オオカミを家畜化して生まれた犬は、人との長い歴史のなかで、さまざまな大きさや体型の品種を持つ動物へと進化しました。現在、地球上の動物で、同じ種にもかかわらず約50倍以上の体重差がある動物は犬だけです。
そして、牧羊犬、狩猟犬など犬の目的に特化した犬種へと進化しました。その進化の過程で様々な特徴が発生し、それは犬種ごとの気を付けるポイントでもあります。
例えば、胴が長く足の短いダックスやコーギーは腰(背骨)に負担がかかりやすくなります。
そういった、犬種ごとの気になるポイントを食事でもサポートする必要があります。
ダックスフンドの原産国はドイツで、中世から狩猟犬として活躍していました。
“ダックス”とは、ドイツ語でアナグマ(Dachs)のことであり、穴に潜むアナグマを威嚇して外に追い出すのがダックスフンドのおもな役割でした。細長い体と短くてがっしりした前脚で穴を掘り獲物を追い出します。
そのほか、ダックスフンドはイノシシ狩りでも活躍しました。なお、カニーンヘンはウサギの狩猟用としてつくり出されたことから、「ラビット・ダックスフンド」とも呼ばれています。

とても活発な犬種です。勇敢で根気強く、何に対しても恐れませんが、友好的で落ち着いた一面も持っています。
ダックスフンドは、サイズによって3種類に分けられます。
アナグマなどの動物を穴から追い出すのに適した体型をしています。すなわち、四肢が短く体長が体高の約2倍もあります。その独特の体型からもたらされる可愛らしさが多くの人に愛されています。
また、本来狩猟犬であるため、運動量が多く筋肉質で、活発な犬種です。そのため食欲が旺盛です。
ダックスフンドは成長の過程で橈骨(前腕部の親指側の骨)が尺骨(前腕部の小指側の骨)よりも早く石灰化するため、尺骨にくらべて橈骨が短くなっています。そのため肘関節の湾曲が他の犬種にくらべて大きくなっており、肘の関節に負担がかかりやすい構造になっています。
また、ダックスフンドは「軟骨異栄養性犬種」と呼ばれる犬種のひとつで、若齢のうちから椎間板の軟骨に変性が起こりやすく、椎間板ヘルニアの発生率が高いことが知られています。
さらに、四肢が短く跳躍したり高いところから飛び降りたりしたときの着地の際の衝撃が脊柱に伝わりやすいため、注意が必要です。
ダックスフンドは、ACVIM(American College of Veterinary Internal Medicine:アメリカ獣医内科学会)が作成した犬の僧房弁閉鎖不全症のステージ分類によると、心臓病を起こすリスクが高い犬種のひとつとして分類されており、定期的な健康診断が推奨されています。




チワワはメキシコ原産の犬種で、メキシコ北部にある「チワワ州」が名前の由来です。
14世紀ごろ、アステカ族に神聖な動物として崇拝され、飼育されていた「テチチ」という犬が、チワワの先祖といわれています。家に幸運をもたらすとされ、しばしば主人のそばに埋葬されていました。
陽気な性格で、とても活発な犬種です。勇敢で飼い主に対する忠誠心が強く、小さいながらも身を挺して飼い主を守ろうとする気概をもっています。その分、飼い主を独占したがる傾向があります。
チワワの最大の特徴はその小さな体です。
頭部は球に近い独特の形状で、「アップル・ヘッド」と呼ばれています。マズル(鼻口部)は短く、顎の力も強くないため、極端に大きい粒や固い粒のドッグフードを嫌がる傾向があります。
マズルが小さくて短いため、においを感じる細胞の数が少なく、他の犬種に比べると嗅覚がするどくない傾向にあります。
それに加えて、ほとんどの場合チワワは家の中で飼われています。そのためオーナーとの距離が近くオーナーの食事に興味を示し、自分のフードに関心を持たなくなることがあり、食欲にムラがでることもあります。
また、家の中で暮らしているチワワは、運動不足によって腸の運動があまり活発でなくなることがあります。その結果、腸内環境が悪化し便の状態が不安定になりがちです。




