INDEX
第10回 2013年のヒストリックコレクションレスポール
第9回"336"と"339"
第8回"SG"
第7回"塗装"
第6回"雑談"その1:パーツについて・・・。
第5回"カスタムコレクション"レスポールスタンダード系編
第4回"ヒストリックコレクション"レスポール編 その2:ジュニア&スペシャル
第3回"ヒストリックコレクション"フライングV/エクスプローラー系編
第2回"ヒストリックコレクション"レスポール編 その1:スタンダード&カスタム
第1回"ギブソンカスタムショップ"とは?

第10回 2013年のヒストリックコレクションレスポール
Gibson CUSTOM SHOP ’13 Historic Collection 久々の更新となりますが、実はこのタイトルの内容を2013年の最初にしたかった為、少々時間を頂きました。
2013年はヒスコレLPの"20周年"にあたり、数年振りに幾つかのリファインが行なわれました。一部モデルは既に入荷が始まっており、その話題もちらほら出ておりますが今一度まとめて行きたいと思います(2013/2/14現在)。
ただ毎度ではありますがギターの質としては既に完成しているヒスコレ。今回のリファインも如何にオールドと同じ(似ている)かであって、明らかに"良く成っている"訳では決してありません。またこの様な変更が行われるたびに色々な意見が出ますが、その変化がサウンドやニュアンスの違いを発生させ、そこに出てくる好き嫌いが良し悪しとして伝わる事が多々在るようです。まあ最後は好みでしょうがリアル度だけは最新が一番、これは間違いないでしょう。

それでは変更点です。基本的にゴールドトップ/スタンダードを対象としますが一部、私的ではありますがNJ的な見解も入れたいと思います。

Aniline Dye Finish
ボディバックのカラーは今迄ではフィーラーの上にカラーリングが施されていましたが、フィーラーにアニリンダイと云う塗料(粉)を混ぜ、同時に着色(染める?)してしまうフィニッシュを採用。こちらに関しましてはチェリー系のカラーに限られるようでスタンダード系のバックやSG等の即ち、マホガニーの部分に限定されるようです。近年、極一部の限定品で使われていましたが、深みのある渋い仕上がり。但し暗い感じでもあるので鮮やかなチェリーの強い感じが好きな方は、チョッと違うニュアンスかも知れませんね。

Aniline Dye Finish
Tuning Key Tuning Key
より当時のクルーソンに近づけたデザインに変更。通称"グリーンキー"が更にリアルに。分かり易い部分はポストの頭がフラットからやや丸みを帯びて膨らんだ感じ。またツマミの色合いが薄く、やや透けたニュアンスです。(全モデル)
Hide Glue Neck-Fit
ネックジョイントの接着剤を当時と同じ物(日本で云う"ニカワ")に変更。でもこれで音の変化が分かる事は無いですが・・・。ただニカワは熱で溶かせるのでネック交換も可能な点が特徴。でも交換しなきゃいけない状況なのも問題ありでしょうが・・・。(全モデル)

Hide Glue Neck-Fit
Vintage Color Fingerboard&Body Binding
その通り、バインディングのカラーがよりリアルに。但しこちらは経年変化によって変ってしまいますので微妙な処。2012年モデルと比較しましたが明確な違いは殆ど感じられませんでした。(全モデル)
Custom Burst Bucker Pickup Custom Burst Bucker Pickup
ここ数年限定モデル等に採用されていた、よりリアルなバーストバッカーの採用。ただ当時のPUは磁力の変化等により、当時のままの物はほぼ残っていないと推測されます。またその変化も多岐に渡っている為にこれだ、と言い切れる事もないと思います。実際にはターン数がバラバラで個々に若干の出力差があったのは当たり前で、それが故、バーストバッカーや57クラシックも幾つかのパターンがあるのです。カスタムバッカーは現存するモデルをサンプリングし再現したモデルと同様に「あるひとつのPUを再現したようなもの」とお考え頂くと分かり易いと思います。NJ的には暴れ方がチョッと強いかな?と。また捕らえ方かも知れませんがやや玄人好みな感も。まあ結局これも好みでしょうが。(ハムバッカーモデル)
Turss Rod
今までロッド鳴りを嫌ってチューブを入れていましたが、当時と同様にチューブレスに。でも本来はロッド鳴りを防ぐ為に入れていた筈なのに、わざわざ戻す意図は何なのでしょうか?逆に考えれば当時と同じ様にしつつも、それをクリア出来る何かを見つけたと云う事なのでしょうか?(全モデル)
Gold Top
Gold Top Color Update
ずーっとゴールドトップファンから言われていたカラーが変更に。より深みがあり、一番皆さんが気にされている"緑"っぽく見える感じに。経年変化が楽しみになりましたが果たしてオールドと同じ様に変化するのでしょうか?当然ながらゴールドトップでの採用ですが同時にバックのカラーも若干変更されているようです。
New Type Brown Hard Cas
New Type Brown Hard Case (チョッと余談ですが・・・)
これは2012年に行われた変更で、今回のリニューアルとは関係ないのですが、購入された方しか分からない(度々買われる事もないでしょうし・・・)部分ですので今回一緒に紹介したいと思います。1999年から'59エイジドで使用され、その後2009年の初頭ぐらいの59年モデル全般に一度、“ブラウンケース”は使用されます。これは基本的に“オリジナルをレプリカしたもの”で、ある意味「よりヒスコレをリアルに」していました。しかしそれ故、設計が古い為に耐久性等に劣る部分がありました。それが理由の一部、またその他の理由も含め中止となります。その後、2011年いっぱいまでは通常の黒ケースとなります(59年モデル以外は元々これです)。
そして2012年、この黒ケースのデザインを流用し、ブラウンケースの生地を使った現代のブラウンケースが登場します。その為、安全性とルックスを両立。極初期を除き、2012年製のヒスコレLP系はこのケースになり今年に繋がります。またカスタムショップのLP系のその他のモデルも2012年の春頃からこのケースになり、現在LP系は基本的にこのケースに変更になっております。
こうしてみるとサウンド変化に関わっているのはピックアップぐらいで、あとはほぼ見栄え的な部分である事はご理解頂けると思います。まだ確認した個体数が少ないですが、2012年製と並べてみても形状的な変化は認められませんので、木工的には既に完成されている事が充分伝わります。恐らくここまで来るとネジ1本のサイズや形状はどうなんだ?みたいな、楽器の質以外の攻防と云えます。確かに僅かな事で音が変る場合もあります。しかしそれはウエイトでも変る部分です。リアル度を追求するか?自分のイメージを第一にするか?選び方はあなたの自由であり、良し悪しでは無く、「自分が何が好きなのか」を第一にお選び下さい。

それではまた次回!


第9回"336"と"339"
Gibson Custom Shop ES-339/CS-336 本来ならば335を先にすべきなのでしょうか、それなりには有名ですからむしろ、イマイチ分かり辛いこの2つを先に取り上げたいと思います。

最初に数字だけの部分をみると同系等にみえますが、決定的に違うのは頭に付く"CS"と"ES"の違い。これこそがこの先の話に一番重要で、このモデルの違いを表すキーワードです。そしてもうひとつはファクトリー(生産工場)の違いです。これは以前にも同じ様な事は書いていますので軽くにしますが、CSはナッシュヴィル、ESはメンフィスです。その生い立ちからやはりナッシュヴィルに質の軍配は上がりますが、価格も違いますし、構造も違うので今回はその部分は余り考えない事とし、ギターとしての違いを題材にしましょう。

CS-336
こちらは皆さんが普通に思うセミアコではなく、その構造からホロウボディと呼ぶ方が伝わり易いと思います。まず一番の特徴はボディバックがくり貫き構造である事。これは厚みのあるバック材トップ側からルーティングし、センター部分を残します。そしてボディ形状に型抜きし、バック材が出来ます。これに削り出したトップ材を蓋をするように貼り合わせてボディを完成させる、これが336です。その際貼り合わせの部分はフラットに出来ますのでしっかりとホロウの部屋が出来ます。またヘッド形状はオールド系に近いヘッド形状でペグもヴィンテージタイプです。
CS-336
ES-339 ES-339
基本的に335のサイズダウン。ですのでボディの全ては合板をアコギの様に曲げたり、トップ/バックも合板をプレスで成型しています。順番的にはリム(サイドフレーム)を左右で成型し、別に作ったセンターブロックを挟むように合体させます。そして出来たこの中心部にプレス成型したトップ/バックを貼り合わせてボディが完成します。その為、センターブロックと貼り合せるトップ/バックの接触面はややルーズな感じになります。これは木のプレスである以上平面ではありませんので、完璧な合わせが出来ない為ですがこれも特徴と捕らえるべき点です。またヘッド形状は近年のスモールタイプですのでくびれの少ない、やや多き目なタイプ。ペグもヴィンテージタイプに似ていますがヘッドトップ面からナット締めするタイプです。
とまあ、一番大きな違いをご説明しました。ではそれらを元に比較しつつ、その都度出てくる細かい違いを交えて進めて行きましょう。
最初はサウンドです。当然ながら皆さんが一番知りたいのはココだと思います。まず上記の構造の違いにより336の方がソリッドの要素があるのはお察し頂けると思います。ただボディの2/3程は空洞ですから基本は箱物です。しかし造りがタイトであるので立ち上がりが早く、音の減衰は滑らかです。これは木部がその部分部分では単板の為、鳴り方が比較的均一な為です。またセッティングにもよりますがハウリングが出にくく、歪みへの対応幅もあります。もちろん箱物でマホ材(バック材)ならではの甘さも備えていますが、後から膨らんでくるような鳴り方ではありません。また空洞のサウンドですが、中で反響している様な鳴り方でもないのです。それに対し339は構造上良い意味でルーズな造りのような部分もあり、箱物のニュアンスが強く出ます。それは各部が貼り合わせ及び合板であると云う事。極端な見方をすれば各部の鳴り方がバラバラな為、ピッキングに対して鳴り出す感じがずれる様な処もあります。ただ弾き込んで馴染みだすとそのずれが少なくなり、メイプルでも合板ならではのルーズな甘い部分が出てきます。ただどちらが良いかではなく好み。少なくともソリッド寄りなら336、335の鳴りが好きならば339の方が合っている、と云った感じでしょうか(もちろん335の音はしませんよ!)?まあどちらにしても自分が欲しいものが視えていないと判断が難しいかも知れませんが・・・。 SOUND
NECK 次はネックです。そちらも60年代タイプのスリムネックの表記となっており、幅/厚みに大きな差異はないと思います。しかしその断面形状にハッキリと違いがあります。336は断面のカーヴが比較的均一なCシェイプです。逆に339はカーヴの膨らみがややあり、Uシェイプ(日本的にはかまぼこ型)です。よってカタログの表記だけでは見えない違いがここにあります。よってトータル的には339の方がやや太い事になります。握り込むスタイルの方には336、親指をネックの底面に付けて弾くような方は339が良いと感じるかも知れません。そしてもうひとつネック周りで大きな違いがあります。それはバインディングの厚みです。仮に336を基準とすると339の方が厚みがあります(正面から見て)。これは最終的に指板のエッジの仕上げに繋がっているのですが、ご存知の通りギブソンはフレットのエッジにバインディングが掛かる仕上げを採用しています。そうなっているとバインディングの厚みがあるとその掛かる部分も厚くなります。そうすると仕上げ時の強度的な部分も含め、掛かる部分が大きくなってしまいます。またフレット間のエッジも落とせません。逆に336は厚みが無いので仕上げを滑らかにし易く、エッジ部も落とせますのでとてもスムーズになります。実は音の違いは構造の違いが強いので当初前提にした、工場の違いは考えない、としましたが流石にここは質の違いと云わざるを得ない処です。
その他においてはほぼ同一なので良し悪しに関わるような点はほぼ無いと思います。一応アウトプットジャックが336がプレートタイプ、339はダイレクトにマウントされているぐらい(メンテナンス上は336が便利)。ピックアップも同じ57クラシック。ホント、あとは何が違うか分からないぐらいです。それは如何に目に見えない構造が重要であるかが逆に明確に分かる2本。そして共通して云えるそのコンパクトさ。ソリッド用のギグケースなら殆どが収まってしまうレヴェルなのです! JACK
最後に。お薦めのジャンルとまでは行きませんが、336の特徴は滑らかな艶感。箱鳴りではないのですが、空間がある事によるミッドレンジの太さがポイントで優等生的なギター。弾き込んで鳴りが良くなって行っても性格が変る様な事は少ないと思います。339は335と同じでちょっと雑で膨らんで来るような鳴り方。最初は雑ですが弾き込んで行った時の性格の変化も大きく、箱鳴り感がより強くなります。ただ注意しないといけないのが、鳴り出すと音量のコントロールがちょっと、しにくくなる事。これは駄目になる、と云う事ではなくてセミアコの"アコ"の部分が強くなるからです。

