鞄や衣類に使われる革は実に多くの原皮があります。メジャーからマイナーまで、どんどん追加情報を更新します!

その革、何の革ですか?

一口に「革」といっても、その原料皮はさまざま。それぞれに質感が異なり、用途も変わってきます。バッグによく用いられる原料皮とは?


世界的に頭数が多く、日本でも最もポピュラーなのが牛革。生産量はアメリカがダントツの第1位、質のランクではヨーロッパ産が上回ります。鞄や靴、ベルトなど、耐久力が必要な商品のほか、様々な用途に用いられています。
年齢や性別によって、革の呼び名も特徴も異なります。

カーフ 生後6ヶ月未満の仔牛の皮で、線維組織がきめ細かく、しなやかで軽量。1頭から60〜120デシほどしかとれず、希少価値が高いため、高級革製品に用いられる。
胎児〜3カ月未満の仔牛で、タンニンなめしを施した革をベビーカーフと呼び、カーフの中でも更に希少価値がある。
キップ 生後6ヶ月〜2年未満の牝牛の皮。カーフよりもキメは荒くなるが、厚みが増して丈夫になる。 カーフに次いで上質で、高級革製品に用いられる。変わったところではプロ野球のグラブの使用率も高い。
ステア 2歳以上の牡牛の皮。生後3〜6ヶ月の間に去勢されるので、穏やかな性格になり傷が少なく育つ。1頭あたり450〜600デシ取れ、肉厚で堅牢性に優れているため、もっとも広く使われている。
カウ 2歳以上の牝牛の皮。ステアよりも薄くてソフト。大判なので、ジャケットや鞄など多面積の革商品に用いられる。カウとはお産を済ませた牝牛を指し、未産の雌はカルビンと呼ばれ、カウよりもキメが滑らか。
ブル 3歳以上の去勢されていない牡牛の皮。気性が荒く傷が多い。最もキメが粗く肉厚で堅牢なので、靴底や工業製品など、耐久力が必要な部分に使用される。
その他
バッファロー(水牛)
ほとんど毛が生えておらず、荒々しいイメージに反してソフトで耐久性が高い。特に耐水性に優れ、高級素材として扱われる。
ハラコ
胎児〜生まれて間もない仔牛の皮。短い毛が革の表面を覆っている。装飾的要素に用いられることが多い。
※1デシ=10cm×10cmの正方形面積

牛に比べて薄くキメや強靭性が劣るものの、柔軟で軽量なため、ファッション小物の他に、椅子張りなどインテリア製品などに用いられます。 世界的に生産量が減少し、不足気味になっています。

コードバン 大型馬のお尻部分をタンニンなめしした革。毛孔がなく繊維密度が非常に高いため、牛革の3倍の耐衝撃性があり、滑らかで美しい光沢を持つ。また、部位はコードバン層と呼ばれる床面だけなので、銀面と床面の2層構造の革よりも浮きなどの剥離現象がない。 『コルドバの革』という由来を持つスペイン発祥の革ですが、現在では北フランスが主要生産国。生産量が低く採取面積も小さいため希少価値が高い。
ポニー 馬よりも一回り小型の馬から取れる皮。一般の馬革に比べて手軽に入手できる。軽量で柔軟性に優れ、肌触りが良い。

輸入に頼る皮事情の中、ピッグスキンだけは国産が主流。やわらかく通気性に優れ、摩擦に強いのが特徴です。毛孔が太く、3つかたまって並ぶので見分けがつきやすいです。 安価で多方面で利用されています。

あめ豚 タンニンなめしした豚側を染色し、銀面を擦ってあめ色の焼き色を出した革。豚革の特徴である毛穴が美しく浮き出る。
ペッカリー 猪に似たルックスのペッカリーは、銀面に並ぶ5つの毛穴が特徴的で、繊維がやわらかく手触りが良い。また、軽さや通気性にも優れ、希少価値が高いことから、手袋や靴など高級製品に用いられる。

ヤギ革よりも柔らかくきめ細かい羊革。防寒効果が高く、表皮だけでなく毛も生かして防寒具などに利用されます。 巻き毛(ウールシープ)か直毛(ヘアーシープ)かで特徴が違います。

ウールシープ 寒冷地に生息するので、細い毛がたくさん生えているために毛孔が多いのが特徴。皮質の繊維密度が少なく強度が劣りますが、柔軟性に富んでいる。
ヘアーシープ 温暖な地域に生息し、真っ直ぐな毛を持つヘアシープ。ウールシープよりも強度に優れ、コートや鞄のほかに、本の表紙に使われるなど多様な用途がある。
ラム 生後1年未満の仔羊の皮。強度は劣るものの、銀面が非常にソフトでキメが細かく、羊革の中では最高級品として扱われる。 生後6ヶ月未満の仔羊の皮はベビースキンと呼ばれ、更に希少価値が上がる。

薄く柔らかい一方で、羊皮よりも強靭な性質をもつ山羊革。手袋やフライトジャケットなど過酷な運動に耐える製品に用いられるほか、耐摩耗性の高さを生かして本の装丁にも使われます。 整然と並んだ毛孔と銀面に見られるシボ(皮表面の凹凸)は独特で、ツウ好みの人気を誇ります。

キッド 生後6ヶ月以内の仔山羊の皮。ゴート(6ヶ月以上の成山羊)に比べて脂肪分が少なく、しなやかでキメが細かい。また発色性に優れ、高級な婦人服や手袋、靴の甲などに用いられる。