プードルの原産国についてはかつてさまざまな説がありましたが、現在ではフランスが原産地とされています。プードルの先祖は、ドイツから移入された水辺で働く猟犬といわれており、ドイツ語の“Pudel=水がはねる音”がプードルという名前の語源になっています。プードルは泳いで獲物を運ぶ能力に優れた犬でした。

活発で好奇心が強く、頭が良くて友好的です。優れた知能と認識力を持っています。
プードルは、体高によって4サイズに分けられます(国によってはミディアムを除く3サイズに分類されます)。
プードルの巻き毛のほとんどは下毛(アンダーコート)です。
成犬になっても、子犬のような細く柔らかい綿毛を保ち、被毛の太さは変わらずに密集度が増します。換毛せず、季節に関係なく伸び続けるので、定期的なグルーミングが必要です。(毎月10~14mmずつ成長する)
また皮脂の分泌がラブラドールやハスキーなどと比べて5分の1程度と少なく、(同じ水鳥猟につかわれる犬でも、皮膚1cm² あたり、ラブは14μg、プードルは3μg)被毛があまり水をはじきません。
そのため水辺で働く際に水に濡れて重くならないように、胴や関節以外の肢の被毛を短く刈り込んだ、伝統的な「コンチネンタルクリップ」とよばれるカットスタイルが生まれました。
本来は狩猟犬であるため、活発で運動量が多く、豊かな被毛の下にはひきしまった筋肉質な体が隠されています。
また、プードル(特にトイ)は最も寿命の長い犬種の一つに数えられています。
ACVIM(American College of Veterinary Internal Medicine:アメリカ獣医内科学会)が作成した犬の僧房弁閉鎖不全症のステージ分類によると、ミニチュア・プードル、トイ・プードルは、心臓病を起こすリスクが高い犬種のひとつとして分類されており、定期的な健康診断が推奨されています。




シュナウザーはドイツ原産の犬種で、ミニチュアシュナウザーは、1880年ごろ、フランクフルト地方での選択交配による小型のシュナウザーの繁殖によって生まれました。ドイツ語の“Schnauze=口髭”が名前の由来で、マズル(鼻口部)に生えている口髭が特徴です。

エネルギッシュな半面、利口で忍耐強く、子どもと遊ぶのも大好きです。
社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)が定める犬種標準では、キ甲※部での体高は30~35cm、体重は約約4~8kgとされています。
※キ甲:首と背中の間。肩甲骨の上部
前述の口髭と眉毛がミニチュアシュナウザーの代表的な特徴です。被毛はワイヤー ヘアーで粗く、密に生えています。下毛(アンダーコート)は密生しているので、定期的なグルーミングが必要です。被毛はストリッピング(毛を抜く作業)を行うことで、より太く、硬くなります。毛色は大別すると「ソルト&ペッパー」「ブラック&シルバー」「ブラック」「ホワイト」の4タイプです。
ミニチュアシュナウザーの歯は、典型的なシザーズバイト(歯と歯がピッタリ合わさる状態)です。また、同じサイズのほかの犬種と比べると、大きめの歯を持ちます。
ミニチュアシュナウザーは、統計上ほかの犬種に比べて約7.7倍も尿路結石が発生しやすいという報告がありますが、具体的な理由についてははっきりとはわかっていません。もしも尿路結石ができてしまった場合は動物病院に連れていき、獣医師の指導のもと治療を行います。普段の生活では、尿が濃くなりすぎないよう飲水量を増やすために新鮮な水を与えるといった工夫を行い、さらに消化の良い食事を与えて、尿量の低下や結石の原因となるミネラルのとりすぎを避けるようにしましょう。
ミニチュアシュナウザーの身体を横から見ると、長方形に見えます。そのような体型を「スクエア・ボディ」と言いますが、スクエア・ボディの犬種は肥満になりやすいという特徴があります。さらにミニチュアシュナウザーは、血液中のコレステロール値や中性脂肪の上昇による高脂血症の発生率が高いという報告があります。ミニチュアシュナウザーの食事は、脂肪の含有率をおさえ、理想体型の維持や高脂血症に配慮しましょう。
ミニチュアシュナウザーの美しい毛色を保つために、色素のもとになるアミノ酸(チロシン)と色素を作るために働くミネラルを十分に摂取させることが大切です。




