2003年はあらゆる点で特別な年として、シャンパーニュの人々の記憶深く刻み込まれました。かなりの降雪と2月末まで続く寒波で年が明け、そして一挙に春の訪れ、ブドウ樹は早熟の兆しを見せました。穏やかな天候になったかと思うと、いきなり気温が上昇しブドウ樹を目覚めさせ、主にグランクリュの畑で最初の発芽がありましたが、4月11日にひどい霜(−11℃)が大部分を駄目にしてしまいました。
収穫は、1822年の記録開始以来前例がないほど早く、ボランジェでは8月31日に終了しました。主にグランクリュとプルミエクリュで構成された自社畑は、天候不順の被害を受け、収穫量は非常に少ないものとなりました(1haあたり約5,000キロ)。 この2003年という年を私たちなりのやり方で不朽のものにしようと考え、ボランジェの最も由緒ある3つの畑、アイとヴェルズネィ(ピノ・ノワール)、キュイ(シャルドネ)のブドウをアッサンブラージュした、ボランジェの歴史の中で異彩を放つ特別なワインを造りました。「2003年のトリロジー」、“2003 by Bollinger”の名前はそこから生まれたものです。 ■醸造…2003 by Bollinger はキュヴェのみを使用。クリュ毎、セパージュ毎にオーク樽で発酵。 ■アッサンブラージュ…ピノ・ノワール 60%、シャルドネ 40% ■ドザージュ…7g/l ■総酸…3.9g/l ■アルコール度数…11.2度
『ボランジェじゃない!』 byトム・スティーヴンソン
2007年4月12日木曜日、ボランジェ社にて、同社のファミリー・シェアフォルダーさえまだ知らない新しい製品のテイスティングをしました。新ヴィンテージですが、ラ・グランダネではありません。ボランジェのシャンパーニュらしくない、一度限りのスペシャル・アイテム「2003 by Bollinger」です。口中を大いに満足させてくれるピン・クッションのような泡がゆっくりと立ち上る、ソフトで豪華なシャンパーニュです。この最も伝統的なシャンパーニュ・メゾンの特徴である角張ったオークは全く感じられません。発酵は樽で行われていますが、オークは2003年ヴィンテージの持つリッチでジューシーな果実味に包まれています。現時点で、中盤からフィニッシュにかけて、非常によく熟したシャルドネのバニラ香/フィネスが前面に出ています。つまり、ボランジェらしくないのです
『2003年の収穫はボランジェにとって“グランダネ(当たり年)”ではありませんでした。最初から、2003年の収穫にはラ・グランダネのがっしり感を形成するのに必要な十分な酸、十分に低いPHがないとわかっていました。しかし、2003年は本当に特別な年で、ボランジェにおいてもこのヴィンテージを無視することはできませんでした。では、何をすべきなのか?このワインをラ・グランダネとしてリリースすることは出来ません。ボランジェを飲んでくださっている方々は、このようなスタイルの変化を受け入れてはくれないでしょうから。そう考え、我々は、このワインを「2003 by Bollinger」としてリリースすることにしました。すこし芝居がかっているかもしれません。しかし我々は、まさに今、全く一回限りのスタイルのワインの幕を切って落とし、「そう、これこそ2003年ヴィンテージです」、「これこそボランジェなのです」とご紹介するところなのです。ラ・グランダネの下でも、上でもない。ただ、別のものなのです。我々としては、パッケージがこの商品のユニークさを反映しているものであってほしいと願っています。』と、ボランジェの社長であるギラン・ド・モンゴルフィエ氏が説明してくれました。 評論家としては、パッケージは常にワインのクオリティーに次ぐ、二次的なものです。しかし、やはり美しいパッケージの方がいいにこしたことはありません。その点、「2003 by Bollinger」のパッケージは見事なものだと認めざるをえません。多くの人が、2003年を長く厳しい猛暑の、全ヨーロッパ的な干ばつの年として記憶しているでしょう。しかし、シャンパーニュでは、大変厳しい寒波に襲われ、潜在的な収穫の半分が失われるという年明けからのスタートでした。これは雪で覆われたブドウ畑の写真としてパッケージに使われています。4月11日夜の大変な霜です。気温が零下4度にまで下がり、発芽期のもろい期間中であるのに、続く3日間は着氷性の霧が出て、芽の大部分が破壊されてしまいました。ブドウ樹は、徐々により多くの芽を付けていき、その結果として、開花は6月から8月という長い期間にわたりました。6月には激しい雹が降り、再び多くの芽が駄目になり、花にも被害が出ました。
■2003年ヴィンテージ ブドウは非常に少量で、例外的に早く成熟を迎えました。そのため、ボランジェ設立7年前である1822年の記録開始以来、最も早い収穫が行われました。アルコール度数もかなり高く、とはいえ高すぎるということもないレベルに達しました(平均アルコール度数10.6%)。 色づき期のスピードは記録的に低い酸と、高いPH値をもたらしました。そのため、2003年は一部のシャンパーニュの人々が我々に信じさせようとしているような、1976年、1959年、1947年に似たヴィンテージではありません。彼らはアルコール度数の高さと低い酸度が長命のシャンパーニュを造り出す証明のだとするように、これらのヴィンテージを挙げていますが、この比較の不自然なところは、2003年の収穫に本当に例外的に高いアルコール度数があるというわけではなく、酸も心配になるほど低いというわけではないという点にあります。
* …マストにおける、1LあたりのS2HO4のグラム数 **…PH測定導入前 2003年ヴィンテージは長期発展タイプというより中期発展タイプだと思われます。しかし、ワインを引き立たせているのは、通常の白い花や黄色い果実のアロマのみでなく、トロピカル・フルーツとフィニッシュで広がるバニラのフィネスもあわせ持つ、特にシャルドネに由来するフルーツのエキゾチックなキャラクターです。ボランジェのカーヴ長であるマチュー・コフマンは、アイ、ヴェルズネィ、キュイの自社畑の中でも最も古い畑から最も良質なブドウを選び、PHの低いワインを扱う際の伝統的な方法である、酸を加えるたり亜硫酸を増やすという“誘惑”に逆らいながら、この特別なこのシャンパーニュを見事に造り上げました。 ここに「2003 by Bollinger」と「ラ・グランダネ2002」の分析値比較を挙げます。
* …完成品における1LあたりのS2HO4のグラム数 **…完成品における数値 |