伝統工芸ってなんだろう?

テーブル周りの
景色を変える
伝統工芸品

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フードスタイリスト

西﨑 弥沙

──フードスタイリストをされている西﨑さんは、お仕事でたくさんの器やカトラリーに触れていらっしゃると思います。そんな西﨑さんが、小粋屋東京で扱っている伝統工芸品を、どんなふうに使うのか見てみたくて、今日は西﨑さんのご自宅にお邪魔させていただきました。まずお伺いしたいのですが、西﨑さんはお仕事や家で伝統工芸品を使う機会はありますか?

西﨑仕事でも家でも、もちろん使っていますよ。

──お部屋に置いてあるものを見ても、手仕事を感じるアイテムが多いですよね。

西﨑ガラス工芸や金工品は好きですね。ただ、仕事で使うものについては、自分の好きなものを選ぶわけじゃないんです。私の仕事では、主役は料理でありそれを作る料理人。器やカトラリーは、その引き立て役になります。だから、器選びの基準も料理が美味しそうに見えるものであり、料理人の個性に合わせたものになるんです。

──伝統工芸品は、どんな料理の時に使うことが多いんですか?

西﨑やっぱり日本の家庭料理ですね。私は、とある料理研究家の方とずっとお仕事をさせていただいているのですが、その方の作る家庭料理には、和の工芸品を使うことが多いんです。その先生が言うには、家で使う器は、薄いものはありえない。どんなに美しくても、壊れやすかったり使いづらかったりしたら、家では使えないって。

──伝統工芸品というと、特別なものと思っている方もいると思いますが、もともとは日常的な暮らしの道具であったりもしますよね。だから当然、使いやすい。壊れても直しながら長く使うこともできます。だから自ずと、その先生の料理に合わせるものも工芸品が多くなっていったのかもしれませんね。

西﨑そうですね。私も、その先生の言葉を聞いてから、器を選ぶ基準が変わりました。持ちやすさや、使いやすさといったことはとても大事だなと。“使う”ということを前提に器を選ぶようになりました。

刷毛

──そういった視点から見ると、小粋屋東京のアイテムはどうでしょう?

西﨑使いやすさでいったら、まずはこの刷毛ですね。毛がとても柔らかくてびっくりしました。今回、焼きおにぎりに醤油を塗るのに使いましたが、毛足が短くて使いやすかったです。

──この刷毛は、馬毛で作られているので、柔らかいのに適度なコシがあってタレをしっかりと塗りやすいです。

西﨑毛が抜けづらいのもいいなと思いました。お菓子作りにも良さそうですよね。

──毛が白い山羊毛の刷毛は、卵黄やバターを塗るために作られたもので、お菓子作りにもぴったりだと思います。この刷毛は、もともと職人のために刷毛を作っている工房が作っています。つまりこの刷毛も、プロのための道具なんです。使いやすいし、ムラ塗りがでないように、素材も作りも工夫されています。海外でも人気があるんですよ。

西﨑この刷毛は、プレゼントにもいいなと思いました。刷毛のようなお料理のちょっとした道具って、あると便利だけど持ってない人も多いじゃないですか。使う頻度も低いとなかなかお金もかけづらい。だから、プレゼントでいい道具をもらえると嬉しいだろうなって。このシルバーのスプーンもまさに、そういったアイテムですよね。

日伸貴金属 東京銀器 宗照の純銀手打ちアイススプーン 桐箱付き

──この銀のスプーンは、アイス用のスプーンです。銀は熱伝導率が高いので、手の熱がスプーンに伝わり、アイスをすくいやすいという特徴があります。けれど西﨑さんは、栗のパンにマスカルポーネを塗る道具として使ってくださいました。

西﨑小さなスプーンって、ディップを塗ったり、海苔の佃煮をご飯にのせたり、いろいろな場面で使えますよね。ただ、せっかくかわいい瓶詰めのジャムがあるのに、傍らにあるスプーンが微妙だったりすると……

──ちょっと残念ですよね(笑)。

西﨑だから、こういった素敵なカトラリーと一緒に出せるとすごくいいなと。小さなスプーンひとつで、テーブル周りがとても絵になるというか、華やいで景色が変わるんですよね。決して安い値段ではありませんが、小さな素敵なスプーンは持っておいて損はないはずです。

──確かに、全然違いますよね。このスプーンは、かんざしや櫛、刀の鍔などの銀装飾を作る技術を受け継いだ職人が、手作業で槌目模様を入れているんです。道具としての機能性の高さだけではなく、装飾品としての美しさも兼ね備えていて、だから演出小物としても存在感があるのかもしれませんね。

大正浪漫硝子 グラス

西﨑このグラスも、特別な演出に向いていると思いました。柄が綺麗ですよね。

──この柄は、明治・大正時代にあった「乳白炙り出し」という技法を現代に復活させて作られています。

西﨑今日は来客時を想定して、グレープフルーツジュースとハーブティーでティークーラーにしてみました。このグラスに色のついた飲み物を入れると、特別なおもてなし感が演出できると思います。

──水玉模様のグラスは、まるで苺のよう! 訪ねた先でこれが出てきたら、ちょっと感動してしまうかもしれません。

西﨑もちろん、水やアイスコーヒーを入れても、シックで綺麗だと思います。手のひらで包み込むように持てる、ころんとした形もどこかホッとさせてくれるし、普段使いのグラスとしてもいいですよね。

──さっきのスプーンと同じで、このグラスひとつで、日常の風景が変わりそうですよね。

西﨑そうなんです。今日使ったアイテムのように、日々、目に映るものや手に取るものは、伝統工芸品のようなちょっといいものにする。自分にとって、心地いいものを選ぶ。それだけでグッと生活は華やぐし、毎日が少し楽しくなるはずです。

──伝統工芸品は、その物の背景にある積み重ねられた歴史や技術を知ることも魅力の一つですが、形の可愛さや見た目の心地よさで選んでも勿論良いですよね。使い方も自由に楽しんでいい。西﨑さんの伝統工芸品の使い方を見て、今日は改めてそのことに気付きました。

PROFILE
西﨑弥沙

フードスタイリスト

西﨑 弥沙

大学入学後、建築への興味から卒業後はハウスメーカーに就職。その後スタイリストのCHIZU氏に師事し、独立後はフードスタイリストとして雑誌や書籍、テレビなどで幅広く活躍する。

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