2022小満の養生法

小満[しょうまん]の養生法

 例年、小満の頃は、初夏の爽やかな季節ですね。農家では田植えが忙しい季節で懐かしい日本の風景です。今年は5月21日から6月5日までが「小満」になります。暦便覧には「万物盈満(えいまん)すれば草木枝葉繁る」と書かれ、陽気が増え万物は少しずつ充満し、オオムギなど夏の収穫作物が実を結んでふっくらとしてくる季節です。
 暦では6/11入梅で、例年ですと次の芒種の期間あたりが梅雨入りの時期です。去年は関西では、観測史上非常に速い梅雨入り宣言でした。今年も沖縄や南西諸島では、もうすでに梅雨入りしているようですが、そのほかの地域では今年はどうでしょうね!?

NEW夏の養生法 ⇒ こちら

今月の癒しの庭園 「東福寺 青紅葉と市松の庭」
 少しでもストレスを和らげていただければと願って京都にある私の好きな庭園などを毎回ご紹介していますが、今日は、東福寺をご案内します。秋のもみじが有名ですが、その季節には紅葉を見に行ってるのか人を見に行ってるのかというほどの人出ですのでまだ人の少ない時期にご案内します。
新緑薫る青紅葉もとても綺麗ですので、ぜひ癒されてください。

臥雲橋から青紅葉越しに通天橋を望む

反対側から見下ろした通天橋

釈迦の八相成道に因んだの八相の庭 

私の大好きな市松模様の北庭と西庭 

どこも鮮やかな新緑に
パソコンに疲れた目が癒されます 

禅問答「これなんぞ!?」

本堂の天井には蒼龍が睨む

 皆さまもぜひ日頃のストレスや疲れを癒しに、自然な緑や花を見に野山や潮騒の香りに癒されに海辺などに行ってください。
自然からとても良い正気を補え、それが自己免疫力のアップに効果的です。
お寺や神社など自分が癒されるパワースポットでしばらくゆったりした時間を過ごして正気をたっぷり補いましょう。24時間の間に出来るだけ多くの時間、自分の五感を喜ばしてあげましょう。カラダは素直に反応します♪ 


小満の養生法
 さてさて、夏の養生の前に、この季節は梅雨の養生法が大切です。
季節の変わり目の春夏秋冬の各土用梅雨、そして五臓ではが、五行論の同じに属しますので、この季節や期間は湿邪から身を守り脾を健やかにする「健脾利湿」が養生法になります。健脾利湿の養生法は何度も書きましたので、耳にタコの方もいらっしゃると思います。 


 中医学では、「怪病多痰」や「百病の多くは痰に因りて祟と作す」などと言われ、原因不明や完治する治療法がない難病などは、が原因となっていることが多いと認識されています。今回は、さまざまな病気の原因となるについてのお話しです。
 とは、本来カラダの中にはない病理物質ですが、気の鬱滞陽気の不足情志の不暢などによって生命活動を営むために必要な水分の津液(しんえき)が正常に運化されず湿邪となり、さらに湿邪が内停・凝集して発生します。  津液は陰に属し、陽気の蒸化によって全身を巡り、臓腑や粘膜を潤し、全身の関節や筋肉をスムーズに動かし、皮膚や髪や爪などを艶やかにしています。陽虚体質(陽気が不足)となり津液を蒸化出来なくなると巡りが滞り湿邪となってやがてが発生します。六淫外感、七情損傷、飲食不摂生、過労損傷、生活習慣の乱れなどは痰や瘀血を招きます(津液や血の巡りを悪くする)。特に飲食不摂生では、脂っこい物、味の濃い物の過食、節度の無い飲酒は湿が滞って熱(湿熱)と化し、逆に冷たい物や生もの(野菜やフルーツも含めて)ばかり飲食していると寒痰と化したり、暴飲暴食や極端な空腹や満腹を繰り返していると脾胃が損傷し運化機能が失調し津液の巡りが滞り湿邪となってやがてになります。
何度もうるさいほどに健脾利湿脾の養生をしましょうと言ってるのは、恐ろしい痰を防ぐためなのです。

