傘屋さんへ行こう!

心斎橋みや竹 kasaya.com 傘屋さんへ行こう! 傘のアイバ(東京日本橋) 


Shop Data
 Shop name :傘のアイバ
 Place :東京都中央区日本橋蠣殻町1‐38‐13 
 Tel :03-3666-4413
 Established year :1879年

問わず語りの傘屋の歴史
『傘のアイバ』


日本橋水天宮のはす向い、大通りの向う側に傘のアイバはある。創業明治12年。
当代三代目の店主は相羽、政孝さん。気さくでサバサバとした人柄に、「老舗の主(あるじ)」という紋切り型の表現は似つかわしくない感じもする。

創業者は、相羽さんの祖母。
いい名づけを嫌い、命を捨てる思いで大井川を渡って、故郷の静岡から上京した。はた織りを習い、手縫いで傘を作ったりしていたが、やがて女手ひとつで商いに転じた。
相羽さんが生れる前には、既に鬼籍に入られていたが、時には荒っぽい男たちを向うにまわし店を張り続けた気丈な人だったという。

今、アイバで扱う傘は洋傘ばかりだが、以前は和傘も扱っていた。「このあたりの料亭にもよく納めに行きました」と。
このとき納めたのはお店用の置き傘。傘に屋号を書いて欲しいとの注文も多かった。なかには贔屓のお客さんの名前を入れてくれという注文もあった。
その都度、墨で文字を書いたのは、二代目店主だった相羽さんのお父さん。書家ではなかったが玄人はだしで、提灯や墓参りの手桶に文字や家紋を入れて家計の足しにしていた。


「傘はつゆ先から天井までピンと張ってないとだめ。そうおやじから教わった。今はみな張りが綺麗だけど当時は違った」と相羽さん。 傘は開いたときにすべてが分かるから面白い」とも。兄弟は多かったが店を継いだのは政孝さんご自身。傘を見る眼も父から受け継いだ。 完成品を仕入れて売るだけでなく、職人さんに直接厳しい注文を出していた頃もあった。
そんな相羽さんのモットーは、「自分が気に入ったものを売る」こと。「商品をお客様に渡すとき胸のつかえを感じるのは嫌なんです」

 ちなみにアイバの二階にはシェルブールという喫茶店がある。実はここも相羽さんのお店。もちろん店名は映画「シェルブールの雨傘」からつけた。今、1階は実兄の幸明さんに店長を任せ、相羽さんご自身はシェルブールをきりもりしていることの方が多いという。近くにお越しの際は、ぜひこのシェルブールも訪ねてみて欲しい。さり気ない昔話の中にも、相羽さんの傘に対する思いがあふれている。ここが“傘の名所”であることに違いはない。


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