ブランド事典

フェリージ
Felisi
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ヒストリー

15〜16世紀に建てられた全長9kmにも渡る市壁、ルネッサンス期の趣を今なお色濃く残す美しい街並。
世界遺産にも認定されたイタリア北東部の小都市フェラーラで、フェリージは生まれました。
その発端は、創業者の1人であり、現社長でもあるアンナリサ・フェローニらの小粋な趣味。
1970年代当時、伝統工芸の馬具制作に興味を抱いた彼らは、ベルトやバッグなど革製品の制作に没頭するようになります。
そこで手掛ける新しいアイディアと使い勝手のよさを体現した品々は、やがて周囲の評判を呼び、次第に趣味という範疇を超えるようになりました。
そして1973年、フェラーラの中でもっとも歴史豊かな街並の一角に、初のアトリエをオープン。
“フェリージ”の名を付けた革製品を売り出し、ブランドとしての第一歩を踏み出したのです。
フェリージと一目でわかる個性的な製品は、デザイン、プロダクトの両側面におけるクオリティの高さと、その明確なオリジナリティによって、多くのファンを惹付けました。
以来今日まで、いつの時代にも愛され、親から子へと受け継がれるモノ作りを続けています。

フェリージを、素材にかける情熱なくして語ることはできません。
長年かけて築きあげた優良サプライヤーとの信頼関係に基づき、最高級の素材だけを仕入れて使用しています。
今、フェリージといえば、ナイロンと革のコンビネーションバッグを思い浮かべる方が多いかもしれません。
その登場は1992年のことでした。
それは安価で壊れやすいという従来のナイロンバッグの常識を覆し、“高級カジュアルバッグ”という新たなジャンルを確立。
今やフェリージの象徴的存在として、ファンの厚い支持を集めています。
そこには、ナイロンにも、シルクのような質感、軽さ、強度、発色のよさなど、最高級のクオリティを追求し、決して妥協しなかったフェリージの精神が宿っています。

フェリージの展開アイテムは、この40年間で実に多彩になりました。
男性に人気のビジネスバッグ、ユニセックスで楽しめるカジュアルバッグ、女性のためのレディスバッグ、旅行に役立つトラベルバゲージ。
財布や小物入れ、ベルトにアクセサリー。
インテリア用品から、シャツやニットウエア、コートなどのファッションアイテムまで、すべてにフェリージの美意識が息づいています。
1996年には、ドメニコ・ベルトラーニがデザイナーに就任し、クリエーション部門を統括。
革の特性を知り尽くした職人気質のデザイナーの参画により、フェリージの世界は一層幅を広げました。
今もアンナリサとの二人三脚で、フェリージの可能性を拡大し、ブランドとしてのさらなる発展に貢献しています。


職人の魂

素材を徹底的に追求することで知られるフェリージ。
こと、革に対するこだわりは格別です。
フェリージの原点は、アンナリサの手から生まれた革製のバッグにあるのですから、それも極めて自然なことかもしれません。
ただ革とひとことでいっても、自然な質感のナチュラルレザー、発色のよいカラーレザー、シュリンク加工や型押しを施したカスタムレザーなど、その種類は様々です。
なめし方、染色などの加工や仕上げの工程は革の種類によってすべて異なり、それぞれに相応しい原皮の状態や部位があるのです。
中でも創業以来こだわり続けているのは、革本来の風合いを生かしたナチュラルレザー。
自然素材であるベジタブルタンニンを使った伝統的な製法で仕上げるため、年月を重ねるうちに表情を変え、深みと味わいを増してゆくのが特徴です。
革製品に定評のあるイタリアの中でも最高峰の技術を誇るタンナーから買い付ける稀少なレザーを手に入れています。

また、フェリージが自社工場を所有していることも、特筆しておくべきでしょう。
創業時は、フェラーラの旧市街にあるアンナリサの自宅が工場の役割を兼ねていましたが、事業拡大に伴い工場機能が独立移転。
しかし、ブランド発祥の地であるフェラーラの街を離れることはなく、安易な大量生産へと移行することもありませんでした。
昔も今も、そこに集うのは、腕のよい少数精鋭の職人だけ。
彼らの手作業を通して、フェリージの表情豊かなバッグや小物が日夜生まれているのです。
世界最高峰のタンナーから届いたレザーは、革のカットから縫い上げまで、各分野を専門とする熟練職人の流れるような手つきで製品へと姿を変えていきます。
材質ごとに専用のミシンを使いわけて縫製しますが、その一連の作業は、まるでテイラーメイドのスーツを作るサルトリアのよう。
選び抜かれた素材も、繊細な職人の手作業によってのみ、そのポテンシャルを最大限に発揮することができるのです。

フェリージがこだわるのは、素材や仕立てだけではありません。
名脇役が芝居を輝かせるように、優れたバッグや革小物を引き立てるのは、留め金や掛け金、バックルなど、付属品と呼ばれる金具パーツの存在。
これらのパーツも、鋳型に真鍮を流し込むという伝統的な方法で作られたものばかりです。
そこにまた、ロゴを刻印したり、革を巻き付けたりと一手間が加えられます。
その種類は、数百にのぼります。
こうしたパーツひとつにも、フェリージの“ただひとつの存在”であろうというフィロソフィが徹底して反映されています。

