天皇家の養蚕の歴史は古く、 文献上では古墳時代末期にそのルーツの記述があります。 現代に直接連なるものでは、明治時代以来、 皇居の中にある「紅葉山御養蚕所」で、 貞明皇后、香淳皇后、美智子皇后と歴代の皇后陛下が ご養蚕を行われ、宮中の行事でのお召し物や、 外国への贈り物にされています。 もとは明治時代に右肩上がりだった 養蚕業奨励として始まったもので、 これが現在まで続く「皇后御親蚕」と 呼ばれる伝統になっています。 |
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皇后陛下が育てるシルクの意味 |
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奈良時代から続く日本古来の 在来種である「小石丸」は、 明治時代には多く飼育されてきましたが、 交雑種に比べて生産性が低いことから 次第に生産量は減っていきました。 そのため、皇后御親蚕でも 飼育の中止の話がありました。 しかし、美智子皇后が 「日本の純粋種と聞いており、 繭の形が愛らしく、 糸が繊細でとても美しい。 もうしばらく古いものを 残しておきたいので、 小石丸を育ててみましょう」と ご提案され、現在でも 飼育が続けられています。 1990年代以降、正倉院宝物の 織物や復元や巻物の修復に、 この小石丸のシルクが 最適であることが分かり、 皇室のシルクは伝統的な日本文化を 伝えることにも生かされています。 |
▲蚕を網に移す上蔟(じょうぞく)の 作業をされる 皇后陛下【画像引用:共同通信社】 |