〜PENTAX K-1 試写レポート〜

ペンタックスの夢を実現にした一台『PENTAX K-1』
※画像はオリジナルから縮小しています。
PENTAX K-1 絞り:F13/ シャッタースピード:1/5000秒 / ISO:200/ 使用機材:PENTAX K-1 + HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR

PENTAX K-1

ついに、ついにこの日がやってきました。今回は待望のフルサイズセンサーを搭載したKマウント・フラッグシップ機『K-1』のご紹介です。
知る人ぞ知る"最初の"『K-1』は2000年にフォトキナで発表された600万画素のフルサイズセンサーを搭載した機種でした。MZ-Sをベースに作られた夢のデジタル一眼レフでしたが、生産コストが高すぎる理由で翌年に製品化を断念。 ペンタックスユーザーはこの時から「いつかはフルサイズ」という夢を見るようになります。その5年後の2006年に名機『K10D』が発売。そこから現行の『K-3II』までペンタックスKシリーズは「高性能でタフなAPS-C機」として絶対的な地位を築き上げています。そして2016年4月28日、満を持して登場した『K-1』はまさにペンタックスのデジタル一眼レフ技術の集大成とも言える意欲作に仕上がりました。当初は2400万画素などと噂されていたセンサーは3640万画素・ローパスレス・ISO 204800という最高レベルのスペック。そこに新開発の画像処理エンジン「PRIME W」を組み合わせることで高画質と高感度の両立を実現させています。その他にも5軸5段分の手ぶれ補正を行うSRII、ローパスセレクター、リアル・レゾリューション・システム、GPS・アストロトレーサーを搭載するなど最新技術がこれでもかというほど詰め込まれている事にも注目ですね。世界中のペンタックスファンが待ち望んだ『K-1』、肝心の写りはいかなるものなのか早速試写へ出かけました。


PENTAX K-1 絞り:F1.8/ シャッタースピード:1/6000秒 / ISO:100/ 使用機材:PENTAX K-1 + FA77mm F1.8 Limited


ペンタックスユーザーにとって三種の神器とも言える『FA Limited』3本。このレンズをフルフレームで使うためにK-1を待っていた方も多かったのではないでしょうか。まずは中望遠の銘玉『FA77mm F1.8 Limited』から。開放から高い解像力を誇る本レンズは『K-1』の3640万画素のセンサー上でもその性能を余すことなく発揮してくれます。 海にカメラを構えている女性の後ろ姿をしっかりと描写し、その前後をリミテッドレンズらしい味のあるボケ味が包み込みます。


PENTAX K-1 絞り:F1.8/ シャッタースピード:1/8000秒 / ISO:100/ 使用機材:PENTAX K-1 + FA77mm F1.8 Limited


登場から15年以上経つ『FA77mm F1.8 Limited』は現代のレンズに比べてフリンジが出やすいのも特徴の一つ。その点『K-1』はレンズ補正/フリンジ補正の機能を搭載していますから、撮影後に気になる様であればカメラ内RAW現像で調整することが可能です。 また、使用して驚いたのがAFスピードの速さ。モーターを内蔵しないレンズでもここまでキビキビと動くのかと思うほど快適です。


PENTAX K-1 絞り:F1.9/ シャッタースピード:1/800秒 / ISO:100/ 使用機材:PENTAX K-1 + FA43mm F1.9 Limited


続いては『FA43mm F1.9 Limited』。このレンズの写りも素晴らしいですね。 滑らかなボケ味と線の細い描写はさすがです。今までのペンタックス・デジタル機では中望遠に近い画角になっていた本レンズも、フルサイズ機に装着することでより空間の広がりを感じられる様になりました。


PENTAX K-1 焦点距離:48mm/ 絞り:F8/ シャッタースピード:1/500秒 / ISO:200/ 使用機材:PENTAX K-1 + HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR


こちらはデジタル機に合わせて作られた『HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR』で撮影した写真です。海に向かって迫り出す崖を撮影したのですが、等倍で写真を掲載しましたので、ぜひ拡大してご覧ください。さすがフルサイズ、さすが3640万画素と言えるものすごい解像力に驚かされます。『K-3II』でもすごいなと思っていたのですが、明らかにその上をいく画質ですね。他メーカーの高画素機と比べても最高峰の解像力ではないでしょうか。 風景写真をメインにされている方は大きなメリットと言えるでしょう。