シーズーは中国原産の愛玩犬です。1643年、ダライ・ラマが中国皇帝に3頭のラサ・アプソを献上し、その後、中国の王宮でペキニーズとの交雑を行ったのがシーズーのはじまりと言われています。実際シーズーが独立した犬種としてケネルクラブに登録されたのは1934年で、それまではラサ・アプソの一種とされてきました。中国語の“獅子狗(シーズー・コゥ)=獅子のような顔を持つ犬“が名前の由来です。

穏やかでやさしく、陽気な性格です。
社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準では、体高は26.7cm以下、体重は4.5~8.1kg、理想体重は4.5~7.3kgとされています。
豊かな毛並みを持つ犬種です。マズル(鼻口部)の毛は鼻を中心に広がり、「菊の花のような顔」と表現されます。上毛(オーバーコート)は絹のように柔らかくて長く、密生した厚い下毛(アンダーコート)を伴っているのが特徴です。被毛の美しさを保つためには毎日のブラッシングが欠かせません。毛色はさまざまなバリエーションがあります。
シーズーは頭が大きく、幅も広くて丸い典型的な短頭種です。
シーズーは、皮膚のトラブルが比較的多い犬種と言われています。皮膚を健康な状態に維持するには、皮膚に必要な栄養素を食事によって与えることが重要です。皮膚の構成成分となるタンパク質や脂肪、皮膚の代謝に欠かせないビタミンやミネラルなどを最適に含んだ食事を与えるようにしましょう。
また、皮膚炎を起こす犬の皮膚は、十分な細胞間脂質(セラミド)を含んでいないことがわかっています。セラミドの不足は皮膚のバリアを低下させ、結果としてアレルゲンが侵入しやすくなります。ビタミンB群とアミノ酸による相互作用が皮膚のバリア機能の維持に効果的です。
シーズーの豊かな毛並を保つために被毛の材料になるタンパク質を十分に摂取させてあげることが大切です。また健康的な皮脂の分泌を保つための脂肪やビタミンも欠かせません。
シーズーはマズル(鼻口部)が短いため、食事を口で捉えるのが苦手です。そのためほかの犬種に比べて、食事に時間がかかってしまいます。シーズーのマズル(鼻口部)の形を考え、食事の食べ方をよく観察したうえで、シーズーがもっとも食べやすいように工夫をすることが必要です。




ポメラニアンは、ドイツ原産の犬種です。
国際畜犬連盟ではジャーマン・スピッツとしてグループ5(原始的な犬・スピッツ)に分類されており、さらにこの中の小型のジャーマン・トイスピッツがポメラニアンと呼ばれている。
先祖はアイスランドの北極圏に生息していた大型のジャーマンスピッツで、18世紀にヨーロッパへ伝えられた後、ヴィクトリア女王によって小型化が進められ、今のポメラニアンとなった。

学習能力が高くしつけやすい。警戒心が強いところもあります。
飼い主への愛着が強く、飼い主と離れていることを嫌がります。
ポメラニアン(ジャーマン・トイスピッツ)は、体高が21cm前後、体重が2~3kgと超小型犬~小型犬です。
短くて柔らかい厚手のアンダーコートと、長くて硬めで艶のあるオーバーコートからなるダブルコートです。 また、首回りのたてがみのようなカラーと巻き尾が特徴です。
骨と関節が弱い特徴があり、特に膝関節の脱臼(膝蓋骨脱臼)を起こしやすい犬種です。
関節の健康維持のために、オメガ3脂肪酸やコンドロイチン・グルコサミン等の摂取が薦められます。
大腸が短く、腸内での発酵が少ないため、便秘を起こしやすい傾向があります。
消化率の良いタンパク質や、善玉菌により発酵を受けやすい食物繊維の摂取が薦められます。
超小型犬なため、歯が小さく歯垢や歯石が蓄積しやすく、また、顎が小さく骨が薄く歯周病によるトラブルを起こしやすいです。
歯垢や歯石を蓄積させないためのケアが重要です。
豊富で美しく、艶のあるダブルコートを維持するための、また、乾燥しやすい特徴を持つ皮膚のためのケアが重要です。




