聞き手:菅野(英語伝 店長)

ーまず、この鉛筆削りを制作した経緯をお尋ねします。

普段、仕事で鉛筆をよく使うデザイナーの方との出会いがきっかけです。新潟の職人さんとクリエイターのマッチアップ企画がありまして、何か新しい物ができないかと思っていた時、鉛筆削りが欲しいと言われたんです。切出し専門の私達にピッタリのアイデアだったわけです。

ー「切出し」というのはどういうものなのでしょうか。

切出しは柄(え)までが全部金属の刃物なんです。柄と鞘(さや)が付いたものは「小刀」と呼びます。

ー最大の特徴であるカーブした刃はどうやって生まれたのでしょうか。

たまたま鉛筆削りの案を考えながら仕事をしていたら、研ぎをミスしてしまい、その部分をどう処理しようかと考えていたら、丸い刃が思いついたんです。変わった形だし、これならデザイナーの方にも喜んでくれるのではないかなと思い、仕上げて持って行ったんです。

そしたら、「これ、めちゃくちゃいい!」って話になって(笑)。結果として、刃が内側に付いているんで、子供が使った時の安全性も高くなっているんです。

いまの小学校では、安全を優先してあまり彫刻刀や刃物を使う授業が少なくなっているんですよね。それでこの鉛筆削りを子供たちに使って欲しいな〜と思ったんです。

たまたま小学校で物づくりのお話をさせていただく機会があって、この鉛筆削りを見せてあげたり、テレビの取材で紹介させてもらったのをきっかけに、作ってほしい、という問い合わせが増えて来たんです。あるお子さんは毎日鉛筆削りに夢中になっているって聞いて、嬉しくなりました。

ー材質などは何でできているのでしょうか。

鋼(はがね)の材料で、白紙二号(しろがみにごう)という鋼材を使っています。炭素の保有量が多い純粋な鋼材で、道具としての刃物には最適な材料だと思います。ただ、熱処理が難しい部分があるんです。ちょっと熱を加えすぎると刃の部分が曇ってしまったりして。

ー1本つくるのにどれくらい時間がかかるのでしょうか。

準備やら他の作業との兼ね合いなどあるので正確には言えませんが、1本仕上げるのに2時間くらいはかかります。うまく段取りを組んで、かかりっきりで作っても、1日20本くらいでしょうね。「狂い取り」という刃を真っ直ぐにする作業にとても時間がかかるんです。

ーどんな方に使っていただきたいですか?

大人と子供、両方ですね。ちょっと範囲がひろいですが(笑)

インテリアや道具としてカッコイイと感じてもらえるように作りました。収納している時は全く刃物に見えない点にもこだわっています。いつもそばに置いておき、通販の箱を開ける時などにも使っていただきたいですね。

鉛筆を削る時間って、大人にとっては懐かしくもあり、心を落ち着かせる「準備」という無くてはならない時間になります。デザイナーの方からいただいた「カッターは作業、この鉛筆削りはよろこび」という言葉が嬉しかったです。

左からデザイナーさん、増田健さん、増田吉秀さん。