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guji Monthly Journal #19 / 2022fall winter

イタリアンクラシコの新しいセットアップの話

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セットアップスタイル、簡単に言うと上下同素材でコーディネートすることを指しますが、いい大人のスタイルとしてはやはりトップスはジャケットがベターですよね。

gujiではカジュアルからドレスまで幅広くセットアップアイテムをご用意していますが、セレクトの中心はイタリアンクラシコブランドです。
最も多くバリエーションをご用意しているのがTAGLIATORE(タリアトーレ)でして、ジャストフィットなトップスとシャープなボトム、ビジネスにも転用可能なベルトループ付きシャーリングパンツというスタイルが基本中の基本ではあります。

しかしながら、他のテクニック自慢のブランドからも新しいバランスのセットアップが提案されていまして、今回はそちらにスポットを当ててみました。

セットアップスタイルは自ずと上下が決まります。
なので考えるのはインナーだけで良く、実はかなりお手軽なスタイルなんです。
それでいて品格とクラス感を漂わせることができ、トレンドのムードも香らせるわけですから、スタイルに取り入れない理由がないですよね。

ということで、イタリア最新のクリエーションを具体的にご紹介しますので、是非ワードローブのアップデートにお役立ていただければと思います。


北イタリアはパルマ発、モダンクラシックの旗手CARUSO(カルーゾ)

CARUSO(カルーゾ)は本国イタリアでは従来から得意とする構築的でサルトリアルな仕立ての重衣料が以前大きなシェアを占めているそうですが、日本ではこちらで紹介しているアンコン仕立てのライトジャケットが人気です。

イタリアでは無名、日本で大人気というマーケティング主導のトレンドではなく、世界一トレンドを消化してデイリーウェアに取り入れるのが上手い日本ならではの動向といえるわけでして、CARUSOが培ってきたテクニックの集大成といいますか、技術の粋が集まっているのがこの“BUTTERFLYバタフライ”です。


気軽に羽織ることが出来るナチュラルショルダー、副資材を用いずに、それでいてしっかりジャケット然とした見え方に仕立てられるテクニックはさすがCARUSOというクオリティでして、ジャケットの表情のみをコピーして作る、簡素なシャツジャケットとは一線を画す仕上がりです。

ウエストシェイプは控えめに、重心も低目の4ボタン



ウエスト位置を高め、グッと絞ることでグラマラスなラインを描くスタイルが基本のイタリアンクラシコですが、“リラックス感”や“抜け感”といったキーワードをあくまでもドレスの軸から外れずに提案出来るところがCARUSOの魅力。

旬のディティールである4B仕様でボタン位置を低く設定、そうすることでウエストラインも下がり、クラシックなバランスに。
それでいてモダンに見えるのは全体のバランスが極めて軽く作られていることと、副資材の少なさによる恩恵。

ボタンを留めるも良し、外してカーディガンの様に着流すも良しというわけです。

【CARUSO BUTTERFLY 4Bダブルジャケットをもっと詳しく見る】


パンツのフィットもリラックス



CARUSOでは組下のパンツをいくつかのシルエットから選ぶことが出来、従来のスリムタイプからストレート、ワイドテーパードなどが用意されています。
その中から販売店が提案したいバランスをチョイスし、組下のモデルとして指定します。

今回は渡り幅にかなりゆとりを持たせつつ、裾幅は20cm前後まで絞りを入れたリラックステーパードフィットを採用。
2プリーツによる優雅なドレープをばたつかせることなく裾に収束させることで、大人のクラス感と上品さ、余裕を感じさせる仕上がりに。
軽やかなジャケットには軽やかなパンツが似合う、ただし、大人の着用に耐えうる上質な仕立てによるものに限る・・・という感じです。

こういったテイストのセットアップこそが、クリエイティブなクラシコブランドの新しい提案ですね。

【CARUSO 2プリーツリラックステーパードパンツをもっと詳しく見る】


ナポリのモダンはここから始まります。De Petrillo(デ ペトリロ)

サルトの聖地ナポリにあって、手仕事と量産ラインの融合に成功、柔らかなムードと切れの良いシルエットで人気を博しているDe Petrillo(デ ペトリロ)。

このブランドも積極的にニューモデルを提案しており、gujiでは昨シーズンからオーダーを始めたのがこの4ボタンモデル“Sommaソンマ”です。



CARUSOも4B、De Petrilloも4B・・・。トレンドセッターとなっているブランドがこぞって提案していることからもわかる通り、“今”を意識したスタイルのダブルジャケットは今4Bが主流です。
もちろん定番は6Bですし、少しファッション性が強いのでビジネスにはやや不向きといえます(使えないわけではありません)。

とはいえ、だからこそ、新しいセットアップスタイルには4Bのダブルを推したいわけでして、羽織って頂くとその理由もご納得いただけるかと。

特に最近はダブルジャケットもボタンを留めずに着るこなしが増えていますよね。
そういったスタイルには、やや重心が低目な4Bタイプがより軽やかなイメージを演出してくれます。