PENTAX K-1 焦点距離:36mm/ 絞り:F2.8/ シャッタースピード:1/3200秒 / ISO:200/ 使用機材:PENTAX K-1 + HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR



道端に生えていた草を何気なく撮ったのですが、 いい描写ですね。細い線を描きつつもコントラストの高い描写は、被写体を立体的に表現してくれます。


PENTAX K-1 絞り:F1.8/ シャッタースピード:1/800秒 / ISO:200/ 使用機材:PENTAX K-1 + FA31mm F1.8AL Limited


PENTAX K-1

まず画質に関しては間違えなくフルサイズ機でも最高クラスの写りをすると言っていいでしょう。それは高い解像力に加え、ペンタックスらしい色表現がうまく重なり合い「撮れた写真が美しい」と感じる絶妙な画を出してくれるからだと思います。WBのCTEやカラーモードの雅など独特の色彩表現をフルサイズで表現してくれるのはペンタックスユーザーしか味わえない特権ですね。
AFは精度が高いピント合わせを実現し、フォーカススピードも今までのペンタックス機の中では格段に早いです。最新のレンズはもちろんですが、モーター非内蔵のレンズでもものすごく早いのでFAレンズ資産をお持ちの方はビックリすると思います。
操作性に関しては、もともと評価の高かったKシリーズ操作系を踏襲しているのですが、さらに『K-1』より新たに加わったスマートファンクションの機能ダイヤルが非常に使いやすいです。通常だとメニュー画面の中やファンクションボタンにふり分ける機能と思うのですが、それが視覚的に分かるダイヤルになっているので必要な時に迷わず選択できるのがポイント。モードダイヤルにあるユーザーモードも5つまで登録できるなど『K-1』はペンタックスらしいカスタマイズ性の高い機種となっています。

PENTAX K-1 焦点距離:55mm/ 絞り:F4/ シャッタースピード:1/80秒 / ISO:400/ 使用機材:PENTAX K-1 + HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR


訪れたお寺では藤の花が満開でした。この鮮やかな紫の発色はペンタックスらしい美しい色表現だと思います。フルサイズセンサーらしくハイライトの粘りを感じますね。


PENTAX K-1 焦点距離:70mm/ 絞り:F8/ シャッタースピード:1/320秒 / ISO:400/ 使用機材:PENTAX K-1 + HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR


重厚な屋根瓦を望遠端側で撮影。シャドウのトーンも豊かで微妙な黒の濃淡を見事に表現しています。また金の細工の解像感と立体感も素晴らしいです。


PENTAX K-1 焦点距離:70mm/ 絞り:F2.8/ シャッタースピード:1/500秒 / ISO:800/ 使用機材:PENTAX K-1 + HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR


浮き立つ様な苔の立体感。ISO800という設定だったのですが、このくらいの感度では全くノイズ感を感じません。通常こういった近接撮影では手ぶれも気になるかと思うのですが、『K-1』のボディ内手振れ補正はすごいんですよ。5軸5段分という強力な手振れ補正にもかかわらず振動や違和感のある動きが全くないんです。体感的にものすごく自然な効き方なので手ブレが気になるシーンでも目の前の被写体に集中して撮影ができるはずです。


PENTAX K-1 焦点距離:60mm/ 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/100秒 / ISO:400/ 使用機材:PENTAX K-1 + HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR


ペンタックス機を使用すると緑がいつも印象的だと感じます。『K-1』はフルサイズと高画素というものを手に入れましたが、今までのペンタックス機の魅力を引き継いでいる機種です。


PENTAX K-1 焦点距離:70mm/ 絞り:F4/ シャッタースピード:1/125秒 / ISO:800/ 使用機材:PENTAX K-1 + HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR


優雅ながら和の奥ゆかしさを感じる牡丹の花。フィールドカメラとして支持させるペンタックス機は自然物を撮った時の表現が得意ですね。
『K-1』も防塵防滴や-10℃の耐寒動作保証に加え、暗所での撮影をサポートするLEDのアシストライトを装備しています。これはレンズマウント部やカードスロット部などをライトで照らしてくれる機能で、夜間撮影や薄暗い状況下でヘッドライトなどを持ち入らなくても交換・操作ができるという事。こういうアイデアを実装してくるのはペンタックスらしいと思います。


