質屋ならでこそ知り得る業界の裏側・価格の仕組み・宝石の真の価値・業者の暗躍...
謎のヴェールに包まれた、宝石・宝飾品業界の内実が赤裸々に明かされる!
目から鱗、驚天動地の真実が今ここに。
一度買ったらやめられない中古品宝石の魅力
リサイクルの世の中、車から衣料品までありとあらゆる中古品が市場に出回ってますが、
大概のものは新品に比べ汚れてたり、キズがあったり、なにかしら使った痕跡があるのが当たり前。
そこを納得のうえで消費者は新品に比べての安さに惹かれて購入に至るわけなんですね。
しかし、中古宝石の場合、よほど状態のひどいものは例外として、
これを一旦新品仕上げ致しますと、新品と比べ、見た目が劣る、性能が落ちると言うことがほとんど無くなるのです。
宝石の地金部分は大概、金かプラチナの錆びない柔らい可鍛性の高い貴金属でできてますから、
少々の小キズはバフ研磨により見事に消えてしまいます。
万一、宝石自体が欠けてたりしましても、これもまた「リカット」と申しましてカットし直すことが出来るのです。
ですから一応商品の流通経路を辿れば、一度一般ユーザーの手に渡ったと言う点で中古品と言わざるを得ない品物ですが、
商品価値そのものは全く新品と変わらないのです。
そんな新品同様のジュエリーですが、一旦中古品とレッテルが貼られますとこれが実に安い。
何故安いかと言うと、様々な要因はございましょう。
例えば、私共質屋ではお売りした商品でもまた買取ったり預かったりということがしばしばございます。
そんな場合、お売りした金額と買取りの金額があまりに大きく掛け離れてしまいますと店の信用問題になりかねます。
儲けたいのはやまやまなれど、安く売らざるを得ない、そんな内情もあるんです。
質屋の販売と言うと、ともすればブランド品のイメージが強うございますが、
実はノンブランドのジュエリーが一番の狙い目なんでございます。
“なんせプロの宝石業者さんが仕入れに来るぐらいですから!”
筆者:ハリー中野
ひと目でわかる!良い指輪の見分け方
それがしが、良い指輪の見分け方を教えてしんぜよう。
業者どもは中石がどうの、脇石がこうのと語りたがるもんじゃが、
そんなことは素人のオイラにゃさっぱりわかんねーズラ、
とお困りの方、ご安心めされ。
足首を見て女人の良し悪しを見極めるよりもっとたしかな方法なのじゃ。
それはの、指輪の厚みを見るのじゃ。
特にウデハラと呼ばれる指輪の一番下の部分、一番指輪の厚みが薄くなる部分。(下図:最小厚)
ここが極端に薄い場合、まず地金を倹約して作られた特価用のB品と見て間違いないじゃろう。
逆に、指輪自体は華奢な作りにも関わらず、この部分にしっかりした厚みを持たせてあるものは、
商品の強度や着け心地も考慮してきちんと作られた筋の良いものとみて間違いない。
どれくらいの厚みを基本に考えるかはデザインによっても左右されるが、おおよそ1mmを念頭に置いておけば良い。
大振りなデザインにも関わらず、この厚みが1mmを大きく下回る物はろくなもではないと心せよ。
よいかな、うむ。
筆者:ハリー中野
お給料の三ヶ月分
《婚約指輪はお給料の三ヶ月分が目安です。》
と、わたくしが若僧の頃、テレビのコマーシャルでよく宣伝しておりまして。
「三ヶ月分か、キツイな~、そんな金あらへんがな、まあ、贈る相手も居らんからええけど」などとよくテレビ画面に独りでノリツッコミを繰り返していた記憶がございます。
この、給料三ヶ月分と言うのは、当然のことながら特に法律や条例等で定められているものでもなければ、古来から伝わる冠婚葬祭上のしきたりなどというものではありません。
これは、D社という外国資本の会社が日本国の公共の電波を、金にものを言わせて買取って行ったプロパガンダ放送による消費者の洗脳、マインドコントロールに他なりません。
その結果多くの日本人が、婚約時の男性から女性へのダイヤモンドリングの贈呈を当然の常識のように思い込まされてしまったのでございます。
当時、D社はダイヤモンドの採掘から流通までのほぼ全てを一社独占、世界のダイアモンドの取引の8割以上を手中にしており、
ダイアモンドが世界中どこで売れようが儲かる仕組みになってたのでございます。
D社のこういったプロモーション活動はもちろん日本に限ったことではなく、世界中で展開されたわけでございますが、
わけてもやはり大衆に人気のあるショービジネスの世界ではことに熱心に、巧みに情報の刷り込みが行なわれていた模様でございます。
ハリウッド映画のロマンティックなシーン。
プロポーズの言葉の代わりに、クールなイケメン俳優が黙って差し出すダイアモンドの指輪。
「Oh my God☆」と恍惚としたヒロインの表情。
いったいどれほど多くの映画でこんなシーンを見せられたことでしょう。
中には映画の中でダイアモンドのコマーシャルソングをスーパースターに歌わせてしまうなんて大胆な戦略のありました。
「紳士は金髪がお好き」と言う映画の中で当時人気絶頂、ハリウッドのセックスシンボル、マリリン・モンローが歌った歌のタイトルがズバリ「Diamonds are girl's vest friend 」!
また映画のタイトルがそのままダイアモンドの宣伝コピーなんてのもございます。
ご存知ジェームズ・ボンドが活躍するスパイアクション映画、007シリーズ、シリーズ第7作。
その名もずばり「Diamonds are forever 」。邦題も直訳「ダイアモンドは永遠に」。
映画は大ヒット、同名のテーマソングもシャーリー バッシーという歌手が唄って大ヒット。
宣伝効果抜群。頭イイですよね、ユダヤ人の商才には頭が下がるばかりでございます。
しかし最近では、D社のダイアモンド独占事業にもいささかの翳りが見受けられるようなのでございます。
その理由としてはロシアやオーストラリアの独立企業の台頭。
そしてなんとダイアモンドが全く取れない日本からのダイアモンド輸出量の増大が少なからず影響しているのです。
この日本のダイアモンドとは、そもそもそんなD社の巧な宣伝に踊らされて、あまたのカップルが買いもとめた愛の証の成れの果て。
昨今の金価格急騰に伴う金プラ買取産業の蔓延と色褪せた永遠の愛の誓いに伴い、各家庭のタンス鉱山からの大量放出されたダイアモンドが大きく寄与するところなのでございます。
なにせ1965年以降の日本に輸入されたダイアモンドが“8700万キャラット”、実に“17.4トン”!
凄い量の研磨済ダイアモンドが日本の各家庭の箪笥に眠ってるのでございます。
スクラップとして買い取られた金やプラチナの地金は、一旦溶かして精錬するという手順を踏むのですが、「ダイアモンドは傷つかない」のD社宣伝の言葉どおりで、枠から外すだけ。
そのまま業者から業者へと転売され、国外や国内の新たなカップルのもとに儚い夢を運んで行くのでございます。
と言うことで、タンス鉱山からの取れ取れのダイアモンドリング、安く買うならやっぱ質屋でしょ!
