How to make?
やきもののグレーのマグカップ。
これがいったい、何から、どこで、どんな風に造られているのか。実は意外と知らないな…と思ったのは、私自身がセラミック・ジャパンを取材していく中で気が付いたことでした。

誰もがスマートフォンを手にし、多くのハイテクノロジーに囲まれて暮らす中、やきものの世界は想像を遥かに超えて、多くの『ハンドメイド』が息づいています。

そしてその『ハンドメイド』は、ここまで発達したオートメイションでも追いつけない、残るべくして残ってきた技術。まさに『職人技』です。

そんな素晴らしい技、そしてそれを成せる職人達が居る事、そして彼らが造りだすものを、是非知ってもらえたら。

この特集は、私のそんな気持ちから『ハンドメイド』で作っています。

by イコミトスタッフ みみみ

#hashtag
#排泥鋳込み(はいでいいこみ)
石膏型に流し込んだ泥漿(でいしょう)を一定時間放置したのち、必要な厚さになったら余分な泥漿を流し出す成形方法。
石膏型が泥漿の水分を吸収して張り付く性質を利用している。主に急須や花瓶など、中が空洞になった袋状の器の量産に適している。ガバ鋳込ともいう。
詳しくはコチラ▼
#イッチン技法
イッチンと呼ばれる道具に化粧土や釉薬、あるいは絵具を入れ、素地の上に絞り出して盛るように文様を描いていく方法。筒描き。イッチンの道具は渋紙製の円錐形の絞り出し式のものや、竹筒に注口をつけたものがあり、近年ではスポイトが用いられている。
#蛍手(ほたるで)
やきものを美しく魅せる加飾技法のひとつ。やきものに水玉模様の透かしが入っているものが多くみられる。光にかざすと星が透けて見えるイコミトの星座マグ(ホワイト、イエロー)にも使われている技法。 現在見つかっている一番古い蛍手のやきものは、ペルシャで見つかった、12世紀のものだと言われている。

シルクロードを運ばれて中国へ渡り、技術が洗練された。中国ではナイフで切ってアーモンドの形のように穴をあけることが多く、中国からヨーロッパへ輸出されたときに器にちりばめられた透かしを見て、「米粒」の様だと言われ、蛍手を英訳すると、「grain of rice」となっている。日本では透き通った光の様子を蛍になぞらえて「蛍手(ほたるで)」と呼んでいる。





#職人の仕事
セラミック・ジャパンで働く職人達に
イコミトwebデザイン担当みみみが、独占インタビューさせていただきました。
#ざわわサン
ざわわサンにインタビュー byみみみ
みみみ:ざわわ先生こんにちは。

今日は原型の作業を見せていただけるということすね!
そうです。今、原型の元となる石膏を流す為の準備を始めていました。
これは何をしているのですか?
石膏を流す基礎になる石膏に、カリセッケンを塗っています。
これを塗っておくと、石膏がキレイに外せます。

それから、原型に必要な分の目安をとって、薄いプラ板で基礎の回りを囲います。
それがダムとなって、その中に石膏スラリーを流し込みます。
なんだか難しそうですね…!
言葉にすると難しそうですね(汗)

『欲しい大きさの石膏の塊を造る。』という事です!

今、だいたいの目安をマークしたので、早速石膏スラリーを流していきます。
すみません、石膏スラリーとはなんですか?
石膏に水を混ぜ、撹拌して、とろとろになった状態のものです。
固まるのが早いので、作ったらすぐに流しますよー。
その白いとろとろが石膏スラリーですね!
そうです!気泡が入らないようにそおっと、でも固まる前に素早く流し込みます。
流し終わりました。
これが、削りやすい硬さになるまで少し待ちます。
そんなにすぐに固まるのですか?
そうですね。
カチカチになるには一晩程乾燥させたいところですが、大まかなサイズの削り出しは柔らかさが残っているうちに行いたいので、5分ほどで様子をみます。
あっという間ですね!
そうなんです。なので、ここからはスピード勝負です!
いい感じに固まったので、プラ板を外します!
すぐに削っていきますよ!
三角と呼ばれる石膏削りを当てながら、ろくろを回します。
こうする事で、石膏がどんどん削れていきます。
おお!すごく大胆に削るのですね!
そうです。
完成の形状のイメージは、図面の段階で出来ているので、そこを目指してどんどん削っていきます。
図面はざわわ先生がご自身で書かれるのですか?
そういう場合もありますし、私のデザインしたセラミック・ジャパンのアイテムに関しては、図面はひいていないんです。
その場の感覚で創作していくので。

デザインの持ち込みがあった場合やOEMのアイテムなどは、丁寧に図面を引いて、お互いの完成イメージが一致するようにしています。
別の商品ですが、このような図面を引きます。
なるほど!これを元に、原型を造っていくわけですね!
はい。私の場合はこれを元に厚紙に形を書いて、フレームのように使っています。
確かに!とてもわかりやすいです!
大まかな削りだしはこんな感じで、あとは石膏を一日ほど置いて完全に固まってから、細かなディテールを削る作業をします。

ディテールの部分に関しては、別のアイテムでお見せしますね。
よろしくお願いします!