さあ、あなたならどっちを選ぶ?


第8回"SG"
Gibson Custom Shop SG model ちょっとギター本体から外れていたので戻ってみます。で今回は"SG"を取り上げてみたいと思います。敢えてシリーズ分けしなかったのは、単純にシリーズトータルでもモデル数が少ないと云う簡単な理由・・・です。

まずSGの誕生は60年代頭で以前にもお伝えした通り、本来はレスポール(LP)のモデルチェンジとして登場したものです(詳しくは第2回をご参照下さい)。軽量でダブルカット構造によりハイポジションも弾き易く、板バネアーム(マエストロアーム)がマウントされる等、何処と無く、フェンダーを意識したような感もあります。基本的にSGはLPと違い生産がされていない期間が無い為、誕生から現在に至るまで基本的に生産され続けているモデルです。その為歴史的には色々なモデルが存在し、LPの様に素人見では違いが分かりにくい感じのものは少なく、明らかに違う!と明確に分かる様なモデルが多く存在します。ただここで取り上げるのはあくまでカスタムショップだけのモデルとします。

ヒストリックコレクション SG CUSTOM
ではカスタムから。まず連載の第1回の通り、GCSの最初のモデルとして登場したのがカスタムです。基本はLPシェイプ時代を引き摺っているので、ゴールドパーツ&3ピックアップが特徴ですがカラーが180度転換され"ホワイト"になります。また当初は"スイング・ア・ウェイ・プルサイドアーム"と云うトレモロがマウントされましたが、デザイン的にはよく考えた感もありましたが操作性が悪く、構造が複雑な割に機能性も良くありませんでした(ルックスは結構ありかも!です)。その為、短期間で板バネアームに変更されます。よってヒスコレでは板バネ、もしくはストップテールのラインナップとなりますが、これはスタンダードも同様です。また2ピックアップ仕様もLP同様にラインナップされています。ただ初期(1992〜2000年ぐらい)の生産数は少なく、このあとご説明するスタンダードが2000年にラインナップされてからカスタムの生産数が安定します(効率の問題でしょうか・・・)。尚、カスタムはシリアル上では61年の扱いになります。ですが、SGのヒスコレはどれもモデル名に年号が入りません。
SG STANDARD 次にスタンダードです。先の通り、2000年に登場しますが、カスタムショップも大分こなれて来た時期で、その完成度は久々に驚かされました。その最大の要因はネックとボディのジョイント部の造りです。現在のSGや皆さんが割りと知っているSGは単にネックをボディに差し込んでセットしているタイプです。そしてジョイント部底面のボディとネックヒールには殆どのものに段差があります。しかしヒスコレは当時の構造を採用、これはLPで云えば逆ディープジョイント的な感じです。要はボディ側からネックが乗るようにジョイント部が突き出している為に接着面積が広くなり、強度やサウンドの向上に役立っています。そしてその接合構造によりジョイント部の段差が全く無く、ハイポジションのスムーズなSGがより弾き易くなっています。またどのモデルも共通ですが良質で硬質なマホガニーが使われている為、"SGってこんなに輪郭の在る音がするの!?"と驚く方が多いのもこのモデルが登場してからです。またピックアップは当初は57クラシックでしたが2009年頃からバーストバッカーへと変ります。これはカスタムも共通です。そのピックアップはエスカッションマウントの為、タイト感が強く、65年以降のピックガードマウント(ラージガード)のモデルよりも芯の強いサウンドです。またスタンダードはカタログカラーが幾つか用意されていた時期があり、基本的なフェイデットチェリー(FC)/クラシックホワイト(CW)/TVイエローが標準色の時代もありましたが現在はFC/CWの2色。またカスタムカラーもそれなりに作られています。それと第2回で触れていますが、LPのモデルチェンジとして登場したものなのでアジャストカヴァーの"Les Paul"ロゴも再現されています。またカスタム同様、板バネ仕様/ストップテール仕様のどちらも存在しますが、限定生産で僅かながらビグスビー仕様も作られています。尚、スタンダードはシリアル上では62年の扱い、ネックグリップはやや薄めな為にややワイドに感じる方もいらっしゃるかも知れません。ただしこれはワイド、と云うよりも薄めな感じから来る錯覚的な要素が大です。
続いてスペシャルです。こちらも2000年にラインナップされましたが、どの年も生産数はやや少なめなモデルで、2012年からはカタログモデルから外れています。マテリアルのグレードはスタンダードと全く変りませんが、P-90ピックアップの武骨で図太いシングルサウンドはスペシャル独自のものです。またバーブリッジのストレートなサウンドも特徴です。またネックグリップは幅がやや狭めで多少厚みのあるタイプ。これはスタンダードと逆でより太く感じる方もいらっしゃるでしょう。それからSGシェイプになってからスタンダード/カスタム/スペシャル/ジュニア(ヒスコレでは無し)のボディ構造の違いが非常に減った為、パーツ類に因る本来のサウンドの違いが見え易くなりました(まあLPシェイプは違う、と云うより別なぐらい)。またシリアル上は61年扱いなのでただのバーブリッジ。よってオークターヴは大変?おおまかな調整しか出来ませんが、これこそが持つサウンド、だからこそ合うジャンル。それらを考慮すればこのブリッジの方が良いのかも知れません。またカラーはほぼ、スタンダードに準じており、当然ながらカスタムカラーも存在します。それと当時は板バネ付きも結構ありましたがその造り故の不具合も多く、ヒスコレでは基本的に生産はされていません。但しこれは100%ではなく、極僅かだけ生産された事がありますが、やはりイマイチな感じでした。 SG SPECIAL
SG Junior 次に行く前にちょっと小話を。ヒスコレでは(SG)ジュニアは生産されていません。それは何故でしょう?理由は簡単です、今のヒスコレのコストではオリジナルが買えてしまうぐらいになってしまうのです(ちょっと頑張れば?)。当時のように良い物を納得出来るコストで提供出来なければその存在価値は出て来ません。これはちょっと勘が働く方ならお判りと思いますが、フェンダーのカスタムショップも同様です。大体がオールドの相場変動に合わせてラインナップが出入りしています。まあ同じ価格で当時のものが手に入ればそちらに行く方が多くなるのは当然。そこはメーカーも読んでいる訳です。だからヒスコレで存在しないモデルもあるのです。まあ何時もながらの"推測"ですが!
カスタムコレクション Custom Collection
と言っても現時点でカタログモデルとしてラインナップされているモデルは存在しません。ですがそうも行きませんので生産されていたモデルをご紹介します。但し紹介の順序は生産された時期とは異なりますので予めご了承下さい。
最初は一番有名なエレガントです。登場は2003年からですがそのマテリアル故、生産数は不安定でどの年も少数生産です。カタログモデルとしては2011年までで、現在はカスタムオーダーのみとなっています。構造自体はヒスコレのスタンダードと全く同一で、ボディ材の違い以外は基本的に同様。そしてそのボディはトップのキルトメイプル材がボディ半分の厚みを占めている点。これは見た目のインパクトが一番大きいですが、そのサウンドに及ぼす影響も絶大!SGとは思えないブライト感がプラスされる為、SGをマルチユースなギターへと変身させてくれます。これは変な捕らえ方かも知れませんが、LPシェイプに置き換えるとこのエレガントこそがスタンダードでオールマホの通常のSGがカスタムに相当、なんて見方もあったりして・・・。とまあ話は戻して。エレガント特徴で見た目的な部分はやはりカラーリング。カタログカラーはイグアナバースト(IGB)/ブルーバースト(BB)/ファイアーミストバースト(FM)3色。またキルトの杢目を殺さない為、ピックガードは装着されていません(付属も無し)。またポジションマークもアバロンが使用され、豪華さを更に引き立てています。その他カスタムオーダーにより幾つかのカラーが生産された実績がありますが通常の個体が少ない為、それらもかなり少なくなっています。また仕様違いも非常に少なく、2012年に当店のオーダーにコアトップが生産されています。
SG KORINA コリーナスタンダード
日本では2000〜2002年の間にカスタムショップでは珍しい、ラージガード仕様で限定生産されたのが最初(その後も多少あるようですが・・・)。こちらはヒスコレ云々なモデルではありませんが形状的には60年代後半辺りの感じ。恐らく型はGCSではなくUSAのスタンダードを流用したと思われます。ただ型だけ流用しても質は落ちませんのでお持ちの方はご安心を。また00年代後半にヒスコレのスタンダードのマテリアル変更としてフェイデットチェリーやインバネスグリーン等のカラー物が生産されています。木材以外はまんまヒスコレで、シリアルも共通。そちらでのご紹介もありかと思いましたが、ヒスコレの趣旨から外れるのでこちらに組み込みました。
W-Neck(EDS-1275) EDS-1275
ご存知、世界で最も有名なWネックモデル。歴史上ではマンドリンとの組み合わせ等、幾つかのパターンが存在します。また生産されていない時期もかなりあります。そしてここ近年は6&12弦に一番オーソドックスなスタイルに固定化されています。元々はカスタムショップではありませんが、2000年代中期よりその生産性からカスタムショップでの生産となっています。またSG系のモデルではありますが現在はメイプルネックが採用されていますがこれは強度とマテリアルの兼ね合いから採用されているようです。
SG OTHERS その他のSG
と云ってもGCSではアーティストモデルを除き、SGは基本的に上記の形状のみの存在。即ち、カラー物であろうがマテリアルが変更されても型はヒスコレのどれかが現時点では使われているのです。よってここでその他と言っても、その殆どをカラー物が占めている状態です。そんなカラー物もオールドにあるようなカラーはヒスコレシリアル、スパークルや明らかに現代風なカラーはカスタムコレクションシリアル(CSシリアル)であったりと、それなりには使い分けられているようです。またマテリアルではパーツカラーの違い等はあってもウッドマテリアルの変更は非常に稀。エレガントのキルトメイプルがフレイムであるぐらいで、あとは上記のコリーナ程度。もちろんこれ以外が無い訳ではありませんが思い出せないぐらい少ない、と云う事。まあギブソンの中で占める割合を考えればまあ妥当なのでしょうが・・・。
おまけ
折角ですのでGCSと今のUSAのSGに於ける軽い相違点を。まずカスタムに関しましてはGCSのみの生産ですので外します。
ではスタンダード、どちらにも共通するモデルですがGCSではスモールガードの60年代前半のみとなります。またラージガードの60年代後半の仕様はUSAのみです。出来ればその出来を考えればGCSでも生産して欲しいところです。
次にスペシャルですがこれがちょいとややこしい処です。歴史上から見ればP-90PUが2つマウントされ、ドットインレイ/バインディングネック、と云うのがスペシャルでヒスコレもこれに準じています(ピックガードサイズやブリッジ/テールピースは除外)。しかし現在のUSAでのスペシャルはなんとハムバッカーPUにバインディング無しネック、というスペック。性格からすればスタンダードの廉価版的な感じです。よって間違える方が多いものも事実ですが。本来の姿のモデルも存在します。それはクラシック、と云うモデルです。定期的な生産は少ないですがUSAであれば本来のスペシャルはこのクラシックです。何故そうなったかは不明ですが近年、これらのモデルが登場した順の問題と推測されます。ただこれらのUSA SGはラージガード仕様となります。まあGCSとUSAを比較はするとしてもグレードが違い過ぎますから恐らく、間違う事は無いと思います。様々なモデルが更に存在するUSAですがあくまでそれはヴァリエーション。それはその存在位置から必要なのでしょうが、GCSにモデルが少ないのはそのモデルは本来それだけで、質が備わっている事が最優先。だからヴァリエーションで攻める必要は無いのです。色々弄っちゃうと別のものになっちゃうんですよね、ギターって!