なんせ国際ダイアモンドシンジケートを震撼さす程の安さですからね。
わずか、お給料ひと月分で立派なプロポーズリング買えますよ。
一っぺん彼女に「Oh my God☆」って言わせてみ。
筆者:ハリー中野
宝石鑑別器具のご紹介 ~屈折計~
本日は宝石鑑別の必需品「屈折計」についてご紹介します。
宝石にはそれぞれ屈折率と呼ばれる値があり、その値を屈折計で目視で読み取り「この石は何か!?」という判断材料とします。
この値を読み間違うと、全く違う宝石結果になったり、最悪は宝石結果が出なかったりします。
例えばここに"薄い紫色の石"があり、その石を屈折計で“1.550”と読んだとします。(実際の値は“1.540”)
おそらくその人の答えは"アメシスト"に辿り着くはずですが、間違いです!!
その石の正体は"スカポライト"なのです。
数値を0.01読み間違えるだけで鑑別結果が違うことが多々起こりうるのです。
※屈折計だけの検査で考えた場合のことです。
この様に屈折計で数値を読み取ることがいかに大事かということです。
今回ご紹介しました屈折計は宝石鑑別をする際の1つの道具であり、この他にも様々な検査を行い鑑別結果を出します。
次回は屈折計に用いる液体についてご紹介したいと思います。
筆者:ブタゴリラ
宝石鑑別器具のご紹介 ~屈折液~ この石の名前は?
本日は宝石の屈折を測るのに必要な液体、「屈折液」について簡単ではありますが、ご紹介します。
屈折液にもメーカーによって様々なものが販売されています。
今回お話するのは、アメリカの会社"Cargille Laboratories"が販売しているモノになります。
この液を使うことで、屈折率が1.81までの宝石を測ることが可能です。
前回ご紹介したとおり、この数値を測定することで「この石は何か!?」という判断材料にしています。
さて最高1.81ということですが、どれだけの宝石の屈折率が分かるのでしょうか。
答えはほとんどの宝石の屈折率がわかります!
この液を使い測れない宝石は、ダイヤモンド・ジルコン・スフェーンやガーネットの一部くらいです。
※一般にジュエリーとして扱われている石の話です
※今回は屈折率1.81まで測れる液ですが、別の液になればまた測れる範囲も変わります
使用方法に関しましては、屈折計のガラスフィルム上に一滴(米粒より小さい)たらし、その上に宝石を置き、数値を読み取るということになります。
以上、簡単ではございますが今日はこのへんで
筆者:ブタゴリラ
ダイアのお手入れ
宝石の中でも人気ダントツ、宝石界の福山雅治とも言えるダイアモンドでございますが、皆様意外にダイアのお手入れ方法をご存知ない。
「ダイアモンドは世の中の物質のなかで一番硬いんだから、何もしなくても傷つくことなく永遠の輝きを放ち続けるんじゃ無いんすか?」
このようにお考えの方も多い事かと推察いたすわけでありますが、これは全くの間違い。
いくらイケメン福山雅治氏でも風呂も入らず、髭もあたらずではこの私にすら劣る。
そんなことない?えらいすんません。
ダイアモンドは本当は、実に汚れやすいんです。
傷は付かないけど汚れはすぐ付いちゃうんです。
専門的に申しますと、親油性が高いと言うんですが、油分が付きやすいんですね。
油分が付くとそれだけでダイアが曇る。
油膜の付いた車のフロントガラスを想像すれば分かりやすいですね。
ただ怖いのは、それだけじゃない。
ダイアの表面を油の膜が覆うことにより、ダイアモンドの輝きの元とも言える高い屈折率そのものが損なわれてしまうので、ダイアの命とも言うべき輝きが大幅に減ずるのです。
更にはその油に細かい埃なんかが付着してドンドン汚れのコーティングが堆積して行きます。
おばあちゃんが肌身離さず付けてた、形見のダイアモンド立爪リングの爪下がどんな物凄い事になってるか、質屋だけが知るおぞましい世界。
左様、汚れたダイアはダイアに非ず。正に珠磨かざれば光無し。なので御座います。
じゃあ、どうやってお手入れするかと言うと、これがいとも簡単。
洗剤でゴシゴシ洗や良いんです。
食器洗いの洗剤をばっと振りかけ、揉み洗い、爪下の長年溜まった物凄い汚れも、使い古しの歯ブラシを使ってゴシゴシやってくださいませ。
あっと言う間にあら不思議、エンゲージリングが贈られた時のままの輝きを取り戻すはずでございます。
ひょっとすると旦那様の愛も輝きを取り戻すかも?
「えっ、もう結構?えらいすんません。」
※ただし洗剤で気安く洗っていいのはダイアだけ。他の宝石は色が抜けたり、ツヤが消えたり大変なことになりますから要注意。
筆者:ハリー中野
宝石には定価がない
インタナショナルなブランドジュエリーの定番商品は別として、
百貨店の宝石売場や一般の宝石店で売られてます、
いわゆるノンブランドジュエリーと呼ばれる宝飾品全般にはメーカーが決めた小売価格など存在しません。
では、どのようにして値段は決められるんでしょうか?
小売店の粗利目標はだいたい50%くらいが標準でしょうから、
仕入れ値、あるいは委託値の倍の値段をつける。
宝石販売では必ず値引きがつきもの。
小売店も馬鹿じゃありませんから、値引きを見越して掛け値をします。
2割引くところは2割増し、3割引くところは3割増にあらかじめ価格設定をします。
大出血半額値引き!なんてのは、仕入れ値の4倍の値段を付けてるだけなんですよね。
正直に値札を信じて値切らずに買うとえらい目にあいます。
もちろん今までの説明は基本形で、宝石店の値入れは単に仕入れ値に寄り掛かって
単純に計算しているだけではありません。
大切なのは商品の顔、顔を見て値段を決める。これが宝石店店長の腕の見せ所。
「おっ!エエ顔しとる、このルビー!ちょっと透けとるけど、場面有るし脇石Bやけど2キャラ巻いとる。
よっしゃ、5倍付けて4掛けで売ろか?」
まーこんなんです。
やってた本人が言うんやから間違いない。
そやけど質屋はそんなん出来ません。
なんせ自前で売った商品をまた買取ったり、預かったりせなあきませんからね。
そんな場合も考慮し厳正な価格設定をしてますので、
当店でお値引き出来ないのはそういう事情なんでございます。
でも普通の小売店で購入するよりずっと安いんです!