これは、粘土で作った牛の頭のパーツです。
あっ!これはセラミック・ジャパンの『百福』ですね!
そうです!まずはこうやって、理想の大きさや形を粘土でつくります。
そこから、さっきのように原型を大まかに削って…
これが、削りだしてからディテールを整えたものです。
おお!これはもうほとんど完成の形になっていますね!
そうですね!あとは、これをつけるボウルの局面のカーブを整えます。
こんな感じで、ぴたりと合わせます。
ぴったりですね!あれ…でもこのボウル、商品のボウルより大きいような…
土は焼くと縮むので、10〜14%大きく原型を作るんです。

他にも、欠けやすそうなデザインの部分は少しデフォルメして作るなど、量産ならではの工夫をします。
なるほど!とても勉強になりました!

ここからはざわわ先生の事をお聞きしたいと思います。

ざわわ先生がやきものを始めたきっかけはなんですか?
姉が陶芸をやっていて、自分もやってみたいという気持ちから、美術系の大学で陶芸を専攻しました。
子供のころから、ものづくりや手仕事は好きなタイプだったことも理由の一つですね。
その中でも、プロダクトデザインの道に進んだ理由などあったらお聞かせください。
一度納得いく作品ができたら、その形をそのまま写し取り、多くの方に手に取っていただけるというところに魅力を感じたからです。
素晴らしいデザインを共有できるのはいいことですよね!
原型の作業をする上で、気を付けていることなどありますか?
デザイナーさんが一番伝えたい部分やこだわっている部分を表現しつつ、やきものでできる可能性を探求し、その中間点を的確に導き出すことですね。

あとは、集中して心を無にして取り組むようにしています。
なるほど。原型師さんならではの貴重なお話、ありがとうございました!

今回の取材に登場した『百福』は、商品ページでもっと詳しくご覧いただけます。
ざわわサンprofile
2003年からセラミック・ジャパンで原型師として務める。
大学時代の恩師と、先代の個展を訪れた事がきっかけで、セラミック・ジャパンに入社。
OEMアイテムの原型・デザイン、オリジナル商品の企画・開発など、多岐にわたって担当・総括するセラミック・ジャパンのプロフェッショナル。



#ケンサクサン
ケンサクサンにインタビュー byみみみ
みみみ:ケンサクサンこんにちは。
早速ですが、普段はどんな作業をしているのですか?
作業内容は鋳込みです。主に排泥鋳込み(はいでいいこみ)という手法で行っています。
排泥鋳込みですか。それはどのような鋳込み方法なのですか?
排泥鋳込みは、石膏の型に泥漿(でいしょう)を流し込み、泥が一定の厚さになったら泥漿を排泥する…
と言っても、あまりぴんと来ないと思うので、作業をお見せします。
ありがとうございます!よろしくお願いします!
この白い箱状のものが石膏型です。

今鋳込んでいるのはニュークリンクルスーパーバッグという四角形のアイテムなので箱状ですが、アイテムの形によって、石膏型の形状も様々に変わります。
ほうほう。今ケンサクサンが抱えているそれはなんですか?
注ぎ込みバケツです。イコミトのロゴにも使われていますね。
中に入っているこの灰色のものが泥漿です。

撹拌機で調合した泥漿をこのバケツに移し、今度は石膏型に流し込んでいきます。この工程を『鋳込み』と呼びます。

では早速鋳込んでいきますね。
はい!是非!見せてください!
けっこうスレスレまで入れるんですね!?
はい。泥漿に含まれる水分が石膏に吸われていくので、これくらいたっぷり入れます。
しばらく時間を置いたものを見ると、水分が減って泥が減ったように見えますよ。

こちらがそうです。
確かに!随分減ったように見えます!
これも先ほどと同じくらい、たっぷり泥をいれていたのですか?
そうです。そして、これくらい嵩が下がってきたら、そろそろ排泥(はいでい)ですね。
排泥ですか!それはどんな…、
お見せしながら説明しますね。
今度は石膏型から泥漿を流すんですか!
はい。必要なのは石膏に張り付いている部分なので、この真ん中の泥漿は余りの部分というか…、必要ないので流し出します。