【4Bダブルジャケット Sommaをもっと詳しく見る】



De PetrilloではCARUSOほど遊びを効かせないように、組下は従来のスーツと同じモデルにしています。

“Z/C”モデルはDe Petrilloが誇るスタンダードスリムシルエットでして、程良く細く、細過ぎないというナイスバランス。
緩めのシルエットにはまだまだ抵抗がおありの方も多いですし、そもそも足長・美脚を目指すなら細身であるべき。

今までのクラシコスタイルから大きく逸脱せずに、少しトレンドのスパイスを効かせたいといったバランスがお好みでしたら、De Petrilloでお選びいただくと間違いありません。

【1プリーツテーパードパンツ Z/Cをもっと詳しく見る】


渾身の別注シルエットは手の良さに定評のあるLATORRE(ラトーレ)で

僕たちgujiが考える新しいバランスを構築すべく、テクニックに定評のあるLATORRE(ラトーレ)に白羽の矢を立てました。

イタリア南部、プーリア州バーリはイタリアの工場ともいえるほど腕の良いファクトリーが集まっている地域。
その中でも確かな名声を獲得し、実績も十分なブランドと協業することが出来たことは幸運でしたし、成功は約束された・・・とは言い過ぎですが、間違いなく素晴らしいものが出来るという確信が持てました。



従来のモデルに比べ、肩幅を気持ち広く、袖付けを前肩に修正、ウエストのシェイプもグッと控えめに、いわゆる“ボックス”シルエットに近いラインを目指しました。

決してカジュアルブランドのリラックスフィットではなく、サルトファクトリーならではの構築感も残しつつ、軽さと縦のラインを意識したシルエット。
大人の男性が安心して気負わずに着られながらイタリアらしさもきっちり感じられるよう、クラス感の表現には生地チョイスも含めかなりこだわりました。

従来のモデルですと羽織ると「グッ」となりましたが、こちらは「スラリ」というイメージです。

【guji別注ジャケット NWJをもっと詳しく見る】



組下パンツも完全別注モデルです。

奇をてらわずにベーシック、ジャケットとのバランスを一番に考えた程良く細身にテーパードシルエットです。

寸法的には渡りを従来よりも1〜1.5程度広く、股上も1cm程度深く修正しています。
穿いた時の見え方的には大きく違いはありませんが、腰回りのゆとりが広がっていて、プリーツの見え方やドレープ感が美しく感じられるようになっています。

縦のラインを意識したジャケットに合わせ、グラマラスになり過ぎないようパンツも縦を意識しています。

【guji別注パンツ NWPをもっと詳しく見る】


日本からはやっぱりこのブランドを、mando(マンド)


イタリアブランドをご紹介・・・といいつつ、やっぱり創業当初からオーダーを続けている、日本が誇るmando(マンド)は外せないな・・・ということで。

実は早くからアンコン×リラックスフィットというセットアップスタイルを提案していたmando。
イタリアよりも5年は早かったと思います。

そんなmandoの今メインの提案は、逆に少し構築的に見せるスタイル。
細かく紐解いてみましょう・・・。



ダブルで4Bという流れはイタリア同様ですね。
ただ、CARUSOやDe Petrilloよりもより肩が構築的で、ゴージラインは低めになっています。

こういった80年代や90年代のエッセンスを今のフィルターを通して表現するスタイルは多くのブランドが取り入れていますが、この分野においてはイタリアよりも日本の方がリアルで美しく映ります。

イタリアブランドがやるとどうしてもモードな、エッジの効いた(効き過ぎた)雰囲気に仕上りますので、日本人の編集力といいますか咀嚼力がいかんなく発揮されていると思います。

【4Bダブルジャケットをもっと詳しく見る】



3プリーツのサルエルパンツ、こちらもmandoを代表するパンツですが、発売当初はもっとゆったりとした、本当にサルエルパンツといったたっぷり感がありました。

時が経つにつれ大げさなシルエットを削っていき、今のスマートなバランスへと進化しているわけでして、やはり合わせるジャケットとの相性が最も重要視されています。

とはいえ特徴的なディティールは踏襲されていて、プリーツはまずイタリアでは見かけない3プリーツですし、セットアップ組下としては異例のサイドシームレス。
そうすることでクラシカルなルックスでありながら丸みが生まれ、セットアップで着た際の絶妙な抜け感へと繋がっていきます。

【3Pセミサルエルパンツをもっと詳しく見る】


最後に

メンズファッションの中でも“クラシコスタイル”に属するテイストは、ぱっと見では大きな変化はありません。
数年単位で比較することで「意外と変わっていたんだな」と理解できるくらいの小さな変化の積み重ねによって成り立っています。

そんな中で、コロナ禍を経た2022年は大きな(クラシコにしてはですが)変化が起こっている様に思います。

洋服のトレンドというよりは、人間としての考え方といいますか方向性といいますか、はたまた生き方といいますか、それがファッションに落ちてきているイメージでしょうか。
スタイルを決め過ぎることなく、かといって装うことを後ろ向きに考えるわけではなく・・・。

セットアップスタイルは、変な話積極的に着ても消極的に着てもおしなべて上品に見えます。
そういった特性から、もしかすると新しい時代に向けたスタイルが提案しやすいのかもしれませんね。

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