ULTRASONE(ウルトラゾーン) 製品開発インタビュー 〜健康に配慮したヘッドホン開発における哲学〜 【DJ機材専門店 PowerDJ's】

突然ですが、みなさん、耳をいたわってますか?

DJは、耳が過酷な環境に強いられるため、プレイを終えると耳鳴りがひどくて・・・というDJも多いのではないでしょうか。そういった耳をいたわるDJの中で、ULTRASONEのヘッドホンが今注目を集めています。

自然な鳴りを実現し、耳にやさしいというULTRASONEのヘッドホンの魅力、開発秘話などをCEOのMichael WillbergさんとCOOのMichael M.ZirkelさんにPowerDJ's楽天市場の市原がインタビューいたしました。

健康に配慮したヘッドホンといわれるその技術の裏側にはULTRASONEの製品開発における素晴らしい哲学があった!

左から ULTRAZONE社CEO(最高経営責任者) Michael Willberg氏、同社COO(最高執行責任者) Michael M. Zirkel氏、ULTRASONE 輸入総代理店 株式会社タイムロードの黒木社長、PowerDJ's市原

左から ULTRAZONE社CEO(最高経営責任者) Michael Willberg氏、同社COO(最高執行責任者) Michael M. Zirkel氏、
ULTRASONE 輸入総代理店 株式会社タイムロードの黒木社長、PowerDJ's市原

【ULTRASONEの歴史について】

市原: まずは簡単にULTRASONEの歴史について教えていただけますでしょうか?

ULTRAZONE社CEO(最高経営責任者) Michael Willberg氏

ULTRAZONE社CEO(最高経営責任者) Michael Willberg氏

Michael Willberg: ウルトラゾーンは1991年にドイツのミュンヘン近郊で技術者フロリアン・クーニッグにより設立されました。初めにHFI-100というモデルを発売し、その製品1つだけで約10年続きました。

市原: 1つの商品だけで10年も続いたなんてすごいですね!それだけ評判が良かったのでしょうか。

Michael Willberg: ええ。HFI-100というモデルは当時6万円ぐらいで販売されており、当時のヘッドホンの中ではかなり高額な商品でしたがユニークなS-LOGICの前身となる技術を投入したことによりオーディオファンやエンジニアの間で評判を得まして10年間で約3000セット売っていました。約一日一個作って販売していた計算になりますね。まあ、一人の技術者が一個ずつ手作りで行っていましたので、経営に関してはそれで成り立っていたんですが、会社組織をより強化するために経営に関しては素人であった彼の変わりに私が出資いたしまして、有限会社的組織を今のAGという株式会社的な組織に組み直したのが2000年のことになります。

2002年にドイツだけでなく、オーストリア、スイスへ輸出するようになり、ラインナップも3機種に増えました。そして2004年にこちらのMichael M. Zirkelが常任しまして彼の経験と知識を生かして世界的なマーケティングを開始し、現在は60カ国に輸出を行っています。

市原: 現在のULTRASONEが世界中に広がったのはお二人のお力が大きいんですね。ところで先ほどのお話にもありましたS-LOGICという技術についてお伺いしてもよろしいでしょうか。

【S-LOGICについて】

ULTRAZONE社COO(最高執行責任者) Michael M. Zirkel氏

ULTRAZONE社COO(最高執行責任者) Michael M. Zirkel氏

Michael M. Zirkel: はい。通常のヘッドホンというのは耳に対してダイレクトに音が伝わるようにドライバのポジションが真ん中になっていますが、ULTRASONEのヘッドホンでは頭に取り付けたときドライバが耳より若干前にくるようになっています。

市原: ドライバが耳の穴と同じ位置にあったほうが聞こえやすいんじゃないんでしょうか?

Michael M. Zirkel: なぜこのような構造になっているかというと、ドライバから発信された音を人間の外耳にいったん反射して鼓膜に到達させるためです。本来、音はいったん外耳に反射され鼓膜に入っていくため、外耳でどのように反射されるかによって音の聞こえ方って変わってきます。人間の外耳の形というのは人それぞれですよね。実は音も人それぞれ違った聞こえ方をしているはずなんです。そこでこれらをキチンと反映した形で脳に伝えるように作られているのがそのS-LOGICという技術なんです。

イヤパッドを外した状態のDJ1-PRO。ドライバー部が中心よりも前に位置している。

イヤパッドを外した状態のDJ1-PRO。ドライバー部が中心よりも前に位置している。

市原: なるほど!「ULTRASONEのヘッドホンはナチュラルなサウンドだ」と定評があるのは、この技術のおかげなんですね。

Michael M. Zirkel: 弊社のヘッドホンは音が頭の中に定位するのではなく、非常にワイドで、まるでスピーカーで聞いているようなサウンドが特徴です。

また、普通のヘッドホンとの音量を比べた場合、聴感的に同じぐらいの音量だと感じていてもULTRASONEのヘッドホンの方が-3dB低くセットされているというのも特徴です。

市原: ということは実際のボリュームよりも大き目に聞こえるということですか?

