サツマイモについて -サツマイモと芋焼酎-

はじめに -サツマイモの歴史-

1705年、指宿市山川の漁師・前田利右衛門が琉球からサツマイモを持ち帰りました。
その後に起きた飢饉の救済作物として、また日照りや台風にも強く火山灰土壌のシラス台地にぴったりの作物として普及していきます。
享保・天明年間に各地で頻発していた飢饉でも 薩摩では一人の餓死者も出なかったといわれています。
その頃は年貢として米の取り立てが厳しく、米の栽培に不向きの薩摩では米が貴重品でした。
それまで、薩摩では米焼酎のほか稗(ひえ)や粟(あわ)などの雑穀類からも焼酎をつくっていましたが、それらが次第にサツマイモに取って代わっていきました。

※種子島ではそれより前の1698年に、琉球王・尚貞から種子島領主・種子島久基にサツマイモが贈られ、石野寺で栽培したという薩摩藩の記録があるそうです

芋焼酎といっても、現在は様々な種類の芋からバラエティに富んだ芋焼酎がつくられています。
焼酎乙類に分類される本格焼酎は、原料の特性が反映されやすいのが特徴で、サツマイモを原料とする芋焼酎もサツマイモの品種が異なることで「味わい」が異なってきます。

黄金千貫(こがねせんがん)

▲現在、ほとんどの芋焼酎が「黄金千貫」芋を原料にしています。
中身・皮まで白く、蒸すと甘い香りが漂い食べてもホクホクとして甘いです。
この香りと甘さが芋焼酎のフルーティな香りと味を造り上げています。
デンプン質が多く病気に強く多収という3拍子揃った芋で、青果用としても人気があります。
   ※皮色は黄白ですが、やや乾燥した暖地の畑では黄金色になります。

白豊(しろゆたか)

▲紡錘形の整った形の芋で、皮色は黄白色で肉色は淡黄白色です。
▲でんぷん質が多く主として「でんぷん」原料用として栽培されています。

【白豊を原料にした芋焼酎】

白薩摩(しろさつま)

▲紡錘形の整った形の芋で、皮色は黄白色で肉色は淡黄白色です。
▲でんぷん質が多く主として「でんぷん」原料用として、主として種子島で栽培されています

【白薩摩を原料にした芋焼酎】

紫芋系のサツマイモ

みかけは普通でも切ってみると中はきれいな紫色という品種があります。
これは、アントシアニン色素を含んでいるためです。
紫芋は大きく「山川紫」芋と「種子島紫」芋に分かれますが、近時「頴娃紫」も注目されるようになりました。

種子島紫

種子島の在来品種である「種子島紫」は甘みが強く、蒸すとホクホクしてとても美味しいので青果用として好評です。
焼酎は淡麗な味わいとなります。
☆「種子島ゴールド」は、種子島紫から進化した芋で通常の種子島紫よりも糖度が高くアントシアニンも豊富です。

【種子島紫を原料にした芋焼酎】

  • しまむらさき(四元酒造)
  • 種子島紫・夢づる(種子島酒造)
  • 黒鬼火(田崎酒造)

【種子島ゴールドを原料にした芋焼酎】

  • 紫育ち(四元酒造)
  • 天無双種子島ゴールド(さつま無双)
  • 紅芋 小さな小さな蔵で一所懸命つくった焼酎(丸西酒造)

山川紫

指宿市山川地区の在来種・「山川紫」は、糖分が少なく食味は良くないため青果用としては不向きですが、肉色が鮮やかな紫色なので食用色素、ペースト、フレークに加工され、アイスクリームやいも飴などに利用されています。
☆平成7年、「山川紫」の色素含量や収量性を高めた「綾紫(アヤムラサキ)」が九州農業試験場育成されました。
 「綾紫」芋は、皮色は暗赤紫で、肉色は濃紫の芋で天然色素抽出用、ぺ−スト用、パウダー用、醸造用など食品加工に用いられています。
☆さらにペースト・パウダー・醸造など加工用に適する「ムラサキマサリ」が平成13年に登場しました。

【山川紫を原料にした芋焼酎】

アントニオ猪木の道(常楽酒造)、めぐり逢いのとき(オカダマ酒造)

【綾紫を原料にした芋焼酎】

紅とんぼ(小鹿酒造)、蒸撰綾紫(西酒造 限定)

【ムラサキマサリを原料にした芋焼酎】

赤霧島(霧島酒造)

赤芋系のサツマイモ

紅薩摩(べにさつま)