それではまた次回!


第7回"塗装"
ブレイクタイム GCSの、と言うよりギブソン塗装は歴史的にみてもほぼ、ラッカーと云えます。またラッカーも皆さんがよくご存知の(ニトロ)セルロース(樹脂系)とアクリル系の2つが使い分けられています。しかしその大半はセルロースが主流になります。ではアクリル系は?って事ですがこれは潰しのソリッドカラー系になります。でもそれはエボニーやホワイト等のお馴染みのものではなく、カージナルレッドやケリーグリーンなどの比較的にポップな感じのカラーの一部になります。ただ同じ色でもどちらも存在しているカラーもあるようです。

ラッカーは扱いが難しいとよく言われますが、その分音が良いとも言われます。"扱いが"の部分はキズが付き易いとか塗装焼けがし易いとか、どうしても面倒なイメージがあります。でもそれは考え方や慣れで何とでもなる筈です。そしてこれを納得しないとギブソンでなくなってしまうし、付き合っていく事が出来ないからです。では…

ラッカー塗装は音が良い、と云う点ですがこれはぜいぜい5割程度の正解です。それよりも塗装の種類によって異なる性質により、鳴り方が違うという点も大きいのです。そしてギブソンはずっとラッカーを使い続けている為に、ラッカーでなければギブソンでなくなってしまう、と云う事なのです。でも全く知らないギターを弾いて音が良かったとしますよね?でもそれでラッカー系かポリ系かの区別は殆ど出来ない筈です(見た目や触った感覚では判別出来るでしょうが…)。要するに最後の塗装以外が全く同じであればその違いは分かるでしょうが、他の部分にも違いがあれば塗装による違いを明確には挙げられないと思います。ただラッカーは完全に乾燥するまでの時間が非常に長く、経年による塗装の乾燥によってサウンドに変化が生まれる事が多いのは事実。そんな処が「音が良い」と言われたりする理由かも知れませんね(その分、コンディション変化も大きい)。そしてポリはその逆で、塗装の変化が少ない塗装。それは環境の変化も受けにくいのでギターのコンディションが安定し易く、ツアーなどが多いミュージシャンにとってはとてもありがたい事。即ち塗装はパーツのようなもので、そのギターの方向性と合っているかが重要。そこだけでギターが決まっている訳ではないのです。
とまあ、ここまで来ましたが実は今回の本題はここからで、
ギブソンの塗装の特徴(癖)についてです。
まずギブソンは生地の目止めをフィーラー(目止め剤)で行っている為、カラー/トップコートがあっても目痩せが当初から出易く、経年では間違いなく発生します。また各接合部に沿った痩せも当然発生します。これはマホガニー材が主流であり、フィギュアド材の使用も多いギブソンでは回避出来ないところです。特にヒスコレのSG STDやAxcess,、ES系などのネックジョイントに段差の無いモデルはかなり短期の間に症状が現れます。またLP系でも1弦側のジョイント部には同様の症状が現れてきます。
次にバインディング周りの塗装についてですが、まずはボディ側から。基本的にはLPを例としますが、多くはトップとバックを貼り合わせており、そのトップはほぼバインディングの厚みまでです。よって痩せはバインディングとバック材の間で起きます。しかし実際はそう見えない事が多々あります。それは塗装の境目がそこに無いからなのです。実はバインディングのあるギターの多くは、バックのカラーを若干バインディングに被せる事によってキレイに仕上がるように作られています。これによってボディとバインディングの境目はサイドの塗装(色)に中にあるので、痩せが出ると塗装にクラックが入ったように見えてしまいます。でも実際は塗装と云うよりも境目の痩せによって引き起こされているのです。もちろんこれは全てのカラーではなく、着色された物になりますが、生地塗装(フィーラー等)でも結局は境目の痩せは発生します(バインディングが無くても貼り合わせがあれば痩せは発生します)。ちなみにボディトップ側では構造的にこの症状は余り出ません。
次にネックです。これも基本的にボディと同じ感じであるとお考え下さい。そしてそれは指板(ボディトップ)とネック(ボディバック)に置き換えればお分かり頂けると思います。但し、バインディングのあるネックの場合にはボディでは起きない症状があります。それは"フレットバリ"です。経年変化で木部の痩せも発生(当然ですが)してきまので、その際にフレットの端部やタング(打ち込んでる部分)が出てくる症状です。バインディングの無いネックでは分かり易いのですが、バインディングがあるとこれが見えず、タングの部分の延長線上にクラックとして現れます。大抵は「見た目」的なクラックで済みますが、場合によってはその部分が軽く膨らむ事もあります(プレイに影響出るレヴェルは非常に少ない)。またナットサイドにも塗装が乗っている為に、その周りの接合部に痩せやクラックが発生します。また潰しのカスタムカラーではネックバインディングまで塗ってしまうものもある為、これらの症状が際立ってしまう場合もあります。
補足1
VOS仕上げは基本的に艶を出していない仕上げです。よってワックスを使ったりして磨けば磨くほど艶が出てきます。ですので基本的には乾拭きがお薦め。もし汚れ、と感じるならレモンオイル等がお薦めです。ただネック裏はプレイする事により磨かれるのと同じ事が起きていますので、自ずと艶がある感じになってきます。但し、艶が出る事による本体への悪影響は全くありませんので、扱い方は個々人の感覚で問題ないと思います。
補足2
殆どの方はお分かりかと思いますがラッカーは外的要因に因る、不具合が生じます。特にスタンドのゴムの部分に長時間当てますと塗装が解けますので御気を付け下さい。これを防ぐにはゴムの部分にクロスを巻いたり、専用のスタンドブラの取り付けをお薦めします。また高温にも弱いので熱ににやられてしまう場合もありますのでご注意下さい。
大体はこの様な特性を持っていますが、ギブソンを所有するからにはこれらの点は必ず現れ、これこそがギブソン、と云う気持ちで接して頂きたいからなのです。もしそれが嫌ならギブソンは持たない方がいいと思いますよ、だってこれらが出てこなかったらそれはギブソンではない可能性が高いからです!

それではまた次回!


