カレン族の不思議なルーツ

カレン族は少数民族としては最大規模で抜きん出ています。しかしそのルーツはよくわかっていません。

メコン川沿岸の町ナコンパノムより望む対岸のラオスの展望

どこから来たのか

カレン族はビルマ側に約400万人、タイ側に約35万人が住むと言われています。どちらでも少数民族としては最大規模で、他の少数民族から抜きん出ています。しかしそのルーツはあまりよくわかっていないのです。

タイに居住する少数民族のほとんどは現在の中国の南部地域にルーツを持っています。中国ではモン族は苗族(ミャオ)、ヤオ族は瑶族(ヤオ)、アカ族は哈尼族(ハニ)と呼ばれ雲南省や貴州省に広く住んでいます。タイ人(イ泰族)もそのひとつです。

しかし、中国にはカレン族と同系の民族は現在のところまだ見つかっていません。

タイ チェンマイ、象の体を洗うカレン族の象使い

言語から比較する

カレン族の言語は語彙はシナチベット系の影響を受け共通点がありますが、他のチベット=ビルマ語族とは少し異なる文法を持っています。
日本語を見てもわかるように語彙は中国から取り入れ、時代の流れで変化しますが、文法が時代と共に変化することはほとんどありません。これらのことからカレン族はモン族、ヤオ族などが移動をするよりももっと前に現在の地域に移動してきたと考えられます。

Rigobert Bonne’s c. 1770 map of India, Southeast Asia and the East Indies – Wikipedia

カレン族のある言い伝え

「我々はかつてティビ・カビと呼ばれる場所に住んでいた。そこから流砂の川を越えて、我々の先祖たちは三つの川(イラワジ川、サルウィン川、メコン川)の源に辿り着いた。そこから先祖たちは三つに別れて三つの川を南下していった。いつの日か我々は川の下流域で再会し、”王国”を建設するだろう」

伝承や伝説は真実をかならずしも伝えているわけではありませんが、ここから想像するに、他の民族よりも西側の地域を通過しながら民族移動を続けたのだと思われます。

ルーツは謎のまま

ビルマでカレン族の民族運動を続けているカレン民族同盟は、カレン族が南下の末、現在のビルマの地に到達したと推測される紀元前739年をカレン暦元年としています。
ビルマ族やタイ族と違って現在までにカレン族は王国を築いたことがなく、歴史に登場したり、遺跡なども残っていないため、実際のところはよくわかっていません。
しかし、これだけの人口を擁するということは、カレン族が平和を好み、安定した生活を長い間続けてきたことを意味しているのだと思って間違いないでしょう。