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今も残る海藻を祭る神事      縄文時代から海藻好きな日本人

カメは神へのお供え物

 出雲地方では今でも神事に「和布(わかめ)刈神事」の行事をとり行っています。

 太陰暦の正月五日(2月21日)、まだ肌寒い潮風が吹き荒れる中、出雲の、日御崎(ひのみさき)神社の裏手にある宇龍港は神事を見物する人たちでにぎ わうのです。

 この神事には次のような縁起があります。  当時、ウミネコがこの神社の欄干に三度にわたってワカメを掛けて飛び去り、 それで、人々は海藻のワカメの存在を知るのです。

 以来、ワカメを神の前に供え、その後は、一般の人たちにもおすそわけされるようになったというのです。

 その故事にちなみ、毎年正月五日にワカメの刈り初めを行い、それを神社に供える様になりました。


穀豊穣を祈る
和布刈(めかり)神事


 旧暦の一月一日、北九州市の門司にある和布刈神社では、深夜、神官が神社の前の海に入り、ワカメ(和布)を刈りとり神前に供える神事が行われます。 刈ったワカメは土器に盛られ、酒や魚とともに神様にささげて、五穀豊穣や航海安全を祈願します。

 この神事は神功皇后(じんぐうこうごう)が新羅(しらぎ)を攻めた三韓遠征のとき、その成功を感謝して、自らわかめを神前に供えたことに由来しているといわれています。


藻を奉納する藻刈(もかり)神事

 三重県二見町の興玉神社では、5月21日、海藻を刈りとって神前に供える、藻刈神事が行われます。

その日、白装束の神官が船に乗り、海藻を刈り取ります。 この神事のあと海藻とりが解禁になります。


塩焼神事 「古代の製塩法は海藻から」にも掲載しています

 宮城県塩釜市の塩釜神社には、藻塩焼神事とよばれる行事があります。

7月4日に藻(ホンダワラ)を刈り取る藻刈神事が行われます。  翌5日には神社の大釜を掃除し、新しい海水に入れ替える水替神事が、そして 6日には、4日に刈り取った海藻に前日の海水をかけ、煮詰めて塩をつくる、 藻塩焼神事が行われます。

 この藻塩焼神事は古代の製塩法をそのまま伝えるものではありませんが、海藻 を使っての塩づくりを知るためのてがかりとなっています。


勢神宮(三重県)・海士潜女神社(三重県)・住吉神社(山口県)・早鞆神社(福岡県)・紫菜島神社(島根県) などで、海藻神事が執り行われています。

これらはいずれも奈良朝以前に起源をもつ由緒ある神宮・神社です。