香の手引き

線香の手引き

何故お香を使うのか

仏教においては仏に香りを捧げる行いを重要とし、香や花等を祈りと共に捧げる行為を『供養』といいます。
お香は華・灯と共に『仏前供養』の基本の一つであり、供養に欠かせない物です。
教典によっては、香は仏様の食べ物とする教えもあります。

香のはじまり

日本における香文化は、西暦595年淡路島に沈香が辿り着いたことが始まりとされると云われています 。
当時の、日本には香木に対しての知識をもっておらず単なる流木として薪として焚いてしまい、その煙 の良い香りに驚き朝廷に奉納したと「日本書記」には記されています。

香の十徳

「香十徳」は、11世紀の北宋の詩人黄庭堅(こうていけん)作で、一休禅師(一休さん)により日本に紹介されました。

香の十徳

  1. 感格鬼神:感は鬼神に格(いた)り
    (感覚が鋭くなる)           
  2. 清淨心身:心身を清浄にし
    (心身を清浄する)
  3. 能除汚穢:能(よ)く汚穢(おわい)を除き
    (汚穢(よごれ)を除く)
  4. 能覺睡眠:能(よ)く睡眠を覚し
    (眠気を覚ます)
  5. 静中成友:静中に友と成り
    (静かな時には友になる)
  6. 塵裏偸閑:塵裏(じんり)に閑(ひま)を偸(ぬす)む
    (忙しいときに閑をもたらす)
  7. 多而不厭:多くして厭(いと)わず
    (多く使ってもいとわない)
  8. 寡而為足:寡(すくな)くして足れりとす
    (少なく使っても足りる)
  9. 久蔵不朽:久しく蔵(たくわ)えて朽ちず
    (永く保存しても腐らない)
  10. 常用無障:常に用いて障り無し
    (常用しても差し支えない)

お香の種類

お香には法要時やお墓参り用等、用途ごとにそれぞれ異なる形があります。
ここでは様々な種類のうち、特に仏事でよく使われる一部の種類を紹介します。

短寸の線香

仏壇で使われるポピュラーな線香で、宗派によって焚き方や焚く本数が違います。香木を使った本格的な線香やフルーツの香りの線香等、様々な香りのバリエーションがあります。
室内等で使いやすい、煙や香りが非常に少ない「少煙香」という種類もあります。

渦巻き型の線香

渦巻き線香は、亡くなったその日から数えて7日間(初七日)、お線香を絶やさないようにする為に作られた線香です。
1巻につき12時間程持つ物が多いので、お線香を朝と夜1回ずつ変える、といった様に時間を固定できる為負担が少なくなります。

ミニ寸の線香

「お部屋香」と呼ばれる製品に多く、また最近は仏壇用としても使います。
燃焼時間が短い為、忙しい朝のお参りにもおすすめです。
沈香、 白檀など漢薬系の香りから花の香りまで、香りの種類は非常に豊富です。

長寸の線香

主に寺院仏閣で使用される線香です。
お寺等では読経の時間が長い為、それに合わせてお線香の長さも長いものになっています。

線香・焼香の作法

線香を供える本数

通常は1本から3本供えることが多いが、正式には宗派により異なり、浄土宗、臨済宗、曹洞宗、日蓮宗、 は1本、天台宗と真言宗は3本とされます。複数本を立てる場合はまとめて立てるのではなく1本ずつ立てるようにします。

線香の供え方と作法

まず仏壇の前で数珠を手に掛け、合掌礼拝した後、蝋燭に火を灯し、その火で線香に火をつける。 線香の火は口で吹き消すのではなく、手で吹き消すようにする。(清浄な線香に対して人間の息を吹きかけて汚さないようにするため)

焼香の作法

自宅で法要・法事をする場合には、『回し香炉』を使用し焼香する場合もあります。また線香に代えて「焼香」をする場合もあります。
焼香を行う場合には、香炉にまず炭火を入れ、それを火種として使います。仏壇の前で数珠を手に掛け、合掌礼拝した後、焼香をつまんで香炉にくべます。
焼香をくべる回数は1回から3回ですが、天台宗・真言宗では3回、臨済宗は1回、曹洞宗は3回、日蓮宗は1回か3回、浄土真宗本願寺派は1回、真宗大谷派は2回、浄土宗は特に決まりはないといわれています。

焼香の作法は宗派によって異なりますが、基本的な所作は以下の通りです。

  1. 導師(僧侶)と遺族に一礼し、数珠を両手に掛けて合掌礼拝。
  2. 左手に数珠を持ち、右手で香をつまむ。
  3. つまんだ香を額にいただく(真宗では、香をいただくことはしません)。
  4. 香を香炉へ静かに落とす。
  5. 数珠を両手に掛けて合掌礼拝。導師と遺族に一礼し、退きます。