元小売店勤務の私が保証いたします。
筆者:ハリー中野
おうちで簡単!本真珠の見分け方
お友達の結婚式披露宴にママのパールネックレスを借りて行きました。
ところが、他の人のしてるパールネックレスに比べてママのはどうも黄色っぽく、ツヤもありません。
「これって本物かしら?」
そんな時、簡単にパールネックレスが本物かどうかをネックレスを外す手間もなく確かめる方法があります。
まず、パールネックレスの前の部分を指でつまみ、ゆっくりと口元に運びます。
次ににっこり微笑、白い歯がこぼれたら軽くパールを前歯にこすりつけましょう。
ザラっとした感じなら、OK!本真珠に違いありません。
ツルッとした感じなら、ブー!イミテーションですね。
ママのパールが黄ばみ、ツヤが無いのはパールの経年変化、つまり老化のせいなんです。
元々が生き物の貝が作る有機質の宝石ですから、どんなに保存状態が良くても劣化は避けられません。
それならいっそ、状態の良い中古品を質屋で格安なお値段で購い、他の人の着けてる黄ばんだパールネックレスを観察しては密かにほくそ笑みましょう。
※今回は、特別な道具などを使わず簡易的に判断する方法ということで、お送りしました。
※ 当店で実際に鑑別に使用している機材については、こちらの記事などをご参照ください。
筆者:ハリー中野
宝石鑑別器具のご紹介 ~蛍光観察機器~ 天然石?人工石?
本日は、宝石鑑別の際に"天然石"か"合成石"かの判別ができる機器をご紹介します。
こちらの機器は、宝石の蛍光反応を見るためのものです。
蛍光反応とは、宝石を紫外線などにあてた際に生じる発光のこと。
当社で使用している機器では、長波紫外線(366nm)と短波紫外線(254nm)の両方の反応を観察することが出来ます。
この長波と短波、両方調べる事が重要です。
※屈折計だけの検査で考えた場合のことです。
宝石によって、長波と短波で蛍光の強弱があったり、色が違ったり、全くでなかったり…様々な反応を示すためです。
このような蛍光反応を観察することで、宝石の鑑別に利用しているのです。
例えば、水色の石があるとします。
その宝石はアクアマリンやトパーズなど様々な可能性がありますが、この機械に入れ見てみましょう。
すると、短波紫外線の下で「真っ赤」に反応、長波紫外線の下で「青白色」の反応がありました。
その時点でその石はおよそ"合成石"と見当がつきます!
なぜなら、水色の石でそのような蛍光を出す天然石がないからです。
※上記の内容は屈折も計らずに蛍光反応を観察した状態で、蛍光反応に関して知識がある場合です
このように蛍光反応を見るだけでも、宝石のおよその目星を付けることは可能です。
以上、簡単ではございますが今日はこのへんで
筆者:ブタゴリラ
セレブの集い
大角百貨店外商顧客特別ご招待
「秋の味覚と宝石の夕べ 」
会場 某外資系高級ホテル 極楽の間
こういう夕べにわたくし如き下賤の輩が顔を出すなどという機会はまず一生無いのが普通なのですが、
たまたま宝飾品販売会社に勤務しておりました関係上否応無くスタッフとして駆り出され、セレブな世界を裏側から垣間見ることができたのです。
こういった宝石展示会とよばれる百貨店店外催事はだいたい年に数回行われ、
百貨店の外商顧客と呼ばれる優良顧客、つまりセレブな方のみ限定でご招待されるのでございます。
もちろん参加費なんて要りません。
それどころか、お茶やケーキ、さらには豪華ディナーまでご馳走してくれるんです。
中にはただのディナーではなく有名歌手の歌謡ショー付のディナー、いわゆるディナーショーの場合もあるから吃驚です。
そして帰る時には大層なお土産まで貰えるんです。凄いでしょ!
「それええやん!今度誘て。」と安易に口走るあなたは残念ながらセレブリティの資格無し。
セレブというものはなんせ世間体、顔というものに重きを置いている方々であります。
「ただで飲み食いさせてもろて、手ぶらで帰る訳いかへんがな。
なー山田君(百貨店外商部員)今日はなんぼほど買うたら君の顔が立つんや、ん?三本?三万でええん。」
「わはははは!冗談やがな、第一そんな値段のもんおいてへんやろ。」
「お母さん、山田はんの顔が立つよう三百ほどみつくろうてもらいなさい。
今日からまた当分お茶漬けだけの生活や。わはははは!」
まあ、大体こんな風景が会場のあちこちで繰り広げられているわけでございます。
こんな展示会に招待客として毎回参加してますと、嫌でもジュエリーがたまってまいります。
いくらセレブな奥様でも指は10本と決まってますから、そんな指輪ばかりあってもしょうがない。
「捨てる訳にもいかんし、宝石買取に定評のある質屋のマルヨさんに持って行こか?」
「今日からまた当分お茶漬けだけの生活や。わはははは!」
てなことで、持ってきていただくのは大層有り難いことなのですが、
こんな商品に限って、購入金額からの目減りが非常に大きいんです。
なんせ、お値段の中には高級ホテル大宴会場の場所代、会場設営費、一人あたりの日当三万円の凄腕宝石販売員の人件費、
お食事代、有名歌手出演料等々、掛かった経費が全部上乗せされてるわけですから。
買取りに定評のあるマルヨですら、商品の原価が買取り基準のこの業界、買取り価格が販売価格の10分の1なんて事がザラ。
しかし、セレブの方はそんな値段でも少しも動じる事がない。
「そう、仕方ないわね。じゃ、お願いします。」ってあっさりしたもんです。
そして最後に、「外商さんの義理やからしゃーないんよね、また溜まったらお願いします。」って。
凄いですなセレブの世界!
さて、そんなセレブリティの手からまったく未使用 同然な状態で、しかも販売価格の10分の1もしくはそれ以下で買取りさせて頂いた
高品質ジュエリーを私共は更に新品仕上げを施し、その上、宝石の正体を証明する鑑別書や鑑定書を作り直したうえで、
お商売ですよってに勿論わずかばかりの利益を加えさせて頂いてお売りしているのでございます。
質屋では、いかに良い物がお安く買えるかのほんの一例でございます。
筆者:ハリー中野
宝石鑑別器具のご紹介 ~チェルシーカラーフィルター~
本日のご紹介は、チェルシーカラーフィルター(エメラルドフィルター)と呼ばれる器具です。
写真の丸い部分が特殊なフィルターになっており、黄緑色と赤い光のみを透過し、他の光を吸収するように作られています。
この器具は宝石鑑別においてメインで使うことはほぼなく、鑑別器具のない状況で「この石どっちだろう??」という判断材料のお助けをしてくれるモノです。
例えばリングやネックレスなどに使われる水色の石といえば、アクアマリンかトパーズが多いと思います。
まずルーペで確認し、インクルージョンがあればほぼアクアマリンで間違いは無いかと思いますが、それでも自信が無いときにこのチェルシーフィルターを使います。
赤色に光れば→トパーズ
黄緑色に光れば→アクアマリン
と判別ができるということです。
※全てが同じ結果になるわけではありません
また「エメラルドフィルター」と呼ばれくらいだから、エメラルドの"天然"と"合成"の判別できるんではないかな?と思われるかもしれませんが、残念ながら出来ません!!
