garoh pant 02 五十嵐 徹の場合

2023S/Sシーズンよりスタートしたguji初のプライベートレーベル"garoh(画廊/がろう)"。

「ニュークラシック」をコンセプトに掲げ、既存のクラシックとは違った新たな価値を生み出す上で共に取り組んで頂いたクリエイターの方にインタビューし、それぞれの思いを語っていただく連続対談企画、第五弾はIGARASHI TROUSERS(五十嵐トラウザーズ)の代表を務められているビスポークテーラー五十嵐 徹氏にご登場いただきます。

"garoh pant 02"について、様々なことを伺いました。

洋服屋が好きな服って売れないじゃないですか

ー五十嵐さんのお好きな感じで作って下さい というオーダーをさせて頂きました

五十嵐 徹氏(以下五十嵐氏):実は結構悩んだんです。
そもそも自分がやっているIGARASHI TROUSERSで好きな物を作っていますし、gujiさんではそれをオーダー頂いているので、それを踏まえて「お好きなように」と言われると、「もう好きに作っているんだけどな・・・」という気持ちになりまして。

制約がなく完全にフリーなオーダーはやっぱり難しいですね。逆に何を求めているかが分からないので、それを埋める作業から入りました。

まずはgujiさんで取り扱われているパンツのブランドや種類をリサーチし、どの様な物が求められているかを調べました。
実際に店舗に伺い、スタッフの方ともお話させて頂き、売れ筋動向などもチェック。その中でIGARASHI TROUSERSらしさを出せるパンツにしたかったので、こちらをお作りしました。

gujiバイヤーマネージャー高階(以下高階):初めてサンプルを拝見した時に驚いたんです、「ワイドじゃなくてテーパードなんだ」って。

以前からgarohの取り組みでクリエーターの方とお話しさせて頂いていて、ニュークラシックとなるとパンツはワイド気味で・・・みたいな感じになることが多かったですし、ましてや五十嵐さんなので、きっとワイドだろう・・・と。

まずはそんな驚きがありました。

五十嵐氏:やっぱり、市場で多く求められているものはテーパードなんです。gujiさんの品揃えも圧倒的にテーパードが多いですし、セールス的にもテーパードの方が売れていますよね?
そんな中で、ニュークラシックな要素を考えて作ったのがこのシルエットなんです。

考えとしては、今思うクラシックなパンツが太く股上が深いイメージがあると思いますが、そのクラシックから次に進むためのきっかけになる様なモデルとしています。

細身のパンツが多く求められている中で急にワイドがあっても受け入れて頂けないと思うので、まずはこのパンツを穿いて頂いて、何かを感じて頂ければと。

逆に、既にワイドを穿かれている方もテーパードに戻って来たくなるような物を・・・というのも考えています。

gujiアシスタントバイヤー脇川(以下脇川):なるほど、僕もワイドだろうな・・・と思っていたので、そのお話をお聞きして納得です。

五十嵐氏:IGARASHI TROUSERSの特徴は足をキレイに見せるのではなく、パンツのラインをキレイに見せる所にあります。パンツのラインがキレイに見えると、結果として中に収まっている足もキレイに見えるという考え方ですね。足のラインをパンツで作るみたいな。
なので、渡りや腿の部分には適度なゆとりが必要なんです。適度なゆとりがパンツをキレイに見せるてくれるのでタイトすぎるとダメで、逆に「無理してるな〜」と感じるわけです。

適度なゆとりをもって穿けて、テーパードがキレイに見える。パンツの寸法としてはそこまで細いものではないですが、穿くとスッキリと長く見える。そこに徹底的にこだわって作っています。

脇川:確かに、寸法は細くないですもんね。

五十嵐氏:多くの方に穿きやすいと思って頂きたいじゃないですか。あとお二人もご経験があると思いますが、洋服屋が好きな服って恰好良くても癖が強くて売れないじゃないですか?

