農薬の使用に対する店長の考え | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1 農薬を使わなかったらどうなる? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1−1 無農薬栽培をやってみて。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
私は農薬が好きではありません。就農した年は周りの人たちが安易に農薬を使うことに腹が立つ程でした。そこで、部分的に無農薬栽培をやってみることにしました。 無農薬栽培をする人たちがよく使う天然成分でできた資材を使いました。夏場は病害虫が多発するのでほとんど休むまもなく毎週のようにその資材を散布しました。 一年間続けてみてそれなりに効果があり、全く散布しなかったところはほとんど芽が成長しなかったのに対しこの資材を散布したところは芽が生き生きと成長していました。 しかし、皮肉なことに農薬を使って栽培したものは手間をそれほどかけていないにも拘らず、芽の成長が2倍近く旺盛でした、収穫も30パーセント増収となりました。出来上がった製品の品質にも差がありました。 そのほかの農薬に代わる資材も探してみましたが、同じように散布の手間がかかったり使用方法が難いものばかりで現状の方法の代わりになるようなものではないと思いました。 いずれにしても無農薬栽培にすると手間がかかるうえに収穫が30パーセントほど減り、品質も劣るというのが一般的なようです。このような状態では私たちの場合、正直採算が合わず生計を立てることは難しい状態です。 さらに都合の悪いことに、無農薬にすると多くの虫がお茶の木に住み着くようになります。毛虫などはよく大量に発生するのですが茶畑に入るだけで全身がかぶれてしまいます。またスズメバチがお茶の木の中に巣を作ることもあります。蛇だって昆虫などのえさを求めてたくさん住み着くようになります。こんな虫に脅かされるような不快な思いはできればしたくありません。 農薬はできれば使いたくありませんが、便利な道具なんだとつくづく思い、もう少し農薬について考えてみることにしました。 |
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1−2 無農薬栽培をやってみて感じたこと。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
農薬を使わないということは、日常生活でいえば自動車を一切使わずに生活するようなものだと思いました。 もし皆が自動車に乗らなくなれば、地球温暖化はかなり防げるし、交通事故で死ぬ可能性だって激減すると思います。しかし、安全のために車に乗らないことで、生活に困る人がほとんどだと思います。ましてや皆が車に乗らないと言うのはちょっと極端なことだと思います 無農薬栽培も同じようなことだと思います。農薬を使わなくなれば農薬の悪い影響を抑えられます。しかし、農薬を使わないことで収穫が3分の1も減ったら、食べ物がなくて餓死する人がたくさんでるでしょうし、収穫された農産物は他の生物に栄養を横取りされているので、旨みも栄養価も低いものになってしまうと思います。手間も従来よりもかかるために価格が割高になります。今までのように農産物を安く豊富に手に入れることは難しくなると思います。 そういう意味で無農薬栽培という選択は全体として現状をよりよくすることにはならないと思います。 |
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2 農薬を使うリスクってどのくらい? | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2−1 農薬の危険度 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
そもそも、農薬はどのくらい危険なものなのでしょうか。もし今世の中で思われているほど危険なものならば、大量に被曝しているはずの私たち農家の人間が一番危険な目にあっているはずです。農家の人は普通、皆さんと同じようにスーパーなどで野菜を買って食べており、その上仕事で農薬を使うので普通の人より遥かに大量に被曝しています。 しかし、農民はガンや病気やアレルギーになりやすいとか、精子が少ないとか、農家の子供に奇形が多いまたはキレやすいなんてことは聞いたことがありません。 自分自身好きではないけれども農薬を使い続けていますが、定められた使用方法を守っていればそれにより健康を害したと思えることはないと思います。 以下に「正しい農薬の知識を身につけるページ」 https://www.nouyaku.net/tishiki/tishiki.html というところで紹介されていた死因とその危険度の表を転載させていただきます。
