近年、需要が高まる「Made in Japan」の商品。こちらのページでは、当店のロングセラー商品であり、茶道具の中でも基本となる「茶筌(ちゃせん)」にスポットを当て、“日本製茶筌の魅力”をお伝えいたします。

ブランド紹介

今回ご紹介するのは、茶筌の郷・奈良高山にて約500年の歴史ある技を代々受け継いでおられる「翠華園 谷村弥三郎商店」さんです。
新ブランド『SUIKAEN Takayamachasen』を2020年7月に設立され、今までにない「伝統を楽しむ日常」をコンセプトにした茶筌を制作されています。
取材では、高山茶筌についてや、商品に対する思い、新ブランド立ち上げの背景などをお聞きし、貴重な茶筌制作の様子もお写真と共にご紹介します。

茶筌の作り方、制作について

茶筌は、竹から職人さんの手によりひとつひとつ丁寧に作られています。
高山茶筌の産地、奈良県生駒市高山地域は、室町時代から受け継がれてきた「茶筌師の里」として広く知られ、国内生産のほとんどがこの地域で作られています。緻密で精緻な技法は、「日本の茶の湯」を通じて国内外で高い評価を受けています。

では、実際に茶筌はどのように作られているのでしょうか。
とても繊細で美しい、翠華園さんの茶筌。細やかな製作工程と職人さんの技をお届け。
ここでは、茶筌製作の中でも代表的な4工程をご紹介します。


片木(へぎ)

節の上半分位から先方の表皮をむき、大割包丁で半分ずつに割って16割にします。1片ずつ折り上げ、包丁と皮肌と身を分けて身を除き、穂数の基準にします。


小割(こわり)

16割の1片を大小交互に割ります。80本立の場合、1片を10本平均に割ると160本になり、上り穂が80本となります。


味削り(あじけずり)

穂先の部分を湯に浸し、身の方を根元から先になるほど薄くなるように削ります。適当な薄さになると、身側に丸くなるようにしごき、形をつけます。茶筌の形によって削り方を変えます。茶の味は「味削り」によって変わると言われるほど、最も難しい工程です。


下編・上編(したあみ・うわあみ)

面取りした上がり穂を折り上げ糸で編んでいくと、下がり穂はそのままで、上がり穂は開いた状態になります。下編をした穂に、2周糸をかけ、根元をしっかりするようにします。

《 高山茶筌 》一覧はこちら

「茶筅」と「茶筌」の違い

「ちゃせん」を漢字表記にすると、一般的にはこちらの「茶筅」の字が使われていますが、高山では古くから「茶筌」の字が使われています。 この2つの表記には一体どのような違いがあるのでしょうか。

■ 筅(せん、ささら):鍋などの焦げ付きを落とす道具、筅(ささら)から由来。
■ 筌(せん、うえ=うけ):竹のすべてを活かす、という思いが込められた字。

結論としては、どちらも正しい表記とされますが、流派やお家によって使われる字が異なることもあるそうです。

高山茶筌で使われる「茶筌」には、自己の持つ技術を尽くし、竹の持つ特質の全部を活かした芸術品である、という誇りを持っていることが、文字に表れています。

現代風カジュアル茶筌

『SUIKAEN Takayamachasen』ブランド茶筌の最大の特徴は、色糸を使用したモダンでカジュアルかつ日常に馴染むデザイン。長年茶道具を販売してきた当店のスタッフ達も初めて見た時は、「こんなにもおしゃれな茶筌があるなんて!」と驚きでした。

茶筌に対する想いや素敵なデザインとコンセプトに惹かれ、当店のお客様にもお届けしたい、一緒に茶道を盛り上げていきたいと思い、お声掛けさせて頂き、現在では当店オリジナルカラーの色糸でも制作して頂いております。500年の歴史と技を誇る高山茶筌を制作される「翠華園」さんと、1931年創業のお茶・茶道具の老舗「ほんぢ園」によるコラボレーションが実現しました。

高山茶筌 縁 -En-(全3色)

販売価格:4,800円(税込)

意匠権を取得した翠華園さんオリジナルの編み方で、柄が途切れる事なく続いていく市松模様の意味から、縁起の良い模様として「ご縁が広がる一服」となりますようにと、職人の思いが込められています。

泡点つ茶筌 白竹

販売価格:4,500円(税込)

持ち手の柄の部分が通常の茶筅より長く細めの作りになっているので持ちやすく、泡立ちが早いです。茶筌に使い慣れていない初心者の方にもしっかり泡点てして頂けます。色糸は当店別注のオリジナルカラーです。

泡点つ茶筌 紫竹

販売価格:5,000円(税込)

「泡点つ茶筌 白竹」同様、茶筌に使い慣れていない初心者の方にもしっかり泡点てして頂けます。茶道で紫竹(しちく)は、官休庵(武者小路)流で使われています。色糸は当店別注のオリジナルカラーです。

カラフルなかがり糸で編まれたデザインは、とてもカジュアルですが、さらに斬新なのがこちらの『笑-Emi-』茶筌、桜のチャームがついています。春らしくとても可愛らしい茶筌ですが、「抹茶を点てる時にチャームはどうなるの?」と気になりますよね。
でもご安心ください。チャームは糸でしっかりと固定されているため、逆さまにして点てる際にも動くことはなく、通常の茶筌と同じようにしっかり点てることができます。