ヨークシャーテリアはイギリス原産の犬種です。19世紀のはじめ、人間と共に、スコットランドのグラスゴーからイギリスのヨークシャー郡へ移住した犬が祖先と言われています。当時はもっと大きく、ネズミの駆除に利用されていました。その後改良され、フェレットやウサギの猟に使用されるようになりました。

勇敢な性格です。気質は安定しており、用心深く利口です。
社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準では、体重が3.1kg以下とされています。
被毛はヨークシャーテリアの最大の特徴です。直毛で光沢があり、“シルキーヘア”と表現されることもあります。被毛のほとんどが上毛(オーバーコート)で、換毛はありません。生まれてからしばらくの間、被毛は黒色で、3ヵ月を過ぎたころから褐色になりはじめ、1年くらいかけて美しいスチールブルーとブロンズが現れます。
小型犬は大型犬と比べ、歯が大きく顎骨が薄いため歯周病などのトラブルが多く見られます。特にヨークシャーテリアは他の犬種に比べ顎骨が薄く、歯周病のトラブルが多いので注意が必要。歯垢や歯石の蓄積は歯肉炎の原因となるので、こまめなケアが重要です。
ヨークシャーテリアはほかの犬種と比べて嗅覚がするどい犬種ではありません。そのため食事にあまり興味を示さず、食欲が低下することがあります。ヨークシャーテリアに必要な栄養バランスを満たすだけではなく、匂いを強めるなど食欲を促すための配慮が重要です。
ヨークシャーテリアの被毛の光沢は、皮膚から分泌される皮脂によって作られます。皮脂の分泌が多いのはヨークシャーテリアの特徴のひとつであり、適切な皮脂の分泌には関連する脂肪酸の供給が必要です。また、皮膚の育成や皮膚が持つバリア機能に必要なタンパク質、脂肪酸、ビタミン、ミネラルの供給も必要です。




イギリス原産のキャバリア キング チャールズ スパニエルは、英国王チャールズ2世の宮廷で飼われていました。“Cavalier=中世の騎士”が名前に使われたことからも、この犬種がいかに貴族に愛されていたかがうかがえます。1640年代の絵画にキャバリア キング チャールズ スパニエルが描かれており、その愛らしさに、レンブラントやヴァン・ダイク、ティツィアーノなど、歴史上の偉大な画家たちも魅了されたようです。

活動的で明るく、友好的で攻撃性はあまりありません。穏やかで頭が良く、神経質な傾向は見られません。
社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準では、体重が5.4~8kgの範囲内で、小型でバランスのとれたものが好ましいとされています。
キャバリア キング チャールズ スパニエルの被毛の色には、「ブラック&タン」「ルビー」「ブレンハイム」「トライカラー」の4色があります。なかでも白地に茶の模様の入った「ブレンハイム」は、この犬種独自の毛色で特徴的です。
決してつぶれた状態ではありませんが、マズル(鼻口部)は短めでフードをとらえるのに苦労することがあります。
キャバリア キング チャールズ スパニエルは、基本的には丈夫な犬種であると言われていますが、各国のケネルクラブなどの調査によって、心臓病の発生率が高いことが報告されています。また、ACVIM(American College of Veterinary Internal Medicine:アメリカ獣医内科学会)が作成した犬の僧房弁閉鎖不全症のステージ分類によると、心臓病を起こすリスクが高い犬種のひとつとして分類されており、定期的な健康診断が推奨されています。そのため、この犬種は心臓病に対する配慮が必要で、定期的な健康診断が欠かせません。また食事については、心臓の働きに必要なアミノ酸などの栄養素を摂ることが大切です。
キャバリア キング チャールズ スパニエルは太りやすい犬種です。太らせないためには食事に含まれる代謝エネルギーをおさえて、タンパク質の含有量を調整するなど、理想体型の維持を考えた内容に調整された食事を与えると良いでしょう。
キャバリア キング チャールズ スパニエルの美しい被毛は特徴のひとつです。本来の美しい色を維持するため、色素の生成に必要なアミノ酸など、被毛に必要な栄養を食事から十分に与えるようにしましょう。