それはまた、自前で作る小さな革パーツにも言えること。
もっとも顕著な例が、ジッパーの把手である革のプルタブです。
ジッパーを開けるとき、指にいかにしっくりと馴染むか。
それは使い心地のよさを左右する、極めて重要な要因です。
バッグの種類によって、部位によって、用いられるプルタブは異なります。
長方形に楕円形、ティアドロップ型やタッセル型。
平たいものもあれば肉厚なものもあります。
色展開を含めると、そのバリエーションは膨大な数になりますが、ひとつひとつ、手作業で作られています。
わずかな革の裁断面にまで染色したり、丹念に磨きをかけたりと、一切手を抜くことはありません。
また、どんなに小さなプルタブにもステッチが施されていますが、それは10ミリの間に4針を通して3本の縫い目を作る、“二重スリーステッチ”と呼ばれる高度な技術。
同じ針穴に2度針を通さなければならないという細かな作業は、新工員必須のミシン研修科目に指定され、フェリージの名に相応しい熟練職人の試金石となっているのです。

丹念に積み重ねることで伝統へと姿を変えたヘリテージ(遺産)を、自らの手で解体して、再構築する。
時代の変化を感じ取りながら、しかしその潮流に呑まれることなく、フェリージは独自の理念を掲げて進化を遂げてきました。
その核心には、フェリージが誇る最高級のレザーのように、柔軟でありながら決して擦り切れることのない、強靭なモノ作りの精神が宿っているのです。


インタビュー“アンナリサ・フェローニ”

2013年、ブランド創業40周年を迎えるフェリージ。
「これまで、常に前進と成長を続けてこられたのは、何よりもまず、私たちが“想い”を込めたモノ作りをしてきたからだと思っています。
私たちの作る製品には、たっぷりの愛情が注がれています。
それ故に、それを忘れたり、どこかに追いやることができなくなってしまうような、不思議な魅力を湛えているのです。」

創業者の1人にして現社長のアンナリサ・フェローニはそう語ります。 そんなフェリージのフィロソフィを支えるキーワードは、“ただひとつの存在”であること。
これもまた、アンナリサの言葉です。 「私たちの拠点であるフェラーラの街は、元々革製品の伝統が存在しない地域でした。
ここでモノ作りをするには、新しいやり方を創案する必要があったのです。
そこで私たちは、当時の伝統的なレザーグッズブランドが行なっていた、接着剤を大量に使う方法ではなく、衣服と同じシステムで革製品を作るという手法を選択しました。」
それは奇をてらうためではなく、必要にかられての、ごく自然な選択でした。
既成の枠にとらわれない自由な精神が、フェリージの“ただひとつの存在”としての魅力に一層磨きをかけたのです。

こうして大きな成長を遂げたフェリージですが、どんなに成功しても、決して創業の地フェラーラを離れることはありませんでした。
「私は、この街が大好きです。
自分自身、仕事でよく海外を訪れ、大抵の場所で快適に過ごしていますが、ここフェラーラ以外の土地に住みたいと思ったことはありません。
ここには中世の情緒が色濃く残っていて、文化的な価値も高いのに、とても住みやすく、落ち着いた環境です。
フェラーラには、素晴らしく質の良い生活と暮らしがあるのです。
そしてフェリージは、このフェラーラという地域に密着したブランドです。
社長である私も従業員も、会社そのものさえも、すべてフェラーラで成長したのですから。
やはり、離れがたいものがありますね。」

フェリージの商品は、100% Made in Italyで生産され、イタリア以外の土地で作られたものは、本当に何ひとつないのだとか。
「だからこそ、製造過程を間近でコントロールすることができ、そうして初めて、プロダクトのクオリティを高く保つことも可能になるのです。
フェリージの製品は、他とは違う、“ただひとつの存在”である。
みなさまにそう評価していただけるよう、これからもこの方法を続けていきたいと思っています。」


インタビュー“ドメニコ・ベルトラーニ”

論理的思考と優れたセンスを持ち合わせたドメニコ・ベルトラーニは、1996年のデザイナー就任以来、ブランドの根幹をなすキーパーソンとして、フェリージのクリエイティブを一手に担ってきました。
「私は自分の脳をパソコンのように利用することができます。
例えば、一つの立方体を思い浮かべた場合、それを頭の中で回転させ、上下左右すべての角度から、全ての面を見ることができます。
従って、デザインがどうあるべきかも、脳内ではすでに分かっているのです。
その後で実際に具現化すると、問題が出てくることもあるのですが(笑)。
自分は、“デザイナー”というよりも、“デザインへの情熱でできている人”でしょうね。
革という素材は、打てば響く、驚くほどの簡単さと同時に、扱い辛い難しさも備えています。
だから今もなお、小さな問題にぶつかってしまうこともあります。
学ぶということに終わりはありませんね(笑)。」

探究心旺盛なドメニコは、デザインや素材のリサーチにも余念がありません。
「私たちは今まで、時代の変化に伴って多くの素材を置き去ってきましたが、それらはとてもよくできているので、商材として再度マーケットに浮上してくるべきだと思います。
素材のリサーチを通して過去を振り返ることも、私は好きです。
過去のリサーチと新しい技術とがひとつに合わさって、フェリージの基盤は形成されています。
新しい技術と古い職人技とが融合することは、新たな“未来”でもあるのですから。」
その一方で、自分でデザインしたバッグに恋をし、「3つ持っている」と嬉しそうに語る、人間味豊かな一面も持っています。
「ひとつは“1861”というモデルで、最初に作られたフェリージの黄色いバッグ“P”に由来するモデルです。
そこからまた発展し、私が使っているサイズになり、私好みにアクセサライズされました。
今のところ最も気に入っているバッグです。
ここからまた進化していくでしょう。
私は『自分用に完璧なバッグが欲しい』と常に考えています。
そのためには使い勝手が心地よくなければいけませんが、そこに辿り着くと、『今度はこうしてみたい!』という欲が出る(笑)。
そうしてまた新たな年月を費やして発展していくのです。
人を魅了しつつ、同時にその人をその人たらしめるものを作り上げること。


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