(Dr.ファースト 1990年:「持続可能な農業と日本の将来(化学工業日報)」より転載)
上記表は何人中1人死ぬかを表しています。 この表を見て、タバコとアルコールの危険度が高すぎるように思いました。農薬を問題にするより、このことをもっと問題にする方が2000倍もみんなの健康のためになると思います。 それと、肥満が600人に1人と結構高い割合なので私はすこし気をつけないといけないと思いました。 一番意外なのが残留農薬・食品添加物によって死ぬ人は50万人に1人以上であることです。 残留農薬や食品添加物は問題があると大きく取り上げられるので皆さんも危険なイメージを持っていると思います。その危険なイメージと実害とのギャップはたいへん大きいものがあります。 このギャップを私なりには、残留農薬・食品添加物は知らず知らずのうちに取り込んでしまうものだから、注意を必要とするんだと思いました。表にあげられているそのほかの死因については、その人の自発的な行為の結果として起こるものなのに対し、残留農薬・食品添加物などは全ての人が好むと好まざるとにかかわらず知らず知らずのうちに取り込んでしまっている可能性のあるものだから、間違いが起こらないように十分な規制をしているから危険度が極端に低いのだと思いました。 しかし、あまりに規制を厳しくしすると農薬の使用が制限されすぎて、十分な食料が生産できなくなってしまいます。 農薬のリスク(危険性)と農薬を使用することによるベネフィット(便益)の関係を考慮して農薬の危険性はある程度計算されていると思います。 |
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3 農薬とうまく付き合うには | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3−1 農薬の使用基準 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
農薬に関係の深い法律には厚生大臣が定めた「食品衛生法」と農林大臣が定めた「農薬取締法」があります。 「食品衛生法」では有害な食品の出回りを防ぐため、農産物中の「農薬残留基準」を定めています。 この「農薬残留基準」値は、主にADI(一日摂取許容量)を基に設定されます。 |
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ADI(一日摂取許容量:Acceptable Daily
Intake)とは、人が一生涯にわたりその農薬を毎日摂取し続けたとしても安全性に問題のない量として定められています。通常は、1日あたり体重1kgあたりの農薬量(mg/kg/day)で表されます。 農薬の安全性を調べるためには種々の動物を用いた毒性試験が行われており、各々の試験について何らの毒性影響が認められない量(無毒性量)を求めます。このうち、最も小さいものをその農薬の無毒性量とし、これを「安全係数」で割ることによってADIを算出します。 「安全係数」は、動物における無毒性量からヒトのADI(一日摂取許容量)を求める際に用いる係数で、動物からヒトへデータを外挿する際の不確実性と、ヒトの個体差を考慮して決められます。通常、動物とヒトとの種差を「10」、ヒトとヒトとの間の個体差を「10」として、それらをかけ合わせた「100」を基本として用います。 また、人が食べ物を通じて摂取している農薬の量を、厚生労働省では調査(マーケットバスケット調査)しています。 この結果によると、平成11年度までの調査で、96種類の農薬が調査され、何らかの食品群から検出が見られたのは、17農薬でした。これらの農薬一日摂取量を一日摂取許容量(ADI)との比を算出したところ、臭素を除く16農薬では6%未満でした。臭素の推定一日摂取量はADIの16.3%でしたが、この結果については、臭素は天然由来成分にも含まれているためと考えられます。これらの結果から、食物を通じて摂取する農薬はADIよりはるかに低いことがわかります。 |
