コラム「日本の職人」
クリエイターインタビューVol.02

万作 まんさく 工房

2014/10/06 更新
問屋歴20年、絵付歴20年という異色の道を進んで来た万作さんは、他の職人さんとは少し異なる視点でのものづくりによって多くの方から評価を集めています。今回は、そんな万作さんに加飾(絵付)に転向することになった経緯や作品の魅力などについて語って頂きました。
経歴

平成4年 石川県九谷焼技術研修所 実務者加飾コース卒業,平成5年 第11回九谷焼デザインコンクール優秀賞・県知事賞受賞,平成6年 第13回九谷焼デザインコンクール最高賞・中部通算局長賞受賞,平成7年 石川県デザイン展産業工芸部門 グッドデザイン賞金沢市長賞受賞,以降、各地にてクラフトデザイン展に出品し、活躍の幅を広げている。

下書き無しでさらさらとうさぎの絵付けに取り掛かる万作さん
女性の心を掴む絵付け

万作さんといえば、当店でも扱っている月見うさぎをはじめとした可愛らしい絵付けが特徴的な印象があるのですが、発想の原点はどこにあるのでしょうか。

食器を扱っているので、食器を扱う女性をターゲットに、可愛くて使いやすいものが好まれるのではないかというところから考えました。絵の構図を考える時ですが、職人さんによっては最初に描きたい絵があって、それに合う器に描くという人もいるかもしれませんが、私は最初にじっくりと素地の特徴を見てまず素地の色や形を見てから決めています。そこに何を描くかは、自分で考えたデザインを、塗りを手伝ってくれている女性スタッフに相談したりして決めています。また最近は、娘が離れた所に住んでいるのですが、陶器に興味を持っていて気になった器を写真で送ったりしてくれるので、そういったものも発想に繋がっているかもしれません。

実際に、当店でも人気の月見うさぎシリーズがどのようにして作られているのでしょうか。

これは、初めに素地の方に丸型に特殊なのりを貼って、その後に金箔のかけらを貼り付けています。この状態で窯に入れると、素地ののりが溶けて金箔がしっかりと定着するようになるんです。ただ、焼き加減を少しでも間違えると、溶けたのりに金箔が吸い込まれて、消えて無くなってしまうんです。この加減を見つけるのが難しく、試行錯誤を重ねることでようやく綺麗に焼き上げることが出来るようになりました。うさぎの絵付けは、素地に白い絵具で形を作ってから、輪郭を赤茶色の絵具で描くことでうさぎを目立たせる工夫をしています。

今までの九谷焼には無い、親しみやすい絵付けが特徴的です。
求められているものを作る

お客の目線をとても大事にしている印象を強く受ける万作さんの作品。その背景には、他の職人とは少し異なるキャリアがありました。

実は元々私は九谷焼の問屋をやっておりまして、色々な職人さんの所に行って「こういうものを作って欲しい」という要望を伝えていたりしていました。そんな中で消費者に喜ばれる器というのが感覚的に分かるようになってくると、職人さんから仕上がってきた作品を見て「少し違うなぁ」と感じる事が多くなっていきました。そこで、「ならば自分で作ってしまおう」と(笑)。そこからは九谷焼の研修所へ2年間通い、九谷焼の技法を一通り学んだ上で自分の工房を開きました。 それから20年間、時代の変化を感じ取りながら、伝統的な九谷に囚われずその時代に合った作品を作ってきました。

仕入れる素地に合わせた絵付けを模索しています
人との繋がり

「こういうものが求められている」ということが分かっても、いざそれを形にしてお客様に届けるというのはなかなかできることではないと思います。上手く作品を軌道に乗せることが出来た理由は何だったのでしょうか。

先ほども言いましたが、私は問屋を長いことやっていました。なので、消費者がどのようなものを求めているかが感覚的に分かっていたということ、そして自分で工房を開いて作品を売り込む時にも、問屋時代から付き合いのある人たちとの繋がりがあり、比較的容易に販路を作ることが出来たということですね。また、伝統工芸は1人で作り出すことは出来ません。一人では途方もなく時間が掛かることでも、先人の知恵というものがあって、先輩たちに聞くと教えてくれたというのも大きいです。伝統工芸品はそこに関わる様々な人がいて初めて形になる。そういった意味でもスタートが遅いというハンデは無く、むしろ問屋の経験や繋がりが充分に活かせる形となりました。
ただ、当然良いことばかりではなく、やはり職人としての技量は他の人より20年も遅れており、自分の場合は師匠もいなかったため、人よりも多くの失敗を重ねていると思います。幾度と無く失敗を重ねることで、日によって品質にばらつきが出ていたものが、少しずつ安定して良いものが出せるようになってきました。

使えなくなった部品を使って作ったナイフ
「昔から何かを作ることが大好きでした」

ふと工房の中を見渡してみると、手づくりの風合いを感じる道具があちらこちらに。

この手づくりの箒(机の上を掃くような小さい箒)は、山から拾ってきた藁を集めて作りました。小さい頃から工作が好きだったということもあり、使えなくなった筆の毛を 集めて、山から採ってきたしなやかな竹と組み合わせて新しい筆を作ったり、耕作機械の使えなくなった部品を研磨して新しいナイフを作ったりしています。 筆は素地に凹凸が多いとすぐに使い物にならなくなるので、使えなくなった筆の毛に市販の筆の毛を少しまぜたりすることで再利用しています。

それはすごいですね・・・。

職人には珍しく、同じことをずっとしていられない性格のようで、息抜きに色々作りたくなってしまうんです(笑) ただ、そういった少しの寄り道が新しいアイデアを発想する手助けになっているのではないかと思います。

終始笑顔でお話して頂きました
今後の展望

今後、「こういったものが作りたい」という展望は何かあるのでしょうか。

勿論、作品は今後も創意工夫を重ねて時代に合った物を作り続けて行きます。また、実験的にやってみたいこともいくつかあって色々な道具も用意しているのですが、おかげさまで最近は忙しくて。用意は出来ているのでいずれ作りたいと思います。

ありがとうございました。

万作さんが手がける作品を紹介

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