写真左より、PowerDJ's 市原、HIROSHI WATANABE氏、Vestax 開発 姫野氏 の集合写真

写真左より、PowerDJ's 市原、HIROSHI WATANABE氏、Vestax 開発 姫野氏

市原: Vestax TR-1TRAKTOR PROとの親和性の高いDJ用コントローラーとしてVestaxさんとHIROSHI WATANABEさんとのコラボレーションということで非常に注目されています。そもそもHIROSHIさんがTR-1の開発に携わるきっかけについて教えていただけますでしょうか。

HIROSHI WATANABE: DJ関係の機材が、この先どうなっていくのどうか意見を交換するという大きな会議があったじゃないですか?

姫野: インターナショナルミーティングですね

HIROSHI WATANABE: その会議で、僕すっごくコントローラー!DJソフト用のコントローラーを作ってよって言ってたんですよ。
しばらくVestaxさんとお話ししてなかったんですが、その後VCI-100っていうのが出たての知って、「え?!なに、こんなの出してたの?!ちょっと使わせてよ」ってすぐに連絡して(笑)。
で、そこからなんですよ。実際に深く探求しだしたのは。

市原: 初めてVCI-100を使われてどんなイメージをもたれました?

HIROSHI WATANABE: それまでは他社製品でクロスフェーダーとツマミが付いたコントローラーがあったじゃない?あれをTRAKTORで使ってたもんだから、質感とか操作性というものが、非常にやっぱり僕も心苦しく現場で使ってる中、VCI-100に出会ってやっぱりその時点で「これだな!」って思えた。瞬間的に。

市原: 本格的にDJ用コントローラーとして成立してるのはおそらくVCI-100が初めてだったと思うんですよね

インタビューに答えるHIROSHI WATANABE氏、姫野氏

HIROSHI WATANABE: そうだね、ちゃんとDJミキサー感覚で操作できるのはなかった。あったとしてもここまでデザイン的にも、かなり洗練されているものはなかった。

市原: VCI-100はDJ用コントローラーの定番商品となり、多くのお客様にご利用いただいております。まさにデジタルDJの流行を作ったといえると思います。その後VCI-100ブラックバージョンがヒロシさんモデルとして発売されましたね。

姫野: HIROSHIさんに初めてデザイン面で協力していただきました。ボディは黒、白と青のLEDを使用しています。

HIROSHI WATANABE: 現場で時の質感はもうOKだから、さらにもっと際立つように、目を引く物にしようよって話でそういう風にしていってもらったんです。

市原: その流れでTR-1の開発に繋がったんでしょうか?

姫野: はい、VCI-100 ブラックバージョンがおかげさまでお客様からご好評いただきましたので、その敬意も込めて次の製品で一緒に協力してくれませんかというお願いをさせていただいたんです。

市原: 初めてTR-1を見たときに、「うわ!これは良く考えられたコントローラーだ!」って一瞬で感じました。操作面だけでなく、デザイン面においても。そしてVCI-100よりコンパクトなところもビックリしました。TR-1の開発はどのあたりから始められました?

HIROSHI WATANABE: いかにコンパクトに、シンプルに、わかりやすくレイアウトするかっていうところですね。そこが最初のスタート。じゃあそれぞれのパーツの配置をどうしてくべきかっていうデザイン面の考案も同時進行してったんすよね。
(TR-1のPLAYボタンを押しながら)まずはとにかくこのボタンの感触なんですよ。一番メインで触れるボタンに関する感触をさらにソフトタッチで長時間操っても疲れないような感触のボタンに絶対にしたいと思って。

市原: あ、そういえばVCI-100のボタンは「カチッ」って音がしますね。

HIROSHI WATANABE: そう、だから、ボタンを押した時の圧力が少なく長い時間プレイしていても疲れないボタンにしたいというのが開発当初から一貫していましたね。

市原: 各機能がうまくレイアウトされてますね。エフェクトのコントロールもしやすくなってますし、各デッキのループの設定もよく考えられているなと思いました。各デッキを選んでループ設定できることでループセクションは1つだけになりレイアウトの節約にもなっていますね。

HIROSHI WATANABE: これがまた左右対称にレイアウトされていたらそれはそれで面白いっていう意見もあったらしいんですよ。
ともかく、そこでチャンネル・セレクトをしつつ、それぞれに対して割り当てられるっていうところに行き着いたことは、このコンセプトとしては最高に良かった事だよね。結果としてね。

市原: SHIFTのボタンもグッドアイデアですね!このボタンを押しながら他もボタンを押すことで、別の機能を持たせるという。これは最初からアイデアとしてあったんですか?

