからのアクセスへ。さらに、USBやHDMIなど必要な端子類も一か所にまとめて整理するなど、プロのワークフローを最大限考慮しながら作ったのが50S でした。

それに比べてスナップやポートレート、またプロの分野だとドキュメンタリーやルポルタージュといった三脚に据えないアクティブな写真を撮っていただく中判カメラを作ろうじゃないか、というのが50R開発の発端でした。ですので、50Rはもっとフィールドに持ち出していただきたいカメラです。デジタル中判で5000万画素の超高画素センサーということもあり、どちらかというと三脚に据えてしっかり撮るものではないかと思われがちですが、手持ちで全く問題ないほど軽く作っています。レンジファインダースタイル中判カメラといえば、当社はフィルム全盛時代からGW680やオートフォーカスのGA645、最新ですと皆さんの馴染みが深いGF670といったものを商品化してきたので、むしろ50Rは王道かなというふうに我々は考えています。

実は、先にリリースした50Sでも今までの中判デジタルカメラに比べてかなり軽く、価格も数分の一にしたことで、スナップやドキュメンタリーを撮る人がいっぱい現れたのです。一番代表的なのが今年度「HOME」という写真展を世界中に回覧させていただいているマグナムの写真家達で、GFXを使って報道写真を撮ったり、スナップ作品を撮ってみたりというのが非常に多かったんです。そういった写真家達からぜひ軽快なレンジファインダースタイルのGFXを作ってくれという要望がありました。それは我々の思惑とユーザーからのリクエストが見事に一致したと言えるかもしれません。あまり中判ということで大上段に構えず、一般的な小型軽量のスナップカメラのつもりで、または少し大きなX-Pro2のような感覚で50Rをどんどん気軽に使っていただければいいなと思っています。

「GFX50R」と「GFX50S」の違いについて

マップカメラ スペック的に50Rと50Sで、大きな差や仕様変更などあるのでしょうか?
上野氏 基本的には全く一緒ですが、USBが昨今の流れに従ってUSB-C になっている点とか、Bluetoothでスマホに簡単に画像を送れるという機能などは50Rの方に新たに追加したものなので、50Sにはありません。アイセンサーの切替時間が早くなっているというのもあるのですが、そのあたりはファームアップで50Sの方にも今後搭載していきますので、実際に違うのはいくつかのデバイスだけです。ほとんど同じといっても差し支えないと思います。
マップカメラ 中判カメラとしては50Sでも十分小さいのですが、50Rはさらに小型化、薄くなっています。どのような形で小型化を実現されたのでしょうか?
上野氏 実際に数値にすると幅は広くなっているんですけれど、奥行きと高さがだいぶ小型化されています。ではこれをどうやって実現させたかといいますと、一番大きな部材であるバッテリーをどこに配置させるかというところがポイントになりました。先ほども言いました様に50S は三脚に据えて撮ることを考えてサイドスロットにしましたが、50R はフィールドに持ち出して撮るカメラなので、下からアクセスしてもいいでしょうという様に考えました。

カメラを前から見るとフォーカルプレーンシャッターユニットがあってマウントがあってセンサーがあって、バッテリーが横にある。これらをギリギリで並べています。皆さんが思っているよりもおそらく大きいのが、このフォーカルプレーンシャッターユニットです。シャッター本体があって、それを動かすモーターがあって基盤が付いてます。ここを小型化しない限りカメラは小さくならないんですね。なので、これが現時点での最小サイズです。そして、それに干渉しない場所にバッテリーを配置し、その上にファインダーユニットを埋め込んでいるわけです。つまり、ファインダーブロックとバッテリーを重ねた高さが、50R の高さとして決まってきます。
サイズの違い
マップカメラ 相当詰め込んだということでしょうか?
上野氏 そういうことです。このパズルがすごく難しかったんです。また、我々は他社さんと比べてもダイヤル類を多く搭載していますが、このダイヤル類が意外と場所を取るんです。外観に見えている部分はまさに氷山の一角でしかなくて、この下に歯車とかギアがあり、それがセッティングを伝達しているわけですから。
もしこれを全部電子コマンドダイヤルだけにすればもう少しコンパクトにできるでしょうね。この話をすると「だったらダイヤルとか全部やめちゃえば、さらに小型軽量化できたんじゃないですか?」って言われるんですが、実際その通りだと思いますよ。

ですが、じゃあカメラは全て小型軽量化すれば正義なのかといったら、そうじゃないと思うんです。そうすると結果的にスマホが出来上がりますよね。大きなセンサーを積んだスマホみたいになって、後ろのタッチパネルで全部操作しますというので良ければ技術的にはできますし、たぶんそれが最も小型軽量だと思います。
でもカメラってそういうことだけではなくて、やっぱりモノとしての魅力とか、使っていて楽しいというところも小型軽量に匹敵するぐらい大事だと考えています。我々は小型軽量を目指しつつカメラとしての魅力とか、そういったものを両立させる。そのベストの解の一つが、この50Rというカメラかな、という気がします。
バッテリーの配置バッテリーの配置
上野氏 フィルムカメラも含めて、なかなかこういうカメラはないじゃないですか。しいて言えばハッセルブラッドさんのX1Dが近いですが、あちらはフォーカルプレーンシャッターがないので、仕組みが根本的に違います。

そうすると、サイズや操作性で比べるべきはフィルム時代の6x4.5、6x6、6x7といった レンジファインダーカメラになりますが、仮にそういったカメラを並べてみても、この大きさというのはフィルムカメラよりも小さい場合が多いんです。フィルムカメラはブローニーフィルムを入れるだけでも大きくなりますし、そこに給送系やレンジファインダーを乗せるとなると、やはり50Rの大きさに収めることは難しくなります。6x4.5を縦位置で撮影するカメラならもう少し小さくなるでしょうけど、6×6 以上は全く収まらないサイズになってきます。そう考えると中判カメラでこの大きさというのは、フィルム時代も含めて十分小型なレンジファインダースタイルカメラだよねということになり、この形になりました。
マップカメラ 例えばですが、X100Fのようなレンズ一体型中判カメラの構想はなかったのでしょうか?
上野氏 それはありませんでした。そうするとレンズも新開発、駆動系なども全部ワンオフで作らなければならなくなってしまいますから、むしろ価格が高くなってしまいます。あくまで今回の50Rは、より多くの方に使っていただけるように、というところが重要でしたから。
マップカメラ この50Rを初めて見たときに、昔のGA645やGF670を思い出しました。中判カメラなのに持ち出しやすいサイズということで、よく登山をする方が好んで使っているというイメージがあります。そのような方は耐久性が気になると思いますが、今回の50Rは50Sと比べていかがでしょうか?
上野氏 50Rと50Sの2機種で耐久性の違いはありません。どちらもマグネシウム合金製ですし、強度設計は共通です。例えば、落下強度試験などにおいてもクリアしなければいけないハードルは変わらないので、堅牢性や耐久性という部分は同じです。



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