2022立夏の養生法

立夏[りっか]の養生法

 今日から「立夏(りっか)」です。いよいよ春に別れを告げ、これから夏の始まりですね。
 5月5日から5月20日までが立夏です。自然界を覆う主気は生長の「」、そして季節の気は「」になります。暦便覧には「夏の立つがゆへ也」と書かれ、野山が新緑に彩られ夏の気配が感じられるようになります。
 九州から東北地方にかけては、立夏から芒種までの約1か月ぐらいは一年で一番爽やかで過ごしやすい季節になります。新緑が映え、気温も25℃ぐらいで爽やかな風が吹き、軽い上着で過ごせ、夜も眠りやすい季節ですね。

 少しでもストレスを和らげていただければと願って京都にある私の好きな庭園などを毎回ご紹介していますが、今日は、宇治平等院をご案内します。子どもの頃宇治で育った私はこのあたりにもよく遊びにも行きました。
今回はGWの少し前にに行きましたが、樹齢300年と言われるノダフジがちょうど満開でとても綺麗でした。雨上がりで10円硬貨の裏に描かれた国宝鳳凰堂の屋根上の鳳凰も青空に良く映えていました。

NEW梅雨の養生法 ⇒

 樹齢300年のノダフジ 

1mを超える長さのノダフジの花房

池に映る平等院鳳凰堂 

 もう一枚は、円山公園の枝垂桜です。こちらも京都の桜と言えば良く登場する有名な枝垂桜ですが、撮影した日は4/8でもう満開ではなくなっていましたが当日は青空に映えとても綺麗でした。

青紅葉や睡蓮も美しい 

 970年ほど前に藤原頼道によって建立された鳳凰堂ですが、悠久の歴史を感じます。お堂の中には安らかに死を迎えられるように阿弥陀如来とともに西方浄土から雲に乗って来迎された52躯の雲中供養菩薩がさまざまな楽器を奏で舞を舞っておられます。
 人間、平等にいつかは死を迎える時が来るでしょうが、天寿を全うし菩薩に迎えられて安らかに天に召されたいですね。そのためには「陰徳」を積むことが大切と教えられています。陰徳とは、人知れず世のため人のために役立つことをすることです。人それぞれに役割がありますから、自分の出来ることで陰徳を積みましょう。
 忙しくてストレスフルな毎日でしょうが、少しでも時間を見つけてお近くの心が穏やかになるところにお出掛けください。それが60兆個の細胞を癒す秘訣だと思います。


立夏の養生法
 立夏は、太陽黄経が45度になる時で毎年だいたい5月5日か5月6日ごろになります。この日から夏のが立ち、気温が高くなり雨が多くなり、田植えがはじまる時期で、この時期の降水量が収穫と密接に関係します。
 5月5日は、日本では「子どもの日」で端午の節句で男の子の節句ですね。
 端午節は中国で生まれ、龍頭船の競争やちまきをつくったり菖蒲を飾ったりする習慣が現代にも残っています。

日本でも各地でも行われるドラゴンボートレース

 端午節の竜船競争やちまきのはじまりには、諸説あるようですが、その一つに春秋戦国時代に楚という国に屈原(くつげん)という宰相がいました。西方の秦と争っており、屈原は東の斉と同盟を結び秦と対抗すべきだと懐王に進言しますが、反対派の謀略に合い王から遠ざけられ、屈原の進言は受け入れられず、やがて屈原の進言した通り懐王は秦の罠に引っ掛かり秦に滅ぼされることになるのですが、屈原は楚の将来に絶望して左遷された江南を流れる汨羅江(べきらこう)という川に身を投げて自殺しました。
 川の周辺の民衆たちは、屈原を救おうと一斉に川に船を漕ぎ出し、また屈原の身体が魚に食べられないようにとあたりに米を投げ入れたことが、竜船競争(ドラゴンボートレース)やちまきを食べる習慣になったそうです。