第6回"雑談"その1:パーツについて・・・。
ブレイクタイム ここでちょっとブレイク、って感じで、モデルに拘った部分から離れてみたいと思います。ただ今迄と今後も含めて内容が重複する部分もありますのでご了承を。

そして今回はパーツ類に軽く触れたいと思います。GCSがスタートした当時は、GCS専用パーツは少なく、レギュラー(Gibson USA=US)と共用で使われているものが多数ありました。しかしこれらはヒスコレのアップデイトと共に専用のものの比率が増えて行きます。そしてこれらは59LPから始まっている事が殆どです。と云う事は基本的にはヴィンテージスタイル(スペック)に倣ったパーツ類が多い事に繋がります。まあこれは当たり前の流れでもある訳ですがGCS内でモデルに関わらず、共用される事も多くなります。即ち、ヒスコレでないのにヒスコレのパーツが使われる事もある、と云う事です。例えば……

まずは、ブリッジについて。 Bridges
当初はUSと共用のABR-1(アジャスタブルブリッジ)と呼ばれるヴィンテージタイプのブリッジ、オリジナルはコマが外れないようにするストッパー(針金)が無く、弦が切れるとコマが外れてしまい紛失する恐れがあるものでした。そこで後年ストッパーが付き、現在に至っているのですがヒスコレではオリジナル度を高める理由で近年復刻されています(こちらはGCS専用)。最初は当然59LPから採用されますが、追ってGCSのABR-1を搭載するモデル全てに採用されました。これはコストと繋がっているからだとは思うのですが、それぞれのモデルの性格に合わせ、使い分けてもよかったのではないかとNJ思います。確かに弦が切れた時の事を考慮し、ネジが外れにくく出来ている事は納得出来ますが、その分コマの動きも重く、オクターヴ調整を頻繁にやる必要がある環境の方にはちょっと面倒かもしれません。またメンテナンス時に外れにくいと云っても磨いたりする動作により外れてしまうレヴェルでもあるので、やはり紛失の可能性もあります。反面コマがガタつきにくく、ストッパー鳴りの可能性は無くなります。こう見ると一長一短的な感が強いのですが、モデルによって求められる点が違うはずですから、やはり「使い分けられてもいいかな?」と。ちなみに当初のストッパー付きはUSと同様のものでコマはスチールでしたが、後にオリジナル同様にブラスに変り、最終的に現在のストッパーの無いスタイルになっています。ちなみにブラスコマはGCS専用でしたが、ストッパー付きは元々US兼用なので後にそちらにも採用されています。
Tailpieces お次は、テールピース/バーブリッジについて。
これもブリッジと同様で当初はUSと共用のスチールでした。その後2001年か2002年頃からGCS専用でアルミ素材のものが登場します。そして今ではモデルによって使い分けられており、ヒスコレはアルミで統一され、その他のモデルはそれぞれの性格によって使い分けられています。ただ機種によっては混在しているものもあるようです。またバーブリッジも同様の流れになっていますが、こちらはその仕様からヒスコレ以外では殆ど使われる事はありません。それとオリジナルでは63年頃にバーブリッジにコマのような段差を付け、オクターヴをもう少し調整出来るタイプに変更されますが、現在のGCSではそれに該当するモデルが存在しませんのでこのバーブリッジは作られていません。
57クラシックバーストバッカーピックアップ(以下57PUとBBPUと略します)について。
Gibson Pickups
57PUはGCSが出来る前に誕生していますので元々はUSのPUです。その開発のにはあの"トム・ホームズ"氏も関わっていました(氏はその後有名なTHCブランドを立ち上げます)。このPUはそれまでのリイシュー系のPUを覆す、非常にリアリティーのある出来で、GCSも当初から採用、現在もGCS/USのどちらでも人気のあるPUです。その後96年に日本からのリクエストで作られたのがBBPUです。この2つの違いは個々人意見はあると思いますが、57PUは比較的素直な感じでBBPUはやや粘りが強い感じです。どちらも基はオールドのPAFですので基本的なところは似通っています。しかし、オリジナルは磁力の変化が起きたものが多いので、それに対して皆さんのイメージが変って来ているのです。
ちなみにそれぞれにあるタイプはオリジナルのバラつくパワー差を、大まかに括って再現したものです。ひとつ面白いのがBBPUは当初当然ながら、日本だけのものでした。そして当初からパワーにより3タイプに分けられていたのですが、これは日本で独自に行なわれていました。よって数年後にUSAで採用された当初は、このタイプ分けはありませんでした。もちろん後に採用されますが、ある種アメリカ人らしい感覚というところなのでしょうか。実際に当時は分けられていた事はありませんから、ある意味そこは納得出来ます。で、ここからもうひとつ面白い事を。最近GCSでアーティストが所有するバーストLPやコレクターズチョイスで再現されるモデルたちのPUは、フロントに出力が大きい物が着いているパターンが多いと云う事実。これは当時、幾らエレキでもフロント側がメイン的な要素があった時代。そう考えると当時も意図的に区別していたなんて事もあったりして…。まあ現代の使い方からすればリアの出力が大きい方が良いのはほぼ確実。要するにレプリカする場合、何でも同じにするのではなく、多少なりともアレンジされていた方が良い場合もあると云う事です。
Machine Heads ペグ(弦巻き)について。
現在GCSではクルーソンレプリカのヴィンテージやグローヴァー/シャーラー等のロトマチックタイプが主に採用されています。その中でクルーソンレプリカは当初USと兼用でしたが、よりリアルさを追及するためGCS専用になって行きます。と云ってもそれは細かな部分で例えばブッシュリングの形状などの本当に細かい部分等です。拘る方は拘るでしょうが気になさらない方は全く気にしないかも知れません(機能的な差はありません)。今取り上げているのはLP STD等に使われているものですが、JrやSPLも考え方は同じです。ちなみにどちらも内部構造は同じですが、JrやSPLはコスト削減の為、3連構造を採用しています。でも1個だけ破損したらちょっと不便ですよね……。で戻って、STD等のペグはそのボタン(ツマミ)の形状が2パターンあります。と云ってもボタンの根元のリング(日本ではコブと呼ぶ事が多い)の数です。これは当時では50年代から60年の途中までが1リング、60年の途中以降は2リングになります。ヒスコレでは基本的にはこれに倣って使い分けられていますが、60年代のモデルでは一部違いがあります。それはSG STD及びカスタム、63年のES-335です。本来であれば2リングの筈ですがヒスコレでは1リングです。理由は定かではありませんがGCSで2リングのペグを使い出した時期と、これらのモデルがラインナプされた時期のズレかも知れません。ちなみに2リングは2001年から登場した67年FVから使われ、ほぼ同時期に60年LP STDにも採用されます。しかし未だに他のモデルには波及せず、限定品などの使用に留まっています。ちなみに何故この形状変更が行われたか?これは諸説あります。その中で一番有力なのが材質変更です。1リング時代の物は色焼けや変形が多く、クレームの元になっていました。そこで材質変更を行なった際にそれを区別する為、リングを1つ足して区別出来るようにしたと云われています。またUSで主に使われている、ヴィンテージタイプでロトマチックの様にヘッド表面から6角ナットで固定するタイプも、一部機種で使われています(LP Axcess等)。
ロトマチックタイプは基本、ヒスコレで使われる事はありませんが、ミュージシャン系のモデルではそれに準じ、使われる場合もあります(例:ジミーペイジモデル)。ただ57年カスタムは00年代中後期まではグローヴァーが使われていました。しかし当時に遡ると57年まではクルーソンタイプで、グローヴァーは58年からと云われています。そこで現在ではクルーソンタイプに変更されています。なのでチョッと前に限定生産された60年カスタムはグローヴァーで正解だったのです。またこれらはカスタムコレクション系で広く使われていますが殆どの場合、グローヴァーが主流です。
ペグは精度だけみればロトマチックタイプに部があると云えます。しかしウエイトがあるのが難点であったり、やはりそのルックスも気になるところ。クルーソンタイプであっても癖さえ把握すれば殆ど問題は無い筈です。どちらかと言えば可動する部分は如何に馴染ませるか?が重要と云えます(ナットも含めて)。

今回は理解し辛い部分も多かったと思いますが、
「こんな感じです」ぐらいに思っていただければ幸いです。それではまた次回!


