2021霜降の養生法

霜降[そうこう]の養生法

 

 いよいよ秋の最後の節気。10月23日から今年は11月6日(立冬の前日)までの2週間が「霜降」です。
 ようやく秋らしくなってきたと思うぐらいなのに、もう秋の最後の節気ですが、逆に一気に寒くなりましたね。
 暦便覧に「つゆが陰気に結ばれて、霜となりて降るゆへ也」と書かれ、北国や山間部では、霜が降りて朝には草木が白く化粧をする頃。野に咲く花が減り、代わって山を紅葉が飾りはじめます。北海道では例年だいたい霜降のころに平野部でも初雪が降るころですが、なんと今年はもう初雪が降ったそうです。
例年よりも2週間以上早い初雪だそうです。東北の山々も初冠雪があったそうで冬の便りが続々と届いています。
ますます陰の気が旺盛になり、万物は活動を止め冬籠りの準備をします。植物も葉を落としてエネルギーの消耗を減らし、種を地中深くに埋めて春を待ちます。
春夏秋冬と季節は変わりますが、変わらぬ自然の営みは本当に凄いですね。

 さて「病はどこから来るのか?」前回から中医学で考える病気の原因についてのお話です。今回は内なる原因、中医学では「内因」と言います。 
自分のカラダの外側の、晴れの日や雨の日、風の日や空気がカラッと乾燥した日など毎日変わるお天気のように、
自分のカラダの内側の心(感情)も、楽しかったり悲しかったり、寂しかったり、怒ったり、怖かったり、驚いたりと日々刻々と変わっていますが、誰でもそれが普通で当たり前です。
楽しいことがあれば喜んだり笑ったりするし、悲しいと泣いたり落ち込んだり、腹を立てると大声で怒ったりするのは普通のことで、お天気の変化と同様のようなものです。
その感情を自分の中で納得したりコントロールして中庸に保ちつつ日々過ごしています。
中医学では、コントロールの限界を超えるほどの感情になったときに、カラダにも影響を及ぼしさまざまな不調や病症になると考えます。
病気の内なる原因とは、自分の感情が異常な状態になったときに病が起こると考えるのです。

 良く「病は気から」と言い、気持ちが落ち込んだりクヨクヨしていると元気がなくなり、病気になるよというような、わりと軽い感覚で使いますが、実は中医学では、それぞれの感情と五臓はとても密接に影響し合っていると考えるのです。
怒り」は肝の気上げ、「喜び」は心気緩め、「思い」は脾気結び、「悲憂」は肺気消し、「恐驚」は腎気下げ、それぞれの臓を傷め働きを弱めます。
こういった自分の内側にある感情の変化や波はあって普通なのですが、日照りが何日も続く干ばつや逆に雨が降り続く大雨洪水、台風や竜巻などと同じように、大きくなり過ぎたり長く続き過ぎた時に病を引き起こすのです。

瞬間湯沸かし器のようにいきなり激怒するとを傷めます。
「朝起きないから!」、「ご飯食べないから!」、「お片付けしないから!」、「勉強しないから!」、「ゲームばっかりしてるから!」と、朝から晩までずっと子どもに怒ってばかりいるのは、自分の肝を傷めています。
また鬱々とした怒りを持ち続けるのも肝を傷めます。「自分ばっかり忙しい!」「自分ばっかり家事や仕事を押し付けられる!」「自分ばっかりしんどい思い!」「こうなったのはあのせいだ!」「あの人は許せない!」など鬱々と怒りや不満を持ち続けるのもを傷めているのです。お酒も薬も飲まないのに肝機能数値が悪いと言う方は、気をつけてください。かなりのストレスが溜まっています。
鬱々とした怒りは必ず肝鬱気滞となり、長引くほど肝陽上亢肝火上炎肝風内動と悪化していきます。
肝陽上亢はのぼせやほてり、肝火上炎は異常な肩こり、めまい、頭痛、不眠が起こり、肝風内動は脳出血や顔面麻痺や言語障害などを引き起こします。
 一番良い養生法は、「許すこと」、「受け入れること」、「拘らないこと」、「手放すこと」です。なかなか凡人の私たちには難しいことですが、「執着」が四苦八苦の元とも言われます。
執着は目標達成や向上心には必要ですが、過ぎると邪気に変わります。
 最近アンガーマネジメントという言葉をよく耳にします。怒りの感情が湧いたら6秒我慢するルールなどですが、腹式呼吸はどうでしょう!? 
丹田(臍の指4本分下)に両手を重ねて労宮(掌の真ん中)を当てて、必ず丹田を意識してゆっくり腹式呼吸してみましょう。少しは怒りが収まったでしょうか!?怒りやイライラなどストレスが溜まることが本当に一番良くありません。
何事もネガティブに捉える性格だったり、誰かを批判したり不満や不足を感じたり、嫉妬心を持ち続けているといずれ自分のカラダに跳ね返ってきます。