 なつめ入りの中華ちまきも人気

 また、「」は始まるという意味で「」は五月のことを表します。
5月5日は立夏で、夏の始まりで気温も上がり感染症などの疫病が流行りやすい時期になりますが、中国語の「五月五日」(wǔ yuè wǔ hào)の発音と「悪月悪日」という発音と似ていて不吉な日だとして疫病を追い払うために、菖蒲の持つ強い香りが邪気を祓うとされ邪気払いに菖蒲やヨモギを玄関に飾ったそうです。
 それが平安時代に日本に伝わり、宮中で端午の節会が行われたり、鎌倉時代に武家社会になって「菖蒲」と「尚武」(武を貴ぶ)が同じ「しょうぶ」と読むことから武家の男子が逞しく成長することを願い、当時の風習を残しながら、やがて形を変えて庶民に広まり鯉のぼりや兜を飾り、ちまきを食べ菖蒲のお風呂に入るなど日本風にアレンジされて今日に至るまで続いています。  
 邪気祓いに用いられた菖蒲の独特の香りには、芳香療法としての効果もあり、心身ともリラックスする菖蒲湯だけでなく、お酒に浸して飲んだりもしたそうです。菖蒲湯はリラックスのほか血行促進効果があり、肩こりや腰痛、神経痛などを和らげるとされ家族みんなで楽しめますね。

 中国では、旧暦で行われるので今年では6月3日が端午節になります。
この頃には中国の江南地方では日本と同じ梅雨になっているので、やはり生ものは腐りやすくカビやウィルスなども繁殖しやすく病気になりやすいことから邪気を祓って病気を予防しようという思いから庶民の年中行事として今でも根付いているのでしょうね。

 菖蒲とヨモギを束ねて玄関や軒先に飾って邪気祓い

菖蒲やヨモギ、藿香などの香袋で未病を治す
 中国江南地方では端午の節句に香袋を作ってポケットに入れたり枕に入れたりするそうです。
香袋はさまざまな種類があるようですが、主に蒼朮・艾葉(ヨモギ)・藿香(かつこう)・白芷・丁香など、理気・散寒・健脾・化湿・通竅の作用がある生薬を少量ずつ袋に入れて作ります。

 艾葉(ヨモギ)は、ヨモギ餅やヨモギ団子、ヨモギパンとして人気ですが、中医学でも非常に良く使われます。昔から温経止痛・散寒止痛・除湿止痒などの効果で知られ漢方薬やお灸に使われます。
 独特の香りがあり、入浴剤として用いると浴室全体にヨモギの香りが充満しそれだけでも芳香浴として癒されますが、皮膚病の予防効果があり湿疹や汗疹の予防としても使われます。

 藿香(かつこう)は、アロマでは「パチョリ」と呼ばれオリエンタルでエキゾチックな香りで人気ですが、シソ科の植物で解熱、鎮吐、健胃作用の生薬として「藿香正気散」や「香砂六君子湯」などに配合されています。
藿香正気散は、冷たい物の摂り過ぎで弱った脾を補い、お腹を温め湿邪を発散させてくれ、夏カゼや夏バテにも効果的です。

 中国の病院では、手足口病の予防に藿香やヨモギで毎日30分間部屋を燻すことをすすめているところもあるそうで、普段からヨモギや藿香の入った入浴剤やお香を炊いていると、邪気を祓い病気の予防になるのでオススメです。
(ただし、マンションなど現在の住環境で「燻す」と部屋中が煙だらけで火災報知器に影響したり、服などにも匂いがついたりするのでくれぐれも気をつけてお試しください。)

 香袋や薬草を燻して匂いや煙で邪気を祓う

 湿邪に弱った脾の働きを補う「平胃散」という漢方薬に配合される蒼朮(そうじゅつ)という生薬は、植物名ではシナオケラと言います。同じおけらの仲間でオオバナオケラと呼ばれる白朮(びゃくじゅつ)も、同じく健脾作用があり四君子湯、補中益気湯など脾虚薬として有名な漢方薬に用いられます。お正月にいただくお屠蘇は実は屠蘇散という漢方薬で、これにも白朮が用いられており、京都では大みそかには八坂神社にお参りして火縄に移した火を持ち帰りこの火でお雑煮を炊いて新年を祝い無病息災を願うという習慣があり、これを「おけら参り」と言いますが、八坂神社の白朮祭(おけらまつり)という神事で疫病除けになると信じられているそうです。

