- 老眼(重度・高齢)
- ロービジョン(弱視)
- 個人家庭で使う
急激な視力低下を感じておられる方、ロービジョン=弱視(両目の眼鏡を使った矯正視力が0.04~0.3未満)の方、高齢の方、緑内障、加齢黄斑変性症などの手術後の方など「もう眼科ではどうしようもない」「眼鏡ではどうにもならない」と悩まれている方は多いかと思います。
しかし、ルーペを探そうにも、どの倍率が見やすいのかどんな機能がついていると便利なのかは、お客様の目の状態によってかなり違います。またその日の体調や目の疲労具合などの環境要素によっても見え方に違いがあるため、なかなか「これならおすすめ」と言える適切な倍率や製品を限定することが出来ません。
ただ、絶対的な提案というのは難しいですが、今まで私たちがお受けしてきたご相談を元に、ある程度の製品傾向についてはお話しできることがあります。
ここでは、当店ルーペスタジオに相談に来られたロービジョン(弱視)の方、高齢の方、緑内障、加齢黄斑変性症などの目の病気を持たれているお客様が実際にご愛用くださっている商品をご紹介いたします。
私がこれからお話する内容は、実際のお客さまと接することで感じた「感覚的な」話が多くなるかと思います。人によって見え方も病状も全く異なることが前提となりますので、参考程度にご覧下さい。
※眼の状態により必然的に見え方も変わってきますので、「拡大鏡(ルーペ)」をご使用になられる時は、まず「眼鏡(老眼鏡)」で視力矯正をして目のコンディションを整えた上でご使用下さいね。→「ルーペ」と「老眼鏡」の併用について
弱視用ルーペを選ぶポイント
出典:日本眼科医会webサイト視力が0.04以上あれば、点字を使わなくても文字を大きくしたり照明を良くするなどの工夫で、目を使った教育(弱視教育)ができますし、職業訓練も可能ですから、そう悲観することはありません。
まずは、「ライト付き」であることが「見やすさ」に直結します。白(紙)と黒(文字)の境目がはっきりすることで、視認性が高まります。
実店舗でのお客様の見え方を観察していると、(目の状態にもよりますが)ライトをつけると倍率を1つ上げたかのように文字を把握しやすくなる方が多くいらっしゃいました。
実際に倍率を上げてしまうと、焦点距離や視野などの使いやすさの点でデメリットが出てくるので、ライトだけで視認性が上がるならそれに越したことはありません。
また、倍率は最初に5倍程度を試していただくと、それ以上の倍率が必要か(福祉サービスへの相談も視野に入れる)、5倍までの倍率で大丈夫なのか(市販品でも選択肢が広い)の判断ができます。
しかし、当店のラインナップでおすすめできるのは7倍までが限度です。10倍まで行ってしまうと一文字一文字を判別していく作業になりますので「読書をしたい」というご要望とは離れた見え方になります。
感覚的な話になってしまいますが、実際にお客様と接していると、どんなに視力の悪い方でも「さすがに10倍で読書は無理」と仰る方が多くいらっしゃいました。
本当に「読むこと」を切望されている方は「文字の形がわかった!」と一生懸命10倍でも読み進めていらっしゃいましたが...。
↑これは検品用のスケールルーペ(10倍)の使用イメージなのですが、10倍の読書用ルーペでも「目とレンズの距離」はだいたい同じ位という風にイメージして下さい。(この画像で言うと、ルーペの上の方の黒い部分にレンズが入っています)
ね?なかなかに厳しい姿勢でしょう...。
このように、倍率が高いルーペを使う場合、ピントの合う距離が短いため読書する際の姿勢が辛くなります。(長時間の使用には適しません。)
無理をすると目の負担になります。高倍率のルーペは、目を休めながら少しずつ、ご自身で様子を見ながら無理のない範囲でお試し下さいね。
「7倍ライト付きルーペ」でも見えづらい方は、電子ルーペなどの特殊な高額製品(白黒反転機能付きなどのデジタル製品)で見えるかどうか...という所になってくるかと思います。
