〜Leica M10 試写レポート〜

※画像はオリジナルから縮小しています。
Leica (ライカ)  M10 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/1500秒 / ISO:100/ 使用機材:Leica M10 + APO-SUMMICRON M50mm F2 ASPH.

Leica (ライカ)  M10

2017年1月19日 午前5時。新型のMデジタルがついに発表されました。そのカメラの名は『M10』。Mシステムの新たな歴史を刻む本機には、なんと途切れていたMのナンバリング名が復活しています。 大きな特徴として、『M10』は今までのMデジタルの中で最もコンパクトなサイズになっており、トップカバーの厚みはフィルム機とほぼ同じの33.7mm。今まで多くの方が理想としていた「M型の握り心地」をデジタル機で実現しています。そして画質性能も進化しています。専用に開発されたと言われるCMOSセンサーはローパスフィルターレスの先鋭感ある解像力に加え、広いダイナミックレンジの表現も兼ね備えており、ハイライトからシャドーまで被写体の光を繊細に捉え、奥行きのある色と画を出してくれます。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F2.8/ シャッタースピード:1/2000秒 / ISO:100/ 使用機材:Leica M10 + APO-SUMMICRON M50mm F2 ASPH.


窓硝子に映る冬の青空と街路樹。ほぼ撮って出しに近いカットなのですが、階調豊かな建物のシャドー部や渋めの色表現が実にライカらしい一枚です。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F4/ シャッタースピード:1/60秒 / ISO:200/ 使用機材:Leica M10 + APO-SUMMICRON M50mm F2 ASPH.


信号待ちでふと横断歩道の構図の面白さに気づきスナップした一枚。ライカがスナップに向いていると言われている由縁は、目立たないボディや静かなシャッター音など色々と語られていますが、シャッターを押すまでの撮影動作が直感的に行える事もその理由の一つだと思います。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F8/ シャッタースピード:1/2500秒 / ISO:100/ 使用機材:Leica M10 + APO-SUMMICRON M50mm F2 ASPH.


雲の切れ間から光芒とともに顔を出す太陽。アポズミクロンを使用したこともありますが、左側の建物の外壁など、目を見張るような先鋭感のある写真です。画素数はTyp240と同じ2400万画素ですが、M10の画質は格段にアップしていると体感できます。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F2/ シャッタースピード:1/90秒 / ISO:200/ 使用機材:Leica M10 + APO-SUMMICRON M50mm F2 ASPH.
Leica (ライカ)  M10
初めてM10を手にした時、「これだよ、これ。」と、その握り心地に感動してしまいました。M型フィルム機と同等の厚みになったことで、手に取った瞬間に『M型ライカ』ということを体が認識するのです。そしてファインダーを覗いて更に感動しました。一見すると今までと同じように見えるアイピースなのですが、覗くと今まで以上に視界が広く、見やすく進化をしています。数値でいうと従来機に比べ視界を30%広くし、ファインダーは0.68倍から0.73倍へ向上しています。そしてシャッター音もとても良くなりましたね、今までは「カシュッ」と最後に音が伸びる感じがあったのに対し、M10は「チャッ」っと歯切れの良い音に変わっています。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F4/ シャッタースピード:1/125秒 / ISO:800/ 使用機材:Leica M10 + APO-SUMMICRON M50mm F2 ASPH.



壁の反射を使った街中のスナップ。何気ない街の景色もM10を持つと視点が変わる気がします。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/2000秒 / ISO:400/ 使用機材:Leica M10 + APO-SUMMICRON M50mm F2 ASPH.


夕方から夜に変わる時間帯の空。もっとピントを詰められたのですが、突然鳥が飛んできたので瞬時にシャッターを切りました。こういう感覚的に撮影ができる所がライカのとても好きなところです。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F1.2/ シャッタースピード:1/2000秒 / ISO:200/ 使用機材:Leica M10 + NOCTILUX M50mm F1.2 (1st)