パグは中国原産の犬種で、2000年以上も前から犬種として存在していたと考えられています。パグという名前は、中国語でいびきをかいて寝る王様のような犬を意味する“覇向(パークゥ)”に由来します。1600年の末ごろに宣教師によってオランダに運ばれ、マリーアントワネット、ポンパドール婦人、ナポレオン1世の妻ジョセフィーヌ・ド・ボアルネなど、ヨーロッパの貴族たちに愛されたと言われています。

非常に愛嬌のある犬種です。賢く穏やかですが、活発な一面もあります。
社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準では、理想体重は6.3~8.1kgとされています。
パグの被毛は細くなめらかです。毛色は、「シルバー」「アプリコット」「フォーン」「ブラック」の4色です。
パグの祖先はマスチフ系の犬と言われており、その下顎の突き出た特徴的な顔立ちは、系統の影響によると考えられています。パグの耳の形状は、後ろに折れ曲がって外耳が見える「ローズ耳」と、前に折れ曲がっている「ボタン耳」の2種類があります。
パグの体型はスクエアボディで、短めの胴に筋肉の詰まった「コビー」と言われる独特のスタイルです。 一見太っているようにも見えますが、この筋肉質な身体つきがパグの理想的な体型です。
顔や体の皺パグは毛包虫(ニキビダニ)症という、外部寄生虫が原因でおこる皮膚疾病の発生率が高い犬種の1つです。パグの顔や身体にある皺はチャームポイントとのひとつですが、その反面汚れが溜まりやすくムレやすいので注意が必要です。
パグは頭部の皺が多い犬種です。皺の部分はムレやすいので、皮膚のトラブルには注意が必要です。皮膚のバリア機能を維持するビタミンやアミノ酸、皮膚の代謝に必要なアミノ酸など、皮膚に必要な栄養素を食事によって供給し、皮膚を常に健康な状態に維持するように配慮しましょう。
短頭種のパグは気道がやや狭くなっています。そのうえ食べ物を勢いよく短時間で食べる傾向があり、食事をのどに詰まらせることがあります。そのためパグの食事はパグ独特のマズル(鼻口部)の形や食べ方に配慮し、のどに詰まらせないように噛むことを促すための工夫が大切です。
パグ独特のコビー体型を維持するには、筋肉質な身体を維持するための十分なタンパク質と、太らせないための適切な代謝エネルギーの摂取が必要です。




フレンチブルドッグの原産国はフランスです。19世紀の中ごろに、イギリス人労働者がフランスに持ち込んだ小型のイングリッシュ・ブルドッグが源流と言われています。その後、ネズミの駆除を目的に小型のテリア種やパグとの選択交配が進み、現在のフレンチブルドッグが生まれました。その愛らしい姿が上流階級の女性たちを魅了し、フレンチブルドッグはヨーロッパで大流行しました。その後アメリカにも伝わり、1913年にはアメリカのドッグショーでナンバーワンに輝きました。