電子ルーペなどの購入も視野に入れておられる方は、市販のルーペの中でお探しにならずに(小売店ではデモ機の貸し出しなども難しいのが現状です)、行政のロービジョンの方に向けた福祉サービスなどにご相談下さい。補助金・助成金などの金銭的フォローを受けられる場合があり、より良い提案を受けることができるかと思います。
まとめ
- コントラストをはっきりさせるために「ライト付き」が望ましい
- 倍率は「4倍~7倍」までが限度
- ピントの合う距離について慣れていただく必要がある。
- 市販品では限界があるため、行政サービスにも頼って下さいね。
シーン別!おすすめの弱視の方用ルーペ
一言で「ロービジョンの方向け」と言っても、使う方の目の状態や使いたい状況によって、適しているルーペの形状も必要倍率も変わってきますよね。
ここでは「読書用」「携帯用」「筆記用」「少し遠い所を見る時用」「白黒反転させた方が見やすい時用」などのそれぞれの用途に分けて、おすすめの製品をご紹介します。
読書用(手持ちルーペ)/5倍まで
眼鏡(眼科)ではもう調整できなくて...普通の虫眼鏡では見えないから、高倍率のルーペを探しているんですが。
ライト付き高倍率(5倍)ルーペ
老眼がひどくなってきた、普通の虫めがねでは追いつかない...など、目の不具合を実感されている方には、まず「5倍」くらいの倍率で「ライト付き」のものをお試しいただきたいです。
ライトをつけるとコントラストがはっきりするので下手に倍率を上げるよりもクッキリと見え、「読める」実感を得やすくなります。
だんだん悪くなる目、見えない新聞、文字を読めないことで満たされない知的探究心...精神的に辛くなって来た時に拠りどころとなってくれるルーペです。極度の弱視の方でなければ大抵は「ああ大丈夫だ、これだったら見える」とご安心いただけるかと思います。
こちらはドイツのESCHENBACH(エッシェンバッハ)というブランドの製品です。シンプルで扱いやすい造りですが、日本製のものとどことなく趣が異なります。(日本製の「読書用」とうたっている高倍率で質の良いルーペはライトが付いていません...以下で別途ご紹介いたします。)
注意点としては、一般的な「虫めがね」よりは、身をかがめて見る=目とレンズと対象物を近づけなければキレイに拡大されないこと。コツを掴むまで扱いづらいとお感じになられる可能性はありますが、レンズの特性上仕方のない仕様としてご了承をお願いいたします。
主に卓上に置いてご使用される場合は、「専用スタンド」とのセット もおすすめです。置いて使えば焦点合わせの必要がなく、手ぶれや疲れから解放されますよ。
※ライトが明るすぎると感じる方のために「輝度調節キャップ」と呼ばれる黄色や橙色のライトキャップが標準付属しています。ライトの明度を変えたい時は付属キャップで調節して下さいね。
エッシェンバッハの「WIDEライトルーペ」シリーズは、3.5倍~12.5倍までのバリエーションがありますが、おすすめは5倍以下です。6倍以上はどうしてもレンズ径が小さく扱いづらくなってくるので、注文を迷っておられる方は、デパートなどでデモ機を直に触られてから判断された方が良いかもしれません...。(エッシェンバッハは割とデパートや家電量販店などの実店舗でも販売されています。)
この倍率で難しいとなると、別項の「coil7倍のライト付」 をお試しいただければと思います。
日本製の高倍率(5倍)ルーペ
カメラで有名な ニコン の高性能レンズを用いた、質の良い弱視の方用の高倍率ルーペです。
両等凸非球面レンズに表面硬化コーティング+多層膜反射防止コーティングと、レンズ性能的には最高品質と言えるかと思います。レンズ部分はもちろん、ボディからもそこはかとなくシックな高級感が立ち上っていますので、贈り物としても選ばれています。
商品ページ | レンズ直径 | 倍率 | 屈折力(Dptr) | 重量 | 製品サイズ |
---|---|---|---|---|---|
48mm | 3.5倍[4.5倍] | 14D | 53g | 164x64x17mm | |
48mm | 5倍 [6倍] | 20D | 56g | 164x64x17mm |
特筆すべきは、その軽さ!
