今、注目を集めているモズク
スーパーでおなじみのモズクは、強いヌメリがあり、酢の物にすると、ほのかな磯の香りと、なめらかな舌ざわりで、酒のつまみなどで喜ばれています。
モズクは地域によってモゾコ、モウゾコ、などとも言われる褐藻類モズク科の海藻です。 たいへん粘り気があり、糸状で複雑に分かれており、長さは30センチほどあるのに、太さは元の部分で1ミリにすぎません。
モズクを生のまま沸騰した湯に通すと真っ青に色が変わります。
酢味噌やからし味噌で食べてもたいへん美味です。
モズクはホンダワラなどの大型の海藻に付着し、九州や本州の沿岸で潮が引く一帯や低潮線などに見られ、春から夏に波が静かなところに自生しています。
険しい清流の岩に付くカワモズクという珍しい種類の藻が、島根県内の中国山地の奥に棲息しています。
海のモズクよりも繊細で、食感は粗いのですが、希少価値の高い”珍味”として人気があります。
日本書紀の出雲神話に「美しい川藻」と印象的に記されているのは、カワモズクだといわれています。
出雲は厳藻(いつも)=神聖な藻が生えているところというのが語源だという説もあるくらいです。
一般に納豆やモロヘイヤなど、ねばねばしている食品は体に良いとされますが、モズクもカルシウム、鉄分、ビタミン、ヨウ素、食物繊維などを豊富に含んでいます。
健康食品として、山口県下関のもずくセンターではモズクスープが評判です。
モズクといえばなんといっても沖縄の特産品ですが、やはりここでもモズク入りスープが人気です。
また、静岡県下田の旅館には「モズク入り雑煮」がお目見えし、静かなブームとなっています。
モズクの強力な殺菌効果
ところで、モズクにはO-157に対する殺菌効果があることがわかりました。
O-157といえば、1996年、日本列島で猛威をふるい、何人もの死者を出した恐ろしい病原性大腸菌のことです。
島根大学での研究で確認されたところによると、三杯酢の中にO-157菌を入れると「菌が減少」なのに、モズク製品の中に入れると37度Cで24時間後に菌は死滅、10度Cでも24時間後に菌は半減し、5〜8日後には死滅しました。
酢は一般的に「大腸菌に対して抗菌作用」があると認められているわけですが、モズクはそれよりもっと効果があるというのです。
これは、モズクの中に含まれているアルギン酸やフコイダンなどの粘質多糖類が作用しているのがわかっています。
フコイダンというのはフコースという糖が多く集まったもので、褐藻類に多く含まれています。
ですから、O-157に勝つためには、モズクに限らず、ワカメやコンブの酢の物など、海藻を利用した酢の物を多く食べることです。
また、モズクから胃潰瘍の薬ができる可能性もでてきました。
最近の研究で、胃潰瘍はヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)が胃の表面の粘膜に結びついて胃潰瘍になるといわれます。
モズクから抽出したフコイダンが、胃潰瘍の原因となるピロリ菌の働きを妨げるのです。
そのほか、モズクはたんぱく質の加熱によって生成する「変異性物質」を吸収し、体外に排泄する作用が海藻の中でもっとも強いこともわかっています。
各地にみられる民間伝承では、モズクの薬用効果として、こぶやはれものに効く、ともいわれています。
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