 昔から少々のことでは動じない人、ブレない人、決断力や度胸のある人など精神力の強い人を「肝っ玉母さん」とか「胆が座っている人」と言います。
逆に「肝胆」が弱ると決断力が鈍ったり怖気づきやすくなり度胸がなくなるのです。
足少陽胆経(両足の外側から頭の両サイドこめかみや目尻の横に繋がる経絡)の外くるぶしから四指上(三寸)に懸鐘(けんしょう)という経穴(ツボ)があります。
別名を絶骨(ぜっこつ)とも言い、むかし子どもが、ここに鈴をぶら下げていたことから、この呼び名があるそうです(別説では外くるぶしが鈴のようにぶら下がって見えるからとも)。
肩こりや偏頭痛、不眠などに効くと言われるツボですが、カンフー(少林拳)などでは相手の懸鐘を狙って蹴りを繰り出すそうです。ここに蹴りが命中すると相手の胆力が削がれ闘う意欲がなくなるのだとか…!?
胆経ならどこでも良さそうですが、気功の先生は懸鐘を狙うんだと言ってました。懸鐘髄会穴で髄の精が集まるところで疏肝解鬱理気止痛に効果的なツボでもあります。
自分の肝胆のために自分なりの6秒ルールをつくり、常に穏やかに大らかに過ごすよう心掛けましょう。
また開脚横倒し開脚前屈などのストレッチをして足外スジ(腸脛靭帯や下腿腓骨筋)の張り(緊張)を緩めるとイライラや怒りが収まり、胆力が養われ穏やかな心になりますよ。

 そして「喜び」は心気緩める…喜びは健康には良いはずですが、宝くじが10回ぐらい当たったらやはり心(しん)が病むのかも知れません。当たってみないとわかりませんね(笑)。
心気が傷むと心気虚心陽虚心陰虚になり、さらにストレスや不安感などが溜まり続けると肝と同じように心火旺心火亢盛痰火擾心)と悪化していきます。
肝はどちらかというと怒ったりイライラしたりと言った感情に影響しますが、の場合は「神志を主る」と言いもう少し深い部分の理性であったり常識的な思考などを言います。
心が病むと、理性的に物事が考えられなくなり、約束を守らない、時間を守らない、列に並ばないなどルールが守れなくなったり、ひどくなるとソワソワして不眠やめまい、発狂などが起こります。
冷えても心を病みます。心のもう一つの働きは「血脈を主る」と言って血液循環器系の働きを言います。
心陽虚証と言うカラダが冷える体質だと、この機能が低下し血の巡りが悪くなり最悪の場合は虚血性心疾患心不全などになる恐れがあります。心は熱のこもり過ぎも良くないし、冷えすぎも良くないですね。

 

 を傷める「思い」とは、思い詰める思い悩む思い込むなどやこうであるべきとかこうでなきゃ気が済まないなどこだわりが強すぎることです。
ルーティンワークなどこだわりも大切ですが、そこそこにしましょう。

ストレス性胃炎と呼ばれるのは、中医学では肝火犯胃肝脾不和と言います。クレームの処理や上司に目玉を食らうなどと言ったときはストレスにより胃がシクシク(キリキリ)痛みます。
旦那様が金曜日になれば胃腸の調子が良くてモリモリ食べるのに、日曜日の夜は食欲がないなどの時は要注意。肝(木)乗脾(土)肝鬱気滞かもしれません。
もちろん子どもでも同様です。食べ盛りの子どもがそんな感じの時は、成績が落ちてないかとか部活がうまくいってないか、またいじめなどを受けてないか細かく観察してきちんと相談に乗ることが大切です。
禍を避け福を招くには、兆しを読み、禍の芽を出来るだけ早く摘み取ることが大切です。カラダの病気もココロの病気も一緒です。
中医学の基本は「未病先防」、出来るだけ早く気づき対処することで災いを小さく済ますことが出来ます。兆しを読み取り早めに対処する力が問われます。

 

 「憂い悲しみ」はを傷めます。起こってもいないことを「こうなったらどうしよう!?」「ああなったらどうしよう!?」と心配し過ぎも良くありません。 
「お金なくなったらどうしよう!?」(それは本当に困りますが、いきなり一文無しになるわけでもなし、見栄を捨て身の丈に合った生活を楽しみましょう)「仕事なくなったらどうしよう!?」(職業選択の自由、カラダさえ元気ならなんだって出来るぐらいに思って)、「地震来たらどうしよう!?」備えは大切ですが心配もそこそこに。何ごとも過ぎたるは及ばざるが如しですね。
ストレスにより喘息の発作や咳が止まらないなどは肝火犯肺、本来なら金剋木(肺剋肝)なのですが、逆襲することを相侮と言い肝鬱を傷めてしまうのです。
 