 は、ひとつのことが原因で生まれる物ではなくさまざまな要因が重なって生まれます。どの臓腑が失調してもの原因となりますが、特に痰の発生には肺・脾・腎・肝・三焦の働きの低下によるとされます。脾虚(脾の働きの低下)になると津液の運化が正常に行われなくなり湿邪となり、その状態が続くと湿邪が集積してとなるので「脾は痰を生む源」と言われます。
 そして「痰は百病を生む」とも言われ、が原因とされる疾患や病気は非常に広範囲です。 
【一般的な痰証】咳嗽、喘息、下痢、嘔吐、動悸、胸の痛み、脳卒中、痴呆、めまい、不眠、肥満、関節炎、湿疹やヘルペスなどの皮膚病、しこりやコブ、リウマチや掌蹠膿疱症、膠原病、アトピーや花粉症、鼻炎などのアレルギー、対人恐怖症や過呼吸症候群、潰瘍性大腸炎やクローン病、膀胱炎など、
【婦人科】無月経、不妊、帯下(おりもの過多)など、
【小児】喘息、気管支炎、副鼻腔炎、嘔吐や下痢、癲癇やけいれん、ひきつけの発作、夜泣きやうつ病、肥満や湿疹などの皮膚疾患など、
【高齢者】認知症、不眠、めまいなど、に及びます。

 

 思い悩む感情もを傷めます。周りからどう思われてるだろうと気にし過ぎたり、これはこうじゃなくちゃ気が済まないというこだわりの強すぎる性格の人は脾虚が多いです。日本人は四方を海に囲まれ湿度も高い気候なので、脾虚の人が多いと言われています。あまりクヨクヨ思い悩まず時には開き直ったり、こだわり過ぎず柔軟に対応するように心掛けるとお腹の弱い脾虚体質も改善するかも!? ですね。


周りを意識し過ぎない

脾を健やかに保つ養生法
 中医学の治療では、痰証の性質や状態により、寒痰、熱痰、湿痰、燥痰に分類され、それぞれ温化寒痰薬、燥湿化痰薬、清火熱痰薬、去風化痰薬、潤燥化痰薬などの漢方薬が処方されます。
やはりきちんと体質チェックををして、自分のカラダがどの状態かを知って治療法や予防策をたてることが大切です。

 

養生法で脾の働きを高めよう
 津液を巡らせるためには、まず気を巡らさないといけません。気を巡らせる為には、ストレス、過労、睡眠不足、運動不足を避けること
まず気の巡りを調えてから湿邪を除去します。 

 

働きを低下させない養生法
 冷たい飲み物(甘いジュースや炭酸飲料、ビール、ハイボール)、脂っこい食事や生もの(サラダ、フルーツ、お造りなど)、ケーキやお饅頭、おかきやスナック菓子など甘味の食べ過ぎを避ける。

 

働きを高める養生法
 大根芋類などの中で育つものは脾と同じ五行のに属するのでを補います。(根菜類は出来るだけ消化しやすいように温かく柔らかく調理しましょう)。
 そしてはと麦、緑豆、小豆、瓜類なども健脾の食べ物で、余分な湿邪利湿します。(ただしいずれも涼性なのでお粥など温かくして食べるのがオススメ)
 また、生姜・ネギ・ニンニクはお腹を温め水分を飛ばす働きがあり、脾の果と言われるナツメ蓮の実脾気を補うのでオススメです。

 

ツボや経絡ストレッチ、薬草入浴などで健脾
 喜燥悪湿と言い、雨降りの日や湿度が高いと、体や頭が重だるいとか関節が痛む湿疹や肌荒れ、下痢やむくみがひどくなるなど体調が悪化するという人は、やはりの働きが低下し湿邪が旺盛だと考えられます。を冷えから守り、湿邪を溜めないように気をつけ、水の巡りを調えて、お腹の働き(消化)を低下させないようにしましょう。
 もう一度復習…健脾利湿要穴(ツボ)をご紹介。お灸やカイロで温め、ツボ押しで心地良い刺激でマッサージ♪

 心地良い強さでツボ押し

 真向法やヨガなどでも取り入れられていますが、カラダの前側を通る脾経経絡をストレッチでよく伸ばしましょう。脾経を伸ばすとの働きが高まります。(※良く伸びると食べられるようになるので、食べ過ぎに注意してね)

 呼吸法を使って脱力してカラダの緊張をほぐす

 このように健康に過ごすためには、湿を溜めてを発生させないために普段から健脾利湿の養生法が大切です。
 これから梅雨に入り湿度が高くなると、カラダの外側も内側も湿気がいっぱいになってきます。
 を健やかにして津液の流れをスムーズにしておかないと、停滞して湿邪となり熱や冷えなどと結びついてに変化し病気の元になってゆきます。
 の働きを低下させず高める食べ物を摂り、お腹や脚にある脾のツボをお灸やマッサージで刺激して働きを高め、津液の巡りを調えましょう。
 ヨモギやかつ香などの薬草がたっぷり入った薬草風呂で芳香浴。しっかり温まって痰を追い出しココロとカラダをリフレッシュしましょう。

