輪島漆、蒔絵ボールペン開発秘話

長年にわたり下請け生産をしてきた様々な製品の中でひとつだけ、
いつか自社の名前で制作したいと思っていたものがありました。

その工房とはもう20年くらいのお付き合いになるのでしょうか。(僕が入社する以前からなので正直よく分かりません。)

数年に一度、プレス上がりの本体軸のみを、真鍮のままの姿でその工房へ送ります。

石川県にあるその工房は、その本体軸に素晴らしい装飾をして、年に数回キリタへ送って来るので、我々はその軸をボールペンに組み上げて再び送り返すのです。
( ただ送られてきた本体は全て完成品にして送り返すので、桐田の手元には1本も残らないのですが。)

その工房は、輪島市内にある同社のショップで、多くの素晴らしい漆器と共にキリタで組み上げたペンを自社のオリジナル商品として販売しています。

それを組み上げたときの何ともいえない質感、目を見張る装飾性、持ったときのしっとり感は素晴らしく、いつか自社ブランドで製品を販売できる時が来たらキリタの名を冠して制作したいと思っていました。

インターネットという販売方法が普及し、2年前に初めて自社ブランド製品を立ち上げたときから、ショップが軌道に乗ったらこの製品を自社用に開発しようと心に決めていました。

そして今ようやく最初の試作が完成しました。

 

その工房とは。

その工房は、輪島でも一二を争う大手の老舗で、規模も大きく市内に工房と大きな自社ビルのショップ、東京銀座にショールームも持っています。

その工房で作成した製品は、その工房の名の下に全て自社販売しており、通常下請け仕事は行わないのです。

この製品をキリタブランドとしてキリタの販売ルートで売るのであれば、黒子に徹したいという要望のため工房名の公表は差し控えますが、通常下請け仕事はやらないその工房が僕の要望に応えて蒔絵を制作してくれたのは、長年にわたって積み重ねてきた取り引きの信用があったから。

決して金額的に大きな取り引きをしてきたわけではないんです。

ただそれこそ僕の入社前から続いている細く長いお付き合いがあって、そのおかげで受けてくれたこの仕事。つくづく自分一人の力で仕事というのは動くものではないんですね。

今回蒔絵の制作を依頼するに当たり、輪島まで行って来ました。

蒔絵のデザイン

蒔絵の柄デザインは、あえてこちらからの希望は一切出さず、漆器工房の専任のデザイナーに依頼しました。

長年漆器のデザインに取り組んできた職人に、ペンの形状・用途を考慮しつつ、輪島蒔絵の伝統を取り込んだデザインを10点程度作成していただき、その中から今回は露草と葡萄の2点を選びました。

 

色は伝統の漆黒と朱の2色です。

 

国産漆使用

以外にも現在日本で使用される漆の95%は中国産で、多くの漆器工房では上塗りを含めて全ての行程で中国産漆を使用しているそうです。

大手老舗工房でも国産漆は上塗りにしか使わないのが現状となっています。国産漆と銘打ってある物でも下塗りは必ず中国漆なんだとか。
(言っちゃってよかったのかな。)

今回制作を依頼したその漆器工房では、岩手県に日本最大の漆の森を自社で持ち、純正な日本産漆の自家栽培から純粋精製まで史上最良の漆を上塗りに使用しています。

 

 

ちなみに、

素材が真鍮の場合は、「輪島塗り」とは言えないのだそうです。

ですからあくまで「輪島漆、蒔絵ボールペン」・・・・・・・・ちょっと残念です。

 

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