大口径の銘玉『NOCTILUX M50mm F1.2 (1st)』での撮影。“夢の世界”のような写りになるのではと想像していたのですが、F1.2の開放撮影ながらレース生地の網目模様まで写しだしているのには驚きました。 アウトフォーカスにかけてしっとりと滲んでいく美しいボケ味や、なだらかに落ちていく階調表現など、レンズの魅力をM10が最大限に引き出してくれています。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F4/ シャッタースピード:1/60秒 / ISO:200/ 使用機材:Leica M10 + APO-SUMMICRON M50mm F2 ASPH.
Leica (ライカ)  M10
『M10』には広いダイナミックレンジとコントラストの表現力に加え、高い解像性能も誇る素晴らしいセンサーが搭載されています。レンズからの光をすべて表現してくれると言ったらいいでしょうか、グラデーションのかかる淡い空の光も、黒に変わっていく影のトーンも美しく写真に残せるカメラです。また、高感度性能も大きく向上しているのが特徴で、最大ISO感度は50000まで設定できるようになりました。M10は2400万画素のフルサイズ機の中でもトップクラスの画質性能を持つ一台です。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/1000秒 / ISO:400/ 使用機材:Leica M10 + APO-SUMMICRON M50mm F2 ASPH.


夕日に照らされる街並み。ハイライトに露出を合わせてアンダー気味に撮影したのですが、シャドウ部の階調表現が素晴らしいですね。黒の中にある様々な被写体を捉え、解像しているのがわかります。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F1.2/ シャッタースピード:1/60秒 / ISO:1600/ 使用機材:Leica M10 + NOCTILUX M50mm F1.2 (1st)


今回持ち出した『NOCTILUX M50mm F1.2 (1st)』で最短撮影した一枚。このシルキーな光の滲みがなんとも美しいです。撮影時のISO感度は1600でしたがノイズ感は全く感じません。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F1.2/ シャッタースピード:1/60秒 / ISO:3200/ 使用機材:Leica M10 + NOCTILUX M50mm F1.2 (1st)


このカットの撮影感度はISO3200。モノクローム現像しているとはいえ、嫌なノイズは感じられません。むしろジワリと霞んでいく画作りは、フィルムの粒子感のようにも見えて好印象です。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F1.2/ シャッタースピード:1/125秒 / ISO:1600/ 使用機材:Leica M10 + NOCTILUX M50mm F1.2 (1st)


イルミネーションを背景に夜のスナップ。少し渦を巻くような独特の収差が写真のスパイスになっています。


Leica (ライカ)  M10 絞り:F1.2/ シャッタースピード:1/125秒 / ISO:1600/ 使用機材:Leica M10 + NOCTILUX M50mm F1.2 (1st)





Leica (ライカ)  M10 絞り:F1.2/ シャッタースピード:1/30秒 / ISO:1600/ 使用機材:Leica M10 + NOCTILUX M50mm F1.2 (1st)


『NOCTILUX M50mm F1.2 (1st)』はもっとクセの強いレンズだと思っていたのですが、その描写に驚きました。古いレンズなので個体差というのも大いにあるとは思いますが、私の中でイメージが変わりましたね、ここまでよく写るレンズとは思いませんでした。
M10は繊細な光の違いまで捉える事のできるカメラですので、オールドレンズとの相性がとても良く感じます。歴代の銘玉から自分好みのレンズを選び、描写を楽しむのもライカの楽しみ方の一つですから、デジタルボディのマスターピースとしてM10は是非お勧めしたい一台です。


Leica (ライカ)  M10
Leica M10 + NOCTILUX M50mm F1.2 (1st)
Leica (ライカ)  M10
Leica M10 + APO-SUMMICRON M50mm F2 ASPH.
Leica (ライカ)  M10


『M10』を使用してみて、写真は五感を使って撮るものだということを再認識させられました。昨今のデジタル技術の進歩には目覚ましいものを感じますが、「カメラ=写真を撮る道具」と考えた時、本当に必要な機能はそんなに多くないのでは?と思うことがあります。もちろんそれは撮影スタイルや被写体によって大きく変わることだと思いますが、ライカが得意とするスナップ撮影で言えば、直感的で、自分の体の一部のように使えるカメラが理想的です。

上に載せた本体背面の写真を見ていただくとわかりますが、『M10』のボタン類はシンプルにまとめられ、新たに付けられたISOダイヤルはM3の巻き戻しノブを彷彿とさせる形状になっています。そのISOダイヤルも見た目だけではなく、カメラの状態が直感的にわかる配置になっており、カメラを上面から見ると、絞り、撮影距離、被写界深度、シャッタースピード、ISO感度が一目で分かるようになっています。

『M10』を一言で言うならば『理想のMデジタル』。

カメラを構えて、ファインダーを覗いて、ピントを合わせて、シャッターを切る。その一連のプロセスで感じられる手の感覚、視界、シャッター音など全てが「M型ライカ」なのです。M3より続く「10」という数字を付けた意味と重みを、私は『M10』から感じることができました。
  

Photo by MAP CAMERA Staff

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