2022夏至の養生法

夏至[げし]の養生法

 夏の4番目の節気。今年は6月21日から7月6日(小暑の前日)までの2週間が「夏至」です。暦便覧には「陽熱至極しまた、日の長きのいたりなるを以て也 」とあります。一年で一番日中が長い時期で、冬至と比べると昼間の時間が4時間ほど長くなりますね。夏至が「陽」のピークで 「陽 極まれば陰に転じ、陰 極まれば陽に転ず」 陰陽論からみると、気質が変わる大きな節目の節気ですね。実際の気候ではこれからいよいよ暑くなり活動的な夏本番が来る感じですが、私たちを覆う自然界の気は、陰遁(いんとん)といって「陰」が少しずつ多くなり、天地は冬至までの間、「陰の気」が少しずつ増えその影響を受けて過ごします(今年の隠遁始めは7/10で夏至からは少しズレがあります。)旧暦の6/21は今のカレンダーでは7/19になります。その時期が夏至なら肌感覚としてなんとなくわかるのですが、梅雨の真っ最中に夏至と言われてもピンときませんね。

 

 そしていよいよ北海道を除く日本全国で梅雨に入りましたね。沖縄は逆に間もなく梅雨明けでしょうか!?京都では例年祇園祭の頃が梅雨明けなので、約一ヶ月間ジメジメと湿度の高い蒸し暑い日が続きます。日々の気候や気温、自分の体調に合わせた体調管理が大切です。
 梅雨に入りますます湿度が高くなり、さらに気温も上がり蒸し暑くなります。中国の北京や洛陽などでは日中の気温は上がるようですが、乾燥していてまた朝晩は気温も低くなるようで、やはり日本では不快指数が上がりますね。

カエルが元気に飛び跳ねて

 うっとうしい梅雨空が続き憂鬱な気分になりますが、古来、雨は万物を育てる慈雨とされ「雨は天の神様からの贈り物であり、雨が降らないのは神の罰」と考えてきたそうで、イスラムや古代ローマでも雨乞いの儀式が行われたそうです。京都にも神泉苑というお寺がありますが、ここは1200年前に空海が雨乞いの修法を行い日本中に雨を降らせたとされています。
 大雨で洪水や土砂崩れなどの災害も困りますが、空梅雨で雨が降らなくなると水不足になりお米などの農作物が育たなくなりますね。適度に降ってくれるのがちょうど良いのですが…今年の梅雨はどうでしょうね。天気予報に注意してくれぐれも大雨には気をつけてお過ごしください。

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今月の癒しの庭園 「宝泉院 盤桓園と鶴亀庭園」
 少しでもストレスを和らげていただければと願って京都にある私の好きな庭園などをご紹介していますが、今日は、宝泉院をご案内します。
宝泉院は、皆さまご存知の京都大原三千院の少し奥にある勝林院の坊で平安末期に天台宗の声明を極めるために建てられた建てられたそうです。
盤桓園とは立ち去りがたいという意味だそうで、客殿からは柱を額縁と見立てて竹林の間より大原の里の風情を楽しめます。山崎豊子の小説「不毛地帯」の中に、夕日に染まる幽玄な世界の情景が描かれています。
私が伺ったときは開門間もない時間だったので残念ながら夕景は見れませんでしたが、緑がどんどん濃さを増し目を癒してくれました。

額縁庭園「盤桓園」

 左手には同じように額縁から見るお庭が続いており、そこには全体が見えず何の木かわからない太い幹だけが見えています。

蛸の足のような太い幹

反対側から見ると近江富士をかたどった立派な五葉松の姿が現れる

 この蛸の足のような太い幹は、樹齢700年と言われる五葉松で、京都市の天然記念物で近江富士をかたどっているそうです。

まだ蕾の固い樹齢300年の大きな沙羅双樹

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず。ただ春の夜の夢の如し…」
 今回このお庭をご紹介したかったのは、平家物語の冒頭にも語られる沙羅双樹があるからだったのですが、残念ながらまだ蕾が硬く一輪も咲いていませんでした。京都市内にある沙羅双樹はもうすでに見ごろを迎えていますが、やはり大原はそれだけ寒いみたいで6月末ごろが見頃を迎える頃でしょうかね。
 沙羅双樹の花の色は、栄える者は必ずや衰え滅び長くは続かないというこの世の定理をあらわしている。世の儚さですね。こだわりを捨てるのも一つの方法かも知れませんね。