昔は「赤になれば天然」「緑色になれば合成」と言われていたみたいですが、時代の流れとともに合成を作る技術も向上し、
様々な手法で造り出してるので、現在においては判断材料の器具としては使うことがなくなりました。
現在ではよくエメラルドの産地鑑別の際に使われることが多くなってきたと思います。
※このフィルターを使う際にはペンライトのような光が必要になり、全ての宝石に使えるモノではありません
以上簡単では御座いますが、今日はこのへんで
筆者:ブタゴリラ
蘇る宝石
通常、質屋や買取り店で買い取られたジュエリーのうち、状態、デザインの活きてるものは、「市場」と呼ばる競売所に出品され、古物業者による競りにかけられます。
古物業者によって落札された商品のほとんどは新品仕上げを施され、指輪はサイズを既成のサイズにもどされ、内側の刻印が薄れている場合は再度打ち直されます。
他の商品も必要ならばパーツ交換やデザイン変更も含めたリフォームを施され、新品そっくりさんに整形されるんです。
その後それらの商品は、流通経路を遡るようにしてまた宝石の問屋さんや小売屋さんに流れて行きます。
そして、これらの商品が巡り巡って最終的にお店の店頭に並べらた時、中古品という但し書きはどこにもついていませんし、お値段もしっかり新品のお値段に戻ってるのです。
そうです。ジュエリーは輪廻転生、不死鳥のように新品として蘇るのです。
リサイクルショップや質屋の小売店でもジュエリーの品揃えが充実している所が少ないのは、そのような還流商品としての宝飾品の流通経路が確立されているため。
わざわざ手間暇を掛けて自前で在庫を抱え、中古として安く売らなくてもこういう流通システムを通じてどんどん処分して行った方が効率が良いからなんですね。
極端な例としては、宝飾品の問屋をしている質屋があるくらいです。
市場や古物業者の中間マージンをすっ飛ばして直接小売店に商品を卸すので、中古の販売価格よりも大きな利益が得られるわけです。
賢いですね?!
さて賢明なる読者諸氏はもうお気付きの事であろうジュエリーは、質屋で中古として販売されている新品同様のものを買わなければいけないことを!
筆者:ハリー中野
屑ダイアの話
口の悪いお客さんはよく、指輪の脇石に使われる様な小さいダイアモンドを、屑ダイアと呼ばれる事がありますね。
「こんなんどうせ屑ダイアやさかい、値打ちあらへんやろ」てな感じで商品にケチをつけて値引き交渉を優位に進めようと企む、浪速のおっさんの常套句によく見受けられます。
この小さなダイアモンドは本来メレダイアと呼ばれ、通常0.2キャラット以下の大きさのラウンドブリリアントのものをさします。
このようなダイアは主として、いくつかをまとめて土台に留める、集合石デザインと呼ばれる商品に仕立てあげられるか、
あるいはセンターストーンを引き立てる脇石として主に使用されます。
メレダイアにももちろん品質の善し悪しは当然あるのですが、大きな石の様に一個一個にグレーディングレポートを付けて単品管理することは有りません。
その代わり同じような品質をグループに分けてランク付けされ、1キャラットあたり幾らというロットでの取引が主流であります。
トップランクの無色・無傷・良好なカットの揃ったロットと、
最低ランクのブラウニッシュ・カーボンインクルージョン・欠け割れ入りの、文字通りの屑ダイアのロットとでは、価格に50倍以上の開きがあります。
ハリーウィンストンやグラフなどのハイジュエリーに用いられるのはもちろんトップランクのメレダイアが。
商店街やスーパーの特価専門店や通販など安さを売りにする商品には屑ダイアが。
それぞれにふさわしくセットされているわけなんですね。
「宝石の王様ダイアモンドがなんと全部で1キャラットもセットされた、この豪華かつ、おしゃれな指輪が今回は特別のビックリ価格なんと…!」
こういった謳い文句がついてる商品のメレダイアは、まず浪速のおっちゃんのいう通り、屑ダイアに相違ありますまい。
気ぃ付けなはれや!
筆者:ハリー中野
パワーストーンって何?
「イワシの頭も信心から」とはイワシの頭のようなつまらぬものでも、信仰の対象となれば有難いと思われる様になるという例えでございます。
イワシの頭ですらそんなですから、美しく神秘的な宝石ともなればより簡単、スムースに信仰の対象にされやすいですよね。
昨今のパワーストーンブームは何も今に始まったことではなく、太古の昔から世界のあらゆる場所で信じられてきた宝石信仰の集大成なわけです。
ただし、これを利用し儲けようとするのが、目ざとい商人の常でございますから、消費者としては悪徳な業者に引っかからないように注意しないといけませんよ。
例えば、良く見かける宝石ビーズの連ブレスレット。
男女の区別なく、着けている人よく見かけますよね。
ああいうのはたいがいクォーツとかメノウなんかの安価な宝石材でできていて、本来は安いものなんですよね。
卸価格で言うと何百円から、せいぜい高くても数万円ってところです。
ところが、これをパワーストーンの霊験あらたかな効能をパブリシティの前面に押し出して、とんでも無い高い値段で売ってるところありますよね。
「気い付けなはれや!」
そうそう、昔の話しですが、とある宗教団体でこんな話がありました。
月単位だったか年単位か忘れましたが、教祖がその期間のラッキーストーンを御宣託なさるんです。
すると信者はその宝石を信仰の証として必ず身につけないといけないんです。
さらに、購入に当たっては、教団指定の宝石店でないといけません。
もうお判りですね、信者が宝石購入に支払った金額の一部が、教団にバックマージンとしてお店からお布施されるんですね。
そのお店は多額のお布施の甲斐もなく、つぶれて今はありませんけどね。
さて、ではこんなインチキ商法ばかりが注目されがちな宝石が持つとされるパワーでありますが、実際にこの神秘のパワーというものが宝石にはあるのでしょうか?
この疑問は、霊能などとまったく無縁の凡人の私の理解をはるかに超えた難問でございますので、
代わりに今まで接してきた宝石好きのお客様の声を二三御紹介させて頂き、お茶を濁させて頂くことにいたします。
「綺麗な宝石を見ると目が洗われるようです。視界がスッと明るくなり、心が軽くなるようです。」
「渋滞に巻き込まれて、イライラする時なんかに指輪のダイアを見るんです。
するとそのキラキラと眩いばかりに七色に分散された光に心が吸い込まれてしまい、イライラが解消されるんです」
「指輪は買ってもほとんど着けません。宝石箱に入れて、夜独りの時に眺めて愉しむのです。
色とりどりの煌めく宝石達はいくら眺めても見飽きることがありません。心が癒される至福の時間です」
筆者:ハリー中野
鳩の血の秘密
ピジョンブラッドとは最高品質のルビーの色を表す言葉であるということは、宝石好きのあなたなら、勿論とうの昔にご承知のはず。
ピジョンブラッドとは即ち、鳩の血。
別に豚の血でも猿の血でも、ヘモグロビン運ぶ血液の色にさして変わりは無いような気がするんですけどねぇ。
多分、イメージの問題なんでしょうね。
青空をはばたく平和の象徴、鳩の血のほうが何やら透明感があって高貴なような。
第一、豚の血色のルビーだなんて言ったら、売れる物も売れませんやね旦那!