手持ちルーペは片手で持ちながらピントを合わせるため、ルーペが重いと使うのが億劫になりがちですが、このシリーズのルーペの重量はなんと55g前後。卵一個よりも軽いんです。しっかりとしたハードケースも付属しており、そこまでかさばらないので、銀行などへの持ち込み用としても便利ですね。
注意点としては...そうなんです、ライトが付いてないんです。やっぱり「目に不具合を感じる」方にとって、視野を明るくしてコントラストをはっきりさせることは重要かと思いますので、ここは残念です。(電池の重さがないので軽さにとってはメリットですが)扱いやすいライトを併用するなど環境を整えられる場合であれば、問題はないんですけどね。
そして、質の高い「非球面レンズ」だからこその「扱いづらさ」があるかもしれません。どうも、他製品よりも焦点距離がシビアに感じられるんですよね...。説明書の内容を実行できる、メカニック好きの理系おじいちゃんにはピッタリなんですが。
大事なことなので2回言いますが、レンズ品質的には最高の製品なので、ニコンファンの方にもおすすめです。
読書用(手持ちルーペ)/5倍以上
ほとんど見えない状態なんですが、どうしても文字が読みたくて。何倍くらいのルーペが必要でしょうか?
ライト付高倍率ルーペ(7倍)※限界値
極度の弱視の方、黄斑変性症や緑内障などの目の病気を患われている方、高齢で視力の回復がほぼ見込めない方など、目に深刻なトラブルを抱えておられる方は「5倍」では見えない方もおられるかと思います。「5倍ライト付」で見えない方にはこちらの「7倍ライト付」をお試しいただければと思います。
このcoil社(イギリス)の製品は、7倍のルーペの割にはレンズ径が大きい(直径5.7cm)のが特徴です。7倍のルーペとなると大体3cm台のレンズ径になりすごく視野が狭くなるのですが、この製品のレンズ径の大きさ=視野の広さはなんと5.7cm!!ちょっと他にはない快適さです。
ただ、3cm台で抑えている製品よりも、中心部分から外れた部分に歪みを感じる可能性は強いかもしれません。しかし、この倍率を必要とされる方がご覧になられる場合「歪み」よりも「視野の広さ」を優先される場合が多いと個人的には感じています。「見えている」人間には分からない感覚ですが...。
実は私の祖父(黄斑変性症+緑内障+98歳の高齢でほとんど目が見えなかった)も最晩年に愛用してくれていました。10倍のライト付ルーペなども試していましたが、結局はバランス的にこの視野の広さで7倍というところが扱いやすかったようです。
ライト付高倍率ルーペ(10倍)※どうしてもと仰る方に
スラスラと読書をしたいとは言わない、読書の意欲があり、どうしても文字を確認したい。そういった方には、置き型としても使えるこちらの「10倍のライト付ルーペ」をお試しいただいています。
当店の母体となる池田レンズ工業(I.L.K)の製品なのですが、案外LEDが効いて隅々まで明るく見やすいのです。先ほどご紹介したエッシェンバッハの「ワイドライトルーペ」シリーズの「10倍」よりも、なぜか感覚的にクッキリとして周囲も歪みにくいというか...(「見えている」人間の言い分ですので、ワイドライトルーペの方が見やすい方もいらっしゃると思います。)
実際の使い方としては、見たいものの上にルーペを置いて覗き込んで使うイメージになります。置き型ルーペはレンズと対象物の間の距離が固定されるため、ピントの調節が不要でブレにくい、というのも使いやすさの秘密かもしれません。
本来は検品目的のルーペなのでスケールが付いています。簡易的なダーモスコープ用品としてもお使いいただけます。→健康管理ツールとしての本製品のご紹介はこちらでしています。
電源のパターンとして「 電池式(単2乾電池×2本使用) 」と「 ACアダプター(コンセントに繋ぐタイプ) 」がありますが、ACアダプタータイプはライトがLEDではなく電球になります(明かりが暖色です)ので、ちょっと見え味は異なります。
携帯用(ポケットルーペ)
出先でのレシートや値札のチェックに小さいルーペが欲しいのですが。持ち歩けるポケットタイプでロービジョン用はありますか?