 そして「怖い、驚き」はを傷めます。あまり怖いホラー映画やジェットコースターもそこそこにしておかないと腎を傷め老化が早まるかも知れません。
昔あるドラマで息子の戦死の知らせを聞いたとたんに髪の毛が一夜にして真っ白になったというのがありました。本当に驚きや恐怖を感じて腎を傷めるとそうなるんですね。 
何事もそこそこに済ませられれば良いのですが、ついつい過ぎてしまいますね。心と体は本当に繋がっています。 

 

 ちょっとしんどい時は、凝り固まった自分の考えから少し何かを手放してみれば、逆にしんどかった症状も気がついたら消えているということもよくありますよ。 
日々刻々といろんな報に接しさまざまな感情に振り回されますが、出来るだけ穏やかに健やかに過ごしたいものです。

 震災や洪水などで避難所暮らしをすると、毎日イライラしたり怒ってばっかりいたあの生活に戻りたい。そんな風に思ったりもするそうです。毎日不平、不満、ボヤいてばかりの日々ですが、その日常が恋しくなるものですね。
禅の言葉に「明珠在掌」というのがあります。あなたが必要としている宝物はすでにあなたの掌にありますよということだそうです。
もっと健康になろうと高いお金を払って高級車でスポーツジムに通い高級スーパーでオーガニックや高級食材を買うより、「足るを知り」、不平・不満を言わず、日々穏やかに過ごすことが何よりもの健康法だと思うのですが…!?

京都伝統中医学研究所の"霜降におすすめの薬膳茶&薬膳食材"

1.怒りっぽかったりイライラストレスが溜まっているときは
■気の巡りを調える食材などがオススメ
そば、玉ねぎ、大根、かぶ、おくら、らっきょう、なた豆、エンドウ豆、梅、みかん、オレンジ、文旦、金柑、レモン、ゆず、グレープフルーツなどの柑橘系や酸味のあるもの
薬膳茶では、「気血巡茶」、「麗香茉莉花茶
薬膳食材は、「茉莉花(ジャスミン)」、「マイカイ花」、「ラベンダー」、「菊花」、「陳皮」など
■のぼせやほてり、なんとなく熱っぽい、胃がムカムカにオススメは
苦瓜、キュウリ、ズッキーニ、れんこん、コンニャク、セリ、セロリ、なず菜、白菜、水菜、じゅんさい、チシャ、トマト、しじみ、ハマグリ、昆布、かに、フグ、キウイ、スイカ、メロン、リンゴ、バナナなど
薬膳茶では、「五望茶」、「カラダ潤し茶
薬膳食材は、「金針菜」、「緑豆」、「はと麦」など


2.陰を養い肺を潤すオススメの薬膳茶&薬膳食材は
空気が冷たく乾燥する「涼燥」になり、のどがイガイガしたり肌や髪の乾燥が気になるときは、
薬膳茶では、「なつめ薬膳茶」、「なつめ竜眼」、「増血美肌茶」、「美顔茶」、「カラダ潤し茶」、清熱解毒は「五望」など
薬膳食材は、「白きくらげ」、「百合」、「蓮の実」、「枸杞の実」、「松の実」、「山査子」、「金針菜」、「菊花」、「はと麦」など。 
陰血を補うものは「新彊なつめ」、「枸杞の実」、「金針菜」、「黒きくらげ」、血を巡らせるのは「紅花」などがオススメです。

 10月20日からは秋土用に入っています。
土用は立春、立夏、立秋、立冬の前18日間がそれぞれ土用になります。鰻を食べるのは「夏土用」、立秋の前18日間の中の丑の日ですね。秋土用は、サンマやイワシ、サバ、カマス、タチウオが旬なので、青背の魚がオススメです。
 秋土用は辰の日に「」のつく食べ物が良いのだとか。10月23日(甲辰)や11月4日(丙辰)に大根玉ねぎタコなどがオススメです。
夏の疲れを癒し、厳しい冬を迎えるためにしっかり滋養強壮しておきたいですね。
やはり土用は季節の変わり目、体調を壊しやすい時節です。寒暖差が大きいこの季節、小まめに体温調節をしながら「滋陰潤肺」してください。

 

 次回は、11月7日「立冬」ですね。

いよいよ錦秋の候というのに、季節の気はもう冬ですね。そろそろ寒く厳しい冬を乗り越える準備が必要ですね!
疲れを癒しストレスを溜めないようにして、穏やかな気持ちでお過ごしください。 

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