カラフルなかがり糸やチャームなど元々の茶筌にない斬新で現代風カジュアル茶筌は、お稽古や茶会の場だけでなく、日常でも抹茶点てを楽しむ第一歩として、多くの方々にお選び頂いております。自分用に良い茶筌を選びたい方、日本製にこだわりたい、大切な方への贈り物として、手にとる理由は、様々かもしれません。伝統を身近に感じて頂くことで、皆様の日常を豊かにするきっかけ作りを目指しています。

伝統工芸の継承と新たな挑戦

全てが初めてだからこそ、これまでになかったアイデアが生まれ、茶筌に触れたことのない方々にも身近に感じて頂けるような、現代の暮らしに合ったカジュアルさを持つ、今までにない「伝統を楽しむ日常」がコンセプトの『SUIKAEN Takayamachasen』。


『SUIKAEN Takayamachasen』

「翠華園 谷村弥三郎商店」の茶筌師見習いである谷村圭一郎さん(写真左)、奥様のゆみさん(写真右)です。
茶筌や新ブランドの立ち上げについて、特別にインタビューさせて頂きました。

ー 現代風カジュアル茶筌誕生のきっかけについて教えてください。

ゆみさん「茶筌屋に嫁いだ私は、茶筌を触るのも本格的なお抹茶も飲むのも…全てが初めてでした。 茶筌の編み糸の殆どが黒糸だという事も知らず、カラフルな糸で編んだ方が可愛いのに…という無知ゆえの発想からでした。 自分自身が、茶筌を使うようになり、日常生活でも、こんな簡単に使える道具なんだと知り、少しでも沢山の方に茶筌の魅力を伝えたいと思ったのがきっかけです。」

ー 新しい取り組みを始めるにあたっての周りの反応はいかがでしたか。

圭一郎さん「私達は新ブランドを立ち上げるにも時間がかかり…当初、父、弥三郎は大反対でした。伝統を守ってきたからこそだと思います。半ば、反対を押し切っての挑戦でした。 徐々に私達の茶筌を選んで下さる方も増え、お客様からの声が父にも届くようになり、少しずつ認めてくれているように感じます。」

ー 実際に新ブランドを立ち上げ、どのように感じますか。

圭一郎さん「すごく嬉しかったご連絡は、息子さんの大学受験に向けて、がん担ぎとして、桜チャームが付いた「笑」をご注文頂いた事です。お母様から、私には祈る事しか出来ないから…とご連絡があり、合格発表の日に合わせて、笑茶筌をお送りさせて頂きました。 無事に合格して笑顔溢れる一服を点ててあげる事が出来ました!とご連絡を頂いた時は皆で喜びました。改めて、茶筌は気持ちを込めれるお道具なんだと感じました。」

ー 伝統工芸の継承として、意識していることは何ですか。

圭一郎さん「茶道において茶筌は本来1度きりの消耗品として扱われる物であり、また、美しく繊細な見た目からお客様へのおもてなしの心を表す物でもあります。 そういった意味で時間をかけてしっかりと技術を継承し、昨日より今日、今日より明日、そして先代より良いものを作れるように日々技術を高める必要があります。 高山茶筌の筌の字は、「竹のすべてを活かす」という思いが込められています。その思いをしっかりと茶筌で表す高山の職人を目指しています。 また、自分たちの意思、存在を茶筌と共に伝えることが出来る職人になりたいと考えています。」

ー 今後、挑戦してみたいことはありますか。

圭一郎さん・ゆみさん「茶道を含む日本の伝統文化へ、より興味を持ってもらうように啓蒙活動を積極的に行いたいと思います。その一環として教育現場に行き、子どもたちが分かりやすいように茶筌の工程を紙芝居で伝え、お互いにお抹茶を混ぜ、友達に出してみる体験などを行っています。 物を持って成し遂げるという事がおもてなしの本来持つ意味であると考え、この活動で相手の事を思う心を育てる事ができればと思います。」

最後に

こちらは、奥様のゆみさんが幼馴染みママさんと一緒に作られた絵本です。
「高山茶筌に興味を持って欲しい。世界中の子ども達に日本の伝統文化を知る入り口にして欲しい。いつか、高山の空気を感じ取りに来て欲しい。」そんな願いを込めて作られたそうです。茶筌作りの工程が可愛いイラストでわかりやすく描かれています。

自分が子どもの頃、こんな風に楽しく茶筌のことを学べていたら、もっと早く茶道に興味を持ったと思います。 私自身、部活動の茶道を通して茶筌を知りました。もし当時、部活動をしていなかったら、今でも茶筌には出会っていなかったかもしれません。

人々が茶筌に出会うきっかけ作り、伝統工芸の継承、新たな挑戦。
日本の伝統文化や工芸は、後を継ぐ者がおらず、縮小していく背景もございます。ですが、若手の作家さんや職人さんが持つ新しい視点で、現代の暮らしに合う作品が多く生み出されていることも事実です。また、海外の方から注目されることもあります。

取材を通じて、伝統は時代とともに成長し、様々な人や物との出会いによって進化、日々更新されていくものだと私は感じました。ですが、作品に対する作り手の思いは変わりません。「日本のいいものをたくさんのお客様にお届けしたい」と強く思います。そして、翠華園さんをはじめとする全国各地の作家さんや職人さんと共に『日本の伝統工芸』を盛り上げることができればこの上ない幸せです。

ほんぢ園は、これからも伝統文化の継承と暮らしに寄り添う商品のご提供を目指し続けます。

Thank you for reading!