LLFK-vol10

Season2「自分」何でもない日、おめでとう2020年9月4日

灼熱とマスクと私。全てを夏のせいにしたい8月が終わりました。前回のエッセイからちょうど一ヶ月ですね。日課となった植物たちのケアは今でも続いております。新たに覚えた事もありまして、真夏は朝に水をやるとカップラーメンのようにボイルすることになるので、水は夕方たっぷりとあげましょう、とのこと。「カップラーメンみたいにしちゃってごめんね。」と毎日世話をしています。ふと前回の記事の写真と見比べてビックリしました。

小さな2枚だけだった葉っぱが見違えたかのように成長して立派な姿に!地面に挿した枝は根を張ることなく全滅しましたが(笑)、新緑の色を輝かせながら生命力全開、という具合でぐんぐん成長をしています。自分はこの一ヶ月何も成長していないのに・・・すごいスピードで伸びていく植物君に何とも誇らしいやら妬ましいやら、複雑な心境です。

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夏は夜

先日、四季の話を家族でしていました。僕が小中学生の頃(90年代)は今よりも春夏秋冬がはっきりしていて、夏の最高気温も30度を超えたら、めちゃくちゃ暑いね!なんて言っていたものです。あれから20年で最高気温が10度上がったということはこのペースで行くと2040年には最高気温が50度になってしまうのでしょうか。お風呂より熱いのですが・・・(笑)

夏は夜と昔から言われるように、日没頃に気温がぐんぐん下がり、暑さが抜けてくる時間帯の何とも言えない心地よさは昔から大好き。昔祖父母の家で、夕方に、お風呂に入りなさいと言われおじいちゃんと一緒に入り、風呂上がりにおじいちゃんが美味しそうにビールを飲んで刺身をつまんでいたのを思い出します。

あれから30年余りの8月、あまりの暑さにベランダにプールを張り、子供達の執拗な勧誘に負けプールで散々遊び、そのまま風呂に直行。入浴も一度に済んでしまいますので合理的。ちょうど上がると17時過ぎなので、冷えた炭酸的な飲み物を飲みたくなります。思考はやはり遺伝するものですね(笑)。

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IKEAの壊れないシャンパングラス

お酒は食事との相性を考えて選びたい。和食であればビールですし、洋食であればスパークリングワイン。食器類はなるべくあまり増やさないようにしているのですが、シャンパングラスだけは替えが利かない種類のグラスだなぁと前々から思っていました。家にあるのは、たまたま来客があった際に急いで揃えたIKEAの物。形はキレイなんですが、使ってみると一杯の容量が多すぎて、一瞬で一瓶がなくなってしまいます。頑丈で壊れにくく、見た目の格好良さとは裏腹に、使っていくと「なーーーーんか品がない」。シャンパングラス特有の華奢さ・優雅さのような物がないんです。

良さそうなスパークリングワインを買ってきても、このグラスで飲んでいると少々もったいなさを感じてしまって、この夏を気持ちよく乗り切るために新しいグラスを新調することにしました。

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フローズン

夏には炭酸が似合う。あのシュワシュワの一粒一粒が日頃のモヤモヤと疲れを包んで空気中へ放ってくれそう。そんな心地よさを妄想しながら、買ったばかりのグラスを開封。比べてみるとかなり背が低いのに気がつきます。飲み口はしっとり薄く、グラスの重心が低いので誤って倒してしまう頻度も減りそう。撮影はそっちのけでひとまず試飲してみた感想は、「あーーー、これこれ!」。シャンパン感が強い!IKEAのとは全然違います。グラスの形状もあり、鼻に抜ける香りと炭酸のシュワシュワした清涼感が嗅覚に集まってきます。例えるならば、IKEAのは強炭酸の大きなバチバチした泡。こちらは細かい繊細な泡という感じです。

これは、キンキンに冷やしたボトルとグラスで飲んだらやばいだろう、ということで冷凍庫にスペースを作り、よく洗ったグラスを入れておきました。数日後いざ飲もうと思って開けてみると、そこには悲劇が起きていました。

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購入した4本中1本が根元からポキリと折れています。
「えっ!」と他の3本を確認すると、大丈夫なようです(汗)。原因はわからなかったのですが、かなり凹んでしまい、その日は飲むのをやめました。後日KOZLIFEさんに伺ってみた所、メーカーさんにも聞いてくださり、どうやらグラス類は冷凍庫に入れるのは絶対にNGとのこと。急激な温度変化でグラスに亀裂が走り割れてしまう恐れがあるそうです。(特に夏の暑い日はより危険)

割れたグラスは戻ってきませんので泣く泣くさようなら。そして、スパークリングワインはあまりキンキンに冷たくして飲まない方が美味しいらしいのです。自分の無知さに反省しつつも、またひとつ勉強になりました。

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このグラスは一言で表現するならば、「日常に祝い感をもたらしてくれるグラス」です。特長的なデザインというよりオーセンティックなシャンパングラスの形状。このさりげなさが普段の食卓にわかりやすい華を持たせてくれるんですね。豪華な食卓でなくても、誰かの誕生日会でなくとも、ちょっとしたおつまみとこのグラスで夏の夕暮れに一杯傾けるだけで、自分にご褒美がもらえるようなそんな良い気分にさせてくれます。

自分を祝える心

このグラスを使い始めて気づいた事があります。それは、「道具は人の心境を変える」ということ。これだけ世界が慌ただしい状況になると、一番ないがしろになるのは「自分を褒めること」ではないでしょうか。今の状況じゃまずいぞ、もっと頑張れ、そう無意識の内に自分に言い聞かせ、ストレスを感じている人は多いように思います。

僕はこのグラスで夕暮れに好きなお酒を一杯だけ飲むと、今の自分を褒めているような感覚になって、ふっと楽になる。本当に何もしていない日もあるけれど、そんな日が送れることすら祝ってみようよ、そうこのグラスは語りかけてきます。何でもない日、おめでとうと。

つづく。

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和田 健司 オランダDesign Academy EindhovenにてDroog Design ハイス・バッカー氏に師事、コンセプチュアルデザインを学ぶ。 同大学院修士課程修了。大手広告代理店勤務の後、2011年 “what is design?”を理念とする(株)デザインの研究所を設立。研究に基づく新たな気付きを、個人から企業まで様々な顧客に価値として提供し続けるコンセプター。