姫野: いや、途中から入れましたね。開発の途中で、TRAKTORが3からPROになったっていうところがあって、急遽EFFECTORの1、2っていうボタンも足していったんですが、PROになって機能が増えているので、それらをコントローラーでどこまで操れるかを考えた時にSHIFTボタンってアイデアがでたんですよ。

市原: このSHIFTボタンの配置が凄く良いと思ったんです。左右のデッキコントロールの真ん中にあるっていうのが。SHIFTボタンって一番サイドに追いやられたり、どこにあるの?って探さなくてはいけないぐらい見難い場合があったりするじゃないですか。やっぱりよく考えられてるなって思いますね。この辺のアイデアとかはヒロシさん意見が?

姫野: そうですね。そのあたりもHIROSHIさんの意見を取り入れています。
配置に関しては、すごく何回もやりなおしまして。

HIROSHI WATANABE: 現場で使いながら、微妙な配置を直しながらね。実は初めはCUEやPLAYボタンのデッキコントロールセクションはもっと左右対称になってたりしてね。

姫野: そうでしたね、そういえば。

市原: そして大きな特徴としてJOGダイヤルとクロスフェーダーがない点ですがこれに関してはいかがでしょうか。

インタビュー風景俯瞰

HIROSHI WATANABE: JOGダイヤルとクロスフェーダーの点については、ずいぶん議論して、やっぱり「ない」っていうところの潔さっていうのがTR-1のウリでしょっていう風にもってくまでの過程の中では、ずいぶん色々試行錯誤があったんですね。

JOGダイヤルに変わるものっていうものを盛り込むべきかどうかっていうのを、色んな部分に配置してみたりとか、それがじゃあ何だったら代用できるかとかっていうのを凄く色々考えていったんですけど、なんだかんだ言ってもその最終的にクロスフェーダーを省くのと同様にもう「なし」ってところにやっぱり行き着いたっていうのはありますよね。

TR-1のサイズは最初から変更したくないって思って、だけどそれら色んなものを盛り込む為には、どうしても開発的な部分で、あと少しサイズを大きくしなきゃいけないっていうものがどんどん出てくるわけですよ。サイズを広げて機能を盛り込むならば、この形をキープしたいっていうのを優先したんですよね。

市原: JOGダイヤルがないのか?っていうのはこれからDJを始めようというお客様が思うみたいです。やっぱり「DJ=スクラッチ」みたいなパブリックイメージはありますからね。
でもTRAKTOR PROユーザーがこのTR-1を見れば「ああ、なるほど」って思いますよ。
実際ほんと使いやすいっていうイメージがこのレイアウト見ただけでわかるっていう、TRAKTORの画面とそっくりそのままココにあるような感じがするのが本当に使いやすいなと思います。

HIROSHI WATANABE: そうなんだよね。

市原: ところでTR-1という名称は途中で変更になったんですよね。あとカラーリングも。

HIROSHI WATANABE: 一番最初はVCM-400っていう名前だったのね。
NAMMショー(世界規模の楽器見本市)で初めて参考出品した時したっけ?
ユーザーがVCI-100VCM-100の後継機種だっていう風に見て困惑したんです。
ジョグもクロスフェーダーがないという点において、なぜじゃあ外しちゃったのか?なぜこれも取っちゃったのかっていう事をVCIシリーズを起点として捉えられると、VCM-400という名前ではコレの持ってる最大のポテンシャルを不透明にさせるような指向性があったんです。

姫野: ジョグもクロスフェーダーも外し、TRAKTOR PRO用のコントローラーっていうところに凄く重点を置いて開発した新しいものであるべきですねっていう事がNAMMショー終わった後により明確になったんです。

