はじめに

こんにちは。 ほんぢ園にて店舗運営を担当しておりますマンダイです。
今回は、日本の伝統工芸品である「高山茶筌(たかやまちゃせん)」の製作秘話取材と茶筌手作り体験をしてきました。その時の様子を記事にしてみましたので、どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

まずは、ざっくりと、「高山茶筌」の説明です。


「高山茶筌(たかやまちゃせん)」は、約520年前室町時代後期に誕生しました。室町時代中期、高山領主の子息が、茶道の創始者でもある村田珠光の依頼によって作ったものが始まりとされています。
以後、その製法は城主一族の秘伝とされ、代々跡継ぎのみに「一子相伝」の技として伝えていましたが、後になってその秘伝は、主だった16名の家来に伝えられることとなり、今日まで脈々と伝えられました。
現在、奈良県生駒市高山町が日本で唯一の茶筌の産地となっており、その歴史と技は約500年続いています。1975(昭和50)年5月、伝統工芸品に指定された日本を代表する工芸品の一つです。

今回、取材させていただいたのが、「翠華園(すいかえん)谷村弥三郎商店(たにむらやさぶろうしょうてん)」さん。※以下「翠華園」と表記させていただきます。

*翠華園さんについて詳しくはこちら商品ページをご参考ください。
「高山茶筌」の製作工程の説明から体験まで、翠華園の谷村さん親子が大変丁寧に解説してくださいました。本当にありがとうございました!

新ブランド「SUIKAEN Takayamachasen」や商品について、別ページにてご紹介しておりますので、ぜひご一読ください。

次に、工房をご紹介致します。

▼ 翠華園さんのギャラリー兼工房です。

▼ こちらは茶室。茶道のお稽古で実際に使われているそうです。

さて、次章では茶筌製作の様子をお伝えします。

第1章《 茶筌製作秘話 》

▼ こちらは茶筌作り体験のお部屋にて。製作工程ごとに見本が並べてあります。

 原竹 → 片木(へぎ) → 小割(こわり) → 味削り → 面とり → 下編 → 上編 → 仕上

茶筌の製作工程は全部で8つ、それぞれ担当が分かれており、1工程を完璧にこなせるようになるには2~3年、茶筌1本を作れるようになるにはなんと15年もかかるそうです。

茶筌の見た目からもわかるようにとても繊細で美しい日本の手仕事、職人さんの技が光ります。今回一部ではありますが、実際に製作工程を取材させていただきました。

詳しい製作工程はこちらの記事にて掲載しています。

▼ 片木(へぎ)、小割(こわり)と呼ばれる工程

机の上にあるものが、小割の工程を終えたものです。まだまだ完成まで程遠いですが、少しずつ茶筌の形に近づいていくのが見てわかります。

▼ 味削り(あじけずり)と呼ばれる工程

味削りは茶筌作りの中で最も難しいとされ、お茶の味を左右すると言われるほど重要な工程です。 翠華園さんには他にも職人の方はいらっしゃるそうですが、この工程は全て谷村さん1人の手で行っているそうです。

▼ 味削り(あじけずり)後の茶筌

ご覧ください。穂先がここまで細くなりました。実際に手に取って見させて頂いたのですが、竹がこんなに細く薄くなるとは驚きです。穂先は髪の毛よりも細く、簡単に折れてしまいそうに見えますが、触ってみるとしっかりしていて、不思議な感覚でした。

茶筌は国産の他に中国産、韓国産などがありますが、「高山茶筌」を選ぶ理由が今回の取材を通してより明確になりました。

「海外産との違い」は3つ挙げられます。
・竹の保管 ・竹の種類 ・乾燥剤(シリカゲル)

竹は2年間倉庫で寝かすことで竹の中の水分を抜いて乾燥させ、8つの工程を経て茶筌が作られます。ですが、保管している間に使えない竹も出てくるため、原料である竹の確保も茶筌作りにおいて非常に重要なのです。

下準備の段階から考えると茶筌が完成するまでに数年、職人さんの手によって1本1本丁寧に作られています。

海外産の茶筌は、漂白させるため元の竹よりも白っぽい色をしています。また、日本ではしっかりと乾燥させるのに対し、海外産はケース詰めした際に乾燥材(シリカゲル)が同梱されているのが一般的です。