概して、宝石の色にはさも美しそうな、購買意欲をそそるキャッチフレーズがつけられていますよね。
もちろん宝石屋のあざとい企みなわけでありますが。
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黄色いダイアモンドは、“カナリーイエロー”
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茶色のダイアは、“コニャックカラー”
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黄色のサファイアが、“ゴールデンサファイア”
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黄色のパールは、“ゴールデンパール”
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鮮やかなパライバトルマリンは、“ネオンカラー”
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ピンキッシュなルビーは、“フレンチカラー”
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幻のカシミール産サファイアは、“コーンフラワーブルー”
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パパラチヤサファイアの色はなんと、“インド洋に沈みゆく夕日の色”
ロウカンと呼ばれるヒスイ最高の色は例えて曰く、“椿の葉に留まる朝露の如し”、ってもうポエムの世界ですね。
ただし、ルビーのピジョンブラッドと呼ばれる色には、それなりにちょいとした秘密がございまして、それをこれからこっそりお教えいたしましょう。
宝石の中には紫外線を当てますと蛍光を発するものがございます。
どんな色の光が出るかは石によって様々なんですが、これは蛍光反応と呼ばれ、宝石鑑別には欠かせない重要なファクターなのです。
ただし、石の種類よってこれは蛍光が出る、出ないとはっきり分かれているようなものではなく、同じ種類の石でも蛍光が出るものもあれば、出ないものもあるんでややこしいんです。
(参考記事)
ところで、ミャンマー産のルビーにはこの蛍光反応で強く鮮やかな赤色を発するものが多いのです。
天然光や室内灯のなかにも僅かですが紫外線が含まれていますので、そんなルビーはこれに反応し石の内部から燃え立つように発光してるように見えるんです。
これがピジョンブラッドの秘密なんですが、宝石の評価は決して色だけではありません。
内包物の多寡、カットのバランス、またそれによる光の反射、透け、影の割合などさなざまな角度から評価されるべきものなのです。
宝石店で紫外線ペンライトで照らさたルビーを見せられ
「奥様、ご覧くださいませ。これぞピジョンブラッドの燃え立つレッドでございます」
なんて言われ、赤く発光しているルビーを見て、感動のあまり直ぐ飛びついてはいけませんよ!
気い付けなはれや~。
筆者:ハリー中野
本当は痛いエタニティー
販売してる商品をけなすのもなんですが、ダイアモンドがぐるっと一回り指を囲むエタニティーリングってあるじゃないですか?
人気のある定番デザインで、海外の有名ジュエリーブランドなんかも競ってさまざまなダイアモンドのサイズで発表してますよね。
でも、この指輪って実はあまり着け心地良く無いんです。
一つ一つのダイアがあまり大きく無ければそんなに気にはならないのですが、
結構大粒のメレダイアを使って作られたものなんかですと、リングの厚みが増して、隣り合った指にけっこう当たるんですよね。
ダイアの留め方がレール状の枠に挟んで留められているものならば、まだマシなのですが、
ダイア一個一個を爪でセットしているプロングセッティングなんかになりますと、この爪がリングを付けた時、隣りの指に当たって結構痛いらしんです。
さらに手の平側にも当然ダイアモンドが回り込んでますから、
モノに当たってダイアが欠けるリスクも増えるんです。(最高の硬度を誇るダイアでも硬い物などに当てたら欠けることがありますからご注意ください)
エタニティーリングというのは、通常サイズ直しが出来ませんから、
大概は見本をみて、ピッタリサイズをオーダーしなければならないのと、ダイアの使う数が当然多くなりますので結構、値の張るお買い物になるんです。
やっと出来上がった、夢にまで見たエタニティリング。
喜び勇んで早速着けてみると...
「 ん?あれ?なんかに痛い。痛いやん!何これ?痛いやん!痛い!痛い!」
もちろん、そんなことでは小売屋さんもおいそれとは返品など受け付けてくれません。
そんな経緯の末、かどうかは定かではございませんが、こちら当店には中古のダイアモンドエタニティリングが複数ございます。
徹底した仕上げ処理により、見た目は新品と遜色なく、お値段は中古価格。
これなら多少の着け心地の悪さは我慢してもらえば、スペシャルなオケージョンのみの勝負リングとして大活躍してくれますよ!
筆者:ハリー中野
お守りジュエリー
せっかく身に付けるんだから、オシャレ以外の機能も宝飾品に付加することにより、さらなる消費者ニーズを喚起せしめ、売上向上を図らんとす。
と、どこかの宝石メーカーのエグゼクティヴが発案したのでしょうか。
宝飾品には、結構お守りの機能が併設装備されているものが多いんですよね。
まず代表格は何と言っても、クロスペンダント。
ご存知キリスト教の聖なる十字架。
どういう理由で処刑の道具が聖なる印となったかは仏教徒の小生には知る由もございませんが、
その効能は子供の時、テレビで観た英国はハマーフィルムの吸血鬼ドラキュラシリーズで実証済み。
クリストファー・リー演ずるドラキュラ伯爵が、十字架を一目見た瞬間、大仰にのけ反り、恐れおののく様を観て、その効果の絶大さに恐れ入った次第であります。
きっとこの映画を観た彼の国のジュエリーメーカーのエグゼクティヴの一人が
「これええやん!これをダイアモンドでこさえてやね、セレブタレントの綺麗な姉ちゃんにでもつけさせてやね、宣伝かけたら、でったい売れるわ、間違いない、でったいや!売れいでか!」
エグゼクティヴの目論見どおりクロスペンダントは宗教の壁を越え、世界中で大ヒット、今だに人気の定番アイテムなのです。
クロスペンダント以外にも色々なお守りジュエリーがございます。
中でも多いのが動物モチーフもの。
まず、カエル。
カエルなんて両生類で体全体が粘液でヌメヌメしてそうで、けっこう苦手な人も多いんじゃないかとも思われるのですが、意外や意外、縁起が良い生き物ということで人気があるのです。
「カエルはな、お金が還るいうてやな、出て行ったお金がまた帰って来るいうゲン担ぎや、よう憶えとけ、ダーホ!」
と新入社員当時に優しく教えられました。(注、ダーホ = 関西弁 どあほう 〈大馬鹿者の意味 〉の短縮形)
あと、フクロウ。これは不苦労と読ませて、苦労除けのまじない。夜露死苦。
お次は馬。ウマく行く。駄洒落か?
蛇。これもお金が貯まるゲン担ぎ。
ヘビ皮の財布に蛇リング。いかにもがめつそうなおばちゃんちゅう感じでんな?
鯉に鯛に海老なんてのも見たことありますよ。まるで、おせち料理。
珍しいところでは、クロスペンダントのアイディアをそのまま仏教に応用した、車輪の形の法輪ペンダントてな物まであります。
残念ながらクロスペンダントの人気には遠く及ばないようですが。
これほど左様に宝飾品の世界は誕生石、星座モチーフ、干支、パワーストーン、護符といったオカルティズムに満ちあふれた神秘の世界。
一度ハマったら二度と抜け出せない魔界のラビリンス。
気いつけなはれや!