HIROSHI WATANABE: で、議論し直したんです。別物として出そうと。
だからこれは後継機種ではなく、ゼロスタートな新しいコンセプトのコントローラーですっていう事を謳いたい為に名称を変えたと。

市原: そしてその名称がTR-1という事になったんですね!
TR-1のTRはテクノ/ハウスに好きにとってはすごく馴染みがありますね(笑)

HIROSHI WATANABE氏

HIROSHI WATANABE: 色んなあれっすよ(笑)。TRAKTORからとったTRだし、TRっていうものがたまたま色んなものの中で過去にも要素があったりとか、そういう中でロゴのもってき方とか、そのナンバーの打ち方とか、ハイフン入れるか入れないかとか色んなところでは凄い拘ったんすけど。一番見た目シンプルで良いものにしてく為に。

市原: 名前だけでなく筐体のカラーもシャンパンゴールド仕様になり、今までのDJ用コントローラーの中でも特別なものになったと思います。

姫野: 初めはブラックにする予定で、限定でKAITO(HIROSHI WATANABEさんの別名義)モデルとしてシャンパンゴールドを発売する予定でしたが、シャンパンゴールド一本で行こうということになりました。

HIROSHI WATANABE: 僕がずっと使用してきたVESTAXのPMC-50Aと同じフィーリングがコントローラーでも再現できたらなという案が開発中にふっと浮かび、PMC-50Aの復刻版を意識した仕様で!とお願いしました。
だから昔からのVESTAXのファンにはたまらないデザインになったと思います。

市原: そうですね!僕も昔PMC-50A を継承するデザインのPCV-275を使ってましたので、この色合いとノブの形には愛着があります。
もうこれ、インテリアとしても成り立つんじゃないですか?(笑)

HIROSHI WATANABE: そうなんですよ!
それはもうずっと言ってたもんね。だからDJを知らない人でもMac持ってて音楽かける時にポッとこれが横にあっただけで、その人にとってはすごく満足するような機材に成し得んじゃないか、そういうものであってもいいじゃないって。
だからそういう意味で当時のPMC-50Aのパネルの感覚とかっていうものを、今この時代にあえてコントローラーでもう一回復刻させることで、さらに満足度が高まるんじゃないかってのを感じたんです。

姫野: 実はシャンパンゴールドの色ですが、今となってはこの色合いを出すのが結構難しいんすよ。

市原: えっ!そうなんですか?

姫野: これ1枚だけっていうのは簡単なんですけど、これを一定して何百台もこのシャンパンゴールドを出すっていうのは、難しいんですよ。だからこれをHIROSHIさんにリクエストされた時、正直困りました(笑)
このサンプルを何回か繰り返して工場から受け取ってるうちに段々一定の色を高級的な色を出せるようになってきて。

市原: なるほど、カラーリングだけでもそんな苦労があったんですね!でも結果的にこちらのデザインでよかったですよね。どのコントローラーよりも高級感がある仕上がりになってますし。

HIROSHI WATANABE氏

HIROSHI WATANABE: たぶん車でもそうだと思うんですが、デザインしたからといって実際乗ってみたらどうなの?っていうのって絶対あるわけじゃない?。
今回の開発で勉強させられたのは、図面上で想定したものとプレイした時の感覚ってのがどれぐらい誤差があるのか、初めてこの機体を通してデザインと機能っていうものを両立させる為の概念というか、それをプレイする側だけじゃなくて、開発する側の立場になってわかった事ってたくさんあったのね。で、それを事細かにすべて微調整してくっていう事ってのは、たぶんどの業界でもある種難しい事なんじゃないかな思った。
だからTR-1に関しては、今自分が感じられたMAXが入ってくれてれば、それが一つの答えだろうって思えた事ってあって、もっとココをこうしたい、ああしたいとか実際触ってみてこうだった、ああだったっていうのは、もう無限大に出てきちゃうもんだから、それをどっかでストップして「TR-1はコレ」っていう風に決める必要っていうのが、こういう機材の場合はあるんだなって勉強になったんですよ。