モビレント(エッシェンバッハ)
ドイツデザイン賞を受賞した、ESCHENBACH(エッシェンバッハ)製のてんとう虫のような丸みを帯びたフォルムが印象的な携帯用の小型ルーペ「エルゴポケット」です。
ケース部分がホコリを防ぐ気密構造になっているため、移動中に汚れたり傷がついたりといった事がありません。また、ケース部分に穴をあけられる箇所が用意されているので、必要であれば紐(付属しています)を通して首にかけて持ち歩くことができます。
エッシェンバッハの小型ルーペの中でも、弱視の方に向けた高倍率(「4倍(レッド)」「7倍(ブラック)」「10倍(ホワイト)」の3種)のシリーズとなります。※倍率によってケースの色が異なりますので、ご注意下さいね。
「10倍」は流石に倍率が高すぎますのでおすすめしかねますが、「4倍」「7倍」辺りはロービジョンの方にご愛用いただいています。
エルゴポケット(シュバイツァ)
弱視の方用のルーペシリーズが充実しているドイツの「シュバイツァ」製の携帯用ルーペのシリーズ「エルゴポケット」です。携帯用ルーペでは、3倍~14倍まで網羅している唯一のシリーズかと思います。(10倍以上が実用的かどうかはさておき。)
商品ページ | 倍率 | レンズ直径 |
---|---|---|
3倍/12D | φ35mm | |
4倍/16D | φ35mm | |
7倍/28D | φ35mm | |
9.75倍/39D | φ35mm | |
12倍/48D | φ35mm | |
14倍/56D | φ35mm |
手のひらで包めるほどの大きさで携帯性は抜群。全ての倍率で直径3.5cmのレンズを採用しているため、10倍以上のルーペにしてはレンズ径が大きい、というのも嬉しいポイントです。
ただ(仕方ない部分ではあるのですが)高倍率になると中心部分以外は歪みやすく、視野も暗くなるのにライト付きではなくて...と、10倍以上を当てにするとあまりおすすめは出来ません。やっぱり7倍程度までがおすすめです。
筆記用(小型置き型ルーペ)
学校でノートをとる時にペン先を見ながら書きたいんですが、そういう時に使えるルーペはありますか?
coilスタンド式ルーペシリーズ
弱視の子供さんが学校の授業中に使う「筆記用ルーペ」を探しに来られたお客様にはじめに試していただく「coil社(イギリス)」の置き型ルーペです。レンズ越しにペン先を見ながら筆記ができますよ。
商品ページ | 倍率 | レンズ直径 | 視野 |
---|---|---|---|
3倍 | 81mm | 約90mm | |
4倍 | 80mm | 約80mm | |
6倍 | 50mm | 約40mm | |
8倍 | 44mm | 約30mm | |
10倍 | 36mm | 約25mm | |
12倍 | 34mm | 約20mm | |
15倍 | 28mm | 約15mm | |
20倍 | 26mm | 約10mm |
ペン先を入れられる隙間が非常に大きく、消しゴムも入ります。丈夫でとても軽いので、使いやすくおすすめです。
レンズ周りの「収差」を抑えるために「両面非球面レンズ」を採用、レンズ材質は「アクリル」なので通学時や教室の移動時にも楽々持ち歩けますよ。アクリルは傷に弱いイメージがありますが、キズ対策としてレンズ面にハードコートが施されています。
倍率のバリエーションは「3倍」~「20倍」までありますが、「3倍」「4倍」は持ち歩くには大き目のイメージ、「10倍」「12倍」「15倍」「20倍」は焦点距離が短いのでペン先を入れる隙間も狭くなり、使いづらくなってきます。ペン先を入れやすくて扱いやすく実用的なのは「6倍」「8倍」くらいでしょうか。
注意点としては、ライトが付いていない製品ということ。ライトがあった方が見やすい場合は、お手持ちのライトなどで光を入れていただく必要があります。
反対に、ライトなどの金属部品が全く付いていない簡単な作りのルーペなので、学校への持ち込み用として適しているかと思います。
ケンマックス・マイクロスコープ(ライト付き)
「ライト付き」で筆記に使えるルーペとなると、こちらでしょうか。先ほどご紹介したcoilのデスクルーペよりも倍率が高いシリーズです。coilデスクルーペの10倍以上を検討されている場合は、こちらの方がライト付きでクッキリと見える可能性が高いのでおすすめします。
袴部分にペン先を入れることが出来る大きな穴があいているので、筆記できなくはありません。ただ、どちらかというと簡易顕微鏡寄りの製品ですので重心が上の方にあり、先ほどのcoil社のデスクルーペよりは「気兼ねなく使える」という感じではなくなります。しかし顕微鏡の強みとして解像度が高いので、弱視用として作られたルーペよりはクッキリと鮮明な視界が得られます。
単眼鏡とアクリルの袴部分に分けてコンパクトに収納できるので、持ち運びにも適しています。
倍率のバリエーションとしては、「12倍」「16倍」「25倍」の3種類がありますが、筆記用としては「12倍」一択になります。(16倍はもしかしたら有用かもしれませんが、25倍は完全に検品用の倍率で適しません。)
上の単眼鏡の部分だけでも少し遠い所を拡大するには重宝しますので、1つ持っていて損はしない製品です。(詳しくは次項にて)
少し遠い所を見る(単眼鏡)
学校で黒板を見る時や、少し遠い掲示板を見る時に使える拡大補助器具を探しているのだけど、どんなのがありますか?
