お店などで真珠を見たとき「小さい方が高い」「サイズが同じなのに値段が違う」など、
「なぜ?」と不思議に思ったことはありませんか?ここでは真珠の品質を決める6つの要素についてご説明します。
真珠層の巻き厚について
この「真珠層の巻き厚」は6つの要素の中でも一番重要な要素です。真珠養殖業者はこの「真珠層の巻き厚」を一番重要視します。この「真珠層の巻き厚」がなくては、いくらその他の5つの要素がすばらしくても、その真珠の価値は上がりません。
右のイラストは核の表面に真珠層が積み重なったイメージです。商品になる真珠は何千層もの真珠層が積み重なってできています。
右の写真は、真珠層の巻きの薄い真珠と厚い真珠の比較です。半分に削ると右下の写真のようになりました。薄い方は写真でもわかりにくいくらい真珠層が薄いですが、厚い方は核にしっかりと真珠層が積み重なっているのがわかります。(真珠の縁の黄色いものが真珠層です)
真珠層は貝の体の中で作られるので、一般的には貝の中にいる時間が長ければ長いほど巻き厚が良くなります。
下の1枚目の写真は、真珠層の巻きの薄い真珠と厚い真珠の比較です。半分に削ると2枚目の写真のようになりました。薄い方は写真でもわかりにくいくらい真珠層が薄いですが、厚い方は核にしっかりと真珠層が積み重なっているのがわかります。(真珠の縁の黄色いものが真珠層です)
真珠層は貝の体の中で作られるので、一般的には貝の中にいる時間が長ければ長いほど巻き厚が良くなります。
超音波巻き厚測定装置
真珠の表面に超音波を当て、真珠層に当たり返ってきた波と核に当たって返ってきた波の差で真珠層の厚さを測る装置です。
真珠の鑑定所が巻き厚を測るのにも使われている方法です。
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d=(V)(T)/2
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d=厚さ
V=音速
T=時間(往復)
超音波が真珠表面に当たると一部は反射し、もう一部は内部に伝わり核の部分で反射します。
核で反射して戻る時間から真珠表面で反射して戻る時間を引くと真珠層の伝播時間(往復分)が算出できます。
光沢について
真珠の「光沢」は「真珠層の巻き厚」と密接な関係があります。真珠の光沢とは、真珠表面の光沢ももちろんですが、特に真珠独特の内側から湧き出てくるような輝きのことを言います。
真珠層が厚くなれば、真珠に奥深い輝きが生まれ、価値は上がります。その真珠層の厚さと、真珠層を作る結晶の構造で「光沢」は生まれます。
2枚目の写真では、真珠層が厚くなるほど真珠の中心の色が濃くなっていっているように見えます。真珠の中心の干渉色がとても濃くなり、「イクラの目玉」のように見えるようになり、奥深い輝きが出てくるのです。これを、私たちは「真珠に力がある」と表現しています。
3枚目も「真珠の巻き厚」と「光沢」の関係が良くわかる写真です。下の真珠になるほど、真珠の中心に芯のようなものが出てきて、色が濃く見えます。これが干渉色です。
もうひとつこの写真でわかりやすいのは、真珠の表面に撮影時のカメラが映っています。光沢が強くなるほど、真珠の表面にいろいろなものを映しこみます。
エクボについて
真珠の「エクボ」とは、真珠の表面にある突起やくぼみのことです。私たちは「キズ」とも呼びます。真珠は生物が作るものなので、表面に突起やくぼみは必ずといっていいほどうまれます。
私たちが「エクボ」のある真珠を商品に加工するとき、「エクボ」の部分やその付近に穴を開けてエクボを見えなくするなど工夫をしながら穴を開けていきます。しかし、「エクボ」もひとつというわけでは無い場合もありますので、なるべく上手にエクボを隠すような加工をします。ひどいエクボがあるものなど商品には使用出来ないものもでてきます。
1枚目の写真はエクボの多い例です。ここまでエクボが多いとお勧めできませんが、真珠に「エクボ」は少々あるものです。真珠に強い輝きがあれば表面に色々なものを映し込みますので、小さなエクボであれば見えなくなります。
特にネックレスを選ぶ場合は、多すぎるエクボはダメですが、少々のエクボが気にならなければ輝きの強いものもおすすめです。
色について
お店でよく見かける真珠(アコヤ貝からとれる真珠)は、ほとんどがピンク系、ホワイトピンク系、ホワイト系が多いですが、実はそれ以外にもブルー系、グレー系、クリーム系、ゴールド系などさまざまな色があります。
干渉色と実体色
干渉色とは真珠層が厚く巻くことによって生まれる色です。干渉色は2種類の色(ピンク系とグリーン系)に分けられます。左の写真を見てわかるように、中心の色が違います。左がグリーン系、右がピンク系です。
