伝統工芸ってなんだろう?

インテリア
アイテムとしての
伝統工芸品

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インテリアスタイリスト

遠藤 慎也

──伝統工芸品は、職人たちが長い時間をかけて磨いてきた技の結晶です。私たち「小粋屋東京」は、その技やカルチャーを残したいと思っています。ただ、現代の暮らしのなかで、伝統工芸品をどのように取り入れたらいいのかわからないという方もいる気がしていて……。そこで、インテリアスタイリストの遠藤さんだったら、どんなふうに伝統工芸品を生活に取り入れるのかお話を聞かせてもらいたくて今日はご自宅にお邪魔させていただきました。しかし素敵なお家ですね。

遠藤実は最近、引っ越してきたばかりで、インテリアに関してはいろいろと試行錯誤しているところなんですよ。

──ハンス・J・ウェグナーのソファや、ボーエ・モーエンセンのチェアなどがありますが、北欧のデザイナー家具がお好きなんですか?

遠藤北欧家具は、デザインがシンプルで、いろいろな空間に合わせやすいのがいいですよね。木のぬくもりとシンプルな機能美があって、作りもしっかりしていて長く使えます。

──そう聞くと、北欧家具と伝統工芸品って似てますね。

遠藤確かにそうですね。だから、このラタンスツールは、北欧のヴィンテージ家具とも相性がいいなと思いました。どちらも天然素材で作られているので、インテリアのまとまり感が出しやすい。

ラタンスツール

──これは、木内籐材工業というところが作っている「籐製鼓椅子」です。鼓型の椅子は、昔から日本にある形なんです。

遠藤現代の空間にも合うモダンな佇まいですよね。それに、籐で作られているのでとても軽い。動かしやすいから、来客があった時に出したり、バッグを置いたりと、使い方がいろいろあるなと思いました。

福ダルマ

──この「福ダルマ」は、雛人形を作る木目込みという技法で作られています。

遠藤生地がすごく綺麗ですよね。

──着物に使うような織物を使っていて、よく見ると、溝部分の柄合わせも丁寧に行われているんです。こういった昔からある様式美を、節句の時期だけではなく、日常的に感じてもらえるよう作ったものです。

遠藤ダルマって、ラッキーチャームというか願掛けのために置くものですよね。オーセンティックな紅白ダルマは、さすがに違和感があるけれど、これだったらサイズも小さいし柄が綺麗だからアクセント的に部屋の中に置くのもいいかもしれません。何もない空間にあっても様になりますが、たとえば飾ってあるアートと色味を合わせてみると空間に馴染むと思います。

福ダルマ

木目込トレイ

──木目込みのアイテムは、他に小物入れもあります。これは、伝統工芸師の柿沼東光が手がけた「木目込トレイ」です。

遠藤これは底がファブリックなので、傷をつけたくないアクセサリーなどを置くのにいいなと思いました。生地が綺麗で高級感もあるし、大切なものを置くにはふさわしいですよね。

──和物柄をインテリアアイテムとして取り入れる、コツみたいなものがあれば教えてもらえますか?

遠藤僕は、空間のアクセントとしてファブリックを使うことが多くて、たとえばクッションの色で、少し華やかさを演出したりしています。 このトレイも同じですね。カラフルな柄が、空間にアクセントをつけてくれますよね。今回はテーブルの色と合わせて、黒のトレイを使ってみましたが、こっちのナチュラルな色味もいいですよね。また印象が変わると思います。

木目込トレイ

千鳥ブラシ

──「千鳥ブラシ」は、ちょっとした埃やゴミを払うブラシですが、キッチンに置いてもいいですね。

遠藤このブラシは、佇まいが可愛いのですごくいいなと思いました。ブラシって必要な時にすぐに使いたいから、目に付く場所に常に置いておきたいんですよね。これは、パン屑を掃ったり、コーヒーミルの横に置いてコーヒーの粉を掃除するのにちょうどいい。白と黒のコントラストも好きですね。

──このブラシは全部で6色あるんですよ。

遠藤色の選択肢が豊富だと、空間に合わせて色をセレクトできますよね。伝統工芸品は、一見すると部屋に置くハードルが高そうなものがありますが、周りのものと色や素材を合わせれば空間にうまく馴染むし、華やかな色のものはアクセント的に取り入れてもいいですよね。しかもアイテム自体にちゃんとしたストーリーがあるから、ちょっと特別な空間演出にもなると思います。

──そうなんです。もちろん最初は見た目で手に取ってもらって良いのですが、そのアイテムが生まれた背景や歴史を知ってもらうと、より楽しめるということが伝統工芸品の一つの魅力だと思っています。遠藤さん、今日はありがとうございました。

PROFILE
遠藤慎也

インテリアスタイリスト

遠藤 慎也

1984年埼玉生まれ。立教大学社会学部を卒業後、インテリアの専門学校へ。その後、インテリアスタイリスト窪川勝哉氏のアシスタントを6年勤め、2011年インテリアスタイリストとして独立。雑誌・カタログ・広告・WEBメディア・CMなどの撮影現場でのインテリアスタイリングのみならず、住宅展示場・商業施設のウィンドウディスプレイ、VMD・レストランの内装などのインテリアコーディネートも手掛ける。主なスタイルとしては実際に人が住んでいるかのような人の面影、温度を感じる空間を、何もないところから創造することを得意とする。また、趣味の一つでもあるキャンプからのインスピレーションを元に作り上げる、実体験に基づいたアウトドアシーン提案の依頼も多く受ける。

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