「紅薩摩」芋は、皮は赤く中は白黄色のほくほくとした食感の芋です。
甘味が強くて美味しいので、青果用として人気が高く、超早堀り・早堀りに適した品種で鹿児島県では多く栽培されています。
この芋を使った焼酎は、上品な香りと甘味のある仕上がりとなっています。

【紅薩摩を原料にした芋焼酎】

  • 天無双紅さつま・極の赤・極の炎(さつま無双)
  • 柳井谷の福蔵(寿海酒造)
  • 赤利右衛門・今和泉篤姫(指宿酒造)
  • 紅乃薫(田村)
  • 薩摩紅(本坊酒造)
  • 千鶴紅芋仕込黒麹(神酒造)
  • 問わず語らず・・赤(大山甚七商店)

高系(こうけい)14号

昭和20年高知県の農事試験場で早掘り用品種として選抜された品種です。
皮は茶色がかった赤、肉の色は淡黄色。
食味が良く、青果用として人気があります。
☆宮崎県の「寿(ことぶき)赤芋」はこの種類で、徳島県の「鳴門金時」は高系14号の変異系統です。

紅東(べにあずま)
皮色はきれいな濃赤紫色で肉色は黄色の芋で、肉質は粉質で繊維が少なく食味が良いので青果用として主に関東で栽培されています。
焼き芋用に使われています。
☆「紅東」の変異系統が「栗黄金(くりこがね)」です。
 「栗黄金」は、外皮は白色、肉色は黄色のさつま芋で甘味があります。

【高系14号(寿赤芋)を原料にした芋焼酎】

【紅東を原料にした芋焼酎】

【栗黄金を原料にした芋焼酎】

紅乙女(べにおとめ)

端正な長紡錘形で皮色は赤紅色、肉色は黄白紅色の芋で、すらりとした乙女のように芋の形が良いことから「紅乙女」と名づけられました。
食味が良く青果用として栽培され、焼芋などに使われます。

【紅乙女を原料にした芋焼酎】

大海蒼々(大海酒造)

ベニマサリ(九州130号)

平成13年に登録された品種で、皮色は赤で肉色は淡黄の芋です。
蒸しいもの甘味が強く、食味は「上」です。

【ベニマサリを原料にした芋焼酎】

白金乃露紅(白金酒造)、さつまの恵み(知覧醸造)

ベニハヤト

紡錘形の整った芋で、皮色は赤紅色で肉色はあざやかな燈色です。
栽培品種中では最も力ロチン含量の高いグループに入ります。
鮮やかな橙色を呈すので食品加工用として利用されています。

【ベニハヤトを原料にした芋焼酎】

紅伝承(薩摩酒造)

サニーレッド

皮色は赤色で肉色はあざやかな燈色の芋で、力ロチン含量が多いです。
力ロチン含量はベニハヤトより少ないですが、食味はベニハヤトよりも優れています。

安納芋(あんのういも)

種子島・安納地区にある鹿児島県農業試験場で改良されたことから「安納芋」と命名された糖度が16度と日本一甘い芋です。
▲安納芋には2つの品種があります。
主に栽培されているのがピンク色の外皮と薄いオレンジ色の肉色の「安納紅」で、近時改良種の「安納こがね」(皮色は黄白色で肉色は淡黄白色)も栽培されるようになりました。

【安納芋を原料にした芋焼酎】

安納(種子島酒造)、炭火焼安納芋(種子島酒造)、炭火焼安納芋原酒(種子島酒造)

ジョイホワイト

▲醸造用に開発された芋で、皮・肉ともに白色です。
でんぷん質の含量が黄金千貫より多いですが、果肉が硬く仕込みに時間がかかるため余り普及していません。
この芋を使った焼酎は、上品な香りとスッキリした淡麗な仕上がりとなっています。

【ジョイホワイトを原料にした芋焼酎】

利八ジョイホワイト(吉永酒造)、山ねこ(黒木本店)

農林2号

▲昭和17年に登録された「でんぷん」原料用の品種です。
短紡錘形で、皮色は黄白、肉色は淡黄の芋で痩せ地でも良く育つので火山灰土壌地帯の代表的品種として広く栽培され醸造用にも用いられました。

【農林2号を原料にした芋焼酎】

薩摩維新(小正醸造)、農林二号(山元酒造)

時勝(トキマサリ)

芋の皮色が鴇(トキ)色(極淡紅色)で、飲むとときめくような焼酎ができることからトキマサリと名付けられました。
焼酎醸造時の原料あたりの純アルコール収得量が「黄金千貫」より多く、醸造した焼酎は、軽快な甘みとコク、芋の香りが強いといった特徴があります。

【時勝(トキマサリ)を原料にした芋焼酎】

赤無月(桜の郷酒造)

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