〜木下光学研究所 KISTAR 85mm F1.4 試写レポート〜

個性的で実用的な85mm『KISTAR 85mm F1.4』
※画像はオリジナルから縮小しています。
KISTAR 85mm F1.4 絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/1600秒 / ISO:100
使用機材:SONY α7II + KISTAR 85mm F1.4(+RAYQUAL マウントアダプター ヤシカコンタックスレンズ/ソニーEボディ用)


木下光学研究所 KISTAR 85mm F1.4



国産CONTAX・Zeissの源流とも言えるTOMINONレンズの技術を受け継ぐ木下光学研究所から、シリーズ3本目となる『KISTAR 85mm F1.4』が登場しました。
開放での柔らかさが印象的な大口径中望遠レンズは、高い解像力を持ちつつもクラシックな雰囲気が感じられる独特な描写が楽しめ、最新レンズに多く見られる開放からシャープな写りをするレンズとは一線を画すレンズです。早速その実力をご覧いただきましょう。

前回同様マウントアダプターを使用し、まずは『SONY α7II』に装着してみました。ヤシカコンタックス風の外観と適度な重さのピントリングはとても扱いやすく、目に止まった被写体にもすぐにピント合わせが出来ました。
寒さが厳しく感じられる今の時期は、正午でもお日様の光に色が乗ってしまいます。黄色味が強くなる傾向が多いオールドレンズですが、本レンズはオールドレンズ風であって、中身は木下光学オリジナルの最新設計。透明感も高く、綺麗な色再現を披露してくれました。F1.4の大口径ながら542gと軽量に仕上がったのも嬉しいポイントです。


KISTAR 85mm F1.4 絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/80秒 / ISO:100
使用機材:SONY α7II + KISTAR 85mm F1.4(+RAYQUAL マウントアダプター ヤシカコンタックスレンズ/ソニーEボディ用)


神社の境内脇からお参りの様子を狙いました。強い日差しが差し込んで所々が白トビ状態になっていますが、絞り開放の柔らかい描写によりとても自然な印象です。


KISTAR 85mm F1.4 絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/80秒 / ISO:100
使用機材:SONY α7II + KISTAR 85mm F1.4(+RAYQUAL マウントアダプター ヤシカコンタックスレンズ/ソニーEボディ用)


店先に飾られた招き猫に招かれて最短域で撮影を。絞り開放と80cmの接写を合わせるとここまで大きなボケが楽しめました。白ベールで柔らかく包み込むようなやさしいボケ味です。


KISTAR 85mm F1.4 絞り:F5.6 / シャッタースピード:1/640秒 / ISO:100
使用機材:SONY α7II + KISTAR 85mm F1.4(+RAYQUAL マウントアダプター ヤシカコンタックスレンズ/ソニーEボディ用)


見晴らしの良い場所に立ったので、少し絞ってより解像感のある写真を狙ってみると、開放時とは打って変わってコントラストの高いメリハリの効いた画になりました。しかし硬いと言った印象はなく、ただただ細部まで良く写っていると感心するばかりです。
ピントを合わせた東京タワーは鉄骨の細部まで捉え、シャープで高い解像力で対岸の千葉県の様子まで捉えました。ソニーのα7シリーズと言えば、先日高解像モデルが発売されたばかり。ボディを選ばず綺麗な画が楽しめることでしょう。


KISTAR 85mm F1.4 絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/3200秒 / ISO:100
使用機材:SONY α7II + KISTAR 85mm F1.4(+RAYQUAL マウントアダプター ヤシカコンタックスレンズ/ソニーEボディ用)


高層ビルを入口から見上げると最上部だけが滲む面白い画になりました。絞ると最新レンズらしいシャープな描写ですが、開放時では柔らかさだけでなく、独特な癖が感じられました。1本でオールドレンズと最新レンズのテイストが楽しめるお得感があります。


KISTAR 85mm F1.4 絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/3200秒 / ISO:100
使用機材:Canon 5D Mark IV + KISTAR 85mm F1.4(+RAYQUAL マウントアダプター ヤシカコンタックスレンズ/EOSボディ用)