遊んだり、家族を喜ばせたりするのが大好きで、飼い主に抱かれたり、寄り添ってうたた寝したりすることに幸せを感じます。愛想がよく、誰とでも仲良くなれる、中型犬の中でもとりわけ愛らしい犬種です。
社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準では、良いコンディションの場合は体重が8kgを下回らず、14kgを超えてはならないとされています。
被毛はボディに密着してなめらかです。毛色は「フォーン」「ブリンドル※1」「パイド※2」などがあります。
※1ブリンドル:褐色や黒などの混色
※2パイド:地色に1~2色の明確な斑を持つ
フレンチブルドッグの前肢は、やや外向きになっています。そのため、関節に負荷がかかることがあるので注意が必要です。
フレンチブルドッグは短頭種で、下顎が前方に出ています(アンダーバイト)。そのため、フードを上手に食べられないことがあります。
フレンチブルドッグは腸の内容物が発酵しやすく、腸内環境が悪くなることがあります。その結果、腸内ガスが作られるので、おならの回数が多い犬種と言われています。腸内ガスの発生をおさえるには、発酵される腸の内容物を減らす必要があります。そのため消化性の高い食事を与え、腸内に残る未消化物の量をおさえることが重要です。
フレンチブルドッグの特徴的な前肢は関節に負担がかかりやすいため、関節の健康を保つために、グルコサミンやコンドロイチン硫酸を十分に摂取させることが大切です。
フレンチブルドッグは、外耳炎や皮膚のトラブルが発生しやすい犬種と言われています。皮膚の状態を健康に保つためには、皮膚の代謝を促すビタミンやアミノ酸、皮膚が持つバリア機能の維持に必要なビタミンやアミノ酸など、皮膚の育成に必要な栄養を食事で与えることが大切です。
アンダーバイトであるフレンチブルドッグは、フードをとらえるのが上手ではありません。そのため、フレンチブルドッグが食べやすいようにするための工夫が必要です。




ラブラドールレトリバーは、カナダのニューファンドランド、ラブラドール地方の猟師に飼われ、漁網から逃げた魚を上手に泳いで回収(Retrieve=レトリーブ)していたことから、「ラブラドールレトリバー」と呼ばれるようになりました。

利口で従順な性格です。熱心で忍耐強く、複雑な業務もこなせるため、盲導犬などの補助犬や麻薬探知犬として活躍しています。生まれつきやさしく、攻撃的ではありません。
社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準では、理想体高がオスで56~57cm、メスで54~56cmとされています。
ラブラドールレトリバーの被毛は、ほかの犬種に比べて皮脂のコーティングが強く、水を弾く性質があります。毛色は「ブラック」「イエロー」「チョコレート」の3色です。
ラブラドールレトリバーの尾は付け根がとても太く、先端に行くに従って徐々に細くなる特殊な形状で、「オッター・テイル(カワウソの尾)」と呼ばれます。
ラブラドールレトリバーは太りやすい犬種です。いくつかの犬種の体脂肪率について調査した結果、ラブラドールレトリバーの体脂肪率はほかの犬種に比べて高いことがわかっています。そのため、ラブラドールレトリバーの健康管理には、理想体型を維持して太らせないことが重要です。単純に食事の脂肪含有量をおさえるだけではなく、ラブラドールレトリバーが食事を食べすぎないようにするための工夫が必要です。ひとつには、ゆっくり噛むことで食べる速度を遅くするようなキブル(粒)であることが重要です。
また、食事の満足感を維持させるために、消化にかかる時間の異なる数種類の穀物を組み合わせて使用するなど、さまざまな角度からラブラドールレトリバーにとって最適な体重管理を行う必要があります。
ラブラドールレトリバーは体が大きく、そのぶん関節には負担がかかりがちです。関節の健康を維持するために、関節の軟骨を保つグルコサミンやコンドロイチン硫酸を十分に摂取することが大切です。
ラブラドールレトリバーの被毛は丈夫で短く密集して生えていて、冷たい水の中でも体温が逃げるのを防ぎ、体を守る役目を果たします。皮膚と被毛の健康維持に必要なEPA・DHAを摂取させるようにしましょう。




ゴールデンレトリバーの原産国はイギリスで、19世紀後半にスコットランドで生まれた鳥猟犬とされていますが、詳細については不明な点が多い犬種です。スコットランドの領主であるツィードマウスが1865年に購入したウェービーコーテッド・レトリバーから生まれた黄色の子犬が祖先であると言われています。