筆者:ハリー中野
宝石はサイド
宝石、ことに色石の良し悪しの判断は中々難しいところでございます。
ダイアモンドは無色透明よく光る、が判定基準のすべてと言っていいくらいで解りやすいのですが、色石は中々奥が深く一筋縄ではまいりません。
第一、色石と一口に申しましても、色んな種類の宝石がございます。
ルビー、サファイア、エメラルド、真珠、オパールにヒスイその他大ぜいと、多種多様。
また、その各種類のなかでもさらに色味や産地で細分化されます。
たとえば、ブラックオパールとメキシコオパール、おんなじオパールでも見た目が全然違うんでややこしい。
これら多種多様な宝石を同じ判定基準で評価することは、全く不可能。
やはり、それぞれの種類に応じた判定基準が自ずとあるわけなんでございます。
ただし、あらゆる宝石の良し悪しの判定基準を頭に叩き込んだ人など、プロの宝石商でも稀有な存在。
では、一般の消費者は何を頼りに宝石をチョイスすれば良いのでしょう?
肝心なポイントを一つあげますと、それは専門的には彩度の高さなどと申しますが、色の鮮やかさを見るということなのです。
芸能人は歯が命、色石は名前の通り、色そのものが命な訳でございます。
では、どんな色が良いかというと、これは石それぞれに決まった理想的な色相というのが一応あるのですが、色の好みは十人十色。
絶対的なものではございません。
ただし色の鮮やかさというものは、どのような色石であっても高いに越したことはないのです。
鮮やかな色とは、太陽光をプリズムなどでスペクトルに分解した純粋な色。
この純度が低下してくるにつれて、色が濁ってまいります。
具体的には赤やオレンジなどの暖色系は茶色を帯び、青や緑といった寒色系の色はグレー味を帯びてまいります。
例えばサファイアですと、「地球は青かった」でお馴染みの宇宙から見た地球の青、鮮やかな青色ダイオードの青みたいなのが良いんです。
万年筆なんかに使われるグレーが混じった様なインクの青はよろしくないのでございます。
「どうです奥様、このサファイアのお色。墨染色とでも申しましょうか、実に渋い枯れた色を呈しております。
まことに見事、素晴らしい!これぞ幻のカシミールサファイアのコーンフラワーのお色でございます。」
なんて良い加減な口車に載って、しょうもないモンつかまされたらあきませんよ。
気いつけなはれや!
筆者:ハリー中野
宝石屋見てきたような嘘を言い
「講釈師、見てきたような嘘を言い」などという言葉がございます。
テレビや映画の無い時代、講談という話芸が庶民に広く人気を博しいたそうでございます。
怪談やら人情話など、寄席や演芸場なので演じられた講談師の演ずる物語を人々は極上のエンターテイメントとして大いに楽しんだのでございます。
その語るさまの真に迫ったリアリティーを評した言葉が冒頭に挙げた、見てきたような嘘を言い、と言う表現。
これは講談という芸に対しての一種の賛辞であろうかと思います。
これに対し、「宝石屋、 見てきたような嘘を言い」と言う言葉がございます。
これはあまり世間で広く知られた言葉というものではなく、業界内部で所謂自虐ネタ的に使われる軽口の一種でございます。
私が以前奉職しておりました宝石店は大阪ではそこそこ名の通った老舗だったのでございますが、なんと「GIA」とか「FGA」などの宝石鑑定の資格を有する者は一人もいないという体たらく。
社員の宝石に関する知識は社内研修などで間に合わせてましたが、教えるほうも先輩社員や幹部社員。
最初から誤った情報を与えられる危険性が非常に高い。
実際、ダイアの内包物の度合いを示すVVSとかVSといった記号をご存知の方も多いかと存じますが、わたくしが最初にこの意味を新入社員研修で教えられた時は、
「ベリーベリー・スモール・インクルージョン、ちょっと落ちるやつはベリー・スモール・インクルージョンっちゅーんや。インクルージョンっちゅーのは内包物っちゅー意味や、よー覚えとけよ」
ということだったのですが、後年「GIA.G.G」の資格取得の為、改めて学習し直すと実は、「ベリーベリー・スモール・インクルージョン」ではなく、「ベリーベリー・スライトリー・インクルージョン(very very slightly included)」ちゅーことやってびっくりしたん覚えてます。
※slightly(スライトリー)=「ほんの少し」という意味。
実際その会社では、商品知識軽視の傾向が強く、幹部社員の一人は、
「商品知識なんど適当でええねん。商品知識知りすぎると変に頭でっかちになって、知識の押し売りになってしまうんや。
お前が売るのは知識や無うて商品や。商品売るには先ず自分を売るんや。
お客がお前のこといっぺん気に入ったら、後は芋ずる式や、下手な説明せんでも売れるわ、アンダラ、ボケ、カス!」
しかし、そんな会社の接客でもそれなりの秘伝のテクニックがございました。
その一例を披瀝いたします。
ダイアモンドの接客などの時、さり気なく化学組成を会話に挿入し、いかにもジェモロジー(宝石学)の知識豊富に見せるやり方。
「ダイアモンドは純粋な炭素結晶でございますので、化学組成は“C”一文字なんでございます。
これがコランダム宝石、ルビーやサファイアでございますと組成式は“AL2O3(酸化アルミニュウム)”と言う鉱物になりまして……」
これを聞くとお客さんはこの店員は宝石の全ての組成式がインプットされているプロのジュエラー、ジェモロジストに違いないと買いかぶってくれ、
信頼感が増すのですが、実際のところはこの人はダイアの“C”とサファイア“AL2O3”しか知らないのです。
また、あるイケメン店員は、女性のお客様にネックレスを試しに着けてもらうとき、
なんと正面からあたかも抱擁せんばかりに両腕を首にまわし、首の後ろでクラスプを留めると言う必殺技を駆使しておりました。
さて、不詳小生はというと、生まれついての不器量不器用者。
嘘や小細工などを弄する知恵も資質もございません。
昔から真実一路、真心接客を唯一の技とし愚直に日々の業務に精進しております。
それ故、当店では皆様御安心めされて、お買い物をお楽しみ頂けるという塩梅でございます。
これ嘘ちゃいまっせ!