 芳香療法や温浴療法に良く使われる薬草

 薬草入りのお風呂は長い歴史があります。中国では3000年以上前からすでに薬草を使って体を清潔にすることが始まり、やがて香湯浴や芳香浴を使った行水が行われるようになりました。春節には五香湯に入浴して全身から良い芳香を放ったり、旧暦2月2日の「中和節」ではクコを煎じたクコ湯で筋肉や皮膚を艶やかにして病気を遠ざけ、夏には五枝湯で風邪を追い出し邪気を取り除き血筋を養って季節ごとに薬草風呂を楽しんだようです。
 日本でも端午の節句の菖蒲湯や冬至の柚子湯、女性に人気の当帰湯、よもぎ湯などいろいろな薬草を浮かべてお風呂に入るのが好きですね。
 薬草風呂は、温熱効果がさらに高まるとともに皮膚や呼吸器から薬草の成分を吸収して、経絡を疎通させ、血の巡りを促進し、瘀血を取り去り、風邪を追い出し、余分な熱を取り除いて解毒し、湿邪をなくして痒みを止めるなどの効き目があります。また女性にとっては美容と皮膚に効果的な薬草を選んで入浴することで、顔や肌が白くきめ細かくなり、体から良い香りが漂い邪気を追い払うと考えらました。

 

日本人も大好きな柚子湯や菖蒲湯、ヨモギ湯

 各地にそれぞれの土地に根付いた文化や行事があると思いますが、こういったことも昔からその土地に住む人たちの知恵でしょうから、大切に繋いでいきたいですね。

 


京都伝統中医学研究所の"立夏におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

1.「健脾利湿」におすすめ薬膳茶&食材
   薬膳茶では、「水巡茶」、「そろそろダイエット茶」
   薬膳スープでは、「美潤湯スープ」など
   薬膳食材では、「新彊なつめ」、「はとむぎ」、「緑豆
   薬膳スィーツでは、「いろいろお豆のお汁粉セット」、「八宝果仁豆」など 

 

2.「健脾利湿におすすめ」全部食べられる薬膳茶2種 

スィーツのような薬膳茶
?.「調補気血茶 桂棗黒豆茶」

 紅棗片、黒豆、竜眼をブレンド
 お湯を注いでそのまま放置(長めに抽出)
 脾(お腹)をメンテナンスし働きを良くして消化吸収を高め、気血を補う。黒豆が香ばしく、なつめや竜眼の自然な甘味があり、とても美味しい全部食べられる薬膳茶

 

?.「健脾利湿茶 意棗紅豆茶」

 紅棗片、小豆、薏苡仁(はと麦)
 お湯を注いでそのまま放置(長めに抽出)
 脾(お腹)をメンテナンスし働きを良くして水の巡りを調え、湿邪を排出し肥満やむくみを改善。とっかん小豆(ポン菓子)を使用しているのでこちらは砂糖が使われています。
どちらも、まるでお汁粉やぜんざいなどスィーツのような全部食べられる薬膳茶。

3.漢方入浴剤
?.ヨモギがたっぷり入った「ポカポカあたため乃湯」もカラダが温まりココロの緊張もほぐれ気の巡りを促進。

ヨモギは漢方で艾葉(ガイヨウ)と言い、古来から擦り傷や切り傷など出血時に止血薬などとして使われたり、浄血や造血、デトックス作用(むくみの改善)、冷え性改善、美容効果があり、最近では「よもぎ蒸し」なども流行っていますね。

 

?.藿香(かつ香)がたっぷり入った「スッキリさっぱり乃湯」でジメジメとうっとうしい気分もスッキリ。
 藿香は、お腹を温め、湿を追い出冷たい物の飲みすぎ食べ過ぎで傷めた脾胃を補ったり夏カゼの予防など。漢方薬の「藿香正気散」でよく使われます。アロマではパチョリと呼ばれオリエンタルでエキゾチックな香りで人気があります。藿香に生姜や陳皮をブレンドして冷房などで冷えたカラダを温め、爽やかな香りでリラックス。


 いよいよこれから夏至に向けて陽の気がどんどん多くなります。
春の気は「生」、夏の気は「長」、万物はどんどん生長を続けます。私たちもこの春夏の「気」に合わせて過ごすことが天人合一です。

 

中医学の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
商品は下記ショップでお買い求めいただけます。
京都伝統中医学研究所 楽天市場店

https://www.rakuten.co.jp/iktcm/

 

 中医学は難しい理論などもありますが、それよりも実際に暮らしに活かせる養生法や薬膳など健康に生きる知恵が満載です。 
専門用語や四文字熟語などもたくさん出てきますが、出来るだけわかりやすくお伝えしますので、少しでも実際の暮らしに活かしていただき、皆さまがより穏やかに健やかに過ごしていただきたいと願っています。

 

次回は、5月21日「小満」ですね。沖縄や南西諸島では梅雨入りの季節。
梅雨入りまでのひと時が一番爽やかな気候ですね。すこしずつ夏の気に慣らしながらお過ごしくださいね~!

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