未使用資源を価値あるものに。シードルでつくる持続可能な農業への挑戦。もりやま園 社長 森山聡彦さん未使用資源を価値あるものに。シードルでつくる持続可能な農業への挑戦。もりやま園 社長 森山聡彦さん

100年以上続くりんご園である「もりやま園」では、りんごを栽培するにあたって摘まれ、廃棄される未成熟なりんご、すなわち摘果りんごを使用した「テキカカシードル」が好評だ。甘くなく、さっぱりとした味わいでどんな食事にも合う「テキカカシードル」。今回は摘果りんごを使用したシードルづくりに至った経緯や今後の目標についてを営業の引田裕さんからお話を伺った。

シードル

100年続くりんご園が
シードルづくりを始めた
きっかけは
なんですか?

今の社長である森山氏がお父様からもりやま園を引き継ぐ前のことだった。2008年の6月中旬。摘果作業に日々追われる時期にもりやま園の園地がある樹木地域一帯を雹害(※空から降ってくる氷の粒が作物に穴を空けたり、地面に落したりする自然災害)が襲った。傷ついたりんごは出荷ができないため、加工用に回そうとしたが他のりんご園も同じような状況だったため受け付けてもらえず、結局捨てるしかなかった。

「『自分が引き継ぐにあたって、ひとたびこういうことが起こるとりんご園の経営は成り立たないな』と思ったそうです」

もりやま園の園地は東京ドームおおよそ2個分の約9.4ヘクタール。家族経営ではなく従業員を雇っているため、ひとたび雹害があれば家族だけでなく従業員の生活まで危うくなる。そこから何かあっても潰れないりんご産業とはなにかを考え始めた。

転機は2013年にシードルの研修のためフランスを訪れた際に起こった。
現地で口にしたシードルの原料であるりんごは、苦味、酸味が強く生食だとそこまで美味しいものではなかった。しかしシードルになると甘味が少なく、美味しいシードルとなる。森山氏は日本の摘果りんごも同様に渋く、酸っぱいことから通ずる部分があると感じ、摘果りんごでのシードルづくりも上手くいくと確信を得たそうだ。

工場 りんご

工場

シードルづくりへの
道のり

摘果りんごをシードルの原料にする。これは簡単にできることではなかった。2013年から始めた取り組みが2017年の夏に確立するまでには多くの試行錯誤があった。摘果りんごは本来、成熟前に摘まれるりんごのため、農産物として見られていない。そのため摘果りんごを収穫、販売するには農産物への薬剤散布の基準を満たす必要があった。基準にはそれぞれの薬剤に対し細かくどういった害虫に適用されるのか、使用時期、使用回数、その他注意事項などが定められている。この基準を満たした摘果りんごを収穫しつつ秋の生食用のりんごもこれまでと同じ品質で収穫できる新しい栽培管理をゼロから構築していった。

「2008年頃から集めていたビッグデータも活用しながらトライアンドエラーを繰り返しました。2014年、2015年、2016年と取り組み続け、ようやく2017年の夏に摘果りんごを収穫可能にし、かつ秋の成熟りんごの品質も維持できる栽培管理手法を確立しました」

今後の展望や目標などが
あれば教えてください

りんご産業は天候に左右されやすく、非常にリスクが高いことから次の世代が事業を継ぎづらい面がある。

「りんごを成長産業にしたいのです。摘果りんごのシードルのように、全く違う経営の基軸ができると魅力的に映るかと思います。なので周りの農家さんの理解と協力を得て、ゆくゆくはテキカカシードルの市場を拡大していき、いずれは農協や県を巻き込んでやっていけるように年、10年と地道に、着実に実績を広げていきたいです」

賞状

シードルシードル

寄附者へのメッセージ
「甘くなくさっぱりして食事と合わせやすいシードルです。ビールが苦手な方には代替としても試していただきたいです。基本的に冷やしてお食事と一緒にぜひお楽しみください」