筆者:ハリー中野
超音波洗浄機の秘密
宝石店にお立ち寄りになると、店員がすり寄ってきて、着けている指輪の洗浄を親切ごかしに申し出る事があります。
あれは親切でも真心サービスでもなく、立派な販売戦略の一環なのであります。
指輪を洗浄している間、お客さんは嫌でも店内にとどまらざるを得ず、その隙に販売のチャンスを作ったろ!と言う“指輪人質大作戦”な訳でございます。
この作戦だけではなく、顧客の滞在時間増=売上増と言う宝石販売の法則は、あらゆる接客場面で適用されます。
私がまだ某宝石店の新入社員の頃、販売した商品を包装する為、店内を小走りに急いでおりましたところで、
“箕面の般若”の異名で恐れられていた大番頭さんに取り押さえられ一喝されました。
【上司】
「こら、キサマ!店ん中走るな」
【若きハリー中野】
「す、すんまへん。お客さんをお待たせしたらアカン思たもんですよって...」
【上司】
「アンダラ!客なんか待たしといたらええねん。待ってる間にいろいろ他のもん見よるやろ。またなんぞ欲しモン見つけて、買いよるかもわからんやんけ。
うろうろと色んなもん見てる間は包装出来上がってても持っていたらあかんど。」
【上司】
「それよか、ちょっと客の動きが止まって、なんかに関心が行ってそうやったら直ぐ飛んでいってケースから出すんや。
買うた商品渡すタイミングなんぞ、『まだ~?』言われてからでええんじゃ、アンダラ、ボケ、カス!」
<注釈> アンダラとは河内地方の方言で、あほんだら=大馬鹿者の意味でございます。
さらに、エゲツないお店では、指輪を洗っている間に凄腕のセールスレディーが何やらキャンペーン一押しオススメ商品と称する、
実のところは高利益商品を持って現れ、商品説明を聞いてるうちに更なる助太刀レディが1人2人と加勢に加わり、あたかも集団リンチの如き接客地獄に堕とされ、
そのままローンにて決済と一気呵成と寄り切られてしまうこともしばしばございます。
実のところ、メレダイアなどの付いている商品を超音波洗浄機にかけすぎるとメレダイアが落ちたり、落ちやすくなる危険性が高まります。
特価用に作られた粗悪な宝飾品などになりますと、一回洗浄機にかけただけで脇石のダイアや中石が外れる事もある始末。
また、宝石の種類によっては全くNGの物もございます。
洗浄機から出したら、エメラルドの色が消えていたなんて言うことも、しばしば起こるアクシデント。
超音波洗浄機にはくれぐれも気ぃつけなはれや!
筆者:ハリー中野
カメオはおかめでも良し
皆様、カメオをご存知でしょうか?
「アンタ馬鹿言わないでよ、そんなの常識じゃない!」
とお叱りの声が聞こえて来る様でございますが、
実は私22才で宝石店に就職いたしました当時、カメオのカの字も知らず大恥をかいた覚えがございます。
「おい、お前カメオ知ってるか?」
「えっとー、なに亀男さんでっか?」
カメオと言うのは、貝殻や石などに浮き彫りの彫刻を施した装飾品で、主にブローチ、ペンダント、稀に指輪に加工されます。
カメオは一般的に断面が二層或いは三層の色相に分かれた素材に浮き彫りを施すことにより、
低層と上部層の色のコントラストを巧みに活かし、あたかも凸面の彫刻部分を白色などに着色したかの様に見せる技法がその醍醐味でございます。
実際、あまり宝飾品に興味の無い方の多くは、カメオの白い部分は着色、あるいは別作部分を後付けしていると思われている方が多いです。
しかし、これはあくまで同一素材を浮彫彫刻の技だけで、2色あるいは3色使いの一服の絵の様に仕上げる匠の技であります。
それ故に身につける芸術品と呼ばれる所以でもああるのです。
国内で商品とし流通しているカメオは大別すると、カルセドニーという石に彫刻を施してある「ストーンカメオ」と、貝殻に彫刻する「シェルカメオ」の2種類に分かれます。
「ストーンカメオ」は主にドイツで作られます。
この種のカメオは、作家の彫った彫刻を原盤にして、機械でレプリケイトしてカルセドニーに彫るという、いかにもテクノロジーの国ドイツらしい量産可能なやり方で作られます。
対する「シェルカメオ」はイタリアが主な生産地であり、こちらは一点一点作家が手彫りするという昔ながらの伝統に則った制作方法がとられます。
それゆえ全てが一点物ということで、これが重要なセールスポイントともなるところ。
高名なマイスターの作品などになりますと大変高価なお値段になることもしばしばでございます。
カメオの良し悪しの判断は芸術作品や工芸品と同じように、作品の完成度や細工の緻密さ、構図のバランスなどが基準となります。
カメオの図柄には女性の横顔がモチーフとして多く取り上げられます。
よく、「美人に彫られている物が値打ちがあり、ブスはあきまへん」などといった誤った評価基準を信じておられるお客様がおられますが、それあくまで現実の世の中の基準です。
カメオの場合は描かれている人物がシコメであろうがオカメであろうが、そのブスさ加減が精緻に描写され、
さらにはブスが故の心の懊悩、屈託、哀しみ、怒り、絶望などが見事に表現されていれば、もうこれは一級の芸術作品と言うことで価値ある逸品となるのでございます。
とはいえ、平素より低級、お下劣なB級品にしか接することなく、安酒を飲みクダをまくよなわたくし同様のプレカリアート諸君にとっては、
崇高なる芸術作品を見極める審美眼がそもそも備わっていないのが道理。
そこで、僭越ではございますが、それがしが簡単なシェルカメオの見分け方をお教えいたしましょう。
シェルカメオの場合良く使われる貝殻が2種類ございます。 焦茶色のサルドニクスと薄茶色のコルネリア。
どちらも巻貝なのですが、材料としての値段がぜんぜん違うのです。
焦茶のサルドニクスの方が断然高いんです。
ですから有名作家や高級品にはこちらの貝が使われることが圧倒的に多いのです。
観た目も濃淡のコントラストがはっきり出ますので非常によく見えます。
対するコルネリアはカメオ彫刻の修行学生の練習台などにも使われる安価な素材で、おしなべて安価なお土産用や特価用商品向きの商品に用いられます。
ですので、いくらサイズの大きなカメオでありましても、有馬温泉名物の炭酸せんべいのごとく、白っぽく、薄っぺらで彫刻も平板で単調、こんなのはなんの値打ちもございません。
逆に、GODIVAのビターチョコの様な色の背景にホワイトチョコで繊細な図柄を巧みに描かれた様なのは値打ち有り、有名作家作の逸品の可能性大なのでございます。
ただし、カメオという商材はその工芸品的性質上、多く場合、とんでもなく高い芸術性付加価値が値段に加算されて販売されてます。
呆れるような炭酸せんべいの駄作に、意味の無い付加価値を挿入させられたり、また有名作家の作品であるのをいい事にべら棒な値段をつけて売られたりすることは決して稀ではございません。
ようよう、気ぃつけなはれや!
ま、質屋で買うたら間違いおまへんわ、マジで。
筆者:ハリー中野
中古宝石に怨念宿る?
「中古のジュエリーって確かに安いけど、なんだか前の持主の念がこもってそうでキモイ」というお客様の声をたまに耳に致します。
実際、閉店後の無人の店内、BGMの音楽も、空調のかすかな唸りも消え、しーんと静まりかえった暗がりで一人作業などをしておりますと、
宝石類を入れてあるショーケースの方から、何やら微かなざわめきや、人のうめき声の様な音が聴こえてくることがたまにございます。
耳を澄ましてよく聞くと、
「肌身離さず着けていた、お気に入りの指輪を主人の借金のかたに手放す羽目になってしもた。口惜しい、恨めしい、嗚呼、憎らしい...」
突然、その様な中年女性の嗚咽まじりの怨嗟の声がいずこからともなく聞こえてまいります。
なんて事がございましたら、人一倍ビビりの私なんぞとっくの昔に心臓マヒかなんかでお陀仏になているはずなんでございます。
「アンタ、念のこもった中古の指輪さしてたらな、その念が祟ってな、悪いことが起こるんや。アンタ、ひとの指輪かってにせんといて、言うてな、怖いで~」
なんて言う婆さんがたまにいますが、
『「ほたらなんですか?そんな指輪や首輪や腕輪やらが沢山収まってる質屋の蔵は怨念の集積場所、怨嗟の貯蔵庫なんですか?