Michael M. Zirkel: はいそうです。そのため耳にかける負担が軽減されるわけです。

【ULEについて】

市原: ULTRASONEのヘッドホンには体に与える電磁波を低減する作用があると聞いたことがあるのですが、それについて教えていただけますか?

Michael Willberg: はい、おそらくULE(ULTRA LOW EMISSION)のことをおっしゃっていると思いますが、この技術に特殊な金属「ミューメタル」を使用しています。イヤーパッドを外すと現れる金属の板がこのミューメタルという金属です。

これは、60年ぐらい前に発明された金属なんですが、第二次世界大戦でドイツの潜水艦で使用されたが初めてで、当時はミューメタルを潜水艦の外壁に貼り、外敵のレーダーに探知されないように使われていました。

市原: それはすごいですね!そんな戦争でも使われた特殊な金属をなぜヘッドホンに使おうと思われたのですか?!

MU Metal(ミューメタル)は電磁波をシールドする

MU Metal(ミューメタル)は電磁波をシールドする

Michael Willberg: ニューメタルは空気よりも5万倍から8万倍もの電磁波を通しやすい性質をもっている金属で、磁界の塊であるドライバ部分をミューメタルでシールドすることにより、耳の方まで電磁波が到達しにくい構造になるのです。結果として98%の電磁波がカットできます。

通常ヘッドホンのドライバからはどのくらいの量の磁界が発生していると思います?一般論でいいますとコンピュータのモニターディスプレイを耳のまわりに4つ並べたぐらいの影響があるんです。

市原: えっ!そんなにあるんですか!?それって結構健康に影響があるってことなんでしょうか?

Michael M. Zirkel: 実際のところ証拠はありません。電磁波が危険かどうかということの議論よりも危険である可能性があることをあらかじめ防御しておくことが我々メーカーとしての使命であると思っています。

【ULTRASONEのヘッドホンのデザイン、ユーザー層など】

市原: ところで、ULTRASONEのヘッドホンには主にHFIシリーズとPROシリーズに分けられますがデザイン面から見ても違いがありますね。PROシリーズはまん丸で大きなイヤーカップに特徴があります。

Michael M. Zirkel: 普通はスタジオでもどこでもエンジニア一人に一つのヘッドホンを持っていたりするんですが、特にコストに関してシビアな放送局などでは、ヘッドホンを皆で共有するんですね。そこでパッドだけ自分用に持っていられるように、簡単にスピーディにイヤーパッドの取りはずしができるようになっています。そういったお声に答える必要があってこのようなデザインになりました。

市原: DJ用のヘッドホン、DJ1DJ1-PROはホワイトカラーを基調とした今までにないデザインで、日本ではハウスやトランスのDJを中心に人気があります。世界的に見てULTRASONEのヘッドホンが支持されているのはどういったユーザー層なのでしょうか。

Michael Willberg: 日本でハウスやトランスのDJに人気だということはとても面白い現象ですね。我々の製品は日本では主にコンシューマーの方々にご利用いただいているのですが、世界全体で見ると約80%がプロの方にご利用いただいております。

市原: 私もいろんなシリーズを試してみましたが、HFI-780が一番好きですね。音の解像度がすごく高くて、音に立体感があるというか、非常に心地よい響き方をしてくれると思います。DJ1は旧モデルと比べて格段に音質が向上されている感じがしてとても気に入っています。

Michael Willberg: ありがとうございます。ヨーロッパではHFI-780は非常に人気があります。HFI-780DJ1も今まで以上にスピーカサウンドのような広がり感を追求したS-Logic Plusという技術を採用しています。元々EDITION9に投入されたものなんですが、HFIシリーズにも落とし込みました。おそらく以前のモデルのHFI700と今のHFI-780、以前のDJ1と今のDJ1と比較されるとそのスペシャルな感じというのはお気づきいただけると思います。

市原: DJユースの場合は結構大き目の入力にも耐えれるようになっていると思いますが、耐入力に関してはインピーダンスで決まるのでしょうか?