第5回"カスタムコレクション"レスポールスタンダード系編
Custom Collection Les Paul "カスタムコレクション"レスポールスタンダード系編
第1回"ギブソンカスタムショップ"とは?』でご説明した通り、カスタムコレクションとはヒスコレやアーティストモデル以外の殆どが含まれるシリーズです。その為、やや曖昧な部分もあるかも知れませんので予めご了承下さい。また今更ですがこの連載企画、あくまで私"NJ"が経験からの独断で行なっている事でもありますので・・・。
まず今回、レスポールスタンダードなのに何故"系"と付けたのか?実はスタンダードと名付かないモデルもあるからです。ではスタンダードの定義は?って事になると思いますが実際、100%こうだ!ってものは存在しないと思われます。そこで今回はこの連載としての独自の括りで行こうと思います。ではその定義を…
★ ボディバインディングはそのボディトップだけ
★ ネックのバインディングは基本、指板周りのみ
★ ヘッドのバインディングは無し
★ 指板は関係無し
上記これらを基本としますが、1点物のカスタムオーダーなどは何があるかわかりません。
よって一般的に販売されているものをご紹介したいと思います。
それでモデルをご紹介していきましょう。 Les Paul Elegant
エレガント
90年代後半に発売されたイメージ的には豪華版的な存在。当初はヘッドの表面に非常に大きなインレイが入れられた特徴的なルックスでした。ちなみにそのインレイは当時のカスタムショップのロゴマークとほぼ同じでした。それ以外ではパッと見、一般的なスタンダードですが、指板がエボニーでインレイはアバロンになっています。またボディ内部は大きくくり貫かれたチャンバー構造となっています。またその大きなヘッドインレイは不評だったと思われ数年で通常の"Les Paul"ロゴになります。この時点で幾らか人気の出たモデルですが現在では通常生産は行なわれておりません。尚、トップ材にはキルト/フレイムの両方があります。またカラーに関して受注生産的なニュアンスもあり、幾つかのパターンが生産されています。ピックアップは57クラシックが基本です。
*数年前より基本的に生産はストップしています。
Class 5 Les Paul クラス5
エレガントよりやや遅れ、2000年になってから登場します。こちらは非常にオーソドックスなスタイルで、パッと見は通常のスタンダードの様なルックスです。またクラス5の最大の特徴は基本的なベースをヒスコレの60年モデルとしている点です。よってロングテノンでジョイント角の浅いネックがポイントです。その為、エスカッションもヒスコレと同じ高さのあるものです。もちろんネックのバインディングの厚みや細かいパーツ等の違いはありますが。ただそれらよりも大きな違いは、ボディ内部が細かくくり貫かれている事です。これはエレガントと違い軽量化を目的とするよりも、くり貫く大きさや形状を組み合わせサウンド効果を狙ったものです。その為くり貫く事を想定し、ある程度ウエイトのあるマホガニーを選択しています。これは加工後に軽くなり過ぎないように考えられていて、レスポールらしさが残る様に工夫されているようです。で、オールドの構造(鳴り)の良さと現代のサウンドに合ったトーンを狙ったもので大変鳴らし易く、ミッドレンジの強いモダンなサウンドが得られます。またフレイムトップも存在しますが基本はキルトメイプル、即ちソフトメイプルです。だからハードに比べ振幅の大きい鳴りの材ですからより現代風と云えます。そんな事からフレイムに関してもソフトメイプルが使われている可能性が大きいかも知れません。またピックアップはバーストバッカーが基本ですが、こちらもエレガントと同様に受注生産的なところもあり、ピックアップやカラーは幾つか存在します。またペグもヴィンテージクルーソンタイプが基本ですが、たまにグローヴァーの仕様も見掛けます。
*2012年より、木材の減少により基本的に生産休止になっています。
スタンダード
これは幾つものパターンが存在するので要約した感じにします。最初に述べた定義の通りですがここではモデル名にスタンダードが付くものとします。
Les Paul Standard
当初はヒスコレのみでしたが97年頃、日本の代理店のオーダーで当時のレギュラー(Gibson USA)のスタンダードをカスタムショップで限定生産しました。スペックはレギュラー同様でしたが、カスタムショップのグレードで作られていた為、その出来は上々でした(これをUSシェイプとします)。その後スポット生産でカラー物等、色々なパターンが生産されますが00年代中期頃まではカスタムショップグレードですが、USシェイプを採っていました。しかしその後、00年代中盤以降になるとあれっ?、と思うものが混じるようになって来ました。そう、ヒスコレのところで触れた、木目の悪い物を潰しカラーにしたものです。ただその場合でもパーツは若干違っていたり等、ただのカラー違いだけではない様になっていました。しかし中には色以外全くヒスコレのまま、なんて個体も混じっていました。そんな感じが数年続きましたが2010年頃からフィギュアドトップの生産が増えてきます。そしてそれらはほぼ、クラス5ベースとするようになります(もちろんソリッドです)。と云う事はヒスコレの60年モデルに非常に近い事になります。またその一部にも以前と同様に、完全にヒスコレの60年モデルと思われる個体も発見されています(当店入荷実績あり!)。一応のフィギュアドヴァージョンはどれもパーツ類は100%ヒスコレではありませんが、フィギュアドのグレードを除けばヒスコレと何ら遜色の無い出来栄えです。ただここ迄触れてきたモデルは殆どがスリム系のネックグリップで、59LPの様な太いネックのものは殆どありません。恐らく価格帯も30〜40万円辺りが多いのでプレイヤビリティを優先しているのかも知れません。しかし極稀にヒスコレの56〜58年辺りがベースと思われるものも混じっていますがこれは探せるレヴェルではないとお考え下さい。
尚、殆どのモデルのピックアップは57クラシックですが、バーストバッカーや490/498等がマウントされている事もあります。また現在ではUSシェイプは殆ど生産されていません。
Head 最後に。これらに共通して云える点はヘッドのシェイプ(大きさ)です。パッと見はヒスコレのような所謂スモールタイプのヘッド。しかしながら若干括れが少なく、ほんの僅かだけ幅が広い感じです。ただこれは慣れないとそれだけを見ても分からない程度の違いです。ですがヒスコレはアップデイトに併せヘッド形状も何度か変っているので、年代によってはハッキリと分かる場合もあります。NJ的には2000〜2001年頃のヒスコレのヘッドが、これらのスタンダードに近い感じです。しかし前記の様にヒスコレにドンズバも存在する、の通りに例外的なものももちろんあります。
おまけ
GCSはトップの杢目の表記を"フレイム"、"フィギュアド"、"キルト"等、モデル名として表記します。この中でフィギュアド以外はその名の通りなので分かり易いと思われますが、フィギュアドとはどんな杢目を指すのでしょうか?実はこれに定義は無く、"杢"が出ているもの全てになります。ただGCSではその流れから、こんな使い分けをしているのではないのかな?と思われる部分があります。まず完全にキルトと呼べるものはフィギュアドには含まれないようです。またキルトのグレードも表記される事が多く、"3A"や"5A"と付けられたりします(クラス5の5はここから来ているとも)。そしてフレイム、ここがちょっと違うようで、フレイムと呼ぶものはヒスコレの59LPに使うトップグレードをフレイムと呼んでいる傾向があるようです。そうするとフィギュアドは一般的なグレードのフレイム系からキルト手前の杢を指している感じのようです。よってこれらのスタンダードは基本、その価格等からフィギュアドグレードである事が納得出来ます。ただその中でもカスタムオーダーでフレイム(59LP)グレードで作られたものもありますが、モデル名の変更はありません(もちろんちょっと高いですが)。
figured

それではまた次回!


第4回"ヒストリックコレクション"レスポール編 その2:ジュニア&スペシャル
"ヒストリックコレクション"レスポール編 その2:ジュニア&スペシャル
このモデル達は90年代の後半から登場します。まず先行して97〜98年頃に今で云う"60年スペシャルシングルカット"が登場しますが、この時点ではジョイント部の構造がまだレプリカされていませんでした。但し、その質は当然ながら非常に高く、期待させてくれるものがありました。そして1〜2年後にはそれが完成され、現在のラインナップとなってスタートします。またどのモデルもピックガードで隠れていますが、当然ながらロングテノンのジョイント構造になっています。それとパーツ類は全く同じもが使われていますがピックアップに関しましてはジュニアとスペシャルではマウント方法が違い、ジュニアでは高さ調整が出来ない構造になっています。よってジュニアで出力調整をしたい場合は、ポールピースの上下で行なうしか方法はありません。(カヴァーでピックアップをボディに押さえつけている為)但しピックアップ自体を上下出来るスペシャルでもその幅は少ない、と感じる筈で、それも時代だったのでしょう。またどれもバーブリッジの為に正確なオクターヴ調整は無理ですが、当時のモデルの位置付けや使われ方からすれば妥当なものと云えます。それよりもバーブリッジだからこそのサウンドがある、とお考え頂くのがベストだと思います。どうしても、という方はオクターヴ調整の出来るブリッジに交換する方法もありますが、かなりの確率で鳴り方が変るのでご注意下さい。
そしてどのモデルもその良し悪しがストレートに出る単板ボディの為、GCSの中でも出来の良さが一番分かり易いモデル達です。
尚、2012年の時点ではコストの高騰等により、生産が休止されています。
それでモデルをご紹介していきましょう。まずはジュニア。
57年LPジュニア(シングルカット)
その構造上、ギブソンで一番ソリッドなモデル。その為、単に1ピックアップな分、ザクリが少なくなりますからスペシャルとは比べものにならないタイト感があります。またネックも太い事、シングルカットである事などからローエンドがしっかりと出ます。その為、へヴィな感じのギタリストにも愛好者が多いようです。尚、この系列のモデルの中で唯一、サンバーストが存在しているモデルです(カスタムオーダーは除く)。
58年LPジュニア(ダブルカット)
シングルカットからダブルカットに形状変更されたのがこの年。もちろんヒスコレもそれに倣っています。基本的にはその部分の違いだけでネックも太いままです。ただダブルカットになる分ローエンドは減りますが、逆にハイエンドの抜けが良くなる傾向にあります。その為歯切れの良いサウンドがお好みの方には適しています。またその見た目の通り、ハイポジションでのプレイヤビリティはギブソンNo.1?、と云えます。
続いてスペシャル。
60年LPスペシャル(シングルカット)
実はこのモデル、とっても大きな間違い?があります。それはモデルの年号。本来、この系統のモデルはシングルカットとダブルカットは同時に生産されておらす、それは単なる仕様変更なのです。そしてその境は57〜58年になるので60年と名乗っているのは実際には正しくありません。何故こうなったのかは不明ですが、先行して発売された時点でそうだったのでそれを継承しているのでしょう(それでもその理由は未だ不明…)。だからこの仕様ならば本来、55年とか56年と名乗るのが最適だとは思いますが…..。と、言う事で57年ジュニアと同様の太いネックグリップ(厳密には少し細いですが…)、そこで触れたようにボディザクリがジュニアとは違いますから単なる2ピックアップではなく、ミッドがふくよかでサウンドヴァリエーションの広さがポイント。そしてネックのセルバインディングなど見た目もそれなりに違います。
余談ですが2006年にトムマーフィーによるエイジドが僅かだけ作られています。
60年LPスペシャル(ダブルカット)
こちらはシングルカットと違い「ちゃんと?」60年の仕様です。大きな特徴は60年=ネックが薄い、これに尽きます。外観に関しては一目瞭然ですから省きますが、フロントPUの位置(指板エンドから離れている)も違いますから全般にはライトなサウンド傾向と云えます。ちなみにそのフロントPUですが、当時は指板エンドに付いていたものありますが結局はジョイントの強度不足などからヒスコレは作られておりません。
カラーについて
これら4機種はカラーヴァリエーションが似通っていますが、当時はほぼ機種ごとにイメージカラー的なものあったようです。そして現在では…
◆ ヴィンテージサンバースト/VS(57年ジュニア)
◆ フェイデットチェリー/FC(全モデル)
TVイエロー/TVY(全モデル)
TVホワイト/TVW(全モデル)
以上4色があります。ただVSは当時も57年ジュニア以外は少ないのでこのモデルだけの設定になっています。そしてTVY、このネーミングの由来は余りにも有名で、まだ白黒TVの時代にとてもTV映えが良かった事から付いた"俗称"です。では本当の名称は?正解は"ライムドマホガニー"です。まあ言われて納得だとは思いますが、ヒスコレでは俗称が正式名称になっています。またヘッドのデカールが"TV MODEL"になっている所もポイントです。またTYWは当時に実在しないカラーで、ヒスコレのだけのカラーとなります。元々は2003年頃に日本からのリクエストで生産が始まりました。しかし当初は目止めがレッドフィーラーだった為、短期の間に赤っぽくなってしまう症状が多く、早いうちにブラウンフィーラーに変更されます。ただそんな経緯から当初は人気の無いカラーでしたが後に、奥田民生氏の使用により人気に火がつき、今では当たり前のカラーとなりました。
イレギュラーなモデル
決してそれらが多いモデル達ではありませんが、やはりギブソンお得意?の潰しカラーなどの限定品は存在します。また面白いのが'57ジュニアシングルカット2ピックアップなるモデルが存在します(もちろん限定ですが)。でもそれじゃスペシャルでしょ?いえいえ、上記の通りにジュニアだからネックのバインディングが無いのです。だからボディはスペシャルだけどネックはジュニア。で、ヘッドにモデル名が入っているのでジュニアな訳だったのです(画像左)。
またこれも限定ですが、バーブリッジこそ、がヒスコレではありますが、よりオクターヴを厳密に採りたい方の為に、スペシャルのシングルカットでABR-1+ストップテールの仕様が作られた事があります。
それともうひとつ。最初は2002年に僅かだけプロトとして作られ、何年後かにも僅かだけ作られた変ったジュニアがあります。それはボディのトップとバックにコンターが入れられた、ギブソンっぽくない仕様でした。またカラーもポップなソリッドカラーで作られており、全体的にライトな雰囲気で作られていました。ただこれをヒスコレに入れるかどうかは微妙ですが、ベースがヒスコレであった事は間違いないのでここで紹介しました(画像右)。
マホガニー単板ボディの為、甘そうなサウンドイメージがありそうですが、当時もヒスコレも使われているマホガニーは非常に硬い、良質なものです。と、言うよりもマホガニーも様々な種類があります。そしてギターに最も最適なマホガニーは高価なものなのです。またグレードの低いギターに使われるものは硬さが足り無いのです。だから甘いだけでエッジが出ずにぼやけたサウンドになってしまうのです。だからヒスコレを一度弾いてしまうとマホガニーのイメージが180度変る筈です。
それともうひとつ。P-90ピックアップはシングルコイルです。でもフェンダーみたいな音は絶対しません。もちろんそれはギター自体の鳴りの違いでもあるのですが….でもこれを取り上げたのはピックアップの構造が絡んでいるからなのです。通常シングルコイルはフェンダータイプが有名です。そしてその構造はポールピース自体がマグネットでそこにコイルを巻いています(小さいマグネットが6個ある訳です)。また、P-90はポールピースはただの金属ネジでコイルはそこに巻かれており、マグネットは大きな板状のものが下に1枚、敷かれています。そしてここで重要なのはマグネット、それが弦に対してどのような構造(位置関係)になっているかなのです。では行きましょう。ピックアップはマグネットから出ている磁場の中で弦が振動したものが電気信号となって出力されますが、実はその磁場の出方が鍵です。フェンダータイプはポールピースがダイレクトにマグネットですからその見た目の通り、弦のそばで且つ狭い磁場で拾います。だから狭い範囲の振動を拾うのでシャープになります。逆にP-90は1個の大きなマグネットで全体的に拾うので音のシャープさは減ります。しかしその磁場の広さが音の太さを生み出す事に繋がります。ちなみにこの意味を応用すれば、シングルサイズのハムとフルサイズのハムの音の太さの違いの意味も自ずと理解出来ます。またフルサイズにハムをタップしても普通のシングルとニュアンスが違う、と感じる事も同様の理由です。更にフェンダータイプは磁場が弦に近い為にピッキング時のレスポンスも速くなります。だからシングルピックアップだから歯切れが良いのではなく、マグネットの構造の方がむしろ影響が大きいと云う事。ちなみに全然違うギターですが、Joe-XのRATにマウントされているハムバッカーはポールピースがマグネットの為、フルサイズのハムバッカーでシャープでギラッとサウンドが出ます。ややそれ気味ではありますが、ジュニア/スペシャルを知る上で結構重要な部分なので掘り下げてみました。