こうする事で、複雑な形状のものも均一な厚みで成形する事ができるんです。
なるほど。泥をたっぷり使う、贅沢な作り方に見えます!
贅沢そうに見えますが、この排出した泥はもう一度撹拌機で利用できる泥漿となるので、無駄なく泥を使えますよ。
それならとてもエコですね!
これで排泥鋳込みは完了ですか?
はい。ですがこの後脱型(だっけい)という作業があり、そこまでが僕の一連の作業ですね。
見ていかれますか?
是非お願いします!
型の上側、つまり泥漿を流し込む入口になっているここは、作りたいアイテムの形よりゆとりを持った部分があります。

まずその部分を剥がしておきます。
それから、型を決まった順番に外して行きます。

まずは上から…、
おお!泥が形になっていますね!
あとは、大まかに余分な部分の泥を切って、丁寧に型を外し、乾燥させる。
ここまでが、セラミック・ジャパンの鋳込み師としての僕の仕事です。
詳しくありがとうございます!
ケンサクサンは、元からやきものが好きで鋳込みを始めたのですか?
元からというか、ある時すごく衝撃を受けるやきものの作品に出合ったんです。

それからやきものの事をもっと深く知りたくなり、勉強をはじめました。
運命の出会いがあったのですね。
セラミック・ジャパンに入社したきっかけはありますか?
やはり、現場でよりやきものへの知識や技術を深めるためですね。

学校でも勉強はしましたが、それだけでは学びきれないくらい奥が深いですから。

大変な事も多いですが、いい仕事をした日のビールは格別に美味しいので、その為にも日々頑張っています。
仕事と休息、どちらも充足できるいい仕事を日々したいものですね!
まだまだ伸びしろたっぷりの、若手鋳込み師、ケンサクサンのお仕事現場からでした!

今回取材させていただいた『ニュークリンクルスーパーバッグ』は、商品ページでもっと詳しくご覧いただけます。
ケンサクサンprofile
2016年からセラミック・ジャパンで鋳込み師として務める。
瀬戸で働く鋳込み師としては若手ながら、セラミック・ジャパンでは、ACT/シリーズのデザイン・製作から、新商品の開発に携わるなど、多くの場面で信頼され活躍している。
美味しいビールに目がない。



#あおちゃん
あおちゃんにインタビュー byみみみ
みみみ:あおちゃんこんにちは。
早速ですが、普段あおちゃんはどんな作業をしているのですか?
私の作業内容は主に素地の仕上です。ケンサクサンが鋳込み、脱型して乾かした状態のものを整えるセクションです。
なるほど!実際に見せていただくことはできますか?
もちろんです。
今日は葉枝置きの『I枝』という商品を仕上げているところです。

小さいですね!
そうですね。セラミックジャパンの中でも小さいアイテムかもしれません。
小さい分、繊細で脆いので、力の入れ具合には気を付けています。
今はどういった作業ですか?
近くで見たいただくと分かるのですが、ここに型の跡がついています。
これを道具で削り取っています。

…緊張する作業ですね!
初めの頃は緊張しましたが、最近はやきものに携われる事に喜びを感じながら作業ができています。
あおちゃんはもともとやきものが好きなのですか?
そうですね!やきものだけでなく、細かい作業やデザインなども好きです。
特にセラミック・ジャパンさんとはご縁があって…。
といいますと?
家族が気に入って使っていたカップが、セラミック・ジャパンのモデラートマグカップだったんです。

そして、お世話になった方の結婚式の引出物でいただいたのも、たまたまセラミック・ジャパンのクリンクルタンブラーで…。

またまた別の機会に、たまたま雑貨者さんで一目惚れして手にしたのが、酒器だるまだったんです。
それは凄くご縁がありますね!
はい。なので私も、セラミック・ジャパンの商品を手に取ってくださった方に、いいご縁があるように、丁寧な作業を心がけています。
とても素敵です!
そう言っている間に、作業が次の工程に進んでいますね!
大まかに削りの作業が終わったら、濡らしたスポンジで表面を優しく撫でます。

こうする事で、削りの跡や、表面の質感を滑らかにします。
素地はまだ脆いと言っていましたが、濡らしても大丈夫なのですか?
もちろん素地は脆いので、スポンジに含ませる水分の量や、撫でる際の力加減には細心の注意を払います。

ここでやり過ぎてしまうと、素地が壊れてしまうだけでなく、デザイン上必要な凹凸まで消してしまう場合もあります。

仕上はデザイナーさんの意図を崩さず、商品のクオリティを上げる事が大切だと思っているので、最後まで緊張感を持って行うようにしています。
なるほど。詳しくありがとうございました!
あおちゃんの誠実なお仕事ぶりが伝わる、セラミック・ジャパンの仕上げ現場からでした!

今回取材させていただいた『葉枝おき』は、商品ページでもっと詳しくご覧いただけます。
あおちゃんprofile
2015年からセラミック・ジャパンで仕上げ作業を務める。
仕上げ作業の他に、イコミトオリジナルラッピングシートのデザイン、商品名の名付け、新商品の開発など、セラミック・ジャパンでその多才さを発揮している。