解説

健康で調和に満ちた社会は”本物の塩と水”から始まる!
伝統の「塩水療法」を見直そう
小松工芽(医師・医学博士)

病人が増える現在、西洋医学が見落としてきたものを探る

本書で紹介されているクリスタル岩塩には、あるイタリアンレストランで偶然出会いました。いつも感動的な料理を作ってくれる天才シェフが「どうぞ、舐めてみて下さい」と、その場で擦りおろした白い粉を私に差し出したのです。それは、私が今まで「塩」と信じていたものと、まったく違うものでした。
「自分が塩だと思っていたものは、単なる味覚刺激でしかなかったのか・・・」というのが、その時の実感でした。また「もしかしたら、こんな素晴らしい天然塩を摂っていたら、高血圧にはならないのではないだろうか」と直感的に感じました。本書をプロデュースされた源気商會の土井聡さんが扱うクリスタル岩塩とは、そんな驚きの体験がありました。

 さて私は現在、仙台市の病院で健診業務と健康増進や予防医学の啓蒙活動を、また東京のクリニックで、栄養療法を中心tおした統合医療の診察を行っております。
それ以前には長年、大学病院や地域の病院で、西洋医学のいわゆる標準的な治療を行っておりました。西洋医学は確かに急性期医療としては非常に優れた医療ですが、慢性疾患に対しては必ずしも十分とはいえない部分があります。ましてや病気の予防に関しては、医学の発展とは裏腹に病気の人は増える一方です。私が医者になった頃には4人に1人と言われていたがんが、いまや2人に1人の時代に突入しています。これは,現代の医学や医療がもっと根本的で大事な何かを見落としているからではないか・・・・。そう考えるようになり、現在では統合医療も視野に入れるに至っております。

とはいえ、私も基本的には西洋医学の考えに重きを置いた医師です。本書でユージェル氏が述べている「水と塩の質と量が何よりも大切だ。現代人は慢性的な水不足の状態になっており、これがあらゆる病気の原因になっている。」というシンプルな主張は、正直言ってあまりに今の西洋医学の常識とかけ離れていると言わざる負えません。また本文中には、医師としてはにわかには受け入れ難い記述もあります。
しかし、全体的にユージェル氏の主張は私にとっては非常に興味深く、感覚的には正しいという気がしてなりません。最初、懐疑的な気持ちで読みはじめたのに、読んでいるうちにどんどん引き込まれて、最後には読んでいるだけでなんだか全ての病気が良くなる様な気になってしまいました。

体内の慢性的な水不足と病気の因果関係が、ますます明らかになってきた

 「体にとって水は大事。水が無いと生きていけない。人体の60-70%が水分であり、細胞も細胞間にも水で満たされている」ということについては、誰しも異論の無いと事だと思います。しかし、タンパク質や糖質、或いはビタミンやミネラルといった栄養素に比べて、水についての生体内での利用の詳細については、実はわかっているようでわかってないことが多いようです。
土井聡さんからユージェル氏の原稿についての意見を伺いたいとの連絡をいただいた時、私は北川良親氏の「アクアポリン革命ー活性水で救われるあなたの水不足病」(梓書院2016年)という本をちょうど読みおえた直後でした。
水が細胞に吸収されるには、アクアポリンというチャネル(通り道)が必要です。酸素と並んで生命の基本中の基本の水なのですが、このアクアポリンが発見されたのはわずか20数年前の1992年のことです。なお発見者のピーター・アグレ博士(アメリカ 医師1949~)は2003年にノーベル化学賞を受賞しています。
このチャネルにはいくつかの種類が確認されています臓器によってその発現しているタイプが異なり、様々な病気との関連が注目されています。例えばつい最近も、東北大学の片桐秀樹教授らが、脂肪肝があるとなぜ胆石ができやすいかに関して、脂肪蓄積による細胞の低酸素状態が転写因子HIF1αを誘導し、肝臓でのアクアポリン8の発現を減弱させることによって胆汁中の水不足(濃縮)が関与しているとの報告が「Gastroenterology誌(消火器病学の分野で最も権威ある医学雑誌」(2017 May;152(6):1521-1535)に掲載されました。
北川氏の本には、チャネルの通りやすさ(透過性)を評価する実験的なシステムを構築して調べたところ、水の種類によりこのチャネルの通りやすさが異なること、ある種の外的な処理を水に加えることによりチャネルの通りやすさが変わることなどが述べられていました。
北川氏もユージェル氏と同じように、体内の慢性的な水不足が多くの病気に関わっていると考えられているようです。今後、このような生体での水(とミネラルの)役割についての研究が更に進めば、ユージェル氏らの考えがより科学的な背景を持って証明されるものと思います。

