backhome

文・著作権 鈴木勝好(洋傘タイムズ)

Y O U G A S A * T I M E S * O N L I N E
◆◆◆雨への豊かなイメージ◆◆◆



前略、世間では「雨」になることを表して「あいにくの天気」とか「天気が悪い(悪
くなる)」とか、「あいにくの下り坂」とか言いますが、常々「いかん」ことだと感
じております。
「雨」に対する一般的なマイナスイメージからのことでしょうが、もっと「雨のシー
ン」を豊かなものとして感受することが大切かと思います。
雨への豊かなイメージが持てれば、「傘文化」を促進する要因になると考えます。

                                    2002.09.20





日本人は自然現象を科学的であるよりは情緒的(文学的)に捉えるといわれる。それ
が日本の文化・伝統を培ってきたといえる。そこで、「秋」の特徴となる一面を俳句
の季題からまとめてみた。


【 秋 】
 
 立秋から立冬の前日までが秋。
陽暦では8月、9月、10月に当たるが、気象的には9月、10月、11月とする。



 〔 三秋 〕  初秋・仲秋・晩秋をいう

 〔 九秋 〕  秋の90日間をいう。

  ※初秋(はつあき)→新秋・秋はじめ・秋口とも。
  
      初秋や海も青田の一みどり  (松尾芭蕉)
      
      仲秋や月明かに人老いし   (高浜 虚子)

      秋深き隣は何をする人ぞ   (松尾 芭蕉)




【 秋の雨 】

 6月の梅雨に対し、秋に降る長雨を秋霖といい、梅雨のように雨が降ることを
「秋つ雨」(あきついり)
(ツの漢字変換できません)という。


    秋雨や田上のすすき二穂三穂   (飯田 蛇笏)



 〔 秋時雨 〕

単に「時雨(しぐれ)」といえば冬の季題。
晩秋の頃、降ったり止んだりする雨を「秋時雨」という。(→春時雨)


 
    斯の如く秋の時雨に濡れ申す   (高浜 虚子)

    秋しぐれ塀をぬらしてやみにけり  (久保田 万太郎)
 
    秋しぐれ女の傘をとりあへず     (山口 青邨)


 〔 雨月 〕

名月や池をめぐりて夜もすがら(芭蕉)の名句があるように、
「月」といえば秋の月をいう。わけても陰暦8月15日の月を「名月」として愛でる。
しかし、十五夜に空が必ず晴れてくれるとは限らない。
十五夜の名月が雲にかくれてみえないことを「無月(むげつ)」といい
雨のために見えない場合を特に「雨月」(雨の月・月の雨)として惜しむ。


    杯中に無月のこころ閑かなり   (京極 杜藻)
  
    立てかけて雨月の傘の皆黒し    (大野 林火)

    月の雨ふるだけふると降りにけり  (久保田 万太郎)


 〔 霧 〕 
空気中の水蒸気を凝結して細かい水滴になり、
地表近くに煙のように漂う現象。秋は
「霧」、春は「霞(かすみ)」とよぶ。
朝霧・夕霧・山霧・川霧・野霧・狭霧・霧雨・濃霧・・・・・・など。



    霧大河右岸に立てば左岸なし   (堀内 薫)

    夕霧を来る人遠きほど親し     (野沢 節子)


 〔 露 〕
風のない晴れた夜に発生する。
草木の葉などに露がたまって、それが滴るさまを「露
しぐれ」という。
白露・朝露・夜露・初露・露の玉・・・・・・など。


    露の宿掃きだす塵もなかりけり   (富安 風生)

    芋の露涙のごとく乾きけり      (野見山 朱鳥)



以下、秋の季語が入った「雨」関連の句を抜粋してみました。


(秋の暮)
      雨上る地明りさして秋の暮  (鈴木 花蓑)

(秋高し)
      大雨のあとかぐはしき秋高く  (星野 立子)

(月) 
      月早し梢は雨を持ちながら   (松尾 芭蕉)

(案山子(かかし))
      盗んだる案山子の笠に雨急なり  (高浜 虚子)

(紅葉(もみじ))
      中一日ふりこめられし紅葉かな   (久保田 万太郎)

      初紅葉(はつもみじ)石山の石ぬれぞぼち(奈良 鹿郎)

(菊)        
      しぐれつつ花咲く菊に葉のにほい   (飯日 龍太)

(萩)        
      萩にふりすすきにそそぐ雨とこそ  (久保田 万太郎)

(桔梗)       
      大江山降り出す雨に桔梗濃し     (山口 青邨)
  
(赤のまんま・犬蓼) 
      長雨のふるだけ降るやあかのまま    (中村 汀女)



文芸や映画・TVドラマ等に表題された雨の情景を想いながら傘をさして歩けば、
また楽しからずや・・・・・








B A C K