忠誠心が強く記憶力にも優れ、飼い主に与えられた複雑な仕事も従順にこなします。活発で子どもと遊ぶのが大好きで、人なつこく、やさしく穏やかでもあります。
社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準では、体高がオスで56~61cm、メスで51~56cmとされています。
豊かな長い被毛は、ゴールデンレトリバーの大きな魅力です。厳しい環境での作業にも耐えられるよう、密で長く、熱や温度を逃さない構造になっていて、下毛(アンダーコート)も密で耐水性があります。毛色は「ゴールド」または「クリーム」です。
ゴールデンレトリバーは、被毛が密で皮膚がムレやすい犬種であり、ホットスポット(化膿性創傷性皮膚炎)をはじめとした、皮膚のトラブルが多い犬種のひとつだと言われています。ゴールデンレトリバーの健康管理を考えると、皮膚の代謝やバリア機能に必要なビタミンやアミノ酸など、皮膚に必要な栄養を食事によって十分に与えることが必要です。
大型犬では拡張型心筋症という心臓の病気がみられることがあります。心臓の健康維持のために、タウリンやL-カルニチン、EPA・DHAなどの栄養素が欠かせません。
ゴールデンレトリバーは太りやすい犬種です。肥満は身体にさまざまな悪影響を与え、心臓にも負担をかけてしまいます。ゴールデンレトリバーが健康で過ごすために、代謝エネルギーやタンパク質などが最適なバランスで摂取できる食事を与えるようにしましょう。




ジャーマンシェパードは、19世紀末に生まれたドイツ原産の犬種です。ドイツ各地では、外観の異なるさまざまな牧羊犬が活躍していましたが、さらに優秀な牧羊犬を作るために各地の牧羊犬の選択交配を重ねた結果、力強く活発で、高い知能を持つジャーマンシェパードが作り出されました。高い身体能力を持つため、現在では牧羊犬だけでなく警察犬や警護犬など、さまざまな用途で人間の生活に貢献しています。

飼い主に従順で忠誠心も強く、訓練に向いています。活発でエネルギッシュ、勇敢で堂々としていて警戒心が強い半面、とても人なつこい面もあります。
社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準では、体高がオスで60~65cm、メスで55~60cm、体重はオスで30~40kg、メスで22~32kgとされています。
人が嗅ぎ分けられる匂いは約4000種類なのに対し、ジャーマンシェパードは約50万種類もの匂いを判別することができます。ジャーマンシェパードの鼻粘膜の面積は約200cm²で嗅覚細胞数は約2億個あり、ほかの犬種と比べても非常に多い数です。
糞便中の水分含有率を比較した結果、ジャーマンシェパードの糞便はほかの犬種の糞便よりも水分の多い、軟らかい便であることがわかりました。また、ジャーマンシェパードの専門家からは、ほかの犬種と比べて消化器のトラブルが多い犬種であるという報告があります。そのため、ジャーマンシェパードには高消化性の、消化器に負担をかけない食事を与えることが重要です。
ジャーマンシェパードの皮膚はpHが高くアルカリ性で、他の犬種と比較して細菌が繁殖しやすいという報告があります。アレルゲンや細菌の侵入を防ぐため皮膚のバリア機能を最適に維持する必要があります。皮膚のバリアに欠かせないセラミドの合成を促すビタミンやアミノ酸、健康的な皮膚のpHを保つEPA・DHAなどの栄養素を十分に摂取させましょう。
ジャーマンシェパードはほかの犬種と比較して、免疫グロブリン(以下Ig)のうち、IgAの分泌量が少ないという報告があります。IgAは消化管の中で活躍する免疫グロブリンです。そのため、腸内悪玉菌の増殖をおさえる機能を持つオリゴ糖を与えるなどの配慮が必要です。
現在、多くのジャーマンシェパードが使役犬として活躍しています。そうした犬たちは毎日活発に動き回り、愛玩目的で飼育されている犬と比べて関節に負荷がかかりやすくなります。ジャーマンシェパード本来のエネルギッシュな動きをサポートするには、関節の健康維持に役立つ栄養素を与えることが大切です。




地中海沿岸地域が原産地の犬種であり、地中海に浮かぶマルタ島が名前の由来になっています。もっとも古い犬種のひとつで、係留中の船などに繁殖するネズミを捕らえていました。紀元前1世紀には、現在と同じく愛玩犬として扱われるようになり、外交などにおける贈り物としてヨーロッパに広まりました。さまざまな芸術作品にも登場し、王室や貴族に愛されるようになりました。

