はじめに

さてさて、こんにちは。
ほんぢ園にて買い付け・商品企画を担当しておりますマキノです。
今回は、イグサガラスを製作されている「ぐらすたTOMO」の水口智貴さんに製作風景を見せていただいた時の様子をお伝えしたいと思います。
※本ページ掲載画像は2022年に撮影されたものです。掲載されている情報なども2022年当時の情報です。

《 工房紹介 》

まずは工房のご紹介です。

▼ 「吹きガラス工房 ぐらすたTOMO」外観です。

▼工房内です。大きな機材がたくさん並んでいます。

▼ こちらガラスを溶かす為の「溶解炉」

溶解炉はガラスがドロドロにとけた状態で入っており火を止めると固まってしまう為、365日24時間稼働しっぱなしです。水口さんの窯は電気式のものだそうです。
3つ蓋が並んでいますが、中はそれぞれ部屋のように分かれています。一番右のものは「イグサガラス」専用のものだそうです。


ガラス工芸豆知識
ここでガラスの色味について簡単にご説明。ガラスの基本色は無色透明。何も着色剤を加えなければクリアな器になります。
全体にカラーの入った色ガラスを作る為には、溶けている状態の生地に着色剤を加えて色のついた生地を作る必要があります。イグサガラスは「い草」の灰を着色剤として生地に混ぜ込み色ガラスにされています。
色ガラスを作る為には溶解炉の坩堝(るつぼ:溶解炉の中の窯のこと)をまるごと使用するのでそれだけ生産コスト・維持コストもかかります。

▼ こちらはガラス成形時に再加熱する「再加熱炉(グローリーホール)」

▼ 使用時の「再加熱炉(グローリーホール)」

ガラスは冷えると固まってしまう為、成形中この再加熱炉で火を入れ直します。手前にあるV字の台は吹き竿を置くためのものです。

▼こちらはガラスをゆっくり冷ます為の「徐冷炉」

ガラスは急激な温度変化に弱いです。それを防ぐ為、完成した作品は徐冷炉に入れてゆっくりと冷ましていきます。
ちなみにガラスを溶かす為の「溶解炉」は約1300度、火を入れ直す為の「再加熱炉」は1500度、冷ます為の「徐冷炉」は約600度程です。

▼棚には色ガラスの元がたくさん並んでます

さくさくっと主に工房設備の説明でした。約1300度の溶解炉が常に稼働しっぱなしというのは驚きですね。工房内の暑さもすさまじく、取材に伺ったのがまだ6月下旬頃でしたが工房内の温度計はすでに40度近かったです。
では、実際に作っている様子をご紹介いたします。

《 吹きガラス製作 》

では吹きガラス製作中の様子です。

▼ まずは動画にてご覧ください

こちら要所要所かなりカットしているのですが、この流れるような動きもなんてことない風に見える仕草も、長年の経験と培ってきた技術がなせる業ですね。
では細かく工程ごとに見ていきましょう。

▼ 最初に、溶解炉内にあるドロドロの硝子を吹き竿につけます。

▼ 少しずつ吹いて膨らませていきます。

▼ 初めは小さな塊。

▼ 空気を入れながら内部に空洞を作っていきます

▼ 再び溶解炉内の硝子をとります。少しずつ大きくしていきます。

▼ 再加熱炉(グローリーホール)

▼ 少し大きくなりました。

写真がブレブレですみません…。いやでもほんと吹きガラスって冷えると固まってしまうので、めちゃくちゃスピーディーに作っていくんですよね!(という言い訳)

▼ 吹き竿です。

とっても長いです。熱したガラスを吹くのだから当然ですが、これだけ長いと息の調整など難しそうだな…と思ったり。

▼ だいぶ大きくなりました。

▼ ここで型の登場。

これは金属でできており、イグサガラス専用に特注されたものだそうです。「型吹き」と呼ばれるガラス工芸の技法のひとつで、ガラスをこの型にはめて空気を送り成形していきます。同じ形のものが安定してできるというメリットがあります。

▼ 先ほどの硝子を型にはめ、ゆっくり空気で調整

▼ 型からはずしたところです。カップの底面になりました。

▼ ここでもう1本の吹き竿登場。先ほど作った底面につけます。

ここで、元々使っていた方の吹き竿はカットして切り離します。そして新しくくっつけた底面の方の吹き竿に持ち替えて仕上げの成形をしていきます。

▼ 再加熱炉(グローリーホール)へ。

この「再加熱炉」成形中何度も登場します。「再加熱炉」→成形→「再加熱炉」と微調整を繰り返しながら思い描く形に近づけます。

▼ カップ上部、まだすぼまっていますので、ここから仕上げの成形をしていきます。

▼ 見本のカップでサイズ確認。

▼ ハサミで不要な部分をカット。

▼ カップの縁部分を広げて整えます。

▼ 完成です!

完成時はまだ黄色味が強いですね。冷めて落ち着いてくるとだんだんとイグサガラス特有の優しい黄緑色になります。

▼ 底面のくっついていた部分をバーナーで綺麗に整えます。

そして徐冷炉に入れてゆっくりと冷ましていきます。

《 工房を訪ねてみて 》

いかがでしたでしょうか?最近は作り手さんとお話したり製作現場を伺うことも多いのですが、ガラス工房は初めてだったので新鮮でとても貴重な経験となりました。

製作風景を取材させていただいて、ガラスって本当に取り扱いが難しい素材だなと感じました。維持コストもそうですし、製作中ももたもたしていられずノンストップで作り上げます。途中型にはめるところでは、もう一人のスタッフの方がセッティングしてスタンバイしていましたので、連携や段取りも重要そう…。
それをよどみなく黙々と集中して作業されている水口さんの姿は本当にプロフェッショナルでかっこよかったです。一つ一つこんな風にしてできあがっているんだなぁと思うと作り手の方の愛と熱意を感じられました。

ガラス初心者の私の気になる点にも気さくに応えてくださった水口さん。本当にありがとうございました。岡山の「い草」を使った素敵な工芸品、工業ガラスにはないハンドメイドならではの深い味わいを感じられます。
取材させていただいた「ぐらすたTOMO」の皆様ありがとうございました。

工房の窓辺に飾られたイグサガラスの花器ととりちゃん。可愛いです。

Thank you for reading!