レスポール編 その2:ジュニア&スペシャル はここまで。それでは次回をお楽しみに!


第3回"ヒストリックコレクション"フライングV/エクスプローラー系編
"ヒストリックコレクション"フライングV/エクスプローラー系編
当初は第1回で触れた通り、GCSはSGカスタムとコリーナのフライングV(FV)&エクスプローラー(EXP)のセットから展開されます。ですのでLP編を続ける前にこちらをご説明したいと思います。
特にこのFV&EXPの完成度は当初から非常に高く、何年も掛かって完成されて行くLPとはかなりの開きがありました。もちろんこれは構造の違い等、LPに比べればシンプルなところもその理由でしょう。またオリジナルの個体数の違いからサンプル個体のバラツキも少ない為と思われます。それと専用パーツ的なものが多い為、当初からその型が起されてた等も含まれて来るかも知れません。この92年に限りセットで販売され、シリアルが連番になります(FVが奇数、EXPが偶数)。ちなみにシリアルの打ち方から59年のモデルとして位置付けられていました。また当初からブラウンケースがレプリカされていた処もポイントです。その後は単体売りとなりますが一時期、ケースが通常のタイプだった事もありました。更に生産数は異常なほど少なく、恐らく10本も作られていないような年もあるかも知れません。この92年もデータが殆ど無いので何とも云えませんが、十数本(セット)程度だったと思われます。
それでモデルをご紹介していきましょう。
59年コリーナFV
2008年、50周年記念の限定時は58年モデルとして黒ピックガードで生産されました。しかしそれ以外は上記の通り、基本は59年で白ピックガードです。特徴は現在のものと違うボディシェイプ、カッタウェイにあたる部分が大きく削られ、弦も裏通しです。またピックガードも小さく、ピックアップはエスカッションでボディにマウントされています。またアジャストカヴァーはLP等と同様で、その分ロゴも大きくそのロゴもプラスチックで成型されたものです。そして柾目でV字型にピースされたコリーナ材が一番目を引く事でしょう。またジョイントのテノンはピックガードで隠れていますが、2つのピックアップの間まで届いている"超"ディープな造り。これはジョイント部の形状を見れば強度的にも必然的な構造と云えます。ただLPでも触れましたがテノンの長さに因る、サウンドの変化を挙げる事は不可能ですが。
59年コリーナEXP
基本的にコリーナFVとほぼ同様とお考え下さい。ただ大きな違いはボディが1ピースである事が基本です。これによりFVに比べ圧倒的に生産数が少なくなっています(これはオールドも同様でサンバーストLPが足元にも及ばないような価格で取引されています)。また、当時の初期モノはスプリットヘッド(V型)が採用されており"リック・デリンジャー"の所有で有名ですが、ヒスコレは通常のヘッドが基本。ただ限定生産でスプリットヘッドも存在しています。そしてEXPのシルエットは今とほぼ同様である事。FVに比べて外観の変化は余り見受けられません。もちろん細かい違いはそれなりに存在していますが、面白いお話をひとつ。当時はまだ複雑なザクリ(ボディルーティング)が出来ず、出来るだけ簡素化されていました。それはピックアップからSWに向けてのザクリ。要はピックアップのキャビティのヘリに添って真横に空けられています。もちろんピックガード隠れるので関係はありませんが…と云いたい処ですがそうは行かないのです。それはそのザクリの位置が正面から見てエスカッションの右下のネジ位置なのです。だからザクった後に小さな木片で埋め木をして、エスカッションのネジが留められるようにしています。もちろん、その木片は全てを埋めているのではありませんのでピックアップのリード線はその下を通っています。今だったらその位置やトンネル上に空けるんですけど、これも時代なのでしょう。もしお持ちの方、ピックガードを外して埋め木があっても、それは不良ではありませんので。
57年フューチュラ(Futura)
これはオリジナルが実在したかどうか?が疑問視される事が多いモデル。ヒスコレでも生産は大変稀なモデルで、もちろん限定扱い。そして当時の図面が残っているようなのでそこから型採りはされているようですが……。で、オリジナルが在るとすればそれは57年で、EXPのプロトに当たるモノになります。またその素材はマホガニーであり、コリーナではありません(コリーナはEXPから)。ちなみにヒスコレではその両方の素材で生産されています。ボディ形状がEXPで変更されるのは一目瞭然ですが、このスプリットヘッドこそ初期のEXPに引き継がれています。またヒスコレとして生産が開始された時期は不明ですが90年代の後半に、コリーナで最初に生産されたようです。そしてマホガニーでの生産は数年後になります。
余談として"モダーン"も同じような状況の当時ですが、こちらはFVのプロト的存在。でもこちらはチョットFVとは違う感じ。ちなみにヒスコレでは作られていないようですが、オリジナルの存在も怪しいようです(図面は存在します)。
ちょっと寄り道
このモデル達に限らず、当時からギブソンでは木目の悪いマテリアルの有効に使う為、それらをソリッド(潰し)のカラー等で仕上げ、販売する伝統があります。そしてこのヒスコレコリーナ達にもその様なモデルが作られています。その場合、単に木目が悪くてソリッドカラーにしたものだけでなく、木材の大きさが足りずにピースしたものがあります。ただこれらはカラー以外は全く同様ですが、時と場合によってヒスコレの扱いであったり、カスタムコレクションの扱いであったりします。その区別はシリアルの打ち方で決まっているようですが、殆ど根拠は無いようです。それと、間違いなく価格が抑えられている場合が多いです。ただこのパターンはメーカー側からの場合で例えば、ショップオーダーで作ると何ら価格は変りません。だからとってもイレギュラーで作られたものがたまたま出て来ただけ、程度の期待しか出来ないのも難点ですが……。
ではモデル紹介に戻りましょう。
67年FVモデル
再生産が始まった初年度のモデル。ヒスコレのモデルの中では登場は遅い方で、2001年からのラインナップになります。そして最もも大きな変化は今のスタイルになった事。しかも年代的に、ギブソンが最も細いネックであった時期の為、その点もしっかりと再現され、当初から非常に完成度の高いものでした。またボディが薄く、ネックジョイントに角度は殆ど付けず、ネック側を厚くする事でブリッジの高さを稼いでいます。現在のものはボディも厚く、ジョイントに角度を付けていますので構えた時のバランスがかなり違ってきます。これはギター自体のグレードにも因るので100%ではありませんが、ジョイント角度が少ないギターの方が立ち上がりの良い傾向にあるようです。当初はマエストロアーム(板バネ)仕様のみでしたが後にストップテール仕様も発売されます。それと63年以降のモデルですのでタグがオレンジっぽい、大きなものが付いています。またFVは一見、サイズのあるギターですが下側に延びた部分をパズルのように上に持ってきたら……そう、普通のソリッドギターと何ら変わりのない質量なのです。そして良質で薄いマホガニーの為、かなり軽量なモデルです。ただ現在のモデルはそうではありませんので誤解の無いように。
そしてこのモデルがヒスコレとして最後の年代になり、これ以降の年代の入ったモデルは種類を問わず、ヒスコレの括りには入らなくなります。
 

フライングV/エクスプローラー系編はここまで。それでは次回!