鶴亀庭園の奥に樹齢300年の立派な沙羅双樹が聳える

お庭を見ながらお茶を一服

 ここでは紹介しきれませんが、宝泉院の中には宝楽園という枯山水の素敵なお庭もあります。帰りに三千院にも足を延ばしましたが、紫陽花園が見ごろになっており、こちらはもうたくさんの人がお参りされていました。宝泉院は人影もまばらでしたが、ほんの少し歩けば素敵なお庭を拝見できるので、ぜひ京都にお越しの際には訪ねて欲しいお寺です。
今日も五感をたっぷり癒せて幸せな感覚に浸れました。


夏至

二十四節気の一年

 さて、「気候」という言葉を調べると、その土地や地域を特徴づける大気(気象)の状態とありますが、国立天文台のホームページには、5日間の自然現象や生物の行動などを表すものを「」と言い、候は初候・次候・末候と3つあって3つ合わせて「」と言うと書かれてあります。一年間に候は72あり七十二候となり、気は24あって二十四節気で一年を巡ります。七十二候も中国から伝わりましたが日本の気候とはかなりズレがあったため、江戸時代初期の天文暦学者渋川春海が日本の日付や風土に合わせた季節を表す言葉に変え今に伝わり、人々はその言葉で季節を知り、農作業の目安を中心に、その季節に合わせて生活を営んできました。季節の移ろいを感じられ、風景を思い起こしたり趣があって心が和みますね。

二至二分

 太極から陰陽の二気が生まれ、そこから陽が極まる夏至(太陽)と陰中の陽(小陽)の春分、陰が極まる冬至(太陰)と陽中の陰(少陰)の秋分の二至二分が生まれます。
あらゆる事象は陰陽二気の関係性の変化によって起こると考え、絶えず変化しながらも一定の法則にしたがっています。毎日、必ず朝が来てやがて日が沈みますが太陽が西から上ることはなく、また、毎年、必ず春夏秋冬と季節は移り変わりますが逆回転することもありません。当たり前のことですが、壮大な自然の営みです。
 私たち人間もこの影響を避けることは出来ず、宇宙や地球の一員として自然の営みの影響を受けて生命活動を営んでいます。(天人合一)

夏至(げし)の養生法

 北海道を除く日本全国が梅雨入りし、雨が降っていなくても蒸し蒸しと蒸し暑い日が続き、また梅雨前線の動きで大雨が降ったりします。
カラダの外側にも湿邪がたっぷり、カラダの内側にも湿が満々って感じで、バケツの中のスポンジ状態です。洗濯物もなかなか乾きにくい時期です。   
 私たちのカラダも同じような状態になっています。脇や股などにも汗をかきやすいし、耳掃除をするとネバネバジュクジュクだったりします。それだけでもカラダの内側にも湿が旺盛になっているのがわかります。
 雨降りや湿度が高い日は、頭が痛いとか重い、食欲がなかったり吐き気がある(嘔吐く)、痰が絡む、眠い、むくみやめまいなどが起こります。 

 今まで何度もお話ししてきましたが、やはりこの季節の養生法には「健脾利湿」が最も大切になりますね。
健脾利湿は、脾を健やかにすることと津液(水)の巡りを良くして湿が溜まらないようにすることです。脾が健やかでないと湿が溜まり湿邪となってさまざまな悪さをするからです。
 湿邪はほかの邪気と簡単に合体しやすく、特に寒邪と結びついた寒湿タイプ熱邪と結びついた湿熱タイプがあります。漢方薬でもそうですが薬膳でもどちらのタイプかで処方が変わります。温めて水を巡らす食材か?熱を冷まして水を巡らせる食材か?を選ぶことが大切ですが、同じ食材ばかり毎日食べ続けられないので、寒涼性の利湿食材を食べる時は温熱性の食材と一緒に食べるとかサラダなど生で食べず揚げたり煮込んで温めて調理して食べるように工夫しましょう。
 雨降りや湿度の高い日に体調が悪くなったり、頭重やむくみが気になる人はまず体質チェックをして自分の湿邪が寒湿(湿痰)タイプ湿熱タイプかを知り、それに合った対応をしましょう。