弱視の方に向けた「少し離れた場所にある対象物を見たい」時用の補助具としては、当店では片目で覗く「単眼鏡」タイプを取り扱っています。(眼鏡に装着するタイプなどは取扱っておりません。)視覚障害を持つ方は左右の視力が極端に違うことが多いので、双眼鏡よりも片目ずつ見る単眼鏡が適しています。
※「単眼鏡」は視覚障害者向けの補装具としては「焦点調節式弱視眼鏡」の扱いになります。
これからご紹介する「ケンマックス マルチ単眼鏡」はポケットサイズで軽いので、通勤や通学時の持ち歩き用としても大変便利です。
「弱視」の方が選ばれる単眼鏡の倍率で最もポピュラーなのは「6倍」「8倍」。ただ、8倍だと視界が狭く手ブレしやすいため、扱いづらいとお感じになられる可能性があります。(美術鑑賞の時にもよく使われるため「ギャラリースコープ」とも呼ばれています。)
商品ページ | 対物レンズ | 倍率 | 重量 | 製品サイズ |
---|---|---|---|---|
12mm | 無限遠:4.0倍 至近距離:5.5倍 | 55g | 31x31x58 mm | |
16mm | 無限遠:6.0倍 至近距離:7.6倍 | 65g | 31x31x72 mm | |
20mm | 無限遠:8.0倍 至近距離:11倍 | 112g | 34x34x98 mm |
この単眼鏡シリーズの「4倍」「6倍」「8倍」は、先ほどご紹介した「筆記用(ライト付き)」の「単眼鏡部分(上部)」と実は同じです。
つまり別売りの「袴(正式名称:マイクロレンズスタンド)」と接続することにより、筆記用としても使えるのです。(「フィンガーリング」が付属している低倍率シリーズには接続できません。ご注意下さい。)
視覚障害を持つ方に、屋外では単眼鏡として・机上では筆記用として、と使い分けていただくことが出来る稀なシリーズです。
また、そこまで低視力ではないという方には、軽さと扱いやすさに特化した以下の低倍率シリーズ(フィンガーリング付属)がおすすめです。
商品ページ | 対物レンズ | 倍率 | 重量 | 製品サイズ |
---|---|---|---|---|
9mm | 無限遠:2.8倍 至近距離:3.6倍 | 28.5g | 22×22×46 mm | |
10mm | 無限遠:4.2倍 至近距離:5.3倍 | 29g | 22×22×51 mm |
広い視界で、そこまで手ブレを気にせず使用できるので、高倍率のものよりもストレスがありません。更に付属のフィンガーリングを利用することで、長時間の使用でも疲れにくくなります。
単眼鏡を選ぶにあったって一番の勘所は「倍率」ですよね。人によって見え方は様々ですので、同じ視力でも同じものを選んだとして同じ見え味にはならず、難しい所です。
一例として、お客様(視力が左右それぞれ0.06)から「小学校の低学年なら板書の字も大きいし、一番前の席で4倍で大丈夫だったが、大きくなるにつれ小さい文字を読まなくてはいけないシーンが増え、今では8倍でないと不安感がある」とお話しを伺ったことがあります。小さいお子さんの場合は、低倍率のものから使い始めることも多いイメージですが...専門医に伺わなければ全く適正倍率は分かりません。
倍率に関しては必ず 眼科医とご相談下さい。
見え方をデジタル調整(電子ルーペ)
別モニターに大きく映し出したり、白黒反転させて読んだり、そういうことが出来たらもっと文字も見やすくなるんだけどなあ。
ここ10年ほどで「電子ルーペ(デジタルルーペ)」と呼ばれる弱視の方に向けたデジタル製品群が大きく発展しました。
以前はテレビに映し出して見るタイプの製品が有力で、ジャンル全体を「テレビルーペ」と呼んでいたように思いますが、最近では専用モニターに対象物を大きく映し出すタイプが主流となっています。(現在でもテレビに大きく映し出せる機能を持つ製品は存在しています。)