 クリスタル岩塩は、私達がいわゆる「塩」と思っている人工的な塩(塩化ナトリウム)とは全く異なるものです。甘さともとれるなんとも言えないそのまろやかな味は、数十種類ものミネラルを包括しているためなのでしょう。また、この塩の素晴らしさは、本書でも詳述されているように「2億5千万年も前に溜め込んだ光のエネルギーを放散する」と言うことに尽きるのかも知れません。
クリスタル岩塩が食卓の塩化ナトリウムと同じ「塩」という土俵で評価出来ないことは、一口なめてさえ貰えれば容易に想像がつくことでしょう。食と健康の関係について研究しておられる白澤卓二博士(日本の抗加齢医学の第一人者。元順天堂大学加齢制御医学講座教授、現・  お茶ノ水健康長寿クリニック院長)も、著書「長生きできて,料理もおいしい!すごい塩」(あさ出版 2016年)の中で、”本物の塩”がいかに体に良いか、また減塩は根拠が薄いことについてきちんとした論拠を持って述べておられます。ただし,中には遺伝子のタイプで確かに食塩の感受性が高い人もおります。そうした背景も含めてはたして”本物の塩”が高血圧の原因となり得るのか、今後きちんとした検証の後、明らかにされる日が来るでしょう。

「塩水療法」は慢性疾患や代謝性疾患の治療の突破口となる

 残念なことに、現代の食生活はには、ユージェル氏がご指摘されるように、健康に害を与えるもので溢れかえっています。ひとりひとりが置かれている環境や遺伝的な素因が異なります。これからの時代は、病院任せ・人任せではなく、各自が自分の健康に責任を持ち、自分に合った方法で意識して健康を作っていかなければなりません。
その時に本書で紹介されている伝統的な塩水療法は、私たちの健康にとって強力なサポートとなる可能性があります。ユージェル氏の考えが、現代に増え続ける慢性疾患や代謝性疾患の治療の突破口となることを大いに期待しています。現代医学がユージェル氏の考えに追いつく日が楽しみです。

 ユージェル氏は、さらに健康の問題は単に個人の問題ではなく社会の諸問題とも繋がっていると述べています。人体は社会の縮図そのものだからです。社会学的な視点から、食と社会の関係性を述べているのも本書の素晴らしい点だと思います。
現代社会が競争社会から脱却して「共生」へと向かうには、「まずは不要に体を刺激するものを避け、自然に立ち返る”本物の塩と水”が大切だ」という彼の主張は全くその通りだと思います。
未来ある子供達の間に、自閉症やアレルギーあるいはいじめや自殺といった問題が増えています。その背景には、人工的な食べ物やスマホやゲームなどの影響がないとは言い切れないと感じています。個人の健康のためだけではなく、真の調和した社会を築くためにも、食から考える社会造りが必要な時かも知れません。その基本となるのが、太古から人々の栄養の中心であった”本物の塩と水”を取り戻すことなのでしょう。
ユージェル氏の考えが広く¥まり、健康で調和に満ちた社会が実現する事を願って推薦の言葉とさせていただきます。

  仙台徳洲会病院健康管理室
三番町ごきげんクリニック
  小松 工芽(医師・医学博士)