東京と大阪の駅でエスカレータの追い越しレーンが左右逆、うどんつゆの濃味と薄味など、
東西逆パターンが多いですが、実は傘づくりの世界でもあります。
それはミシン掛けの方向。三角に裁断した生地を縫い合わせていきますが、
関東はてっぺんから、関西では底辺の部分からミシン掛けと決まっています。
実は前者の方法は大変時間と手間がかかりますが、仕上りはワンランク上になります。
総じて関西流は比較的簡単なので大企業・大量生産に向くのですが、江戸の職人
さんのこだわりと誇りは「関東型」の手間隙かけたものづくり。Made in Tokyo の
ラベルが物語っているのは、このスピリット。
私は大阪生まれの大阪育ちですが、傘作りに関しては江戸職人さんたちの
『ものづくり』の姿勢を支持します。
さてこの傘は、そのような全コマ縫い合わせという従来方式を脱却した、セルメス加工という一枚張りのもの。
これもメイド・イン・トーキョーのテクノロジー。
それを大胆な図柄で飾ることをプランニングしたのは、メイド・イン・トーキョーブランドの旗手、
小林明氏
試験的に作成した『龍』(現在は廃版)が好評であったため、そのアップグレード版として、そしてエイトの代表作として『虎』を企画。
躍動する虎をテーマに腕利きデザイナー数名に原画を描かせ、その中で最優秀作をピックアップ採用するという、
非常に贅沢なプロセスを経てデザインが完成。あらゆるシーンにフィットする基調色ブラックを表に、その裏に繰り広げられる
水墨画調全面セルメスプリントの大胆な世界は、まさに秀逸です。
また、ハンドルは寒竹(寒期に採取される竹の地下茎から製造されたもの)を厳選。
中国産の竹が市場を占めている昨今、国産のものだけに限定をし、それが入手できなくなった時点で
傘の供給も止めると覚悟をする、メイドインジャパンへの強き『こだわり』。
骨も16本骨でありながらカーボン素材を使用しているので、従来の多けん傘より軽量になっています。
職人技を活かした様々なユニークな商品をリリースしてきた「洋傘のエイト」。
そのものづくりの集大成ともいえるべき『千虎夢』は本当に素晴らしい仕上りです。
傘が大好きな人なら、日本の文化を愛する人なら、一度は手にして欲しい限定生産の逸品です。
お値段は少々はりますが、その価値は充分にある逸品です。
KASAコンセルジェ 宮武和広(心斎橋みや竹kasaya.com)