陽気でよく遊び、愛情豊かで非常に落ち着きがありますが、活発な一面もあります。
社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準では、オス、メスともに3.2kg以下で、理想体重は2.5kgとされています。
また、国際畜犬連盟(FCI)の分類では、マルチーズは「ビション、またはそれに類する犬種」のグループに入ります。同じグループにはビション・フリーゼやボロニーズ、ハバニーズなどがおり、似た容姿をしていますが、それぞれ理想とされる体高や体重は異なります。
白く美しい被毛はマルチーズの最大の特徴です。下毛(アンダーコート)はなく、絹糸状のまっすぐでなめらかな被毛が全身を覆っています。
マルチーズの白く美しい被毛は、食事でとり込むアミノ酸のバランスによっては黄色くなったり、白色がくすんだりすることがあります。白い被毛はマルチーズのスタンダードであり、美しい状態の維持には、適切な量のタンパク質を含み、マルチーズが必要とするアミノ酸バランスを満たした食事が必要です。
平均寿命は、他の小型犬種と同様に長く、一般的に16~17年位といわれています。その、加齢に対するケアとして、老化の兆候を遅らせるためのバランスのよい十分な栄養を摂らせるとともに、歯周病のリスクにも配慮し、こまめなケアをしてあげることが必要です。また、とても匂いに敏感な犬種なので、常に新鮮な食事を与えましょう。
マルチーズには消化器関連のトラブルが多く見られるという報告があります。そのため、マルチーズには消化器への負担について配慮した、消化の良いフードを与えましょう。




柴犬は日本原産の日本犬で、その起源は縄文時代にまでさかのぼることができると言われています。もともとは、鳥やウサギなどの小動物を捕えるための猟犬でした。
「柴」とは秋になると枯れて赤くなる小ぶりな雑木の総称であり、「柴犬」という名前の由来には諸説あります。
代表的な説は以下の3つです。
①柴犬が多く飼われていた地域に「柴」が多く生えていたから
②柴犬の毛色が「柴」に似ているから
③小さなものを指す古語の「しば」からとられた
柴犬は、1934年に制定された「日本犬標準」で日本犬として定められ、1936年には国の天然記念物に指定されました。

柴犬をはじめとした日本犬の性格は、「悍威に富み良性にして素朴の感あり」と表現されます。「悍威」とは気迫と威厳、「良性」とは忠実で従順、「素朴」とは飾り気のない地味な気品と風格を意味しています。つまり日本犬は、勇猛でありながら飼い主には忠実で、凛とした気品を兼ね備えているのです。
柴犬は日本犬のなかでもっとも小さく、小型犬に分類される唯一の犬種です。日本犬保存会が定めている標準では、オスは体高38~41cm、体重9~11kg、メスは体高35~38cm、体重7~9kgとされています。
もともと猟犬である柴犬は食欲が旺盛です。また運動量が多く、筋肉質でがっしりとした体型をしています。
被毛の色は「赤毛」と呼ばれる茶色が多く、それ以外にも「黒毛」、赤・黒・白が混じった「胡麻毛」に加えて、少数ですが白毛もあります。そしてどの毛色の柴犬も、顎、胸、四肢の内側など、身体の裏側が白くなっている「裏白(うらじろ)」があることが標準とされています。
また、硬い上毛(オーバーコート)は直毛で撥水性が高く、柔らかい下毛(アンダーコート)は厚く密集して生えています。下毛は初夏の換毛期にごっそりと抜け落ちます。このようにして、日本の冬の寒冷で乾燥した気候と、夏の高温多湿の気候の両方に適応しているのです。被毛のハリやコシ、ツヤなどの状態や密度を総称して「毛吹き」といいます。柴犬は美しい毛吹きが特徴的な犬種です。
その一方で、柴犬は犬アトピー性皮膚炎が起こりやすい犬種として知られています。犬アトピー性皮膚炎の原因のひとつと考えられているのが、皮膚のバリア機能の低下です。