自分の今の体質を知ることが大切


 脾の働きを健やかにし余分な水の巡りを調えてくれる食材として、今が旬の「とうもろこし」があります。スーパーなどにもたくさん出回っていますね。炭水化物やたんぱく質、脂質が豊富に含まれ、自然な甘味があり、脾気を補います。また「とうもろこしのひげ」【甘/平、肝・腎・膀胱・心・小腸】は、漢方では玉米髭(ぎょくべいじゅ)や南蛮毛(なんばんもう)と呼ばれ、むくみを取り水を巡らせる利水滲湿薬として用いられます。
皆さん「髭」の部分は捨てていると思いますが、この「髭」にはシトステロール、スティグマステロール、硝酸カリウムという成分を含み体内の水分を調整しむくみを改善する作用があり、高血圧や結石の予防にも効果的。血圧高めの人や結石が出来やすい人は、普段から「とうもろこしのひげ茶」をお茶代わりに飲むのがおすすめです。最近の研究ではアトピー性皮膚炎や花粉症などアレルギーの抑制効果もあるとも言われています。某朝の情報番組によると、「髭の本数が多いほど中の実も多い」とか「髭の色が焦げ茶色になっているほど中の実は熟して甘味がのっている」そうです。トウモロコシの髭茶にする場合は、とうもろこしの髭を、よく洗って日陰の風通しの良いところで天日干しして乾燥させたら出来上がり。陳皮もそうですが、ご家庭で簡単につくれます。

 また、この時期は「はと麦」【甘・淡/微寒、脾・胃・肺】もオススメ食材です。余分な熱を冷まし、脾の働きを高め、水の巡りを調える効果がありこの季節にピッタリ食材。湿気によるむくみやカラダの重だるさ、下痢、神経痛、リウマチなどに効果的。こちらも漢方では薏苡仁(よくいにん)と呼ばれ水腫や湿熱痺による関節のこわばりに用いられます。昔からイボ取りやシミ、そばかす、肌荒れなどの美容、美白食材としても使われてきました。はと麦ごはんに山芋をスリおろしてはと麦の麦とろご飯なども利尿効果や美容効果満点のご飯です。

 もう一つオススメは「緑豆(りょくとう)」【甘/寒、心・胃】。こちらもりょくずと呼ばれる漢方薬で去暑薬として消暑止瀉や清熱解毒に使われます。熱中症や暑気あたりの予防効果があり、台湾や中国などでは、お父さんが仕事から帰って来たらまずこの緑豆湯(緑豆スープ)を一杯飲んでカラダの余分な熱を冷ますそうです。夏場には緑豆粥として朝食でも良く食べられます。

 「小豆(あずき)」【甘・酸/微寒、心・小腸】も赤小豆(せきしょうず)と呼ばれる漢方薬で利水消腫、利湿退黄、清熱解毒に使われます。利尿効果が高く浮腫みやめまいの予防改善効果が高いですが、砂糖タップリのおぜんざいは食べ過ぎると糖分取り過ぎになるので注意です。

 「冬瓜」【甘/微寒、肺・胃・大腸・小腸】の皮の部分も冬瓜皮(とうがひ)と言いますが、冬瓜の中の果肉は煮物などのお料理に使いますが、実は外の皮がこの冬瓜皮という漢方薬になります。一番外側の緑の濃い固い皮はピーラーなどで剥いて、薄い緑色になったところから果肉までの部分が冬瓜皮(とうがひ)として清熱や利水消腫、つまり余分な熱を冷ましたり浮腫みの解消に効果的です。料理としてはお漬物やピクルスなどとして食べられ、たくさんレシピが出ていますので参考にして見てください。