Michael M. Zirkel: インピーダンスよりもドライバのサイズとか素材に依存するんですが、50ミリのドライバを使っているHFI-580とかPRO-550などはボリュームをがーっと上げても他のシリーズよりも耐入力が高いですね。DJシリーズもそうですけど。

逆にEDITIONシリーズとかPRO-900などはチタンドライバーを採用しており、密度の高いものを目指していますので過大入力に関してはセンシティブなのでオーディオリスニング用ですね。

市原: なるほど。今まで聞いていた曲をヘッドホンを変えただけで違った聞こえ方をするので音楽を聞くのがさらに楽しくなります(笑)ところでお二人は個人的にはどのモデルが気に入っていますか?

Michael M. Zirkel: 個人的にはHFI-780とEDITTION 9が好きですね。解像度が高いことと低域がビシバシ出るところが気に入っています。

Michael Willberg: 私もEDITION9ですね。EDITIONシリーズは私が好き勝手にやっているので嫌いなわけはないんですが(笑)それとPRO-900という最新のモデルですね。

【ULTRASONEの哲学】

市原: ULEやS-LOGICは、どういったところから生まれてきたのでしょうか。

Michael Willberg: 開発者のフロリアン・クーニッグは元々ミュージシャンで、当時から自分の演奏した音楽をヘッドホンで聴く際、どのヘッドホンを使ってもスピーカーのような臨場感は得られず、しかも長時間使っていると疲れてしまうことに悩んでいました。

これはどうしてなんだろうか。本人がヘッドホンを使わないといけない環境にあるにもかかわらず満足できないというジレンマが彼にとっての最大の悩みでした。

それを解決するにはどうしたらいいか?

幸い彼はHead-Related Transfer Function(頭部伝達関数)という人間の聞こえの研究をしていましたのでそういう知識はあったわけですね。

そんなこともあって彼がすでに気がついていたことは、一人一人違った外耳が非常に重要なポイントなんだと。これを無視して音を聞かせるという装置のしかけそのものに問題があるということが分かっていました。ではどうすればいいかということで開発が始まった訳です。

先ほども申し上げましたとおり、基本的に人間は生まれたときから外耳をとおして馴染みの鳴り方で音を聞いているわけですからヘッドホンを付けた途端、今まで聞いていた環境とは違う鳴り方をする状態に脳は一生懸命馴染もうとします。しかし脳としては自然の方向に持っていこうするばかりにだんだん疲れてきてしまう。

個人差はありますが、30分から1時間ぐらいで脳の方がもうお手上げっていう状態になってしまいます。こうなってしまうと定位がどうとか、どこからどういう音が聞こえるかとか、レゾリューションがどうか、ということにも、人間の理解力が及ばなくなってしまいます。

そういう状態になってしまうとモニタリングがまともにできないわけですよね。そこで「ヘッドホンを外してちょっとリセットしましょう」ということになるんですが、だったら疲れないヘッドホンを作れればもっともっといい音で聞けるんじゃないか?外耳を通すことによって自然の音場というのができるし、そういう状況であればヘッドホンを使っていてもそんなに疲れないしモニタリングの仕事に集中できていい仕事もできるのではないか?ということからS-LOGICの技術が始まっています。

ULEという技術もそうですが、悪い影響があるということを知らしめて販売促進するということが目的ではなくあくまでも我々の製品がどのような立場でコンセプトで作られているべきかという我々の製品開発における哲学から生まれています。

ただ音が良いヘッドホンを売るだけでなく、皆さんにいい仕事をしていただくための健康に配慮した製品を出していくというのは我々の使命だと思っています。

市原: そうですね。大音量での環境にあるクラブでは耳を酷使することが多く、みなさん自分のDJプレイ以外は耳栓をつかっていたりと、耳に関してかなり気を使っているようです。

Michael Willberg: 最近DJの方とお話する機会があって、同じく耳について気にしているということを伺いまして、我々がやってきたことは間違いじゃなかったんだと実感しました。

音楽に携わるいろんなプロの方の中でも、特にDJという仕事は耳に対して大きなリスクにさらされているわけで、ウルトラゾーンとしてはまさにそこをカバーしないけない分野でありますし、もちろんデザインがゴージャスだという点もヘッドホン選びのポイントになるかとは思いますが、やっぱり仕事をする道具として機能することが一番大事な部分ではないでしょうか。その基本的な条件としてULEやS-LOGICを我々がご提供できればと思っています。DJ用のヘッドホンはプロのDJのご意見を反映した上で開発を行っていますので、もっともっとDJシーンに浸透して欲しいですね。

【日本のユーザーへのメッセージ】

市原: 今日は貴重なご意見を伺うことができて大変勉強になりました!ありがとうございます!それでは最後に日本のユーザーにメッセージをいただけますか?

Michael Willberg: 日本はDJシリーズのセールスの市場として重要なマーケットになっています。その点につきまして感謝いたします。

みなさん、耳を大切にしてください!