日本の革の歴史に早くから登場する鹿皮は、やわらかく耐水性に優れているため、古くから武具などに用いられました。 他の皮に比べて繊維が驚くほど細かいのが大きな特徴。また、毛包が大きいので通気性に優れています。 皮は経年硬化が一般的ですが、鹿皮は柔軟性を長時間持続する特性を持ちます。 野生の鹿が主な生産原料なため、傷が多く採取面積も小さいのが難点ですが、ニュージーランドでは自然放牧による養殖が進み、上質な皮の生産が増えています。


皮素材の中で鳥類の代表格はダチョウ。全長2.3メートルのダチョウは、ボディとレッグ部分が革製品として利用されます。 米粒大に隆起した羽軸を抜いた跡はクィルマークと呼ばれ、均一に並んでいるほど希少価値が増します。耐久年数は牛革の10倍ともいわれ、柔軟性と強靭な皮質は、ワニ皮と並び珍重されています。 現代では食用としての価値に着目され飼育が盛んになってきたので、副産物として皮の供給も安定してきました。


強靭さとしなやかさを併せ持つカンガルーの皮。軽量なためシューズなどスポーツアイテムによく用いられています。 原産国はオーストリア1カ国のみ。これだけでも希少価値が上がりますが、種の保存のために生産量が制限されていることと、二足歩行動物のため、革の形状が四角ではなく三角形になることから利用可能面積が乏しく、更にレアな高級革になっています。 臆病な性格ながら危険時の攻撃性が非常に高いカンガルーは傷がたいへん多く、傷のないカンガルー皮は高級品として珍重されています。


アザラシやオットセイなど海獣の皮は厚みがあり、保湿性の高さで群を抜いており、古くから極寒地に住む民族の防寒具や道具として活用されてきました。 独特のうねりがある銀面に人気がありますが、革としてよりも毛皮としての用途が多く、美しい光沢の毛並みが特徴的です。 ワシントン条約の保護によって日本国内への輸入は限られており、希少価値の高い革となっています。


ライオンも歯が立たないと揶揄される、鎧のように堅牢な革を持つカバ。なめした革はヒポという名称で珍重されています。 耐水性、耐摩耗性に強く、楯や鞭に使われますが、靴などのファッションアイテムにも用いられます。スウェードのような手触りと深いシボが特徴です。 ワシントン条約の保護によって日本国内への輸入は限られています。


ワシントン条約により輸入禁止となっているアリクイの皮。南米や東南アジアに生息するセンザンコウは屋根瓦のような硬い甲羅をもっていますが、その表皮はひし形になった綺麗なダイヤ柄の地紋があります。ハードな装飾のアイテムに用いられます。


ワイルドなうろこ模様が美しい高級革のワニ。ワシントン条約で天然ワニの捕獲は禁止されているため、革として流通しているものは養殖ワニです。 背を割って腹部分の皮を活かしたハラワニ、腹を割って背の頸鱗板という突起を生かした背ワニと、2タイプの革に分かれます。うろこの数が多いほど高級で、淡水系のクロコダイルであるイリエワニが最上といわれます。クロコダイルはうろこ毎にドット模様があり、高級革製品に活かされています。


爬虫類の皮の中で特に種類が多いのがヘビです。パイソン(ニシキヘビ)と呼ばれる大型ヘビの中でも、ダイヤ状の模様で珍重されているのがダイヤモンドパイソンで、ぬめりのある光沢が好まれます。 双璧をなすのが最大級のアナコンダ。オリーブ色の肌に水玉の斑が連続し、個性的な表情の革として人気がありますが、生息する南米エリアの森林開発により、捕獲量が減りつつあります。 ワニと同様に、腹部分を生かした革と背部分を生かした革の2タイプに分かれます。


爬虫類の中ではポピュラーな革として用いられているトカゲの革ですが、種の多さに反して革製品として取引されるのは9種類にとどまっています。 哺乳類皮に比べて強度に欠ける爬虫類皮ですが、輪のような模様の斑が美しく人気が高いリングマークトカゲは、爬虫類の中では比較的強度があり、装飾性と実用性を兼ねたアイテムに用いられます。


財布などの革小物への利用が多いカエルの皮。ガラスに当たった水滴のように、無数の水玉模様のような表情を持ちます。 水辺に生息するカエルは「フラッグ」、陸に生息するカエルは「トード」と呼ばれ、革として利用されるのはトードになります。肉厚でコシがあるのが特徴です。


エイ革は独特な表情をもっています。全体は細かいビーズを敷き詰めたような粒状の肌になっていて、スターマークと呼ばれる2〜3mmほどの粒が散りばめられた葉っぱ型の模様があります。エイ1体に一つしかない模様で希少価値が高く、古来から武具や短剣などに用いられてきました。 ハサミでは切れないほど硬く、粒状の独特な表面を持つため染色も非常に難しい皮ですが、傷に強く耐久性もあり手入れ不要という利点があります。


サメ肌というと、山葵おろしに使われる楯鱗(じゅんりん)といううろこのついた硬い皮をイメージしますが、ファッションアイテムに用いられる革は脱鱗処理をしてなめすのでソフトな風合いになります。 深いシワ模様が特徴で、耐水性、強度、耐摩耗性も優れています。また、大型個体では大判の皮が取れるので、用途も広がります。

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Written by Cuoworks