音楽製作だとそれがない。可能な限りすべてに対してコンピューターの中で微調整してくわけで。だけどこういう機体に関して言うと、その微調整みたいな事をやりだすと終わりがないっていうのが結構わかった。時間的なタイムラグもあるし一回機体に起こさなきゃいけなかったりとか。
で、自分がこう思ってたけど、これをやってもらった時にどうだったんだろうっていうのを、そこの一回や二回の中ですべて集約させてかなきゃいけないわけじゃない?
そうしないとリリースできないから、そういう意味では機材を作るっていう事の難しさってのを凄く勉強させてもらえたなと思ってるんですよ。
その一回、二回っていうプロトタイプモデルの中でここまで自分が納得できるものを作らせてもらえたっていう事自体に僕は凄い喜びを感じてます。
下手すると「これじゃダメでしょ」って事で出せないかもしれなかったわけじゃないですか。自分が思い描いてたものがこうだったけど、実際使ってみて「これダメよ」みたいな、そういう事もひょっとすると有り得たかもしれないし。
だけど、それが2年半はかかったにせよ、実際にプロトタイプモデルが出来上がった時点で、ずいぶん近かったわけですよ。それって僕は凄い事だなと思うんです。

Vestax 姫野氏

姫野: そうですね。まさしくHIROSHIさんのおっしゃった通りで。
デザイナーの意見とかプロユーザーの方の意見とかコンシューマー、一般のユーザーの方の意見をまとめてそれをまた製品化していくってところで、それちょっとやっぱ芸術作品とはまた違うやり方なんですよね。
で、普通の人達も使える工業的なデザインを上手くまとめていくっていう部分で、逆にVESTAXとしてもHIROSHIさんから教わった部分、かなり沢山ありますし、それをさらに売る形、製品として出す形にする時間的な面でもレイアウトとかそういった面でも、そこが一番やはり苦労した面でもありますよね。

HIROSHI WATANABE: 使って自分のツールとして最高だって思うことは当然としても、使う前に「コレ欲しい」って思ってくれるかどうかっていうところにもってきたくてしょうがなかったんですよ。
やっぱりしつこいようだけどツールって見た時に惚れ込めるかどうかっていうのって凄い大事じゃないですか。
「ルックス悪いんだけどさ、これすっげー高機能で必要なんだよ」っていうところでも納得できる人はプロでもいるかもしれないんだけど、でもそれは僕は嫌なんですよ。
すべてが両立してて、すべてに対して納得いく答えが出てるものであって欲しかったんだよね。
そういう意味では凄くパッと見た時の見え方っていうのは、実のところとっても重要な要素だったんですよ。今回のこの機体に関して言えば。
DJに関心がなかった人でも機材に魅力を感じてくれたら、それはもう一つの答えですよね。
「コレを操ることがカッコイイ」って思えるかどうかっていう。

市原: なるほど、大変興味深い話ですね。
実際コレで海外ツアーに行かれてると思うんですけど、海外での反響はいかがですか?

HIROSHI WATANABE: いや、凄いですよ、やっぱり。
セッティングはすごくシンプルだけど、やる事は物凄く見せられるし、このコントローラーを目にするのは海外の人の方がもっと初めてなわけじゃないですか。現場で。

市原: ターンテーブルとかCDJ従来のセットって必ず現場に自分が使い慣れているものがセッティングされているとは限らないじゃないですか。あったとしても正常に動かなかったりということもありますし(笑)
でもこういったパソコンとコントローラーで完結できるシステムっていうのいつでも自分のパフォーマンスを最大限に活かすことができるので良いと思います。どんな環境でも自分のプレイスタイルが保てるということは。
HIROSHIさんはアナログからDJをされてて今のデジタルDJがあると思いますが、中にはこういったDJソフトに対してなかなか受けられないDJもいると思うんですが、この点についてはどうお考えですか?