キレと柔らかさが織り成す、絶妙な描写。


今までのKISTARシリーズでは絞り開放で滲むような柔らかさと、絞るごとに画のシャープネスが変わるオールドレンズライクな味付けのレンズでした。今回は大口径の85mmということで、同じような、もしくはもっとシルキーな開放描写を期待していたのですが、その思いはいい意味で裏切られました。まず開放解像力がシリーズ史上最も高く、キレ味とボケ味が同時に楽しめる描写になっています。、ピント面は十分な解像感と立体感を感じる写りなのですが “カリカリ” というほど硬くなく、少しウエットな印象を受ける心地いい描写力。そして前ボケ・後ボケはジワリと滲むような柔らかさの中に少しフレアが混じるような、なんとも美しいボケ味を見せてくれます。

ここからはボディを『Canon EOS 5D Mark IV』へスイッチ。大口径85mmはポートレートレンズと呼ばれることもあり、大きな落ち葉で遊ぶ息子を撮影した一枚から。ピント面はキリッとした解像力に対し、葉の上部がジワリと滲んでボケているのがとても印象的です。非球面を用いらない5群6枚というシンプルな構成の大口径レンズですが、オールドレンズに見られるようなクセの強いボケは一切見られません。完全に収差をコントロールしてこの味付けにした事を思うと、木下光学研究所のレンズに対する智見の深さと技術は本当に凄いなと感じた描写です。


KISTAR 85mm F1.4 絞り:F2.8/ シャッタースピード:1/3200秒 / ISO:100
使用機材:Canon 5D Mark IV + KISTAR 85mm F1.4(+RAYQUAL マウントアダプター ヤシカコンタックスレンズ/EOSボディ用)


鮮やかに色づいた葉を少し絞ったF2.8で撮影した一枚。ここまで写れば解像力は十分すぎるほどです。光の捉え方もいいレンズです。


KISTAR 85mm F1.4 絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/3200秒 / ISO:100
使用機材:Canon 5D Mark IV + KISTAR 85mm F1.4(+RAYQUAL マウントアダプター ヤシカコンタックスレンズ/EOSボディ用)


公園のブランコで遊ぶ娘をF1.4で撮影。ピント面は髪の毛の一本一本まで分かる素晴らしい描写力です。また、前ボケ・後ボケ共に滑らかで美しく、被写体をより際立たせてくれました。


KISTAR 85mm F1.4 絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/3200秒 / ISO:100
使用機材:Canon 5D Mark IV + KISTAR 85mm F1.4(+RAYQUAL マウントアダプター ヤシカコンタックスレンズ/EOSボディ用)


「描写がいい」というのは個人個人で違いがあると思いますが、『KISTAR 85mm F1.4』は多くの方がそう感じる描写ではないでしょうか。スペックシートや高性能という言葉だけでは当てはまらない、写真の美しさや面白さといった感覚に訴えてくるレンズです。


KISTAR 85mm F1.4 絞り:F2/ シャッタースピード:1/3200秒 / ISO:100
使用機材:Canon 5D Mark IV + KISTAR 85mm F1.4(+RAYQUAL マウントアダプター ヤシカコンタックスレンズ/EOSボディ用)


最後は昼食の際に撮影したテーブルフォト。『KISTAR 85mm F1.4』はレンズの個性を楽しみつつ様々な撮影で使用出来るレンズです。


KISTAR 85mm F1.4

SONY α7IIにマウントアダプターを使用しての組み合わせ。
他メーカーの85mmF1.4よりもコンパクトなので使い勝手は非常にいいです。
また、Canon 一眼レフとの組み合わせは重量バランス、操作性ともにベストな組み合わせだと感じました。

KISTAR 85mm F1.4

個性的で実用的、素晴らしい85mmに出会えた。


「このレンズでなければ撮れない写真がある」そう思わせる魅力がこの『KISTAR 85mm F1.4』にはありました。それはただクセを強調した個性派レンズというわけではなく、解像感やボケ味に「この方が写真は美しい」という設計者の明確な意図が感じられる描写だという事です。本レンズはモノコートを採用しているため、逆光時には目立つフレアが発生しますが、それも味の一つ。数値的な性能だけでは語れないレンズの魅力や、写真の楽しさを『KISTAR 85mm F1.4』を通して改めて感じる事ができました。オールドレンズの世界ではレンズ設計者と描写思想など語られていますが、現代のレンズでそれを強く感じられる貴重な1本ではないでしょうか。数ある85mmの中でも「これは欲しい」と思ってしまった素晴らしい1本です。

Photo by MAP CAMERA Staff

お買い物はこちら