ここでは「クローバー4」を例に「電子ルーペ」全般についてご案内します。
デジタルの強みは(内蔵されているレンズの性能により画素数の限界はありますが)ある程度無制限に拡大できたり、色の加工ができたりと、見やすいようにいじってからモニターに映し出す「画像調整」を行えること。
例えば、白背景に黒文字だとハレーションを起こして見辛い人だと、白黒を反転させて「黒背景に白文字が浮かび上がる」ような見せ方をすることもできます。(更に「クローバー4」だとコントラスト調整が出来るので、薄く印字された文字でも色を濃くして読むことが出来ます。)
例に挙げている「クローバー4」のような小型のものは持ち運びにも便利で、ものによっては自立させて筆記に使えたり、はたまたテレビに繋いでテレビに大きく映し出したり...と幅広い用途に使えます。倍率については、光学レンズを使った実際の光学倍率(低倍率)~デジタルズーム後の高倍率(光学倍率よりも解像度は落ちます)まで気軽に変更できるものがほとんどですので、基本的に倍率でどの製品を選ぶか悩む必要はありません。
ただ、価格は今までご紹介してきたルーペと電子ルーペではランクが違います。
一番安価なミニサイズのもので3万円、モニターが大きくなるにつれ価格は上がっていき、当店取扱いでの最高額のものだと20万円相当のものが存在します。しかし、色んなシーンで助けになる機能が充実しており、価格に見合った性能になっています。
※「電子ルーペ」には「日常生活用具給付制度」などを利用できるものもありますが、自治体により運用方法が異なります。詳しくはお住まいの市区町村の障害福祉課にご相談下さい。(当店では分かりかねますので、まずは市役所にお問い合わせ下さい。)
おわりに
ここでは、弱視の方に向けたルーペの製品傾向と、人気のある実際に扱いやすい製品をご紹介しました。
「弱視用ルーペには、大体こんな感じのバリエーションが用意されているんだな」位に考えて頂ければ嬉しいです。(使用される方の目の状態によっては、先程ご紹介した製品ではうまく見えないかもしれないという点だけは、予めご了承下さい。)
弱視の方用ルーペに限りませんが、極力「倍率」は低めに抑えた方が視野が広く使いやすくはあります。ただ、倍率が足りず文字の形などがはっきりしない...となってしまっては本末転倒ですし、やっぱり実際に手に取って選んでいただくのが一番ですね。でも実店舗がない今、実際見ていただく機会もなく、デモ機貸し出し出来るほどの大企業でもなく...うーんジレンマ...と、なんか違う方向にいっちゃいましたね;
そうそう、実は最後にもう一つ、ご紹介すべき製品があります。
極度の遠視のために視力が低いお客様が「他の弱視用と謳われている製品だと歪んで見えて気持ち悪いのだが、これなら大丈夫!」と選ばれたルーペ。弊社池田レンズ工業のAS-14です。
お客様の目の中の水晶体の状態は分からないので憶測にはなりますが、恐らく、弱視用の焦点修正を行っていない(=技巧が凝らされていない)シンプルなレンズだからこそ、色んなタイプの目の状態にフラットに働きかけられるのではと思います。
ただ、ライトは付いていないし、倍率も3.5倍。視力が著しく低下している「弱視」の方の中では、遠視傾向のある方以外には用がないかもしれません。ただ「色んな弱視用ルーペを試してみたが、どうもスッキリと見えない」という方には有効である可能性があります。(おそらく遠視系の方・目の中の水晶体を取り除いた方などのニーズに偏るのではとは思うのですが)
よろしければ一度、試してみていただければと思います。