「傘のお医者さん」がいるお店
『ピッチ&チャップ ニシカワ』
販売した傘の下取りサービスも展開―世界文化遺産の京都・二条城とは目と鼻の先、
国内最大級の長さを誇るアーケード商店街の一角に洋傘店「ピッチ&チャップ ニシ
カワ」(京都市中京区西ノ京南聖町21TEL:075‐841‐0165)は店を構
えている。店主は今年72歳の西川誠太郎さん。20代の頃に、東京に出て漫画家を
目指していたという。有名な童謡「あめふり」の一節から取った遊び心いっぱいの店
名は、いかにも漫画家的な発想でもある。
お店のルーツは、明治元年生まれの西川さんの祖母が、大八車で日用品のひとつとし
て和傘を売り歩いたのがルーツ。やがて祖母は傘貼りを覚え、今の場所に店を開き、
和傘の製造販売店を始めた。
「父がその和傘屋を継いだ。私が子供の頃、祖母と父が傘の貼り替えをしているのを
よく目にした」と、西川さんは懐かしそうに話す。
父の代から提灯作りも始めた。父は達筆で、提灯に勢い良く一筆で文字を入れていっ
た。夏のお祭りの時期には京都一円から注文が舞い込んだ。西川さんも跡目を継ぎ、
今でも毎年夏になると提灯作りに没頭するという。こうして、職人気質の塊のような
父の背中を見て育った西川さんにはいつしか父と同じような気質が宿る。
そんな和傘屋が洋傘を扱いだしたのも父の代、昭和のはじめ頃から。時代の流れで周
囲の店が扱いだしたのがその理由。やがて洋傘の扱いが増え、現在は、ほとんど洋傘
が中心になっている。
しかし、たとえ洋傘店に様変わりしても、西川さんの職人気質は変わらない。自ら「
傘のお医者さん」を名乗り、修理にも力を入れる。長さやカラーなどが異なる傘骨を
ストックし、より多くの傘の修理に対応する。
「修理は洋傘屋の宿命。直ってお客さんが喜ぶ顔を見るのが一番やりがいを感じる」
と西川さん。
「ピッチ&チャップ ニシカワ」では、仕入れた製品をすべて西川さん自身が検品し
、お店に並べる際に、店名入り特製シールを中棒に貼っている。そして、シール付き
の傘は、修理の一部が無料になったり、新しい傘を購入傘する際に2割引になる下取
りサービスも展開している。
職人気質が騒ぐのか、独自に晴雨兼用傘を企画し商品化するなど、新しい試みにも取
り組んでいる。
「これが結構売れ行きが良くて慌てて増産した。ゆくゆくは『誠太郎』ブランドの傘
ができればと思っている」という西川さんの傘に対する夢は尽きない。
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