HIROSHI WATANABE氏

HIROSHI WATANABE: たぶんそこって、チャレンジなんですよ。だからそのチャレンジっていうものを現場に盛り込んでくっていうことは、こういったツールがもっともっと普及してく為の戦術でもあるわけじゃないですか。
僕はこの手法が好きやってるんだけど、それでも現場レベル的な事を言えば、「プロのDJでこういう事で済ましちゃうの?」とか、「タイムコードも使わずにDJって一体何なんだろう?」っていう人ももしかしたらまだいるかもしれない。
それはカメラと一緒でアナログだった世界にデジタルカメラの領域が入って来て、それを写真と言えるのか、言えないのかって議論がいっぱいあったように、これは同じことが言えると思うんです。
物凄く見合ったものじゃないコントローラーを一生懸命使いながらやる事よりも、ほんとにDJプレイに特化した、しかもソフトウェアに特化した、これだけルックスがガツンときて、質感そのものがDJのツールとして存在して成立している物をこういう風にあえて使えることが、やっぱり次のシーンの啓示だと思うんすよ。まさに。
どんな両方の意見が来ようが、僕はこれがベストっていう事を常に見せられる環境を今こうやって持ててる事がすごい幸せなんで。うん。

市原: まあ色んな意見がありますよね。
このようにいろんなプレイ方法が多様化していますが、音源の入手方法はダウンロードで音楽ファイルを購入することがあたりまえのようになってきています。
ターンテーブルを使用するDJでもserato Scratch LiveTRAKTOR SCRATCH PROなどでパソコンから音楽ファイルを再生していることが多いですし、CDプレイヤーを使用するDJでもダウンロードしたファイルをCDに焼いて使っていることですし。
ダウンロードで音楽が購入できるということはとても便利ではあるんですが、その辺で10年以上DJされてるHIROSHIさんから見て今のシーンの移り変わりをどんな風に思ってらっしゃいますか?

HIROSHI WATANABE: まずソフトウェアとかコンピューターっていうものが現場に導入されやすい時代になったと同時にそういうものが結局は比例して変わってってるだけのことじゃないですか。
だから、そういう意味ではもうすべてが自然な流れなので、それに逆らう必要もないし、こういうツールを最大限利用して新しい手法をそこで新鮮に思える事が、またそのプレイすることへの快感だったりクリエイティビティっていうものをそこで自分が保てるわけだから僕は凄く素晴らしいと思うんですよ。
別に配信サイトで音楽を購入することに対して何の違和感もないし。
ただ、購入する曲を選ぶ時、誰もが同じサイトに飛んでって、そこの中で迷路のように入り込んでいるように見えるけど、実はみんなが同じようなルートを辿るような手法になってしまってる中で、辿り付きやすい曲と、まさに迷路のように辿りにくい曲と、どんどん分かれてく事になるし、だから本当に自分の感覚だけをそこで研ぎ澄ましながら選ぶことが実際に出来てんのか、出来てないのかって非常に難しくなっているとは思う。

市原: 僕もその辺が結構問題というか、配信サイトのトップ10だけを見て購入していったら、結局どのDJも同じになっちゃいますし(笑)
最近は一人のDJが扱う曲の数って昔に比べてかなり増えてると思うんですよね。昔レコードとかで買うと家に何百枚しか入らない、ってそこで終わったんですけども、ファイルになると、何万、何十万…と持ってしまうので、その膨大な曲の中から曲を選んで、この曲とこの曲を組み合わせるとどんな風になるかって考えるのもなかなか難しいなって。だから最近は一曲に対する価値観がどんどん下がっているような気がするんです。