 小豆と冬瓜を一緒に煮てスープにしたり、小豆とはと麦のお粥緑豆と小豆のお汁粉などこれらの食材を組み合わせていろいろ食べ方を工夫して楽しみながら健脾利湿を実践してきました。ちょっと浮腫みがひどいなぁとか頭が重いと感じたり、雨の日はしんどいという方はこれらの食材を使って献立を考えると少し元気になるかも知れません。
 
 ただし、どの食材も夏場や暑い地域で採れる野菜などは寒涼性でカラダの熱を冷ます性質の食材が多いです。暑い時期や暑い土地ではそういった食材で余分な熱を取り体の陰陽を調えてきたのですね。
 特に脾陽虚証でお腹が冷える下痢や冷え性の人、頻尿気味の方は食べ過ぎに注意し、カラダの様子を見ながら摂り入れるようにしましょう。

 健脾利湿の食べ物


京都伝統中医学研究所の"夏至におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

1.「全部食べられる薬膳茶」2種 
調補気血茶 桂棗黒豆茶(けいそうくろまめちゃ)」と「健脾利湿茶 薏棗紅豆茶(いそうべにまめちゃ)」
 少し長めにしっかりと濃いめに抽出し、中味もすべて食べられる飲むスィーツのような薬膳茶です。砂糖など入れなくても自然な甘味があり、ヘルシーなスィーツ食感。黒豆が香ばしい「桂棗黒豆茶」と紅豆(小豆)がお汁粉みたいな「薏棗紅豆茶」。
ダイエット時の栄養補給やオフィスや家事が終わったほっこりタイムに♪

 

2.「健脾利湿」お腹を冷やさないようにして、水の巡り良くして湿を溜めない薬膳茶&食材 
季節のオススメの薬膳茶は「水巡茶」、「調補気血茶 桂棗黒豆茶」、「健脾利湿茶 薏棗紅豆茶」、「そろそろダイエット茶」など。
オススメの薬膳食材
健脾は「なつめ」、「蓮の実」、「竜眼」、「山査子」、「松の実」、「桂花」、「マイカイ花」など
利湿は、「皮去り焙じはと麦」、「殻とりはと麦」、「緑豆」、

スィーツ、おつまみの「八宝果仁豆」、「いろいろお豆のスィーツセット」は最後にココナツミルクと砂糖で味付けてスィーツとしても美味しいですが、この季節は「いろいろお豆のお粥」として召し上がるのがオススメです。

 

3.漢方入浴剤 
 ヨモギがたっぷり入った「ポカポカあたため乃湯」もカラダが温まりココロの緊張もほぐれ気の巡りを促進。
  また、エキゾチックでオリエンタルな香りの 「すっきりさっぱり乃湯」は、「藿香 」(かつこう)を配合。気の巡りが促進し、モヤモヤ気分もスッキリさっぱり、暑気あたりの体調不調やストレス解消、気鬱解消に。


中医学の知恵を毎日のくらしに活かして、体質改善や病気の予防に役立てて下さい。
商品は下記ショップでお買い求めいただけます。
京都伝統中医学研究所 楽天市場店

https://www.rakuten.co.jp/iktcm/

 

 中医学は難しい理論などもありますが、それよりも実際に暮らしに活かせる養生法や薬膳など健康に生きる知恵が満載です。 
専門用語や四文字熟語などもたくさん出てきますが、出来るだけわかりやすくお伝えしますので、少しでも実際の暮らしに活かしていただき、皆さまがより穏やかに健やかに過ごしていただきたいと願っています。

 

次回は、7月7日「小暑」ですね。もう今年も半分終わり。6/30日は「夏越しの祓い」です。半年の穢れを祓い、新たな半年を穏やかに健やかに過ごすためにしっかり英気を養いましょう。生ものや食中毒にも気をつけてください!

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