2024年春夏。僕たちは一本のカーゴパンツを別注しました。
Nigel Cabournを象徴するといっても過言ではない定番アイテム〈ARMY CARGO PANT〉。
アメリカ軍のM-43と、ミリタリーパンツの傑作M-51、そして英国陸軍のヴィンテージをミックスしてデザインされた、ナイジェル・ケーボンの醍醐味を色濃く反映した名品です。
自身もその愛用者のひとりであるCROUKAバイヤーのリクエストからはじまった今回の別注企画。
地方のいちセレクトショップが別注するのは稀なことですが、渾身の逸品が出来上がったと自負します。
「ナイジェルさん。僕たちがオーダーしたアーミーカーゴパンツ、どうですか?」
CROUKAバイヤーの思いからスタートした今回の別注。どのような思いと経緯で別注を依頼するに至ったのかを弊社バイヤー柁原に聞いてみました。
「ずっとクローゼットの主役を張る〈ARMY CARGO PANT〉。どんなスタイルにも合わせやすく、その中太のシルエットと素材感がたまらなく好きなんです。でも、ひとつだけ欠点だと感じていることがあって。それは真夏に穿くにはこの厚手の生地だとキツいってこと。ネガティブな意味ではなくて、好きすぎて夏でも穿きたい。そんな悩みを抱えて訪れた展示会でアウターリミッツ(Nigel Cabournの日本総代理店)の人に相談してみると『そうだよね、夏はキツイよね!』って。
そこから話し合って探してもらったのが〈LIGHT MOLE SKIN〉という素材。すでに定番のパンツにも使われていた素材で、風合いやポテンシャルは折り紙付き。これはやっぱりいけるなって思って、すぐにサンプル依頼しました。
数カ月後、出来上がったサンプルを見て、『おぉ~!いいねぇ!』ってスタッフと一緒に盛り上がりました(笑)。定番の〈ARMY CARGO PANT〉を穿きまくっているから生地の感触が分かる。〈LIGHT MOLE SKIN〉はスベスベしていて超穿きやすい。これなら真夏でも大丈夫だって確信しました。
ちなみに、届いたサンプルは【未洗い】の状態。製品は洗いをかけてからの納品を想定していたようでサンプルとは若干風合いが変わると言われていたんですが、『ちょっと待って、このまま生の状態の方が良いんじゃない?』って思って。リジットデニムのように0から育てていくと、より愛着が湧くだろうなと。生産上の問題がなければ未洗いのままでバルク生産を行ってほしいと伝えたら快くOKをもらえました。そして出来上がったのがこの〈ARMY CARGO PANT LIGHT MOLE SKIN〉です。
余談ですが、この生地、今後はNigel Cabournでは使われないそうで。最後の〈LIGHT MOLE SKIN〉はCROUKAの別注品としてしか手に入らないみたいですよ」
定番の〈ARMY CARGO PANT〉とCROUKA別注〈ARMY CARGO PANT LIGHT MOLE SKIN〉を比較してみました。
デザイン自体は全く同じで、素材は別注のライトモールスキンに対して定番はコットンバックサテン。
サテン地の裏側を表側にした生地で太番手の糸の割合が多い面を表側にすることで丈夫で摩擦に強く経年変化も楽しめます。
「1940年代に存在したモールスキンをターゲットに、細番手の糸を駆使したのがライトモールスキン。これを採用することでオールシーズン穿ける、柔らかい生地感と軽い穿き心地が魅力的な仕上がりとなっております」とNigel CabournのジャパンチーフデザイナーであるZUKIさんも太鼓判を押す。
左側がCROUKA別注、右側が定番品。細番手の糸を採用したライトモールスキンはバックサテンに比べて光沢があり綺麗な表情。タフさが際立つバックサテン地の定番品は、洗いをかけているので縫製部分にパッカリングが出ています。
30インチの重さを量ってみたところ、ライトモールスキンの方が約100g軽いという結果でした。生地の厚さに関しては手で触っただけではほとんど差がないようですが、細番手の糸を使っているライトモールスキンの方がサラッとした肌当たりとなっています。
細かい部分の違いでいうと、フロントジッパーの形状が異なっています。CROUKA別注はベル型、定番品は棒型となっており、1930年代にアメリカで実在していたジッパーブランド「WALDES(ウォルディス)」を1953年創業の朝日ファスナーが復刻した国産ヴィンテージファスナーを採用しています。
CROUKA EXCLUSIVE