第2回"ヒストリックコレクション"レスポール編【1】
"ヒストリックコレクション"レスポール編 その1:スタンダード&カスタム
GCSのスタート時(92年)からある、カスタムショップの中心的シリーズ。そしてレスポール(LP)は遅れる事1年、93年からの登場となります。ただプロトタイプは92年から作られており、アーティスト等に渡されているようです。
まず93年に57年ゴールドトップと59年スタンダードが登場します。が、この時点では日本での認知は皆無に近い状態でした。もちろんこの年は非常に生産数も少なかった為、そんな状況ではなかったのかも知れません。またアメリカ国内でもまだ大々的に展開はされていなかったようです。
そして94年のウインターNAMM SHOWの展示により、一般に広く知られる事になります。そして私NJもそこで初めて知る事になります。それは今までのリイシューとは全く違う、50年代のスタイルを持ったLPでした。まあ今考えるとリアル度はまだまだ最新の物には勝てませんが、クオリティは既に完成している状態でした(それがGCSを造った意味ですが…)。その後、そのリアル度の変化が年毎の違いを生み、"何年がイイ"なんて迷信を生んでしまいました。が結論はリアル度に関しては最新のものが一番なだけであって、その違いが生んだものはそれぞれ個々人が好きなものを良い、と言っているだけです。ギターとしてのクオリティに置ける差は無いと思って頂いた方が無難です。ちなみに最初の数年間はその流通形態から並行品が殆どを占めていましたが、これも時代と云う事です。(この辺りは余り触れないでおきましょう…)
チョット寄り道してしまいしたがヒスコレは、93年と94年の極初期のモデルにはヘッド裏にヒスコレのロゴマークが入っています。ですがリイシューモデルとしての雰囲気が崩れてしまう(推測)だろう理由で短期間で廃止されます(これは正解ですね!)。次にモデル名ですがゴールドトップはゴールドトップであって、スタンダードではありません。普通に考えればそうですが、スタンダードの名称はサンバーストになってからの呼び名なんです。よってヒスコレのゴールドトップにはスタンダードの名称が付きません。そしてヒスコレの最も重要なポイントである通称"ディープジョイント"(正式にはロングテノン)が採用されています。そして54年/56年/58年/60年と投入されて行きます。
それではスタンダードから。
54年ゴールドトップモデル
P-90ピックアップとワープアラウンドブリッジ(バーブリッジ)が特徴、初期の生産は少ない。尚、90年代後半からLP54JB/Oxbloodが日本オーダーにより限定リリースされます。
これはジェフベックのLPをモチーフにしたものですが発案者は私、NJです。でも何時の間にかカタログラインナップにされて?いました。でもこれはGCSから認められた証で、既にこの頃からカスタムショップとNJの交流は始まっていました。
56年ゴールドトップモデル
P-90ピックアップは同じもブリッジ/テールピースが分かれ、お馴染みのスタイルに。極初期は少ないですが、ほぼコンスタントに生産されています。
57年ゴールドトップモデル
ここでハムバッカーピックアップが登場します。またコンスタントに生産されています。
58年スタンダードモデル(サンバーストカラーの登場)
ゴールドトップからのカラー変更及び名称変更。基本はプレーントップ。限定やオーダーでフィギュアドトップも存在する。但し90年代は生産が少なく、98年はフィギュアドが多かったりもする。安定するのは2000年代に入ってから。
59年スタンダードモデル(フレイムトップ)
基本で言えば58年と同様ですがフラッグシップモデルの為、当時でも特に尊重されるフレイムトップを採用。但し99年のみプレーントップも存在する。またオーダーや木材のストックによりキルトトップも存在します。折角ですからここでひとつ。58年でもフレイムが存在したり、59年でも1年だけですがプレーントップが在ったり。絶対59年の方が高いですよね?実はフレイム(フィギュア)のグレードの違いだけでなく、バックのマホガニーのウエイトの基準も違うんです。GCSでは基本3つのランクに分けられLPを例に当て嵌めると59年が一番軽いランク、次がその他のヒスコレLP。ちなみに一番重い?ランクはカスタムやその他のモデルになります。ちなみに59年用は全体の10%未満の為、どうしても高くなってしまいます。一応付け加えておきますが「重さ」と云う部分を除けばその質は同等ですのでご安心を。また59年モデルに付いては今後詳しく述べる機会を設けます。
60年スタンダードモデル(フレイムトップ)
基本は59年と同じ考えですが当時同様、スリムネックになります。また生産は94年からですが近年までは生産数も少ないモデル。ただ2010年以降は比較的造られるようになっています。それとこのモデルにもたまにプレーントップが作られる事がありますが、バック材のグレードが58年モデル等と同様の為、価格帯はそれと同様になります。
52年ゴールドトップモデル
基本は2002年の50周年で作られた限定品のみ。トラピーズブリッジはその構造からミュートが困難でネックジョイント角もなく弾き辛い。オリジナルでも53年に改良される。

55年モデル
何故ゴールドトップと入らないのか?これは近年生産されている限定モノなのですが、実際には色々なカラーが在る為です。ネックはVシェイプでギブソンでは余り無いスタイル。流れは54年モデルですがハムバッカーマウントが多く存在します。但しカタログモデルではありませんので個体は少なく、チョット異端児な存在です。

と、ここまではスタンダードに付いて述べましたがカスタムに移る前にちょっとブレイクタイムを。実は60年以降もレスポールは生産されています。でも大幅なモデルチェンジをしています。そう、ご存知の方も多いと思いますがあの"SG"こそがLPのニューモデルだったのです。当時のギブソンはLPの売れ行きの減少からモデルチェンジを考えていました。それは時代による音楽性の変化からフェンダーに分がある様になって来ました。そこで軽いボディ/薄いネック/トレモロアーム、とフェンダーの要素を入れていったのです。しかしギブソンはこれらをレスポール氏の承諾なく、全て独自に行なってしまったのです。そこで氏の逆鱗?に触れ改名せざるを得なくなり、レスポール氏と別れる事になります。そしてギブソンはそのネーミングを"SG"としました。由来はソリッドギター(Solid Guitar)の略が有力とされていますが、実はデザイナーの頭文字説が裏では有力なのです。そんなところから当時のものを俗称"LP-SG"と呼ぶ事がある為、ヒスコレにも採用されています。
では次にカスタムに移りましょう。
基本カスタムはゴールドトップやスタンダードと違い、60年までのモデルは全てオールマホガニーのボディが採用されています。そして再生産の68年以降はメイプルトップになるので、エボニー指板以外はスタンダード同じ。よって60年までのモデルはより明確な違いがあり、もちろんそれはヒスコレにも採用されています。しかしカスタムにはどうしても当時と同じように作れない部分がひとつだけあります。それはフレット、非常に細く、低いものが使われていました(通称フレットレスワンダーはここから来ています)。これは技術的に作る事は可能です。でも現代では全く使える仕様ではないのです。だからここだけは敢えて再現していません。それとその外観から"ブラックビューティー"と呼ばれヒスコレのネーミングにも加えられています。
54年カスタムブラックビューティーモデル
リアはお馴染みP-90ピックアップですがフロントには当時としてはハイパワーのアルニコVと呼ばれるシングルをマウント。ポールピースにあたる部分が四角いので容易に区別が付きます。またゴールドトップと違いブリッジとテールピースがセパレートしたタイプが最初から採用されている。
57年カスタムブラックビューティーモデル
ピックアップがハムバッカーになる。当初は2ピックアップが殆どでしたが、オリジナル同様に3ピックアップもコンスタントに生産されるようになる。
60年カスタムブラックビューティーモデル
これは2010年50周年記念で限定生産されたモデル。よってスリムネックになる。またその後も同じ仕様で多少限定生産された。
上記の3機種がカスタムですが基本的にカタログモデルのカスタムは54/57年の2機種/3タイプが基本。で、それぞれにビグスビー付があります。またカスタムに関しては当初、ロングテノンが採用されておらず、ある意味完璧なレプリカではありませんでした。またペグに関してもクルーソンタイプが採用されるのが00年代後半からです。よってカスタムの完成度は割と近年に確立されたと云えます。但しこれはギターの質ではなく造りの問題ですのでギターそのものは同等とお考え下さい。
ヒスコレLP全般の共通点
誕生から現在までリアル度に対する変更は数年単位で行われています。そしてそれは59年スタンダードを基本に行なわれ、その流れで他のモデルに導入されて行く事が殆どです。それは細かいパーツのディテールや細かい木工の違いなどが挙げられます。これから挙げる点は全てが当初からではなく、途中から採用されたものもありますので基本的には現在を基準にみて行きましょう。
ピックガード
スタンダード系はアイボリーの1プライで、型抜きしただけのもの。よってエッジは直角である。若干色味が変ったり、材質が変った事があります。またピックアップの取り付け位置の変更により製造年代が違うとサイズが合わない事もあります。また現在のタイプはエッジが丸められた成型タイプで、ヒスコレとの互換性が無いものが多いです。それとピックガードとステーを留めているネジがプラスからマイナスへ近年変更されています。
カスタムに関してはブラック&ホワイトのプライですが当初は同時期のレギュラーのものが流用されていました。もちろん後にプライの厚みやエッジのテーパーを強くした当時のタイプになります。テーパー部分のホワイトのラインが太く、目立ちますので容易に区別出来ます。
エスカッション
これがある意味、外観上のヒスコレの特徴のひとつ。見れば簡単に判りますが高さが非常にあります。では何故高いのか?それは標準的なセットアップをした時にピックアップの面にエスカッションの高さが揃うようにした為です。そしてこれはヒスコレだから成り立つ部分でもあるのです。それはネックジョイントの角度が現在のタイプよりも浅いのです。だからボディから弦までの高さが抑えられる為、その様な高さのエスカッションが成り立ちます。またこのエスカッションは角度が付いているので弦にも、ボディラインにも綺麗に揃います。
ここでひとつツッコミを。ギブソンのエスカッションは底面が今でもフラットです。これは50年代のLPはピックアップのマウントされているボディの中心部がフラットであったからで、当然と言えば当然。そしてここからツッコミです。今のエスカッションも理屈的には同じですが高さが低いですよね?実は68年に再生産が開始されますが、ボディトップのアーチが段々簡略化されて行きます。即ち全体的にアーチを掛けてしまった方が楽、と云う事なんです。となればエスカッションが曲がり歪んでしまい、ボディラインに合いませんよね?だから曲げても大丈夫な様に低く(薄く)して着ける手段を採ったのです。国産ではエスカッションの底面に抉れ(逆アーチ)を付けて綺麗に取り付けているものもありますが、ギブソンは何らかのコストからその手法を採用したのでしょう。また再生産以降はジョイントの角度も強くなる為にブリッジ位置が自然と高くなり、余計にピックアップがエスカッションから飛び出ているようになります。(余りカッコよくないですよね…..)これでエスカッション厚の変化の理由がお分かり頂けたかと思います。ちなみにヒスコレのエスカッションを現行モデルに取付ける場合、ネジ位置に問題はありませんが、上記の通りに曲げて着ける事になるので割れる確率が上がりますのでお薦めは致しません。
ロングテノン(ディープジョイント)
ヒスコレ最大?の売りがこのロングテノン。ネックのテノン(ボディとジョイントしている部分)の先端が、フロントピックアップキャビティの途中まで届いている仕様の事です。もちろん外観からは全く分かりませんが、構造が変れば何かしら音が変わる、これは間違いありません。が、ここで間違えてはいけないのですが、"これで音が良くなる"訳ではないと云う事。あくまで良し悪しはトータル的な質で決まっているのです。ただヒスコレは当時のレプリカ、だからレプリカすれば自然とそうなるだけ。弾いてみて"これヒスコレだ!"と仮に分かってもこの部分がロングテノンの音、とは分からないでしょ?あくまでひとつのギターを作り上げている要素であるのです。ただ先に述べた通り、"そこを変えれば何かしら変る"点、についてはどう変るかなんて恐らく分からないでしょうね。
ネックのジョイント角度
これは52年の誕生時は殆どありませんが、何年かごとに角度が付いていき、60年で一番きつくなります。と言っても現在のモデルよりは遥かに緩く、ギターを構えれば容易に分かりますがブリッジがボディに近くなっています。実はこれは非常に重要なポイントです。それはテールピースとの段差が減る為、弦の鳴りがよくなります。皆さん、LPのテールピースを下げてテンションを強くした方が良いと思われている方もいらっしゃるでしょう。しかしテンションがきつくなり過ぎても弦振動の衰退は早くなります。また角度がきついとコマで弦が折れ、それでも弦鳴りが悪くなります。これもヒスコレの音の良さの一因です。ちなみにこの理屈を活かして今のタイプのLPをお持ちの方は逆にテールピースを上げてブリッジとの角度を減らしてみて下さい、絶対に鳴りが良くなります。それでテンションが減るのがイヤであれば弦のゲージをワンランク太くすればよいのです。またこれでプロミュージシャンがテールピースの弦の通し方を逆にしている理由も視えてくるでしょう。