宇和島の真珠は「ピンクの色がさしている」と言われ人気がありますが、それはこの干渉色のピンクの色のことを言います。(注:宇和島の真珠すべてがピンクの干渉色を持っているわけではありません)
左写真の、左の2つが実体色がホワイト系の真珠(一番左が干渉色がグリーン、真ん中が干渉色がピンク)、一番右が実体色がピンク系、干渉色がピンクの真珠です。一番右の真珠の縁(ふち)がピンク色になっているのがわかると思います。実体色は調色(ちょうしょく)という加工によって後からつけることが出来ます。調色によってつけられるピンクの色はここに出てきます。
左の写真は見え方の比較です。2つの真珠は「実体色」「干渉色」ともにピンク系ですが、右の真珠のほうが干渉色の色が濃く、目立って見えます。このように、干渉色が強い真珠は、肌に着けたときにとても映えます。
ブルー真珠
ブルーの真珠は「ナチュラルブルー」と「コバルトブルー」の2種類に分けられます。
「ナチュラルブルー」とはその名のとおり、天然の色です。「コバルトブルー」とは加工して色を変えてあるものです。真珠の色は偶然できるものなので、特にナチュラルブルーはとれる量が少なく希少です。
「喪服用に使いたいから」とブルー真珠ネックレスを希望するお客さんのお声をよくお聞きします。黒い服には普通の色のネックレスよりもブルー真珠ネックレスのほうが映えるからだと思います。
普通のネックレスとブルーのネックレスを黒の布の上に置いてみました。黒い布の上では、普通のネックレスは黒い色を吸って少しくすんだように見えます。ブルーのネックレスは、真珠自体が色を持っているので、黒の布の上でも主張します。だから喪服に合うと言われるのですね。
ゴールド真珠
アコヤガイからはゴールドの真珠も生まれます。ですが、最近ではとても希少な真珠になってしまいました。一般的によく見られるゴールドの真珠のほとんどが白蝶貝(しろちょうがい)という南洋の海で生息する貝から採れる真珠が多く、こちらはオーストラリアやインドネシアに生息する貝で、貝殻の内側の真珠層がゴールドの色をしています。貝の大きさも日本で採れるアコヤガイと比べてとても大きいので、大きな核が入り、大きい真珠ができます。南洋の真珠は大きいサイズのものが多いです。
貝の色と真珠の色
アコヤガイの貝殻は内側の真珠層と呼ばれる部分がとてもきれいです。また左の写真のように、真珠層はいろんな色素を持っています。ピンク、ホワイト、ブルー、イエローと様々です。
この貝殻の輝きが真珠の輝きとなり、この貝殻の色が真珠の色に反映されます。そのためいろいろな色の真珠が生まれるのです。貝を開けてみるまではどんな色の真珠が入っているかは分かりません。驚きの瞬間です。
左の写真は黒真珠を作る黒蝶貝(くろちょうがい)の貝殻です。主にタヒチに生息する貝で、上で紹介した白蝶貝のようにサイズが大きいため大きい核が挿核でき、大きい真珠が採れます。真珠層の色素もグリーン、グレー、ブラックなど様々です。
真珠の大きさについて
一般的にアコヤ貝からとれる真珠では7mm、8mmが普通サイズで、8mm以上が大玉といわれます。
真珠のサイズは、アコヤ貝の中に入れる核(かく)の大きさとその表面に積み重なる真珠層の厚さで決まります。小さな核を入れれば小さな真珠ができ、大きな核を入れれば大きな真珠ができます。
核(かく)とは真珠の元になるものです。「ドブ貝」という貝の貝殻の厚い部分を切って、丸く削ったものが使われます。真珠は核の表面が貝殻の真珠層という成分でおおわれることでできています。貝殻の核を使うことで、真珠の形成、加工に相性が良いのです。
現在宇和島で生産されている真珠のサイズは8ミリが主流です。9ミリサイズのものもとれますが、それ以上の10ミリのサイズになるととても稀です。
同じ品質であれば、大きいほうが価格は高くなりますが、真珠の価値は真珠層の巻き厚の厚さが大変重要です。いくらサイズの大きな真珠でも核の大きさが大きいだけで巻き厚が薄い真珠では価値はありません。
形について
一般的に真珠は球形の形をしています。
実は真珠にはいろいろな形のものがあります。真珠は真円(球)に近いものほど高価ですが、バロック真珠と呼ばれる形のゆがんだ真珠や、
ツインと呼ばれる雪だるまのような形の真珠など、通好みの真珠として大変重宝されています。
真珠を作っていると、稀に雪だるまのような真珠が出てくることがあります。私たちはこれを「ツイン」と呼んでいますが、本当に雪だるまのようです。
真珠を作るとき、通常はひとつの貝に対して核をひとつだけ入れますが、貝の大きさによっては、少し小さい核を2つ入れることがあります。この核を2つ入れる作業を「2個入れ」と言うのですが、そういう核入れ作業をするときは、核と核を離して、くっつかないように入れます。しかし、くっついてしまうものが出てくるのです。くっつかないようにと離して入れているのに・・・ということで、ツインの真珠、縁結びにお守りとしていかがでしょう。