2003年はあらゆる点で特別な年として、シャンパーニュの人々の記憶深く刻み込まれました。かなりの降雪と2月末まで続く寒波で年が明け、そして一挙に春の訪れ、ブドウ樹は早熟の兆しを見せました。穏やかな天候になったかと思うと、いきなり気温が上昇しブドウ樹を目覚めさせ、主にグランクリュの畑で最初の発芽がありましたが、4月11日にひどい霜(−11℃)が大部分を駄目にしてしまいました。


の後、徐々に新しい芽が出てきたものの、そのために開花開始の時期に通常にないほどの大きな開きがでました(62日から815日)。6月には雹を降らせる激しい嵐がおこり、ブドウの芽や花にまた被害が出てしまいました。夏はヨーロッパ中が大変な猛暑に見舞われました。

 

穫は、1822年の記録開始以来前例がないほど早く、ボランジェでは831日に終了しました。主にグランクリュとプルミエクリュで構成された自社畑は、天候不順の被害を受け、収穫量は非常に少ないものとなりました(1haあたり約5,000キロ)

2003年という年を私たちなりのやり方で不朽のものにしようと考え、ボランジェの最も由緒ある3つの畑、アイとヴェルズネィ(ピノ・ノワール)、キュイ(シャルドネ)のブドウをアッサンブラージュした、ボランジェの歴史の中で異彩を放つ特別なワインを造りました。「2003年のトリロジー」、“2003 by Bollinger”の名前はそこから生まれたものです。

醸造2003 by Bollinger はキュヴェのみを使用。クリュ毎、セパージュ毎にオーク樽で発酵。

アッサンブラージュピノ・ノワール 60%、シャルドネ 40

ドザージュ7g/

総酸…3.9g/l

■アルコール度数…11.2

ボランジェじゃない!』

byトム・スティーヴンソン

 

2007412日木曜日、ボランジェ社にて、同社のファミリー・シェアフォルダーさえまだ知らない新しい製品のテイスティングをしました。新ヴィンテージですが、ラ・グランダネではありません。ボランジェのシャンパーニュらしくない、一度限りのスペシャル・アイテム「2003 by Bollingerです。口中を大いに満足させてくれるピン・クッションのような泡がゆっくりと立ち上る、ソフトで豪華なシャンパーニュです。この最も伝統的なシャンパーニュ・メゾンの特徴である角張ったオークは全く感じられません。発酵は樽で行われていますが、オークは2003年ヴィンテージの持つリッチでジューシーな果実味に包まれています。現時点で、中盤からフィニッシュにかけて、非常によく熟したシャルドネのバニラ香/フィネスが前面に出ています。つまり、ボランジェらしくないのです

2003年の収穫はボランジェにとってグランダネ(当たり年)ではありませんでした。最初から、2003年の収穫にはラ・グランダネのがっしり感を形成するのに必要な十分な酸、十分に低いPHがないとわかっていました。しかし、2003年は本当に特別な年で、ボランジェにおいてもこのヴィンテージを無視することはできませんでした。では、何をすべきなのか?このワインをラ・グランダネとしてリリースすることは出来ません。ボランジェを飲んでくださっている方々は、このようなスタイルの変化を受け入れてはくれないでしょうから。そう考え、我々は、このワインを「2003 by Bollingerとしてリリースすることにしました。すこし芝居がかっているかもしれません。しかし我々は、まさに今、全く一回限りのスタイルのワインの幕を切って落とし、「そう、これこそ2003年ヴィンテージです」、「これこそボランジェなのです」とご紹介するところなのです。ラ・グランダネの下でも、上でもない。ただ、別のものなのです。我々としては、パッケージがこの商品のユニークさを反映しているものであってほしいと願っています。』と、ボランジェの社長であるギラン・ド・モンゴルフィエ氏が説明してくれました。

論家としては、パッケージは常にワインのクオリティーに次ぐ、二次的なものです。しかし、やはり美しいパッケージの方がいいにこしたことはありません。その点、「2003 by Bollingerのパッケージは見事なものだと認めざるをえません。多くの人が、2003年を長く厳しい猛暑の、全ヨーロッパ的な干ばつの年として記憶しているでしょう。しかし、シャンパーニュでは、大変厳しい寒波に襲われ、潜在的な収穫の半分が失われるという年明けからのスタートでした。これは雪で覆われたブドウ畑の写真としてパッケージに使われています。411日夜の大変な霜です。気温が零下4度にまで下がり、発芽期のもろい期間中であるのに、続く3日間は着氷性の霧が出て、芽の大部分が破壊されてしまいました。ブドウ樹は、徐々により多くの芽を付けていき、その結果として、開花は6月から8月という長い期間にわたりました。6月には激しい雹が降り、再び多くの芽が駄目になり、花にも被害が出ました。


2003年ヴィンテージ

ブドウは非常に少量で、例外的に早く成熟を迎えました。そのため、ボランジェ設立7年前である1822年の記録開始以来、最も早い収穫が行われました。アルコール度数もかなり高く、とはいえ高すぎるということもないレベルに達しました(平均アルコール度数10.6%)。

色づき期のスピードは記録的に低い酸と、高いPH値をもたらしました。そのため、2003年は一部のシャンパーニュの人々が我々に信じさせようとしているような、1976年、1959年、1947年に似たヴィンテージではありません。彼らはアルコール度数の高さと低い酸度が長命のシャンパーニュを造り出す証明のだとするように、これらのヴィンテージを挙げていますが、この比較の不自然なところは、2003年の収穫に本当に例外的に高いアルコール度数があるというわけではなく、酸も心配になるほど低いというわけではないという点にあります。

シャンパーニュ地方平均

2003

1976

1959

1947

アルコール度数

10.6%

10.5%

12%

11.5%

総酸*

5.8g

6.7g

6.3g

6.1g

PH

3.28

3.17

 -**

 -**

  * …マストにおける、1LあたりのS2HO4のグラム数

   **PH測定導入前

2003年ヴィンテージは長期発展タイプというより中期発展タイプだと思われます。しかし、ワインを引き立たせているのは、通常の白い花や黄色い果実のアロマのみでなく、トロピカル・フルーツとフィニッシュで広がるバニラのフィネスもあわせ持つ、特にシャルドネに由来するフルーツのエキゾチックなキャラクターです。ボランジェのカーヴ長であるマチュー・コフマンは、アイ、ヴェルズネィ、キュイの自社畑の中でも最も古い畑から最も良質なブドウを選び、PHの低いワインを扱う際の伝統的な方法である、酸を加えるたり亜硫酸を増やすという“誘惑”に逆らいながら、この特別なこのシャンパーニュを見事に造り上げました。

ここに「2003 by Bollingerと「ラ・グランダネ2002の分析値比較を挙げます。

2003 by Bollinger

La Grande Annee 2002

アルコール度数

11.2

11.2

総酸*

3.9g

5.7g

PH**

3.15

3.00

ドザージュ

7g

9g

ピノ・ノワール/
シャルドネ

60/40

60/40

クリュの数

3

17

生産本数

50,000

500,000

      * …完成品における1LあたりのS2HO4のグラム数

                            **…完成品における数値