今回取材させて頂いたのが12月中旬頃と、茶筌師さんにとって1年の中で最も大切な竹を干す時期(11月末~2月頃)にあたります。また、竹の花は120年に一度しか咲かず、花が咲いた後は一斉に枯れるため、竹の確保が難しいとされ、ここ数年がちょうどその時期にあたるそうで、自然素材の希少価値を実感する製作背景でもありました。

さて、次章では茶筌作り体験についてご紹介します。

第2章《 茶筌手作り体験 》

▼ 体験時の茶筌(白竹、糸:黄色)

翠華園さんでは、茶筌作りを体験することができます。
7工程目にあたる「上編(うわあみ)」を体験させていただきました。

体験では、竹の種類(白竹または黒竹)と好きな色の糸を選び、自分好みの茶筌を作ることができます。

▼ 体験の様子

穂1本1本に糸を通して編んでいき、茶筌を2周させると上編の工程が完了となります。茶筌が手元にある方は実際に見て頂くとわかりやすいのですが、かなり細かいです。日頃糸の扱いになれていない私はかなり苦労しました...(汗

▼ 仕上

上編終了後、穂先の乱れを直し完成品まで整えていきます。谷村さんの素早い手さばきで穂が美しく並び、茶筌ができあがっていく様子はまさに職人技。こうして1本ずつ丁寧に穂先の湾曲が作られています。

▼ 完成(黒竹、糸:ピンク)

完成した茶筌はこちらです。いかがでしょうか。
自分で糸を編んだことで特別感があります。茶筌は化粧箱に入れてくださるので、綺麗な形で持ち帰ることができます。
海外から体験に来られる方もいらっしゃるそうで、日本文化の広がりを実感できるのは、日本人としても大変嬉しいことですし、お土産としても素敵ですね。

▼ 化粧箱に入れて頂いた茶筌

次章では、こちらの茶筌で実際に抹茶を点ててみます。

第3章《 茶筌でおもてなし 》

体験後、茶筌を自宅に持ち帰ってきました。体験の時に谷村さんがおっしゃっていたのは、茶筌作り体験の場だけでなく、持ち帰った後に家族や自分の大切な人に抹茶を点てる、おもてなしをする、ここまでが翠華園の茶筌作り体験だということです。

普段、自宅で抹茶を点てて飲むこともありますが、自分が作った茶筌で抹茶を点てるというのは初めてのことです。この記事を書いているのが、年の瀬ということもあり、1年間の感謝の気持ちを込めて、母に抹茶を点てておもてなしすることにしました。

▼ お菓子を添えて、感謝の一服。

母「抹茶もお菓子も美味しかった。また点ててね。」

仕事でバタバタしていたようですが、抹茶でホッと一息、落ち着きのあるゆったりとした時間を過ごすことができたようで、おもてなしすることができて良かったと思いました。(このあと自分用にも抹茶を点てて頂きました...!)

おもてなしの心は、日本で古くから伝わる茶道の作法と精神がその源流と言われています。心を込めて抹茶を点てることで、大切な人をおもてなししてみるのはいかがでしょうか。

第4章《 まとめ 》

いかがでしたでしょうか?以上のような工程を経て、「高山茶筌」は作られています。
私は職人さんの手仕事って本当にすごい。もっと皆様に知ってほしいと思いました。

今回の記事が少しでも「高山茶筌」の理解への参考になりましたら大変光栄です。
取材協力をしていただいた翠華園さん、本当にありがとうございました。

翠華園さんは、今までにない茶筌の製作を軸とした「伝統を楽しむ日常」をテーマとして2020年に新ブランドを設立、色糸やチャームを使用したモダンでカジュアルかつ現代の暮らしに馴染む従来の茶筌にはなかったデザインで様々な商品展開をされています。 「高山茶筌」は、時代と共に進化し続けているのです。

そして、翠華園さんの「高山茶筌」は、ほんぢ園でも販売中です。
大切な方へ抹茶を点てておもてなし、「高山茶筌」を通じてより多くの方に抹茶を点てる楽しさを知って頂けると嬉しいです。ぜひご自宅にてご愛用ください。

Thank you for reading!

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