 そして湿邪を取り除いて津液の巡りを調えてくれる薬膳茶や、脾を補って働きを高めてくれる薬膳食材を摂り入れて、湿邪や痰が溜まるのを防ぎましょう。

 お気に入りの薬膳茶で健脾利湿を


京都伝統中医学研究所の"小満におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

1.「紅花栄」(べにばなさかう)七十二候では小満次候の5/26ごろ  
 紅花 (べにばな)【辛/温、心経・肝経】キク科ベニバナ属の植物で英名サフラワー。実際にベニバナが咲き誇るのはもう少し先で6~7月の初夏のころです。 昔から口紅や着物の染料などに使われてきましたが、生薬ではコウカと呼び、血の巡りを調える効果があり、活血化瘀の理血薬として「血の道証」の生理痛、生理不順、無月経などに用いられてきました。
 研究では紅花に含まれるポリフェノールの一種「リグナン」に、ホルモンバランスの調整作用があることがわかっています。
※ただし妊婦、月経過多の人は禁忌です。
 紅茶や烏龍茶にブレンドして紅花茶やトマトソースのパスタ、パエリア、焼きそば、また鶏団子やハンバーグ、餃子などに混ぜたり、サフランライス、焼酎などに浸けて紅花酒(料理酒としてもOK)などいろいろな調理法でお召し上がりいただけます。 紅花を使用したオススメの薬膳茶&薬膳食材は、「紅花」、「気血巡茶」など。 

 

2.「健脾利湿」お腹を冷やさないようにして、水の巡り良くして湿を溜めない薬膳茶&食材 
 を健やかにすると水の巡りが調い、むくみや水太りが解消しダイエットにも効果的。元気が無いからといって無理に食べるのは、かえっての負担を増やし働きを低下させます。
 薄着や冷房で外側から冷やすのにも注意が必要です。乗り物や公共の場には一枚羽織れるものを用意して出かけましょう。そして弱いままじゃ困るとカラダに実感させるために、少し疲れるぐらいにしっかりと活動し、夜中まで夜更かしやスマホはやめてぐっすり寝て脾気を補いましょう。
気を補う食べ物を温かく柔らかい料理にして食べて「」を強くしていきましょう。
オススメの薬膳茶
は「水巡茶」、「気血巡茶」、「そろそろダイエット茶」、「なつめ薬膳茶」、「全部食べる薬膳茶」など。
オススメの薬膳食材は「なつめ」、「蓮の実」、「はと麦」、「竜眼」、「山査子」、「緑豆」、「松の実」、「桂花」、「マイカイ花」、「いろいろお豆のスィーツセット」をお粥で。 
「特製煎りなつめ」、「八宝果仁豆」などもおすすめ。

3.漢方入浴剤
?.ヨモギがたっぷり入った「ポカポカあたため乃湯」もカラダが温まりココロの緊張もほぐれ気の巡りを促進。

ヨモギは漢方で艾葉(ガイヨウ)と言い、古来から擦り傷や切り傷など出血時に止血薬などとして使われたり、浄血や造血、デトックス作用(むくみの改善)、冷え性改善、美容効果があり、最近では「よもぎ蒸し」なども流行っていますね。

 

?.藿香(かつ香)がたっぷり入った「スッキリさっぱり乃湯」でジメジメとうっとうしい気分もスッキリ。
 藿香は、お腹を温め、湿を追い出冷たい物の飲みすぎ食べ過ぎで傷めた脾胃を補ったり夏カゼの予防など。漢方薬の「藿香正気散」でよく使われます。アロマではパチョリと呼ばれオリエンタルでエキゾチックな香りで人気があります。藿香に生姜や陳皮をブレンドして冷房などで冷えたカラダを温め、爽やかな香りでリラックス。


 いよいよこれから夏至に向けて陽の気がどんどん多くなります。
春の気は「生」、夏の気は「長」、万物はどんどん生長を続けます。私たちもこの春夏の「気」に合わせて過ごすことが天人合一です。

 

中医学の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
商品は下記ショップでお買い求めいただけます。
京都伝統中医学研究所 楽天市場店

https://www.rakuten.co.jp/iktcm/

 

 中医学は難しい理論などもありますが、それよりも実際に暮らしに活かせる養生法や薬膳など健康に生きる知恵が満載です。 
専門用語や四文字熟語などもたくさん出てきますが、出来るだけわかりやすくお伝えしますので、少しでも実際の暮らしに活かしていただき、皆さまがより穏やかに健やかに過ごしていただきたいと願っています。

 

6月6日は「芒種」です。徐々に梅雨入りして、湿邪がカラダの外にも内にも多くなります。胃腸の働きを低下させないように心掛け、を補って湿邪の対策をして健やかにお過ごしください。食中毒にも気をつけてくださいね!

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