機材の魅力をアーティストが語るPower DJ'sスペシャルインタビュー第二弾。


Daily Planet Studio

2010年5月19日に約7年振りの新作「SetsunaLised SetsunaRider」をアウトプットする兄弟デュオ「SPANOVA(スパノヴァ)」。

今回は彼らの音楽制作の拠点となっているプライベートスタジオ「Daily Planet Studio」へPower DJ'sスタッフがお邪魔し、所有機材からiTunes限定配信に至った経緯、SPANOVAの活動遍歴まで、お話を伺ってきました。

相模湖に程近い穏やかな環境下で生み出される暖かい音からも想像出来るように、音楽への愛情が滲み出たようなスタジオで終始和やかなムードでインタビューがおこなわれました。

スタジオは3つの部屋で構成されており、KEN、SHIN 両氏の部屋がリハーサルルームを挟むような形で配置されている。

始めにピアノやドラムセット、打楽器など生楽器が多く置かれるレコーディング兼リハーサルルームの機材構成からお話を伺いました。


レコーディングルーム

PowerDJ'sスタッフ(以下スタッフ):ここの部屋にあるような生楽器の録音はどうやって録ってる感じですか?

KEN:基本的にAKG 414とかですね。

スタッフ:ピアノだったらどの辺にマイクをセットしてるんですか?

SHIN:1本で録る事が多いんですよ。
エンジニアがいれば必ずステレオで録って、やっぱ高音弦と低音弦の両方に広げるんやけど、俺らは1本でモノラルで録る場合が多くて、それやと高域の方から低域の方を狙うような感じで低域を遠くして上の輪郭がしっかり見えるところを探してっていうのが多いですね。

KEN:このピアノに関してはそれが一番ええ感じで録れるよな。

SHIN:そうそう、だからどのピアノでもっていう事じゃないんですよ。

スタッフ:ドラムなんかはどんな風に録るんですか?

SHIN:色々ですね。
「少ないマイクで録っちゃうぞ」って時は、キックにSENNHEISER MD421を使って、トップにAKG 414とかですね。面白いし。
スネアの上辺りで面白いところ探して、バラつきのないところ探して、スネアの音いいなってとこでザックリ録る場合もあるし。
エンジニアとかがしっかり録る時とかは、MD421をバスドラムの中に1本突っ込んで、もう1本はAKG D112を外側の正面で録ると結構「ボーン」て音がするんですよね。
中突っ込んだヤツは結構「バンバン」ていう弾くような音が聞こえるから、それ二本交ぜるみたいな。
んで、AKG 451をハイハットとトップシンバルとかに結構近くで、オンで録って、んでスネアは大体SHURE57を上から。
裏にも立てて交ぜる場合もありますね。
どうしてもオンだけになるとカチカチ止まる音になっちゃうじゃないですか。
で、そのアタック感を活かしながら、自然にする為にアンビエンス・マイクなんかは風呂場や洗面所とか部屋の外に立てたりして。

スタッフ:風呂場まで(笑)

SHIN:ただ、ここでの問題は、かなり車の通る音とかが入っちゃうみたいな、そういうのがあって…な(笑)
それがOKなような音楽だったら良いんすけど、そうじゃない場合もあって、それだとやっぱスタジオとかで。
基本は勝手に入っちゃう音も俺達は好きなんで、気にせずやってるけどな。

KEN:最近気になりだしたよな。

SHIN:あんまりあれやん、なんか10代の子が原付いじって「ベェーン」てなんかハエみたいな音で走る音とか、あーいうのはちょっと嫌やな(笑)


ラック内機材

スタッフ:こちらのラックの機材は何があるんですか?

左のラック
上からFederal AM-864/u、CBS Audimax R2Z

SHIN:(左のラック上から)これがFederal AM-864/uですね。ヴォリュームはインプットしかないんですよね。
インプットの入り具合でコンプがかかるっていう。
見た目はゴツいですけど、意外とスムースな深くて透明感のある音で良いですよ。
俺はヴォーカルとかに使うの好きやし、ただそのコンプの設定っていう意味じゃかなり荒いんで、レシオとかもスレッショルドとかもないから、追い込める機材じゃなくて質感を調整するようなもんですかね。

(下へ)こっちも良いコンプで、CBS Audimax R2Zってやつなんですけど、これはハイファイ感はあるけど、ぐっと音像を寄せるような力のある機材ですね。
これも基本インプットしかないんですけど、インプットで「ブァー!」っと突っ込んだ時に自然な良い歪み感みたいなのが引っ付いてくる時もあるし、だからコンプと言うよりかは…