それとも邪悪な魂の巣窟ですか?」
「それじゃ、弊社並びに同業他社様ご家族の商売繁盛・家族円満・琴瑟相和すの現状をどう説明するんだい。
おかしいじゃねーか、指輪一本で怖い目に会うんだったら、そんなのが百も二百もありゃ、大変な祟りが起きて、もう地獄だよ。
多くの質屋が一家離散お家断絶当主切腹くらいな目に合わなきゃおかしいじゃねーか、えっ、どうなんだよ!?返事しろこの野郎!」』
...すみません、取り乱してしまいました。
まあ、ことほど左様に、人と言うモノは何に関しましてもケチをつけたがるものでございますし、またどの様なものからでも不安、心配の材料を引き出したがる因業な生き物なんでございます。
何も心配することは御座いません。
何億年生きてきた宝石が、それに比べれば一瞬の瞬きのような生命の人間のちっぽけな想いなんぞに影響を受ける事などあり得ません。
鉱物の宝石に人の思念がこもるなんて全くの出鱈目、笑止千万な世迷言でございます。
ただ、どうしても御心配の方に一言申し上げるとすると、実際に念のこもるほど肌身離さず長らくお着け頂いたような指輪は、
それだけ使い古しているということで、デザインも古けりゃ、傷みも激しく、売り物になる様なものは殆どございません。
実際、おばあちゃんの形見ということで買い取ったジュエリー類のほとんどは、
流行遅れで、最早商品としての価値がなく、潰しと言って、石を外して地金部分だけをスクラップ業者に売り払うというのが現状なのでございます。
それに、実際、私共の様に自前の店頭やインターネットで中古宝石類を販売をする質屋は少数派で、多くの質屋はイチバ(市場)を通じて古物業者に中古宝石類を流す訳なのですが、
古物業者はこれらにまた新品仕上げやリフォームを施し、新品として問屋や小売屋に売りさばき、正規の流通に還元させていくのです。
ですから、皆さんは知らず知らずのうちに、質流れの中古宝石とは微塵も疑わず、そんな商品を新品価格で百貨店や小売店で買わされてしまっていることが往往にしてある、ということなのでございます。
古物業者はこれらにまた新品仕上げやリフォームを施し、新品として問屋や小売屋に売りさばき、正規の流通に還元させていくのです。
実際、この話のほうが怖くネ? 宝石ロンダリング。
筆者:ハリー中野
宝石は全てプレシャス
宝飾業界では宝石を「プレシャスストーン/貴石」と「セミプレシャスストーン/半貴石」に分けて扱うような傾向があります。
「プレシャスストーン/貴石」とはルビー、サファイア、エメラルド、アレキサンドライトなどの一般的に値段の高い宝石(上写真)。
「セミプレシャスストーン/半貴石」とはそれ以外(アクアマリン、アメシスト、ペリドット、シトリンなど)の比較的安価な宝石を指します(下写真)。
プロ野球の打線で例えるならば年俸の高いクリーンアップが貴石でそれ以外の選手が半貴石とでも申しましょうか。
しかし、この様な宝石の区別は、世界に冠たるジェモロジー(宝石学)の総本山「GIA(米国宝石学協会)」の認めるところではございません。
すべての宝石は単に宝石と呼ぶべきであり、セミや半などという言葉を用いて業者自らが特定の宝石の価値を徒らに下げる愚行は避けなければなりません。
とのお達しでございます。
宝石の価格はあくまでもその希少性にもとずく基づくものですから、美しい石でも産出量が多い物は自ずと安価になってしまいます。
けっして宝石の美しさと価格が比例するとはかぎりません。
資本主義のご時世、高い物は良い物で、安い物はつまらぬ物という言う既成概念に毒された我々の思考回路は、
物よりもまず値段を見て判断するという誤作動を引き起こし、物事の本質を大いに見誤っているきらいがございます。
野辺に咲くタンポポの花の魅力は、胡蝶蘭などの高価な花などとはまた違った趣きのもので、好みの差異はあっても、どちらが上とか比較でき得る性質のものではございません。
これと同じく、何億年という歳月が培った、地中に咲く神秘の花、宝石の魅力も千差万別、みんなそれぞれに美しく、神秘的で味わい深いものでございます。
歌にも歌われる通り、皆特別なオンリーワン、そうその通り。
と言うわけで、お客様各位におかれましては、様々な種類の宝石を幅広くご購入頂き、それぞれの魅力を愛で、生活の潤い、明日への活力、夫婦円満の媚薬にされんことを熱望する次第でございます。
筆者:ハリー中野
締めのごあいさつ
最後までお読み頂きありがとうございます。専門用語や笑いを交え、わかりやすく書こうとするととても長くなるので読むのが大変だったのではないでしょうか。
ブランド店や質屋というのは「敷居が高い」「なんか入りずらい」「人目が気になる」「怖そう」と思われる事が多々あります。
またネットショッピングでは現物を確認できないため、購入するのを躊躇われる方がいます。
そのため業界の裏側や宝石の豆知識をご理解いただくことで、もっと親しみを持って頂こうとこの記事を書きました。
わからないこと、またこんなことを教えてほしいなどご要望がございましたら、下記より何なりとお申し付けください。
もっと身近に感じて頂ければ幸いでございます。改めましてこの長文をお読み頂きありがとうございました。
筆者:ハリー中野
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自己紹介
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1979年、大阪の老舗宝石店に入社以来、上は香港ペニンシュラホテルから、下は田舎の地場産業振興会館まで、
ありとあらゆる場所で宝石の伝道師としてジュエリーの普及に尽力。
現在はマルヨの姉妹店ドゥペールノエルにて正しい宝石の買い方からお手入れの仕方まで、
懇切丁寧な接客をモットーに主婦層を中心に幅広い支持を得るにいたる。
自称「宝石の伝道師」
「GIA(米国宝石学協会)」認定資格「GIA.G.G」保持
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担当業務
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宝飾品プロデュース、プロモート、コンサルト、商品コメント、ブロガー、Twitter
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筆者:ブタゴリラ
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自己紹介
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大学卒業後、1年間時計修理の学校に通い、技能修理検定2級取得。
その後、オーストラリア・メルボルンに語学留学中に、パートで日本料理屋で働く。
帰国後、宝石鑑定士の資格「GIA.G.G」を取得。3年間修行した後、「ドゥペールノエル」で業務につき、その後「質屋マルヨ」で働く。
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担当業務
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接客、買付け
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