では、“"ヒストリックコレクション"レスポール編 その1”はここまで。


第1回"ギブソンカスタムショップ"とは?
皆さんこんにちは、このコーナーを担当します"アルフレッドNJ"です。この先、ギブソンカスタムショップ(以後GCSと略します)について色々と語って行きたいと思います。
そこで初回は"GCS"って何なの?と云ったところを含めその簡単な歴史に触れてみましょう。
実は単に"カスタムショップ"と云う括り(名称)は80年代からあります。しかしこの時点では通常のUSA工場の中で、オーダー品やショーモデルなどを作る別ラインとしての存在で、独立はしていませんでした。また現在のカタログモデルの様な、コンスタントに生産されるようなモデルもありませんでした。
しかしこれは今皆さんが認知しているであろうカスタムショップとは違います。ではそれは何時からか?答えは1992年からで、完全に独立した敷地に別セクション"GCS"としてスタートしました。簡単に言えば、会社の中のひとつの部署を独立させ別会社を作ったようなもの。それにより様々な制約から解放され、コストを優先せずにより良いものを作れる環境が出来上がったのです。もちろんそれは選りすぐりの選任スタッフの起用等も含まれています。またブランドとしてある程度の生産数をこなした上で、全てにおいてワンランク上、いやそれ以上を狙ったひとつのブランドが誕生した、と言っても過言ではないでしょう。
そしてそのスタートは共にヒストリックコレクションのSGカスタムとコリーナのフライングV&エクスプローラーのセットから始まります。
と、ここまで書いておきながら今更ですが、今迄ご説明したGCSはナッシュヴィルに拠点を構える、本家?の事です。実はカスタムショップの拠点はもうひとつあり、その拠点はメンフィスにあります。但しこちらは当初からではなく、2004年からです。しかしこの拠点はその時期からスタートしたのではなく、2000年代初頭にナッシュヴィルにある、Gibson USA工場(所謂レギュラー製品の工場)のES系ライン(主にプレスボディ)を独立/移転させた工場が2004年からカスタムショップに編入された、これが本当のところです。
またそれぞれの所在地はどちらもアメリカ中東部に位置するテネシー州にあり、ナッシュビルはその郊外、メンフィスはそのダウンタウンにファクトリーを構えています。ナッシュビルは当初はUSA工場に隣接するところに居を構えていましたが2006年前後に近隣に拡張を兼ねて移転しました。メンフィスにおいてはダウンタウンにある、珍しいファクトリーですが一説には町の誘致による為と云われています。その為、イベントが出来るホールやファクトリーの見学が出来る造りになっているなどがその証と云えます。(もちろんグッズの売店もあります!)
大まかにはこんな感じですが、細かい処はモデルの説明等で合わせて説明した方が分かり易い点も多いので、その都度述べて行きたいと思います。
まずはGCSの主なラインナップ形態(シリーズ)から簡単にご説明して行きましょう。
Historic Collection(以下ヒスコレ)
恐らく皆さんが一番耳にするシリーズではないでしょうか?。でも未だに誤解されている方がいらっしゃり、カスタムショップとヒスコレが別、と思われている方がおります。ですがこの流れの通り、ヒスコレはカスタムショップのラインナップ中のひとつのシリーズです。
ヒスコレは50年代から60年代のモデルのレプリカを基本としています。現在では多岐に渡るラインナップですが、今現在は67年の年号のモデルまでがそれに含まれます。それ以降の年号の付くモデルはヒスコレには含まれません。また完全なレプリカではなく、それをベースにモディファイされたようなモデルは個々によって、そのシリーズの区分けが変って来るようです。但し削り出しアーチトップ系(フルアコ)やSGはモデル名に年号が付いていません。
また現在では様々なラインナップが揃っていますが、90年代はまだモデル数も少なく、充実してくるのは90年代終わりから2000年代に入ってからになります。
Artist Series
これはその名の通りですがGCSの歴史の中で幾つかのパターンが生まれています。当初はシグネーチャーシリーズで所謂、GCSがアーティストの要望に対して製作したモデル。代表的にはザックワイルドやジョーペリー、TAK松本等々が挙げられます。次に2000年代に入ってくるとアーティスト自身が元々持っている(いた)ギターを再現したものが登場してきます。例としてはボブマーリーLP SPLやディッキーベッツLP、そしてジミーペイジLPなどがあります。そしてこの頃からシグネーチャーとの境が曖昧になってきます。そこで00年代中期に"インスパイアド・バイ・シリーズ"と云う括りが登場し、所有品の再現は基本的にこのシリーズに移って行きました。そして2009年頃から3Dのスキャニングマシンが導入されたのを機に、よりリアルに再現されたモデルが登場します。(このマシンは色々なモデルに応用されて行きます)ですが最近ではその呼び方も殆ど使われず、アーティストのギター、見たいな広い感じで"アーティストモデル"的な捕らえ方になっています。ちなみにアーティストモデルは限定品である事が大半です。
Custom Collection
これは上記2つに属さないもののほぼ全てが含まれます。よって年号のある68年や74年のカスタム等もここに入ります。またホロウボディですがCS-336等も含まれます。更に造りはヒスコレだけど木材が違うから…..恐らくこれもここに入って来るでしょう。よってモデルを挙げるとキリが無いのでここでは一旦省きます。またこの後に述べますが限定品とのラインナップの関連性は別になります。
ES Collection
これは先にご説明したメンフィス工場で作られるES系モデル。即ちプレス系のボディは全てここで作られます。じゃあヒスコレの335は?って思いますよね?実は簡単に言ってしまえばボディのプレスはメンフィスで行なってるんです。それはギブソン自体にプレス機が1台しか無い為。(これホント、でも壊れちゃったらどうなるんでしょうか?)でもマテリアルのグレードはしっかりと区別されていますのでヒスコレをお持ちの方はご安心を。編入当初は単に括りが変っただけでしたが徐々に本家の血が導入され、現在では古くからギブソンに在籍するエキスパートが加入し、ヒスコレに迫る出来のES系が続々と誕生しています。
(※2013年2月追記※ 2013年よりメンフィス・ファクトリーはカスタムショップから独立したディビジョンになりました)
(Special Run&Limited)
これは基本、限定品を指す時に使い、ラインナップの区分けではありません。よってそのシリーズと合体して使われる事が殆どです。もちろんこれらが付かない限定品も存在します。
例外)Collector's Choice
これは近年始まったものですが、コレクターの持つ有名なギターを3Dマシンにより忠実に再現したモデル。今のところ(12年7月現在)オールドのサンバーストLPだけですが今後どう展開されるか注目。その為、どのシリーズに入れるか独立させるのかは不明。ただどちらにしても限定品である事は間違いなし。
おおまかなラインナップはこんな感じです。しかし過去のモデルの中ではこの括りに当て嵌まらないモデルや、1本もののオーダー品などの例外品も存在しています。これらは今後もう少し掘り下げて行きたいと思いますが、個々のモデルをご紹介して行く中で関連のありそうな時に一緒に振れて行きたいと思います。もちろんモデルそのものだけでなく、GCS関連全般に付いて書いていきたいと思います。

では第1回はここまで。

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Gibson Custom Shop Historic Collection & Vintage Original Spec
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Gibson Custom Shop Memphis Factory ES-Series
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ヒストリック・コレクション&VOS
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シグネイチャー・コレクション
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カスタム・コレクション
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ESシリーズ
その名の通り、オールドを忠実に再現したレプリカのシリーズ。 ミュージシャンモデル。但し本当にプロダクツとして正式にモデル名に名前が使われるもの。 ちょっと定義は難しいですが左2つに属さないもの。ちなみに年代の入ったモデルでも68年カスタムモデルはここに属し、ヒスコレには入りません。
カスタムショップに編入されたメンフィスファクトリー製のES-335,ES-175等セミ&フルアコ。

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