KEN:質感補正みたいな

SHIN:質感やな。
やっぱそのまんま、あんまりこだわらずにProToolsとかに入れた時に質感がない場合が多いから、こういうのに重要視してるっていうか…単純に好きな機材やな。
こういう感じの物は。

KEN:これは1960年代後半のヤツやな。

SHIN:そうやな。
両方共、テレビとかラジオとかそっち用に開発されたヤツですね。むかーし。

KEN:Steely Danが使ってたやつやな。

(右のラックへ)これがAVARON Design VT747 SP。

右のラック
上からAVARON Design VT747 SP、Spectra Sonics MODEL610、AMPEX AM10、AMPEX 350

SHIN:これはあんま使わないな。最初は音良かったんだけど

KEN:段々と音が…真空管換えなあかんな。

(下へ)これが、Spectra Sonics MODEL610っていう、70年代のコンプレッサーです。

SHIN:これはもうやり方によってはかなり激しい音作りも出来るし、基本的には「ファー」っとした良い感じのウォームスがある音ですね。
だから凄いエグい使い方する人もおるみたいやけど、俺らはナチュラルな感じの使い方してます。

(下へ)これがAMPEX AM10。
これの真空管のバージョンのMX10ていうのもあるんですけど、これはトランジスタのバージョンでミキサーみたいになってるんですよね。
だからインプットは6コとかあるんですけど、最終的な出口は2chですね。
これもマイクプリとかラインプリにもなるんで、ライン突っ込んだりとかも出来て、音質は良いです。
なんか独特の柔らかい音っていうか、AMPEXはやっぱ音柔らかいですね。

(下へ)こっちがAMPEX 350。
これは昔の真空管式のやつで、テープレコーダーのヘッドアンプなんですけど、これの音はまた独特の太くて奥行きがあるっていう。
ただ個性はやっぱ強いから、今のデジタル音なんかとスムースに交じるかって言ったら、なかなか交じり難いっていうか、音のピーク感とかもだいぶ違うから。
なかなか上手く使えないですけど、凄く好きな機材ですね。

(ラックの手前の椅子へ)俺これが好きなんですよ。
これはMCIのちょっとタイプわかんないんですけど、昔のMCIっていうメーカーのミキサーのユニットを引っこ抜いたヤツで、実質左側のこの辺のツマミは、関係ないですね。
EQは使えるんですけど、マイクのトリムぐらいしか使わないです。
これはマイクプリとして俺は凄い好きで、気軽にパッと録る時は結構これ使う事が多いですね。
なんか柔らかくて、でもレンジが狭いかっつーと全然狭くなくて、意外とキッチリした音で倍音があるんで身体になじむというか、そういう機材ですね。



テープマシン

スタッフ:他にこの部屋でお気に入りの機材はありますか?

SHIN:あとはテープマシンとか。
今回の作品とかやったら、まだちゃんと使ってないですけど。
実際モノになるかはわからへんけど、やっぱりブレイクビーツとかあーいうのレコードから探すのええんやけど、やっぱ自分達で作りてぇなみたいなね。
でも70年代はテープじゃないですか。
テープの音ってやっぱ凄く好きで、ただデジタルで作った音場にむりやりテープが好きやからって入れてもゴチャゴチャするだけの場合も結構あるし。
だからこういうので、まずビート先に作って録音して、そっからサンプラー取り込んで、それを中心に曲作って行くような事っていうのかなんか、今から試して行こうかなって思ってるんですけど。
だから今から活躍する予定のテープマシンです。


SPANOVAインタビュー 目次


SPANOVA

SPANOVA
プロフィール

ジャズやソウルを始めとするブラックミュージックへの深い愛情、現代音楽やポピュラーミュージックから受けた刺激を自宅スタジオ「Daily Planet Studio」でダイレクトに変換し続ける兄弟デュオ。

1998年に1st Album「Dead Music Flamingo」でデビュー以降、作品毎にサンプリングを多用した独自のサウンドスタイルを強めると、「トリップホップ」とも形容され、2003年に発表した5th Album「Fictional World Lullaby」で集大成と呼ぶに等しいソウルフルな音世界を表現。

その後、数々のアーティストや映画・CMなどへの楽曲提供、シカゴの音響・エレクトロニカ系レーベル「Hefty Records」10周年記念アルバムで、日本人アーティストとして細野晴臣、坂本龍一と共にフィーチャーされるなど、海外でも高い評価を得る。

2010年5月19日に約7年振りとなる新作のMini Album「SetsunaLised SetsunaRider」をリリース。


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