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農薬の実際の使用に際しては、「農薬残留基準」値以下にならなければならないので、「農薬取締法」の第十二条の六「農薬安全使用基準」を定めています。この基準は必要と認められる農薬について、その農薬が適用される農作物と使用剤型ごとに、使用方法、試用期間、使用回数が一覧で表示され、遵守するよう求められています。 「農薬安全使用基準」がない農薬も含め全ての農薬について、農薬取締法第二条の「適用病害虫の範囲及び使用方法」(適用病害虫ごとに、希釈倍数、総使用回数、使用時期などが農薬容器・包装のラベルに表示されている。)を守ることが求められています。 すなわち、農薬の容器・包装のラベルに表示してある使用方法を遵守すれば国が認める安全が守られることになります。 しかし、実際に使用方法を遵守するかどうかは、使用者である農民の判断によります。使用方法を遵守することは当然のことなので多くの人は守っていると思います。 ところで、農薬の違法使用に対する農民への罰則には次のようなものがあります。 @毒劇法で「特定毒物」に指定された農薬の使用規制に対する違反。 A食品衛生法に定められた「残留基準」を超える農作物を出荷した時。 B農薬取締法で「作物残留性農薬」「土壌残留性農薬」「水質汚濁性農薬」に指定された農薬の使用規則違反。 すなわち、上記三点を守っていれば農薬のラベルに表示してある使用方法を守らなくても罰せられることにはならないということになってしまいます。 実際には、正しく使用されているかチェックする方法がないので、取り締まることができないのだと思います。 |
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3−2 農薬の使用履歴 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
最近では、「農薬の使用履歴」をつけるようになってきています。以前から多くの農家では「栽培日誌」という日記に農薬の使用履歴も記録していました。いままで私たちも来年の栽培管理の参考にする目的で記録をつけていました。 「農薬の使用履歴」は皆が共通の記録をつけることにより、何か問題があったときには何が問題点なのかを明確にして、問題の解決が速やかにできるようにするために行うものだと思います。 農薬の使用履歴がデータとしての信憑性を持つためには、農薬の購入量と使用量に整合性がないといけないし、その農薬を使った農産物の収穫がどのくらいあってそれを誰に販売したのかがわからないといけないと思います。手間のかかることですがより安全性の高い農産物を生産者が確かな知識と責任を持って作れるようになると思うので、正確な記録ができるように私たちも取り組んでいこうと思っています。 |
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3−3 農薬容器に表示してある使用方法 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
農薬の容器には次のようなことが書かれています。 (あくまでも参考として目を通していただけたらと思います。) 〜〜〜〜〜例 コテツフロアブル ここから〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
このようなことが容器にはかなり小さな文字ですが書かれています。 使用前に必ず読むところは[適用病害虫名と使用方法]の表です。作物名「茶」の所の適用病害虫、希釈倍数、使用時期、使用回数は特に気をつけて守っています。 |
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さらにお茶農家の間では農協が主体となって、農薬の「最終防除日」というものを地域全体で設けるようになりました。 最終防除日を過ぎたら、農薬のタンクをトラックに載せて道を走ることすら禁止するという程の徹底ぶりです。 お茶農家は一致団結して、農薬の使用基準の遵守の徹底に努めています。 |
4 省農薬栽培 |
いくら国が農薬の安全性を証明していても、後になってから「やっぱりあの農薬は安全ではありませんでした。」なんてことになってからでは遅いと思いますので、農薬は出来れば使わない方が良いに決まっています。 そこで我が家では、できるだけ農薬を使わないように、努めるようにしています。 私たちの場合、次のようにして農薬の使用量を抑える努力をしています。 1.濃度を薄く:病害虫の種類や発生の度合いによっては異なるのですが、通常よりも1.2倍ぐらい濃度を薄めて使うことが多いです。 2.散布量を少なく:茶園への散布量も噴霧機の圧力を下げて使っているので通常の90%ぐらいの量に抑えてるよう心がけています。 3.予防的な農薬の散布は出来るだけ控え、散布回数を少なくするように心がけています。 散布量としては少なくなるので、収穫量や品質への影響が出てしまうことがあるのですが、大きな被害にあうことはないので、今のところ問題ないと思っております。 今はまだお茶の栽培のことを勉強中ですので、もう少し自信が付いたら、もっと農薬の使用量を控えられるようにしていきたいと思っています。 |