PENTAX K-1 焦点距離:70mm/ 絞り:F2.8/ シャッタースピード:1/3200秒 / ISO:200/ 使用機材:PENTAX K-1 + HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR


花に留まるアオスジアゲハ。撮影して出てくる画の一枚一枚すべてが高解像度な事に「やはりフルサイズはすごい」と感じました。フルサイズセンサーを搭載した機種としては後発とも言える『K-1』ですが、その作画における安定感は抜群で一瞬のシャッターチャンスも逃す事なく作品にしてくれるカメラです。


PENTAX K-1
PENTAX K-1 焦点距離:58mm/ 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/640秒 / ISO:25600/ 使用機材:PENTAX K-1 + HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR


ペンタックスといえば高感度に強い。APS-C機の名機『K-5』の登場により、その圧倒的な高感度耐性がペンタックス機全体のイメージに定着しました。では今回の『K-1』はどうなのでしょう?高感度に関してはAPS-Cセンサーに比べフルサイズが強い事は通説ですが、高画素機は高感度に弱いというのも通説です。カタログ上ではISO204800という非常に高い数値なので実際はどうなのか試してみました。 撮影条件や被写体にも左右されると思いますが、今回の撮影でカラーノイズが抑えらているのがISO25600まで。51200に上げると途端に目立ってきました。しかしながら3640万画素機のISO25600でこの画質ですよ!? 拡大すればノイズは目立ちますが、被写体のディティールを潰れる事なく写し出しているので十分写真として使える感度ではないかと思います。高画素機なのに高感度に強い。さすがペンタックスのフラッグシップ機です。

PENTAX K-1 焦点距離:29mm/ 絞り:F11/ シャッタースピード:1/100秒 / ISO:100/ 使用機材:PENTAX K-1 + HD D FA 24-70mm F2.8 ED SDM WR


所変わって都庁のカットですが、『K-3II』より加わった超解像機能「リアル・レゾリューション・システム」で撮影した1枚です。これはセンサーを1画素ピッチずつ動かしながら撮影し、1画素ごとにRGBの色情報を得る事で3層センサーのような解像力と色表現を実現した機能です。もともとの画素数以上の解像感が得られるのですが、それを『K-1』はフルサイズセンサーで初めて可能にしました。
掲載した写真をクリックすると等倍で表示できるようにしましたので、ぜひ拡大してご確認ください。驚くほど解像している事に加え、輪郭がクッキリと浮かび上がり立体感のある写真に仕上がっているのが分かります。もともと3640万画素という高画質でしたが、「リアル・レゾリューション・システム」を使用することで更に上を行く超高画質を実現しています。撮影の際には三脚が必須ではありますが、ここぞ!というシーンに是非使っていただきたい機能です。


PENTAX K-1


多くの期待を背負って登場した『PENTAX K-1』はペンタックスユーザーの想いを具現化させた様な素晴らしいカメラでした。高精細で美しい色を表現してくれる画質は文句の付けようがないくらい優秀。AFや操作系などカメラとしての基本性能もフラッグシップ機の名に恥じないレベルの高いものになっています。それに加え「アシストライト」や「フレキシブルチルト式液晶モニター」など『K-1』にしかない独自装備があるところもポイント。これはフィールドカメラマンの要望に応えた機能かと思いますが、実にペンタックスらしいチャレンジングな技術をカメラに投入してきたと思いました。こういうのがペンタックスファンとして嬉しいですよね、脈々と引き継がれているペンタックス機のスピリットを感じます。
そして何よりもフルサイズセンサーになった事でフィルム時代から続くレンズ資産がそのままの画角で使用できるというのが大きなメリットではないでしょうか。神レンズとも言われる『『FA Limited』や『FA☆(スター)』レンズ群、戦後のカメラ全盛期を支えてきた『M42』レンズなど、使用できるレンズは豊富にあり、自分の写真スタイルに合わせてレンズを選べば全く違う世界を写真に表現することができるはずです。
『PENTAX K-1』はペンタックスの歴史を新たに塗り替えた1台です。ペンタックス機に思い入れのある方はぜひ一度触ってみてください。初めて一眼レフに触った時のようなワクワクする感じを呼び起こしてくれる機種です。


Photo by MAP CAMERA Staff
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