鳩居堂とお香

鳩居堂は、今から約350年以上前の1663年(江戸・寛文3年)に、京都の寺町で誕生しました。創業当初は、漢方薬や薬の原材料などを取り扱う「薬種商」を営んでいましたが、薬種の原料の中には「お香」の原材料と共通するものも多かったことから、江戸時代後期(1700年頃)になると、薫香や線香を製造・販売するようになります。

鳩居堂のお香の製造技術が飛躍的な進歩を遂げたのは、1877年(明治10年)のことです。歴代の店主らが行ってきた社会奉仕や国事事業への貢献が認められ、当時の太政大臣・三条実美公より、平安時代から900年間、宮中だけで伝えられてきた「秘伝の調香法」を、全て伝授していただきました。この時に授けられた調香法は、「一子相伝の秘方」として、今日まで大切に守り伝えられており、現在の鳩居堂のお香づくりにおいても、その技術が存分に生かされています。

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鳩居堂と書画用品

当時の日本の貿易相手国であった中国では、様々な文化や技術が生み出されていましたが、特に日本へ大きな影響を与えたものの1つに、「書道」が挙げられるでしょう。パソコンは勿論、現代のように便利な筆記具も満足になかった時代、日本においても、「筆」や「墨」は生活に欠かせない道具、「日用品」の1つでした。
1800年頃の鳩居堂の顧客にも、有名な学者や書家の方が多くいらっしゃいましたが、そういった方々の間に、自然と「鳩居堂がお香の原料を中国から仕入れている」ということが知れ渡っていきます。その結果、「本格的な書画用品(唐筆、唐墨、唐紙など)も中国から仕入れて欲しい」という声が大きくなり、次第にお香だけでなく、書画用品も取り扱うようになっていきました。

書画用品の輸入を始めた当初は、中国から仕入れた道具をそのまま販売していたようですが、暫くすると自分たちの手で、より使いやすい物を作ろうと考えるようになります。そして、中国に人を派遣して直接技術を学ばせたり、顧客であった文人墨客達の意見を聞いたりするなどして、書画用品の研究・開発を開始。次々と鳩居堂独自の商品を生み出していきました。
鳩居堂の書画用品について、特に親身に助言を与えてくださったのが、学者の頼山陽先生です。山陽先生の指導の下、何度も試行錯誤を繰り返して改良を重ねていった結果、「鳩居堂の書画用品は、本場・中国の道具よりも質が良く、使いやすくなった」と評判になります。
この評価に大層喜んだ山陽先生は、当時の店主に宛てて、「筆硯紙墨皆極精良」という言葉を自ら揮毫し、鳩居堂に授けてくださいました。これは「鳩居堂の書画用品は、皆とても良く出来ている」という称賛の言葉であり、現在も鳩居堂の書画用品の品質を表す言葉として、鳩居堂各店の店頭に掲げられています。

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鳩居堂のこだわり

私ども鳩居堂が目標にしているのは、日本の伝統文化を守り、伝え、育てていくということです。昔から伝えられてきた日本人の生活の知恵や風習、伝統行事や「しきたり」を、お香や和紙製品、書画用品などの販売を通じ、大切に伝え、お客様と共に守り続けていく。これが、私どもの使命だと考えております。
知識豊富な専門家の皆様にご満足いただけることは勿論、これから「和」の世界に触れてみたいという方や、生活の中に「和」の彩りを添えたいという方々に、楽しんでお買い物をして頂けるよう、これからも上質で実用性にも富んだ商品の開発、提供に努めて参ります。
私どもの商品をきっかけに、少しでも日本文化の良さ、奥深さを感じて頂ければ幸いです。