HIROSHI WATANABE氏

HIROSHI WATANABE: 一曲に対する思い入れとか愛着っていう意味では絶対的にレコードの方があると思う。
レコードはそういうモノとして押さえておきたいという為のツールでもあるわけだから、楽曲をセレクトする時の思い入れっていう意味で言えば、たしかにデータ化されちゃった曲はいくらこうやってアートワークが画面に見えたとしても、昔自分達が持ってたような感覚にはまだ到底及ばないのかもしれないんだよね。
だからそこに対して、まずDJソフトでプレイする時の面白さを最大限に感じつつ、自分の中で昔ながらの選び方と今だからこそ出来る選び方を融合していく事しかないだろうなと思うんだよね。
いくら何千曲入れてたとしてもプレイしていく時にこの曲は絶対にかけたいって曲は見えてくるわけじゃない?やればやっただけ。それはレコードを扱うときに「絶対このレコードだけはバッグに入れておく」みたいな事と同じことになってくじゃない?
そういう頭の中でのマッピングっていうのがしっかり切り替われさえすれば、アナログでもデータでも同じ事が出来るってことなんだよね。
僕はiTunesで楽曲を管理してて、常に色んな曲を聴きながら「この曲はそういえばここのフォルダのココに入ってたんじゃん」とか、「このプレイリストの中に入ってたこの曲、やっぱりいいじゃん」とかって思った時にもう一回自分が分かりやすくセレクトし直したりするんだけど、まあそこはレコードを持ってた時と今とあんまり変わらないんだろうなと思うんだよね。
手で触れなくなっちゃた分、視覚的なところの情報でどこまでそれが代わりになれるような持って行き方を自分が工夫できるかだけだと思うのよ。

だから僕はレコードでやってた時ってどっちの面が好きかっていうマークだけは結構してたから、誰の何ていう曲かってよりも、このレコードだったらこの面っていうようなと捉え方をしてた。

これがデータ化したとしても、iTunesのマイレート(Rating)機能を使って同じようなことを行ってて、この機能は★印の数で楽曲が持ってる強さを自分なりに振り分けて使っているんです。この★印とジャンル分けしているプレイリストの両方見ながら次にどの曲入れてこうかっていうのを結構ランダムにやってるのね。

覚えてる曲は覚えてる曲で、ココって時には絶対それにもっていったりするし、あえてランダムにセットして曲を覚えてなくてもバンと入れて混ぜちゃうみたいな、セットして「ああ。この曲だったか」っていて気づいて、瞬間的に対応してって面白いミックスが出来たりとか、そういう楽しさってあるのね。

市原: なるほど。使用するメディアはなんであっても、ユーザー次第でいくらでも便利ツールになりうるということなんですね。
DJソフトであればテンポも自動的にあわせることができるわけで、その分空いた力をエフェクトや選曲、ミックステクニックなど違うところに注げるわけですし。
もはや曲のテンポを合わせるということだけでは本当の意味でのDJのステイタスは保てなくなったということかもしれませんね。そこでよりプロとアマチュアの差がそこで出てくるというか。

HIROSHI WATANABE: そうだね。

市原: こういったDJソフトでのプレイは従来のDJセットに比べて価格的にも随分抑えて、本格的なDJが楽しめるという事で、DJに興味を持ってもらいやすくなったと思います。
これを機会にターンテーブルやCDJなどにも興味を持っていただき、自分にあったDJシステムを追求してもらえればなあと思います。あとオリジナルトラック製作にも!
あ、ちょっと話が脱線しちゃいましたが(笑)

最後にTR-1を購入検討されているお客様にもう一度にメッセージをいただければと思います。

HIROSHI WATANABE氏と姫野氏

姫野: TR-1に関してはデザインからでも、機能面から気に入っていただいても結構なんで、まずは触っていただいて、自分の想像力を掻き立てるような操作をしていただければ、それでいいかなと思います。

HIROSHI WATANABE: 非常に有機的な機械だって事を自負してるんで、見た目で惚れてくれたら、触った時に全部分かってくれる要素だって信じてるんですよ。それがどれだけ有機的なものかっていうのを。
しかもカッコイイだけのものじゃない。カッコイイし使った時に物凄く人間臭い、実に。TR-1はそこの生々しさをちゃんと表現してもらえるツールになってくれたっていうことですよね。

市原: 今後VESTAXさんではこういったアーティストさんとのコラボレーションは増えていきますか?

姫野: もちろん機材を作る時は常にプロのアーティストの方とか意見を聞いてるんですが、今回のようなコラボレーションはかなり学ぶところもいっぱいあったので、今後も続けていきたいなとは考えてます。

市原: またその時はHIROSHIさんにもご協力いただいたり?

姫野: はい、もちろん!そのときはよろしくお願いいたします!

市原: 今日は大変貴重なお話をうかがうことができました!ありがとうございます!(了)

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