網膜色素変性症の鍼灸治療について教えてください。

遺伝子の異常が原因の進行性疾患です。網膜のジストロフィーが起こります。ジストロフィーは栄養障害や代謝障害と言う意味で、網膜の栄養状態が悪くなることや、代謝異常が起こって網膜が徐々に無くなり視野を失う病気です。異常な遺伝子は2023年1月現在で60程度分かっています。

遺伝する網膜色素変性症は、全体の50％です。お父さんやお母さんが網膜色素変性症で、ご自分もしくはご兄弟が網膜色素変性症の場合、50％の確立でご自分のお子さまも発症します。お母さんとお父さんがいとこ同士の結婚で、ご自分だけが網膜色素変性症になった場合は、ご自分のお子さまに遺伝することはほとんどありません。あまり多くはないのですが、おじいちゃんが網膜色素変性症で、ご自分（男性）が網膜色素変性症の場合、ご自分のお孫さん（男の子）に発症することがあります。

厚生労働省の発表では、4,000～8,000人に一人が発症すると言われています。ただし、難病専門医に診断されて難病申請ができた患者様の人数なので、難病申請にいたっていない場合や、自覚症状が軽度で気が付かない網膜色素変性症まで入れると、かなりの患者様がいると思います。

典型的な網膜色素変性症は、視野が狭くなる視野狭窄と、夜間に見えなくなる夜盲症です。成人になってから発症した網膜色素変性症は、視力を保てることが多いです。子供の頃に発症すると、視力の低下が早まり見えなくなる可能性が高いです。典型的でない網膜色素変性症は、片目だけが網膜色素変性症になるケースや、夜盲症がほとんどないケース、初めに中心の視力が低下していくケースがあります。

徐々に慣れてしまうので、自覚症状に気づかずに網膜色素変性症が進んでしまうケースが多いので注意をしましょう。たまたま眼底検査をした時に、網膜色素変性症特有の眼底画像（色が緑色だったり、ドーナツ状にゴマ塩模様になったりする）でわかることがあります。

夜盲

夜間や暗所での視力の低下や、暗いところに入った時にみえるまでに時間がかかったり、暗いところから出た時に、なれるまでに時間がかかって眩しさを強く感じたりします。

視野障害

ドーナツ型にみえなくなって自覚することが多いです。視野の欠損は外側と内側に広がって行くことが多いです。最終的に中心部のみに視野がのこります。中心から下の視野は残ることが多いです。たいていは左右対象に視野が無くなって行くことが多いです。

視力障害

視力が低下する症状は様々です。かすみ感、コントラストの弱い文字や罫線の読みとりができなかったり、見え方がゆがんだりします。典型的な網膜色素変性症の初期では、視力の低下は自覚できないほうが多いです。また、遺伝子の型により視力の低下速度も様々です。急激に視力が悪化して見えなくなるケースや、急激に視力が悪化してもそのあと悪化しないケースもあります。

羞明・昼盲

眩しいと言われる患者様が多いです。その他、暗い所に行くとかえって見えやすい患者様もいます。色のついた光や光の点滅がみえると言われる患者様が多いです。

網膜の再生や網膜移植、人工網膜、遺伝子治療の研究がされていますが、日本ではいずれも研究段階です。千葉大学では微小な電気を流して、視力や視野を回復させる治験が始まっています。鍼灸治療をされる方も多いです。原因は徐々に解明されているので近い将来、患者さんの全快が実現するかもしれません。

鍼に微弱な電流を流したり自律神経の調整をしたりすることで、眼球回りや網膜の血流を高めると、網膜色素変性症の症状が改善することが多いです。症状が末期になると改善することができなくなるので、早めに鍼治療をするのも1つの選択肢だと思います。

網膜色素変性症で鍼灸治療をされる患者様は、自覚的な症状が改善することが多いです。また、お薬の治療とは異なり治療満足度が高い治療だと言われます。鍼治療にエビデンス（根拠）があるかを問題にされることも多いのですが、エビデンスを調べるには莫大な費用がかかります。お薬の様に費用を出してくれる企業がいないので、エビデンスを証明する治験が行われていないのが現状です。

鍼治療にデメリットはないのですが、治療が保険外となります。また、鍼灸師により網膜色素変性症の知識や治療レベルに大きな差があります。治療費は専門性が高い鍼灸師ほど高額になることが多いです。副作用がなくカラダの治癒力を底上げできる治療法なので、ご自分のできる範囲で、お医者様の治療と併用して行うのが良いと思います。

自覚的な症状は改善することが多いです。緩やかなペースで進行していても、急激に状態が変わることも多いので、現状に不安を感じていたら早めに鍼治療を始めましょう。