なので、自分の経験を踏まえIGARASHI TROUSERS×garohならではの新しいテーパードでいこうと。
そこに、洋服屋が好きなディテールをてんこ盛りで入れようと。

シルエット自体は決して珍しいわけではないと思いますが、仕上りとしてはニュークラシックに相応しいものが出来上がったと思っています。

高階:2インプリーツやサイドアジャスターなど、五十嵐さんらしいディテールが目白押しですもんね。

五十嵐氏:そうですね、このパンツに関しては2インプリーツ一択でしたね。
他にも金具にこだわったり、より多くの生地を引っ張って面で動かせるようにピストル型アジャスターの生地面積を広げたりと、ちょっとした部分にも特徴を出しました。

あとはIGARASHI TROUSERSらしくきっちりプリーツが立つように地の目を意識しています。
インプリーツはどうしても生地が外に開いてしまうので、きっちり立つように動かしていまして、これは是非他のパンツと比べて頂きたいところです。

ふくらはぎ部分も膨らみを持たせて足に当たりにくい様にしていまして、アイロンワークで「殺し」の技術があればできるんですが、それを普通にプレスしても再現されるよう型紙を考えて作っています。
どなたでも、時間が経ってもキレイに穿いて頂けるはずです。

そんなに高いお金を出して買う生地ではない

ー生地について教えて頂けませんか

五十嵐氏:VITALE BARBERIS CANONICOヴィターレ バルベリス カノニコ社のカバートクロスです。
僕が大好きな生地で、今回はこちらを使用しました。

脇川:これはまたマニアックな色ですね。

五十嵐氏:僕自身がグレーやベージュをほぼ穿かないので。ここはかなり個人的な嗜好が入っています。

でもこの色って、一回穿くと凄く気に入られると思いますし、案外離れられなくなる魅力があるんです。
それは長くオーダーパンツを作ってきた中で実際によく売れている生地なので、実績にも裏打ちされています。

擦れに強く丈夫ですし、ナチュラルにストレッチ性があるので動きやすいんです。
似た組織でキャバルリーツイルがありますが、そちらだとちょっと印象が強すぎてしまうので、このカバートクロスくらいが丁度良いですね。

高階:CANONICOのカバートは凄く良いですもんね。
他の生地サプライヤーのカバートクロスと比べてどう違うんですか?

五十嵐氏:ドレスになり過ぎない面と、少しムラ感があるのでキレイなパンツだけじゃない雰囲気が出るところですね。あと先ほども言いましたが強度面です。

やっぱりパンツってどの洋服よりもかかる負荷がとても強いので、それに対応できる所でしょうか。
最近自転車に乗られる方も多いですし、普通に穿いていて内ももがすれて破れるという方にも対応できるので。

高階:凄く惚れ込まれていますよね。

五十嵐氏:このCANONICOと同等もしくは上のクオリティで作られているところは幾つかありますが、場合によってはトリプルプライスくらい高いので。そんなに高いお金を出して買う生地ではないな・・・と個人的には思っているので、総合的なパフォーマンスを考えるとCANONICOがベストでしょうか。

僕は今はCANONICOからはカバートクロスか4PLYしか買わないです。サンプルのスワッチが届いても、申し訳ないですがカバートと4PLYだけで・・・と。

脇川:garohの打ち合わせの時も即答でしたもんね。

五十嵐氏:そうですね、いい生地ありますよという感じで、もう生地のイメージはほぼほぼこれで決めていました。

普段のコーディネートがガラッと変わるんです

ー合わせ方におススメがあれば

五十嵐氏:これは僕が元々ストラスブルゴに居たということもあるかもしれませんが、めちゃくちゃ便利なんですよね。
グレーパンツにはない雰囲気が出せるといいますか、ネイビーにグレーだとコンサバですけど、代わりにこのパンツに茶靴を合わせるだけでつながりが出来て、色合わせに気を使っているように見せられます。

普段のコーディネートを代えずにパンツを変えるだけで、ガラッと印象が変えられはずです。

高階:販売を考えるとグレーを選んでしまいがちなんですけどね・・・。

五十嵐氏:・・・、まずは穿いてください。すぐに「以外と穿きやすいっすね」ってなると思いますよ。

脇川:色味的にはクラシック寄りですかね。

五十嵐氏:でも意外とオーダーでは若いお客様の方がお選び頂いているんです。
キャメルのコートを合わせても良いですし、もちろんネイビーやベージュ系も良いです。合わないのは同色くらいかな。でも、同じ生地でジャケットを作ってスーツやセットアップにされると凄く恰好良いと思います。

生成りとかオフホワイトくらいのシャツを着るのもおススメです。
難しそうに見えて、驚くほど合わせやすい色なんですよ。

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