「北限のいちじく」と呼ばれるにかほ市のいちじく。昭和40年代後半から昭和50年ほどまで続いた減反政策(米の生産量を減らし、価格低下を防ぐ試み)により、にかほの農家たちが新しくはじめたと言われているのがいちじくの栽培。今では特産品になっているいちじくの販売を行っているのが佐藤勘六商店。 無添加にこだわり、伝統食として伝わる甘露煮から、ジャム、バウムクーヘンなどの商品を生み出しています。
甘露煮からはじまる、
いちじく文化を若い世代へ
創業60年にもなる佐藤勘六商店の店主を務めるのは佐藤玲さん。
これまで、いちじく栽培は農家さんに行ってもらっていましたが、自家栽培も開始しました。2022年の秋からは、一部商品に使用していく予定です。少しの量でも若い世代の自分が生産することで、子供たちに興味を持ってもらったり、移住、定住してくる人たちに”自分もやってみようかな”と思ってもらえたらとスタートしました。
今では12〜14種類ほどあるいちじく商品ですが、商店をはじめた時も、私が後を継いだ時も最初に取り組んだのが甘露煮。ブルンズウィックという加工に適した品種を使用し、とにかく砂糖をたっぷりに、その名の通り、甘く煮る。県外の方にとっては、生のイチジクを連想するかと思いますが、にかほ市民にとっては、いちじく=甘露煮なんです。
元々、生では食べない、加工を前提に栽培されているため、ブルンズウィックという品種が合っているんです。にかほの気候として逃れられない寒さにも強い。にかほいちじくの特徴でもあります。
現代人に寄り添った商品開発
いちじくを加工する文化が全国的にあまりないので、その伝統を大事にしています。”昔ながらの味”の中にも時代により変化させ、現在を生きる人たちの口に合うように味付けを工夫。先人から、ただ受け継ぐのではなく、色々と変化を加えながら新しいものにチャレンジしています。
いちじくを気軽に楽しんでもらうためにもジャムやバウムクーヘンなどの商品開発にも日々取り組んでいます。日常のお菓子感覚で試してもらい。もっと色々な食べ方をしてみたいと思ってもらえたら嬉しいですね。
新感覚・甘露煮グルメのススメ
しっかりとした歯応えもありつつ、ふっくら食感が味わえる甘露煮。そのまま食べるのはもちろんですが、クリームチーズを添えて、上からブラックペーパーやピンクペッパーを振りかけて食べるのがおすすめ。ワインとのマリアージュが最高で、甘みと塩味のバランスが絶妙。ぜひ試してみてください。
もっと簡単に食べるなら、ジャム。パンやヨーグルトの他、市販のドレッシングを絡ませていちじくサラダにしてみてください。フルーツサラダのようにさっぱりと食べられます。
「北限のいちじく」の名に相応しいにかほ市。
伝統食から日常食へ。いちじく加工の歴史を未来へ繋いでいくために、佐藤さんのいちじくから目が離せません。