傘屋さんへ行こう!

心斎橋みや竹 kasaya.com 傘屋さんへ行こう!   ミフジ洋傘(東京都杉並区)




Shop Data
 Shop name :ミフジ洋傘
 Place :東京都杉並区阿佐谷南1-36-3
      
 Tel :TEL:03-3311-3572
 Established year
 :昭和26年

傘の仕入れで頼るのは自分の直感

他店との差別化を視野に修理にも注力

ミフジ洋傘



 平日の午前中。阿佐ヶ谷駅南口から徒歩3分のアーケード商店街に店を構えるミフジ洋傘(東京都杉並区阿佐谷南1-36-3 TEL: 03-3311-3572)の敷居を、客が一人、また一人とまたぐ。修理済みの傘を取りに来たり、逆に依頼したり。その度に店主の寒河江真潮さんは丁寧に応対する。「この傘は使って10年。古くても愛着があるから直して使い続けようと思ってね」と、訪れた客。「最近、修理する傘屋は少ないでしょ。だからうちを頼って方々からお客さんが来てくれる」と、寒河江さんは顔をほころばせる。

 修理代が入る。これが当然メリットになる。だが、それ以外にも利点はある。「数多く傘を直せば今の骨の形状や構造、生地のつくりなどが勉強できる。それに、お客さんと傘を預かるときと渡すときの2回接触できる。それが縁でうちの常連になる可能性もある」。  ミフジ洋傘の誕生は昭和26年。寒河江さんの父・忠勇さんが傘専門店として開業した。寒河江さんは、大学卒業後、一旦は外資系メーカーに就職。上司には常に「他社との差別化を図れ」と言われ続け、その姿勢が自然と身に付いた。

 昭和56年、転機が訪れる。赴任先の長野に両親の訪問を受け、その場で店を継ぐことを打診されたのだ。「自分の経営方針に口を出さないこと」を条件に、寒河江さんは承諾。当時30歳の若き2代目店主により店は再スタートを切った。

 店は徐々に“自分色”に染めていった。まず品揃えは女性を意識したラインナップに。「レディース傘は高級志向、メンズ傘やキッズ傘も女性ウケするものを置いた。また、店の入口には最も値段が高い高級傘を広げて飾り、奥に行くに連れて価格帯が下がっていくようなディスプレイも試みた」。要は一番売りたいものから優先的にアピールする、商売の常道を貫いているわけだ。売れ筋は8000円前後。効果は着実に表れている。

 傘の仕入れでは、直感を信じた。「基準は、展示会で見た瞬間に自分の気持ちに訴えかけてくる商品かどうか。それは流行の変わり目を象徴する先端的な傘だったりもする。自分がイケると思ったものは、他店に先んじて思い切って店頭に並べる」。実際にイラスト使いのインパクトのある傘が店先を飾る。その他厳しい選択眼をクリアした800本近い傘が店には置かれている。

一方で修理も積極的に引き受けた。大学生のときに店の職人から手ほどきを受け、指先に血をにじませながらも修得した技術が今になって役に立っている。「特に故人の形見などの修理には力が入る。他人には単なる古い傘に見えても、本人にとっては掛け替えのないもの。それをいつまでも大切に使いたいという、お客さんの想いを実現させるのが我々の仕事」と、寒河江さんは胸を張る。修理は今では月平均で30〜40本にも上るという。

 店作りの根底に流れるのは他店との「差別化」。その意識と、傘の専門家としての強烈な自負心を胸に、寒河江さんは、今日も傘を売り、傘を直す。




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